再就職支援とは? 概要、メリット・デメリット、助成金を解説

再就職支援とは、人員削減策の対象となった社員に対して職業紹介事業が行う再就職のための支援サービスです。導入を検討している企業は、メリットやデメリット、再就職支援を実施する条件をおさえておくとよいでしょう。

再就職支援について、サービス概要や利用の条件、メリットデメリットなどを詳しく解説します。

1.再就職支援とは?

再就職支援とは、職業紹介事業が行う再就職・再雇用における支援サービスの総称です。「アウトプレースメント」とも呼ばれ、人員削減策の一環として行われるのです。

具体的には、自社の従業員内から転職を希望する人を選び、職業紹介業に該当者の再就職活動の支援を依頼します。人員削減策の一環ということで、再就職にかかる費用は企業負担となる点が特徴です。

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2.再就職支援サービスとは?

再就職支援サービスとは、企業の依頼によって退職した社員の再就職をあらゆる面から支援するサービスです。

キャリアコンサルタントによるカウンセリングから履歴書や職務経歴書などの書き方・添削、求人の紹介や就職情報の提供、ビジネス・リテラシー教育まで、さまざまです。なかには再就職を希望する個人が直接依頼するケースもあります。

再就職支援サービスは人員削減頻度の高いアメリカで利用され、日本でもバブル崩壊以降、導入する企業が増えました。

しかし現在、そもそもの人員不足によりその需要は減少しているといわれています。一方、近年は雇用のミスマッチ対策や従業員に適材適所な環境を提供するため、戦略的に再就職支援サービスを導入する企業が増加傾向にあるのです。

3.再就職支援の目的

企業が再就職支援を提供する目的は、主に下記ふたつです。ここでは、各目的について解説します。

  1. 退職者の精神的不安の低減
  2. 社員とのあつれきを未然に防止しリスクを回避

①退職者の退職への精神的不安を低減

退職は、少なからず精神的な不安が伴うもの。再就職支援では、退職者へのカウンセリングや履歴書作成のサポート、面談の指導やスキルアップ講座などを実施します。そしてり前向きな転職活動へと導き、精神的不安を減らしていくのです。

②社員とのあつれきを未然に防止しリスクを回避

人員削減による一方的なリストラは、社員とのあつれきを生みます。最悪のケースでは訴訟に発展してしまうでしょう。

そこで、リストラの対象となった社員に再就職支援を提供してケアします。そして社員とのあつれきを未然に防いで訴訟といったリスクを回避していくのです。

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4.再就職支援を行うための3つの条件

再就職支援を行うには、下記3つを満たす必要があります。

  1. 企業都合の人員削減で退職
  2. 退職対象者が再就職支援を希望
  3. 再就職支援の制度を採用している企業

①企業都合の人員削減で退職

ここでいう再就職支援は、人員整理の一環で行う早期退職制度による希望退職やリストラの該当者に対する支援です。そのため対象者は、企業都合による退職でなくてはなりません。希望退職者は支援の対象外となります。

②退職対象者が再就職支援を希望

再就職支援の実施には、労使間で合意を得ることが条件です。つまり、企業で再就職支援を制度として用意していても、対象となる退職者が希望しない場合には実施できません。

③再就職支援の制度を採用している企業

そもそも企業が再就職支援の制度を導入していない場合、企業都合による人員削減があっても退職者は再就職支援を利用できません。つまり、退職者の希望のみで再就職支援は実施できないのです。

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5.再就職支援のメリット

再就職支援のメリットには、次のふたつが挙げられます。各メリットについて、詳しく解説しましょう。

  1. 早期に円満退職してもらえる
  2. 労働組合に納得してもらいやすい

①早期に円満退職してもらえる

再就職支援はただの職業紹介に留まらず、スキルやライフプランの提供など、将来性を見据えたさまざまな支援を提供します。そのため、退職者もケアされている意識が芽生えやすく、将来に向けて前向きに転職活動に取り組みやすくなるのです。

結果、通常のリストラよりも企業と社員間の摩擦が軽減しやすく、スムーズかつ円満な退職につながる点は大きなメリットでしょう。

②労働組合に納得してもらいやすい

再就職支援を導入する企業の多くは大企業であり、退職したくないと希望を持つ社員も多いはずです。

日本では正社員の解雇について厳しく制限を設けています。それもあり、一方的なリストラで揉めてしまうケースも多いです。よって人員削減は企業にとってもリスクの高い策といえます。

しかし、再就職支援の実施によって社員とのあつれきを減らせるのです。労働組合からも人員削減のために適切な対応をとっていると納得してもらいやすいでしょう。

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6.再就職支援のデメリット

一方で、再就職支援のデメリットには次のふたつが挙げられます。それぞれについて解説しましょう。

  1. 費用負担が発生する
  2. 再就職が確約できないこともある

①費用負担が発生する

再就職支援は企業都合による退職者を対象に実施するもの。よってその費用は全額企業負担です。再就職支援の依頼先によっても費用はさまざまで、相場は1人あたりおよそ50〜100万円ほどといわれています。

そもそも、リストラを行う主な原因が経営悪化による人件費削減となるため、再就職支援の費用は企業にとっても大きな負担となります。よって再就職支援を導入しているのは資金の潤沢な大企業がほとんどなのです。

②再就職が確約できないこともある

再就職支援はあくまで支援で、再就職を確約するものではありません。そのため、企業がいくら費用をかけたとしても再就職先が決まらないケースもあります。

利用者のなかには、再就職が保証されている制度と勘違いしている人がいるかもしれません。導入の際はその点をしっかり説明しましょう。

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7.再就職支援の対象者

再就職支援の対象者は、人員削減の対象となった企業都合の退職となる社員です。自己都合による転職や、コンプライアンス違反などの問題が原因で解雇された社員は対象となりません。

また、再就職支援の対象者として多いのは、中高年層の社員です。というのも、年功序列の賃金体系がいまだに残っている企業では、中高年層の社員を選んだほうが経費削減効果が高まるからです。

一方、早期退職制度を利用する若手社員がいる場合、対象者の年齢層も広がります。

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8.再就職支援の流れ

再就職支援の流れを5つのステップから見ていきましょう。

STEP.1
カウンセリング
まずは退職対象者へのカウンセリングを実施し、下記のような事項を話し合います。

  • 再就職支援に対する合意について
  • 再就職までのスケジュール
  • 現状のスキルや職歴などの棚卸し、自己分析
  • 希望する職種や業種など、再就職に関する目標設定

退職対象者の経歴や希望を聞き、具体的な再就職先の提案につなげます。

STEP.2
履歴書の書き方や面接の指導
履歴書や職務経歴書の効果的な書き方や、面接指導などを実施します。効果的な書類が作成でき、自己アピールできるよう指導を行い、スムーズに転職ができる状態にまで持っていくのです。

また、並行して希望条件を確認しながら再就職の進路を明確にし、具体的に選考に進めるよう準備を進めていきます。

STEP.3
選考対策
選考前に、選考の対策を実施します。スケジュールを確認し、直前の面接練習を行って安心して選考に臨めるようサポートしましょう。

あわせて再就職先情報を案内し「希望条件とマッチしているか」「応募条件を満たしているか」などの最終確認も行っていきます。

STEP.4
入社手続きや再支援
選考を受けた再就職先や退職対象者に対して、採用に関する意思確認や交渉を行います。内定が決まれば雇用契約書の案内に進み、決まらなかった場合は再支援を実施しましょう。
STEP.5
アフターフォロー
再就職が決まらなかった場合、対象者の不安は大きくなるもの。再就職が決まるまでは対象者に寄り添い、今後の対策や採用条件の確認・交渉、本人との意思確認を行っていきましょう。

また再就職が決定した場合も再就職先で問題なく働けるよう、かつ早期退職を防止するためにフォローアップを行います。

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9.再就職支援がうまくいきやすい人材の特徴

再就職支援がうまくいきやすい人材の特徴は、次のとおりです。再就職がうまくいきやすい理由とあわせて、各特徴を詳しくみていきます。

  1. 専門職に就いた実績のある人
  2. 本人と家族が健康な人
  3. チャレンジ精神がありこだわりがない人
  4. これまでの収入にこだわりがない人

①専門職に就いた実績のある人

専門職に就いたことがあり、かつ実績がある人は育成コストがかからないため、即戦力として企業からの需要が高いといえます。再就職後、実務へのサポートも不要なため、企業としても心強いものです。

②本人と家族が健康な人

本人が健康であるのはもちろん、同様に家族も健康である人の方が再就職しやすいです。本人の健康に問題があると本来のパフォーマンスが発揮できず、家族の健康に問題があると看護や通院のために休みがちになってしまうことが懸念されます。

どちらかの健康に問題があると敬遠されやすくなってしまうため、自分や家族が健康な人ほど再就職もしやすいでしょう。

③チャレンジ精神がありこだわりがない人

前向きでチャレンジ精神がある性格の人やこだわりが少ない人は、新しい環境にもストレスを感じにくいです。会社が変われば文化や雰囲気、やり方などが今までとは異なることも多く、人によっては大きなストレスとなるでしょう。

しかし、そうした環境にも前向きにチャレンジできる人、こだわりが少ない人であれば柔軟に対応できるポテンシャルがあります。

④これまでの収入にこだわりがない人

再就職支援による転職では、多くのケースで収入が減ってしまう傾向にあります。収入へのこだわりが強い人は希望条件がとおるまで再就職期間が続いてしまうでしょう。よってときには現実を受け入れて決断する必要もあります。

収入にこだわりがない人なら、再就職先の条件を素直に受け入れやすいため、再就職先も早期に決まりやすいでしょう。

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10.再就職支援の注意点

社員のためを思って再就職支援を導入しても、社員によって感じ方や対応方法は異なるもの。

たとえ企業都合でも、人員削減の対象となってしまった事実に変わりはありません。社員とのあつれきを少しでも減らすためにも、企業は社員に人員削減を受け入れてもらう適切な対応が必要でしょう。

そのうえで対象者が納得して再就職できるよう、社員一人ひとりと十分に向き合うことが重要です。人員削減をスムーズかつ円滑に進めるためにも、企業側の希望だけで再就職支援を進めないよう注意しましょう。

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11.再就職支援の助成金制度

厚生労働省では、労働移動支援助成金(再就職コース)といった助成金制度を設けています。企業の都合によって離職を余儀なくされる労働者の再就職支援や求職活動のための休暇付与、外部の委託によって職業訓練を実施した事業主を対象に助成金が支給されます。

下記で、助成金の支給対象区分や対象者、受給額について詳しく解説します。

参考:労働移動支援助成金(再就職支援コース)|厚生労働省

支給対象措置とその区分

助成金の支給対象措置とその区分は下記のとおりです。

①再就職支援 離職する労働者の再就職支援を職業紹介事業者に委託して再就職を実現させた場合の助成
訓練 再就職支援の一部として訓練を実施した場合、助成金を上乗せ
グループワーク 就職支援の一部としてグループワークを実施した場合、助成金を上乗せ
②休暇付与支援 離職が決定している労働者に対して求職活動のための休暇を与えた場合の助成
③職業訓練実施支援 離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合の助成

再就職支援に関する助成を受けるには、再就職支援を職業紹介事業者に委託して再就職を「実現させる」必要がある点に注意しましょう。

対象労働者

助成金支給の対象となるのは、下記(1)~(7)のすべてに該当する労働者です。

  1. 事業主の作成する「再就職援助計画」、または「求職活動支援書」の対象者
  2. 申請事業主に雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続して雇用された期間が1年以上
  3. 申請事業主の事業所への復帰の見込みがない
  4. 再就職先が未定、またはこれに準ずる状況にあること
  5. 職業紹介事業者によって退職勧奨を受けたと受け止めている者でないこと
  6. 申請事業主によって退職強要を受けたと受け止めている者でないこと
  7. 職業紹介事業者に対する委託により行われる再就職支援を受けている者の場合は、当該職業紹介事者の行う再就職支援を受けることについて承諾している者

受給額

支給対象者1人あたりの受給額は、下記のとおりです。なお、1年度1事業所あたり500人が限度です。

①再就職の支援を職業紹介事業者に委託する場合
(再就職を実現させた場合に支給)
中小企業事業主
【45歳以上の対象者】
中小企業事業主以外
【45歳以上の対象者】
再就職支援 通常 (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/2【2/3】 (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/4【1/3】
特別区分 (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×2/3【4/5】 (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/3【2/5】
訓練やグループワークの実施を委託した場合
<訓練> 訓練実施に係る費用×2/3を加算(上限30万円)
 <グループワーク> 3回以上で1万円を加算
②求職活動のための休暇を付与する場合(再就職を実現させた場合に支給)
再就職実現時に、当該休暇1日当たり5,000円(中小企業事業主については8,000円)を助成(180日分が上限)
③離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合
再就職実現時に、訓練実施に係る費用の2/3を助成(上限30万円)