採用要件とは?【作り方・項目例をわかりやすく】注意点

採用要件とは、企業が人材を採用するときの基準条件のこと。採用要件の定義や目的、項目例、作り方などを解説します。

1.採用要件とは?

採用要件とは、企業が人材を採用するときに設ける条件のこと。人材要件とも呼ばれ、採用にあたっての大きな指針となります。代表的な採用要件は能力や特性、学歴や経験、労働条件などです。

感覚や気分などの主観に左右されていては、企業にマッチした人材を見極められません。採用要件を設定すれば、客観性を保った厳格な選考が実現できるのです。

採用要件と採用ペルソナの違い

採用ペルソナとは、企業が求める理想を満たす架空の人材像のこと。マーケティングで使われる「ペルソナ」の概念を採用活動に取り入れたものです。採用ペルソナを設定すると、求職者のニーズを想像しやすくなります。

採用要件との違いは、パーソナリティーの有無。採用要件が大まかな人材像を示すのに対して、採用ペルソナはたったひとりの架空の人材像を示します。

たとえば採用ペルソナでは趣味や年齢、ライフスタイルなどが設定されますが、採用要件ではパーソナリティーへ言及しません。

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2.採用要件を定義する目的

採用要件を定義する主な目的は、雇用のミスマッチを回避することと、公平かつ客観的な評価を行うこと。ここでは、採用要件を定義する目的について説明します。

雇用のミスマッチを回避

採用要件の定義は、企業と人材のミスマッチ回避につながります。採用要件があれば採用担当者間で自然と指針が共有され、大きな認識のズレが生じなくなるからです。

また明確な基準に照らし合わせて選考できるため、より自社にマッチした人材を採用できます。応募側も入社後のギャップが少ないため、採用辞退や早期退職なども避けられるでしょう。

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公平かつ客観的な評価

採用要件の定義は、公平かつ客観的な評価にもとづいた厳格な選考につながります。

いくら経験を積んだ採用担当者であっても、完全に主観のない評価はできません。感覚や主観に頼りすぎると、マッチングに欠ける人材の採用や優秀な人材の取りこぼしといったリスクが高まります。

採用要件を定義すれば人材の判断基準がより明確になり、採用担当者に左右されない厳格な選考および理想的な人材の採用につながるでしょう。

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3.採用要件の項目例

採用要件に含まれる項目は、新卒か中途か、あるいは職種により異なります。

新卒採用の採用要件

新卒は実務経験がなく、技術や経験で判断できません。そのため応募者の性格や考え方など、人柄が重視される傾向にあります。

  1. コミュニケーション能力
  2. 誠実性
  3. 協調性
  4. 主体性
  5. チャレンジ精神

①コミュニケーション能力

新卒者に求められる、もっとも基本的かつ初歩的な能力のひとつ。たとえば「相手の感情を推測する」「自分の意見を正しく伝える」「相手のニーズを聞き出せる」などが挙げられます。

社会人として円滑に仕事を進めるためには、周囲との健全なコミュニケーションが欠かせません。

②誠実性

さまざまな規則や慣習への配慮はもちろん、他人の意見に耳を傾ける素直さが求められます。たとえば法令や就業規則、社内慣習を守る姿勢、また偽りなく仕事に向かう姿勢などです。

企業のコンプライアンス管理に厳しい目が向けられている現在、正社員に迎える人材には誠実性が求められます。

③協調性

ただ周囲に合わせるのではなく、積極的にコミュニケーションを取って違いを乗り越える姿勢が求められます。たとえば「意見や立場が違う人とも協力し、仕事を進めていく」といったもの。企業は組織である以上、協調性は必須といえるでしょう。

④主体性

主体性がある人材は自分の意思や判断にもとづいて行動し、それにともなう責任を自らで引き受ける姿勢を持ちます。

仕事に対する潜在能力が高く、将来的に集団を率いる存在になる可能性を秘めているので、長期的な育成も視野に入れて積極的に採用を狙いましょう。

⑤チャレンジ精神

難しい仕事や未経験の仕事にも前向きに取り組める人材は、仕事への熱意ややる気、探究心などが高く、その後の成長が期待できます。またたとえ失敗したとしてもかんたんには心が折れません。持ち前のメンタリティで再度挑戦していくでしょう。

中途採用の採用要件

欠員補充や事業拡大などで即戦力を求める場合も多いため経歴や実績、スキルなどを重視する必要があります。

  1. スキルや経験
  2. 適合性
  3. 熱意

①スキルや経験

募集している職に役立つスキルや経験を持っているかは、とくに重視すべき項目です。

高スキル、あるいは豊富な経験を有する人材は、即戦力としての働きが期待できます。ただし経験においては、就業していた期間やブランク期間などにも注目しましょう。期間が空きすぎている場合、しばらく教育が必要かもしれません。

②適合性

自社の社風に馴染める人材であるかを見極めるために必要です。中途採用者はスキルや経験があるぶん、他社の社風に染まっている可能性があります。以前の考えから抜け出せなければ、早期退職にもつながりかねません。

とくに大企業とベンチャー企業では社風に大きな違いがあるため、このような企業間で転職している場合は、注意深く判断する必要があります。

③熱意

仕事に対する意気込みの大きさを測る判断基準です。

中途採用では条件にのみに惹かれて応募しただけで、熱意がそれほど高くない人材も見られます。熱意の有無は、志望動機や転職理由、自社で働くビジョン、企業研究の度合いなどから見極めましょう。

職種別の採用要件

専門性の高い職種、あるいは実績が求められる職種は、それに応じたスキルや経験が求められる傾向にあります。

エンジニア

エンジニアの採用要件は、ITスキルやコミュニケーション能力、モチベーションなどです。スキルの指定は必須条件と優遇条件にわけ、必須条件を満たす母集団から優遇条件を兼ねる人材を優先的に採用しましょう。

また、チーム開発やクライアントとのやり取りに欠かせないコミュニケーション能力も、重要です。さらに技術の移り変わりについていける、高いモチベーションも求められます。

  1. 営業
  2. SEやプログラマー
  3. 財務

①営業

営業には、対象顧客や営業形態、営業手法や営業ポジションに応じて、異なるスキルや経験が求められます。

営業の分業化が進む現在、営業に求められるスキルや経験はさまざま。「法人営業の経験がある方」「仕組みの構造化、業務改善に取り組みたい方」など、内容によって採用要件を変更する必要があります。

②SEやプログラマー

SEやプログラマーには、エンジニアと同じく、ITスキルやコミュニケーション能力、意欲などが求められます。

とくに重視されるのがスキルアップへの意欲。SEやプログラマーは日々更新される技術を学び、素早く対応していかねばなりません。スクールや参考書の活用など、業務時間外にも自主的に学ぶ意欲が求められます。

③財務

財務には、規模やスタイルの似た企業での勤務経験、資格などが求められます。財務といっても、企業の規模やスタイルによってひとりの担当する業務範囲が変わる点に注意が必要です。

とくに大企業では開発の予算管理や株主対応などの業務が増えるため、細かく分業している傾向にあります。自社に似た企業での経験があるか、見極めなくてはなりません。

資格については、自社業務にあわせて必須資格と歓迎資格を設定しましょう。業務改善や自動化を望むならExcel関連のスキルも必須です。

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4.採用要件の作り方

採用要件の作り方は、2種類に大別できます。それぞれについて解説しましょう。

  1. 演繹的アプローチ
  2. 機能的アプローチ

①演繹(えんえき)的アプローチ

自社の事業や組織を分析し、採用要件を導き出す方法のこと。ここでは演繹的アプローチの手順を説明します。

採用の目的を明確化

経営方針や事業計画を確認し、正しく内容を理解したうえで、採用の目的や方向性を明確にします。とくに新卒採用者は企業の風土や価値観などを継いでいき、自社の将来を担う人材。ズレが生じないよう経営陣も含めて綿密に擦り合わせましょう。

必要要件のヒアリング

実際に業務を行うにあたり必要なスキルや経験、マインドを、担当部署に直接ヒアリングします。

経営陣と採用担当だけで採用要件を決めてしまうと、現場とのミスマッチやはく離が起こりかねません。担当部署に直接ヒアリングし、できるだけ具体的な条件を聞き取りましょう。

要件の優先順位を精査

上がってきた採用要件に優先順位づけを行います。採用要件が多すぎるとかえって選考の負担になりますし、すべてを満たす人材はまずいないからです。

優先順位をつけておけば、応募者の中から可能性のある人材を効率的に見出せます。絶対に必要な採用要件は「MUST」、あればなおよい、あるいはあとから身につけても大丈夫なものは「WANT」に分類するとよいでしょう。

採用要件の周知

採用要件が決まったら、詳細を全体に周知します。実際に面接を行う社員の理解がなければ、採用要件の意味がないからです。

各要件の重要性や必要性などを、全体に対して丁寧に周知しておきましょう。模擬面接で評価の練習をしておくと、採用要件への理解が深まるのはもちろん、面接を行う社員同士の目線も合わせられます。

②帰納(きのう)的アプローチ

自社で成果を挙げる人材を分析し、その能力や志向を採用要件にする方法のこと。ここでは帰納的アプローチの手順を説明します。

優秀人材のリストアップとヒアリング

現在社内で活躍している人材を部署ごとにリストアップし、その人のこれまでのキャリアをヒアリングします。

まずは演繹的アプローチと同じく、経営方針と事業計画を確認し、矛盾やズレがないように採用の大枠を決定。次に仕事の達成率や昇進スピード、リピート率などの客観的なデータにもとづいて、活躍している人材をリストアップします。

選定した人材へヒアリングし、キャリアを洗い出しましょう。中途入社した社員から聞き出す項目はスキルや経験および保有資格、新卒入社した社員は学歴や学生時代の課外活動などです。

要素を分析し採用要件を設定

ヒアリングしたキャリアの内容から活躍の要因を整理、分析し、それをもとに採用要件を設定します。

前段階でヒアリングした内容をまとめ、前職での役割や保有資格、素質などの共通点を分析。なかなか見つからないときは、職種といった点を限定しすぎているかもしれません。業種や役割など広い視点で見てみましょう。

帰納的アプローチは実在の社員をベースにしているため、演繹的アプローチよりも採用要件への落とし込みが容易です。共通点を見つけ出しさえすれば、短時間で具体的な人材イメージを描けます。

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5.採用要件作りに役立つフレームワーク

採用フレームワークを活用すれば、より効率的に採用要件を作れます。ここでは採用要件作りに役立つフレームワークを3つ説明しましょう。

  1. ペルソナ設計
  2. Best/Better/Normal
  3. コンピテンシーモデル

①ペルソナ設計

企業が求める理想の人材を「ひとりの人物」としてキャラクターづけすること。次のような項目を設定し、具体的に設計します。

  • 性別や年齢、家族構成
  • 性格や興味関心、趣味
  • 学校や前職での経験
  • 仕事や生活への価値観
  • ライフスタイル

②Best/Better/Normal

採用要件を「Best」「Better」「Normal」の3つに分類するフレームワークのこと。Bestは最高条件、Betterは優良条件、Normalは標準条件を表します。

このフレームワークを活用すれば、該当ポジションに求める条件の明確化が可能です。たとえば「Bestなら3個、Betterなら5個以上で採用」などと決めておけば、選考基準を統一できます。

③コンピテンシーモデル

優秀な人材に特有の行動や考え方を分析し、募集する職種に合わせて類型化するフレームワークのこと。「行動における特性」に重きを置いており、学歴や職歴などは加味しません。

コンピテンシーモデルに近い応募者を採用すれば、自社で活躍できる人材を確保できる可能性が高まります。採用だけでなく、人事評価やスキル開発など、人事全般に幅広く生かせるフレームワークです。

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6.採用要件を作る際のポイント

採用要件を作っても、実際に活用できなければ意味がありません。ここでは採用要件を作る際のポイントを説明します。

  1. 経営戦略にもとづいた要件定義
  2. PDCAサイクルによる改善
  3. 採用広告やスカウト文への反映

①経営戦略にもとづいた要件定義

経営戦略に沿った採用戦略を策定し、一貫性のある採用要件を作りましょう。

経営戦略とは、企業戦略や事業戦略、機能戦略などの、企業が目的を達成するための方針のこと。これにもとづいて採用要件を練れば、企業と採用の間に方針のズレが生まれません。

採用要件をとおして応募者へ企業方針を伝えられるため、ミスマッチも起こりにくくなると考えられます。

②PDCAサイクルによる改善

一度作成した採用要件であっても、PDCAサイクルを回して改善していく必要があります。

採用要件は作成して終わりではありません。採用要件にもとづいて採用した人材の評価を確認し、欠点があるなら次回の採用に向けて採用要件を改善する必要があります。

このサイクルを繰り返すと採用ノウハウが蓄積されていくため、採用精度やマッチ率が向上していくでしょう。

③採用広告やスカウト文への反映

採用要件を採用活動全般に反映すれば、より質の高い母集団の形成が目指せます。

採用要件を活用するタイミングは、選考のみではありません。採用広告やスカウト文、採用ページやSNSでの発信内容、採用チャネルの選定など、募集においても有用です。

採用要件を反映した募集告知は一貫性が増し、自然とメッセージ性が強化されます。ミスマッチが減るのはもちろん、質の高い母集団の形成が期待できるでしょう。

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7.採用要件を作る際の注意点

採用要件は多く挙げすぎず、客観的に作らなければなりません。ここでは採用要件を作る際の注意点をふたつ説明します。

要件数を増やしすぎない

細かすぎる、あるいは多すぎる採用要件は、かえって採用活動の妨げになります。

理想にぴったりと当てはまる人材は、そうかんたんに見つかりません。採用要件を詳細に設定しすぎると、かえって採用に辿り着けなくなってしまうでしょう。選考時に担当者の負担も増えてしまいます。

すでに採用要件が多い場合は、採用要件を「MUST」と「WANT」に分類し、チェックが必須な要件を減らしてみましょう。

主観的な要素を入れない

採用要件に主観的な要素が入ると、公平かつ客観的な評価が難しくなります。

ヒアリングした内容を分析するときといった状況で、採用要件に主観がくわわる機会は少なくありません。できる限り主観を排除するためにも、作成時には「目標達成率」といった定量データを積極的に活用しましょう。

採用担当の認識や相対的評価のズレが抑えられ、より効果的な採用が実現できます。

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8.採用要件に関する企業事例

採用要件を明確化すれば、社風にあった人材の採用や短期間での採用が見込めます。実際に多くの企業が、採用要件にもとづく採用に成功してきました。ここでは採用要件に関する企業事例を説明します。

  1. アンドパッド
  2. LeoSophia
  3. ココナラ

①アンドパッド

アンドパッドは、建設プロジェクト管理アプリを提供するスタートアップ企業です。

同社は、市場での確保が難しいハイレイヤー層の採用に取り組みました。自社社員の協力を得て、採用要件を明確化。

これをもとにリファラル採用を行ったところ、選考に進んだ応募者の9割が内定を承諾したのです。自社にマッチした優秀な人材を効率的に獲得しました。

②LeoSophia

LeoSophiaは、ネットビジネスを幅広く手掛けるベンチャー企業です。

自社の成長を実現するべく、より効率的な採用手法を模索していました。そこで採用要件を改めて明確化し、それを打ち出した広告を作成。

なんとベンチャー企業ながら2か月で206名の応募があったのです。さらにもう2か月募集したところ今度は1,000人以上が応募し、優秀な人材を6名獲得できました。

③ココナラ

ココナラは、スキルマーケットを展開する企業です。

同社は創業から変わらず企業文化を重視しており、価値観にもとづく採用要件を設定。最終面接では3時間ほどかけて自社の文化と合うか、選考しました。

また価値観を言語化したカルチャーブックを作成し、採用候補者へ配布。その結果、入社後のミスマッチが減少しました。