産業医面談とは?【種類と効果】何を話す? クビになる?

産業医面談とは、従業員の健康管理や労働環境の健康安全に関する取り組みの一環として行われる面談のことです。目的、効果、話す内容などを解説します。

1.産業医面談とは?

産業医面談とは、産業医が従業員の健康管理や労働環境を確認するために行われる面談のこと。職場環境の改善施策として実施されます。

産業医は従業員の健康状態を確認し、就労可能かの判断や健康指導を行い、企業に対しても従業員の健康管理体制について助言します。従業員の健康を維持および向上し、生産性向上や従業員の満足度向上につながると施策として期待されているのです。

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オンライン実施も可能

2020年11月、労働安全衛生法の一部法改正にもとづき、オンラインでの産業医面談が認められました。ただしオンラインでの実施には、3つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 映像と音声が安定かつ円滑である
  • 第三者に情報漏洩がないように環境整備されている
  • オンライン面談の利用性が容易である

またオンライン面談を行う旨は事前に周知し、プライバシーが守られている状態を確保すべきです。

産業医の守秘義務と報告義務

産業医は、従業員との面談で得た健康情報に対して守秘義務があります。一方で労働環境や労働条件において健康状態に問題が発生した場合には、企業や適切な期間に報告する責任もあるのです。

ただし従業員の同意なしに産業医から企業へ情報共有することはなく、守秘義務が第一に優先されます。また報告内容も必要な情報だけを提供し、秘匿性を保つように配慮することが求められているのです。

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2.産業医面談の目的

産業医面談の主な目的のひとつは、従業員の健康管理。従業員の健康状態を定期的に確認すると、健康問題や潜在的な疾病のリスクを把握しやすくなります。

また体に関する問題だけでなく、「こころ」の問題に対してもアプローチし、心理的な負担を軽減するためにも必要です。

もうひとつの目的は、労働環境や労働条件を改善することです。産業医との面談から得られる情報は、従業員の健康と安全を維持するための労働環境改善に役立てられます。

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3.産業医面談の効果

産業医面談は、従業員と企業の双方に対してさまざまな効果をもたらします。ここでは主に3つの効果に対して解説しましょう。

従業員のストレスを緩和

産業医へ日頃の悩みや不安を相談し、専門的なアドバイスを受けた従業員は、ストレスが軽減する可能性もあります。

職場の人間関係などの悩みがあっても、「上司に知られたくない」といった理由から、職場では打ち明けにくいかもしれません。産業医は従業員から相談を受けても本人の同意なく企業側へ共有しないため、従業員は安心して話ができるのです。

休職の防止や退職率の低下

産業医面談は健康問題やメンタル不調などの予防や発見に役立つため、心身の不調による従業員の休職や離職、労働災害などを防ぐ効果があります。

医師からの的確なアドバイスによって従業員の健康が保たれると、従業員は仕事に対するモチベーションの向上が期待できるのです。これは企業の生産性や利益を守ることにもつながります。

職場環境の改善

産業医は従業員による現場の声を直接聞けるため、企業側へ職場環境の改善に向けたアドバイスを行えます。

企業のトップや上層部では、すべての労働環境を把握するのは難しいでしょう。産業医は面談で得られた情報のうち、報告可能な内容をもとに労働環境改善の参考になる事柄や助言を提供します。

産業医のアドバイスをもとに職場環境を改善すると、従業員のモチベーション向上や離職率低下などの効果が期待できるのです。

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4.産業医面談のデメリット

産業医面談を導入する企業側のデメリットは、産業医を配置するために時間や費用がかかる点です。

従業員側のデメリットでは、通常の通院のように自分の好きなタイミングで相談できない点が挙げられます。産業医面談は予約制かつ月内の利用回数が制限されている場合が多いからです。

またプライバシー保護の観点から、産業医へ相談することに不安を覚える従業員も少なくありません。

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5.産業医面談の対象者とその基準

産業医面談は、企業で働いている全従業員が対象です。

なかでも健康診断の結果に異常があった人、長時間労働をしている人、ストレスチェックで高ストレスと診断された人、メンタル面で不調を訴えている人、現在休職もしくは復職を希望している人などへの面談が優先されます。

また今は不調がでていなくても面談を希望する人にも面談を行い、未然のリスク回避に役立てるのです。

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6.産業医面談では何を話す?

産業医面談は病院の診察と異なり、健康状態のほかに従業員の労働環境についても聞き取りが行なわれます。

高ストレスの従業員

高ストレス従業員への産業医面談では、産業医が健康状態から労働環境まで幅広くヒアリングを行い、従業員へアドバイスを提供します。

また産業医は、従業員の同意を得たうえで必要な情報と環境改善に関する助言を企業へ提供するので、企業は相談内容に応じて職務内容や勤務時間などの改善を検討すべきです。

ただし高ストレス従業員が産業医面談を希望するとは限らないため、ストレスチェックなどで対象者を発見するとよいでしょう。

長時間労働の従業員

働き方改革の推進によって、時間外と休日労働が80時間を超える長時間労働をしている従業員は、産業医面談の対象になりました。なお「研究開発業務従事者」や「高度プロフェッショナル制度」を適用している従業員は、100時間以上で対象者となります。

産業医面談の内容は、仕事の状況や疲労の状態確認、メンタルヘルス面の確認、必要に応じた指導などです。

健康診断に異常が見られた従業員

企業は労働安全衛生法にもとづき、従業員に健康診断を受けさせる義務があります。この健康診断の結果に「異常」の所見があった従業員は、産業医面談の対象です。

異常のあった項目に重点を置いて、保健指導やアドバイスがなされます。また企業は健康診断実施から3か月以内に異常のあった従業員について、就業内容に問題がないかを産業医へ確認しなければなりません。

メンタルヘルスに不調がある従業員

メンタルヘルスの不調を訴える従業員への産業医面談では、医療機関の受診をすすめたり、労働環境の見直しが図られます。

面談は従業員の希望を尊重できる環境を整え、さらに守秘義務によってプライバシー保護が保証されていることが重要です。

休職や復職相談を希望する従業員

休職や復職を希望している従業員との産業医面談では、主治医からの意見書をもとに心身の健康状態を確認し、復職の可否を判断します。

産業医は休職との面談で休職にいたった経緯をヒアリングし、「休職に関する意見書」を企業へ提出。復職者への面談では、復職への意思や健康状態、能力を確認し、無理のない復職かどうかを判断します。

復職に問題なければ「復職に関する意見書」を企業へ提出するのです。

退職を希望する従業員

業務過多や長時間労働などを理由に退職する場合、希望すれば産業医による面談を受けられます。産業医は労働環境の向上に関する助言を提供し、健全な職場環境を維持する役割も果たします。

そのため退職希望者からの意見をもとに産業医から助言があれば、企業は職場環境改善に努める必要があるでしょう。ただし従業員との面談の中で、産業医が退職を進めるようなことはありません。

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7.産業医面談が「意味ない」と言われないための注意点

産業医面談を導入しても、従業員にとってもメリットがなければ「意味がない」と思われてしまうかもしれません。ここでは産業医面談で企業が気をつけるべき注意点について解説します。

産業医面談の役割を周知

従業員が健康的に就労できる労働環境を実現するために、産業医面談を設置することを明確に周知しましょう。また面談内容のプライバシーに対する懸念を考慮して、産業医には守秘義務があることについても説明する必要があります。

産業医面談の必要性や役割を周知すると、従業員の理解と安心感が高まり、産業医面談の活用を促せるでしょう。

面談の連絡方法の配慮

産業医面談は、健康診断やストレスチェックで不調がある人、またメンタルヘルスに悩む人を対象とします。しかし従業員は、産業医面談の連絡を受けたことを周りに知られたくないと思うかもしれません。

企業は従業員の気持ちを考慮して、メールや封書など「周りの目に触れない」通知方法を選択することが大切です。

相談窓口の設置

社内環境が原因となって高ストレス者やメンタルヘルスに不安を覚えている従業員は、社内の産業医面談に抵抗を感じる場合もあります。このようなケースでは企業から従業員へ外部の相談先を提供すると、従業員は他者へ相談しやすくなるでしょう。

定期的な調査の実施

産業医面談での診断やアドバイスをもとに、企業は職場環境の改善を実施します。しかし改善されたのちも面談した従業員に対する持続的な支援が大切です。

たとえばメンタルヘルス不調の従業員には、保健師や上司による継続的なフォローが欠かせません。フォロー側にまわる上司にはメンタルヘルス研修を実施すると、より適切な対応が可能となります。

適切な措置の検討

産業医面談の結果、企業に労働環境の改善が必要と判断された場合、企業側はただちに対処が求められます。

どのような問題が生じているのか、何が原因となっているのか、どのような改善方法が最適なのかを明確化し、産業医と協力しながら持続的に取り組むことが大切です。

対処が遅れると、従業員は「相談したにも関わらず何も改善しない」と感じて離職する恐れがあるので、早急に対策を実施すべきです。

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8.産業医面談でよくある疑問

産業医面談に取り組むうえで、さまざまな疑問が生じるかもしれません。ここではよくある質問を5つ解説します。

産業医面談は義務なのか

労働安全衛生法では、「長時間労働者」および「高ストレス者」を対象にした医師の面接指導を義務付けています。つまり長時間労働者または高ストレス者に該当する従業員がいる場合、その従業員に対して企業は産業医面談を実施しなければなりません。

産業医面談は勤務扱いになるのか

産業医面談を行う時間帯に指定はなく、実施時間は所定労働時間内に限りません。

そのため勤務時間外に面談を行っても、給与が発生しないのです。ただし従業員の利便性を考慮して所定労働時間内に行うのが望ましいとされています。

面談の内容によって休職になることはあるのか

休職の最終決定の意思は従業員にあるため、産業医面談の結果で産業医や企業側が強制的にその対象者を休職させられません。

ただし面談後に改善が見られない場合、産業医が休職指示を出す、あるいは企業が休職したほうがよいと判断するケースもあります。

面談の内容によってクビになることはあるのか

産業医には、従業員への退職勧告や解雇を行なう権限はありません。退職については企業と従業員との間で決められる事柄だからです。

ただし産業医は面談の内容を従業員の同意を得て報告する義務があるので、就業可能の有無についての助言は提供します。

面談に上司は同席するのか

産業医面談は、産業医と従業員の1対1、かつプライバシーが守られた状態で行われ、上司は同席しません。

ただし復職に関する相談で、条件などについて話し合いの場が設けられるときには、上司や人事担当者が同席する場合もあります。