企業が求人を行うにあたって、どの程度、希望通りの人員を採用できるかどうかは非常に大きな問題となります。全国や地域での採用状況を知る目安に、「充足率」があります。人材募集を行う際の参考にするとよいでしょう。
「充足率」とは?
充足率とは、求人に対してどの程度の採用が見込めるかを数値で表したもので、求人を出した際にどの程度の人員を補充できる可能性があるのか、また、売り手市場なのか買い手市場なのかなどを判断する重要な目安となります。
充足率が低いというのは、求人を出した数に対して、人員が補充された率が低いということで、求職者が有利な、人員を確保しづらい市場であるということです。こういった状況の中で求人を出す場合は、募集条件の見直しやより積極的な求人募集の呼びかけを行う必要があるといえるでしょう。
一方、充足率が高い場合は、採用者がすぐに見つかる可能性が高い状況にあるということになります。それにもかかわらず人員が見つからないという場合は、募集内容や方法に問題がないか見直してみましょう。
充足率の計算式
充足率の計算方法は、全国計と都道府県別計で異なります。
全国統計では、「就職件数」÷「新規求人数」によって求めることができます。就職件数とは、職業安定所に登録された有効求職者が、職業安定所の紹介によって就職を果たした件数のことです。新規求人数は、一定期間中に新しく受けつけた求人数(採用希望人数)のことですから、就職が決まった人数÷求人募集人数で求められる割合が、全国計の充足率ということになります。
一方、都道府県別計は、「充足数」÷「新規求人数」で求められます。充足数とは、職業安定所の紹介で有効求人に求職者がマッチした件数のことです。
全国系と都道府県計の計算方法はどちらも同じように見えますが、求職者側から見た数字か、求人側から見た数字かという違いがあります。
充足率と就職率の違いとは?
求人を出す企業側から、人材採用がどの程度できているのかの実績を確認する際の参考にするのが「充足率」です。それに対して、求職者側が、一般的な就職実績を確認する際に利用できるのが「就職率」です。
就職率は、「就職件数」÷「新規求職申込件数」で算出されます。
就職件数は、充足率の全国計を求めるときに利用したのと同じ数字です。「新規求職申込件数」というのは、一定期間中に新しく受けつけた求職申し込み数です。
つまり、就職率では、新規に申し込みをした求職数に対して、実際に就職できた件数がどのくらいなのかを知ることができるということです。有効求人数を有効求職者数で割った有効求人倍率とは、実際に就職した件数に基づいて算出されている点が異なります。
職業安定業務統計に見る充足率
厚生労働省では、毎月、職業安定業務統計として、一般職業紹介状況を公開しています。また、毎年12月には、その年1年を通しての一般職業紹介状況が公開されます。
これらのデータは、あくまでも職業安定所を通した求職や求人数に基づいて算出されているものですが、世間一般の動向を知るためのひとつの目安として利用することができます。
平成28年の充足率(※新規学卒者を除き、パートタイムを含む)を見てみると、最も採用の活発化すると思われる4月から6月にかけては18.6%、最も少ない10月から12月で15.3%となっており、平成24年の24.6%と比較すると大きく減少していることがわかります。
反対に、求職者側から見た就職率は、平成24年の31.4%に対し、平成28年10月から12月で36.0%と上昇傾向にあります。