【事例アリ】スクラム採用とは? メリデメ、成功ポイント

スクラム採用とは、経営陣や人事ではなく、現場で働く全社員が主体となって行う採用活動のこと。スクラム採用のメリットとデメリット、ポイント、事例などについて解説します。

1.スクラム採用とは?

スクラム採用とは、株式会社HERPが提唱する考え方で、現場で働く社員全員を主体とする採用活動のこと。経営陣や人事の採用担当者は、採用活動全体の管理を行います。

※「スクラム採用」は株式会社HERPの商標又は登録商標です。

スクラムの意味

ビジネスにおける「スクラム」という言葉には、「企業などの集団が一丸となる」という意味があります。

由来は、ラグビーで選手同士が肩を組んで行う「スクラム」というプレーにあります。ここから転じて「ひとつのタスクに対して複数の人が協力すること」を指すのです。

スクラム採用の「スクラム」に関しても同様の意味合いで使用されており、「複数の社員が協力して行う採用活動」と表せるでしょう。

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2.スクラム採用とリファラル採用の違い

リファラル採用とは、内部の紹介による採用のこと。リファラル採用で現場社員が関与するのは候補者の推薦までとなり、それ以降の採用活動にはかかわりません。

一方スクラム採用では、現場社員が主体となって採用活動を行い、求人票の作成やスカウティング、選考や内定後のフォローまでさまざまなプロセスに取り組むのです。

そのためスクラム採用では、現場社員へ採用権限まで譲渡されます。もちろんリファラル採用ではそのような権限を与えません。

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3.スクラム採用が注目される背景

近年、スクラム採用は幅広い業界で導入されるようになりました。ここでは注目されるようになった背景について説明します。

  1. 優秀な人材が必要とされている
  2. 専門性の高い人材採用が求められている
  3. 採用方法が多様化している
  4. 求職者が求める条件が変化している

①優秀な人材が必要とされている

現場社員が採用活動を行うため広範囲へアプローチでき、優秀な人材の獲得につながりやすくなります。

優秀な人材はすでに雇用されている可能性が高く、転職市場で見つけるのは難しいもの。そのような人材へアプローチするには、各社員のネットワークを使い、接点を増やす必要があるのです。

SNSによるつながりや、リファラル採用などで優秀な人材が見つかるかもしれません。

②専門性の高い人材採用が求められている

専門性の高い人材を獲得する手段としても注目を集めています。マッチ度の高い人材を採用するには、業務を熟知した社員の声を反映させる必要があるからです。現場で求められる経験やスキル、適性などを経営者や人事部で正確に把握するのは難しいでしょう。

近年、専門性を重視するジョブ型雇用を導入している企業も増加しており、よりスクラム採用の注目度が高まっています。

③採用方法が多様化している

多様化した採用方法に対応するために、全社的に採用活動へ取り組むスクラム採用の必要性が高まってきました。

今日ではSNSや採用メディア、副業や社員による紹介など、採用につながる接点が多数存在します。しかし人事部だけですべての接点へ対応するのは困難です。優秀な人材を逃さないよう、全社員が採用活動へ取り組むスクラム採用の必要性が高まりました。

④求職者が求める条件が変化している

求職者側が注目する雇用条件が変化してきたため、希望条件に合うと広くアピールする目的でスクラム採用が注目されています。

かつての求職者が重視する項目といえば、給与や福利厚生、企業の知名度など。働き方改革以降は、休日日数や職場の雰囲気、人間関係なども希望条件に含まれるようになりました。

求職者の希望に合った企業であると広くアピールするために、スクラム採用で接点を増やす必要があるのです。

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4.スクラム採用のメリット

スクラム採用では、下記のようなメリットが期待できます。

  1. 採用力が向上する
  2. 人事の負担が軽減する
  3. エンゲージメントが向上する

①採用力が向上する

従来の募集活動よりも接点を増やせるため、採用力が向上します。

各社員がそれぞれアプローチするため、より多くの人材と接点を作れるのです。SNS経由や副業、リファラル採用などさまざまなプロセスを経た採用が増加するでしょう。時代にマッチした採用活動を効率的に進められるようになります。

またほかの社員がアプローチ業務を担うと採用担当者の負担も軽減するため、その分採用活動の精度向上に取り組めます。

②人事の負担が軽減する

採用活動における人事の負担を軽減でき、より質の高い採用活動を行えます。従来の採用活動では、人事が現場社員からヒアリングした内容を応募者へ伝えるのが一般的でした。しかしこの方法では多大な時間が必要となり、人事に大きな負担が生じてしまうのです。

スクラム採用ではこのような説明を現場社員が直接伝えられます。応募者は現場のリアルな情報を知っていけるため、現場社員はマッチする人材かを見極めやすくなるのです。

③エンゲージメントが向上する

スクラム採用に参加した社員のエンゲージメントが向上するというメリットも期待できます。採用活動に関わる社員は、自社の理念やビジョンを理解したうえで応募者へ伝える必要があるためです。

たとえば現場社員が自社の魅力を正確に伝える際は、社員自身が自社の魅力を認識していなければなりません。

スクラム採用をとおして自社への理解が深まった社員は愛社精神や貢献意識が向上するため、多くの社員がスクラム採用に参加するほど組織のエンゲージ向上が期待できます。

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5.スクラム採用のデメリット

スクラム採用には、下記のようなデメリットもあります。

  1. 現場社員の負担が増大する
  2. 管理コストが上昇する

①現場社員の負担が増大する

現場社員は自身の業務と平行して採用活動を行うため負担が増大します。

スクラム採用は、人材へのアプローチから内定後のフォローまでさまざまな業務が現場社員に発生するもの。通常の業務との両立が困難になり、本業務に混乱や遅滞が生じて生産性が下がるといった状況が懸念されます。

スクラム採用を実施する際は、社内体制の整備が不可欠です。とくに現場社員の業務量をマネジメントする仕組みは必須といえるでしょう。

②管理コストが上昇する

採用活動に携わる人数が増えるため、全体を管理するためのコストが高くなってしまいます。経営者や人事部だけでなく、現場社員も応募者の個人情報を扱うからです。

現場社員の閲覧に対するセキュリティ対策や権限付与、また各部署への情報共有やそれぞれの採用活動の把握なども発生し、これらの管理には時間と人件費といったコストがかかります。

スクラム採用の実施に際しては、システムやツールを活用し、情報の管理と共有を効率化する仕組みを構築する必要があるでしょう。

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6.スクラム採用のポイント

スクラム採用を成功させるには、現場社員も含めて全社で取り組む必要があります。ここでは実施におけるポイントを3つ解説しましょう。

  1. 全社的に取り組む
  2. 現場に裁量をもたせる
  3. 採用情報を一元化する

①全社的に取り組む

スクラム採用は全社で取り組む活動であると、社員へ周知することから始めます。

多くの企業では人事部が採用活動を主導しているため、そもそも社員の意識改革から行わなければなりません。また現場社員は業務負担が増加するので、スクラム採用への理解を得る必要があります。

スクラム採用の目的、期待できる効果や価値などに関して十分に説明し、スクラム採用の重要性を伝えましょう。これらが組織へ浸透すれば、スクラム採用の成功に近づきます。

②現場に裁量をもたせる

スクラム採用では現場主導で選考や面接などを行うため採用方針やターゲット像、採用基準や採用人数、募集するポジションなどの決定といった裁量を現場社員に持たせましょう。なお最終的な採用の可否は経営陣や人事部が担います。

主導権を現場社員に預けると、現場の課題をふまえたうえで最適な人材募集を行えるため、希望に近い人材の採用が実現するでしょう。また現場社員には「自分ごと」として主体的に取り組む意識を促します。

③採用情報を一元化する

採用情報を一元化し、共有しやすい状態で管理するのも重要です。スクラム採用では各部署の現場社員が、採用活動に必要な情報を共有するからです。

とくに採用活動の進捗や応募者のプロフィール、面接における評価などはリアルタイムに全員へ共有できる状態が望ましいでしょう。最新情報が共有されないと、採用のチャンスを逃がしてしまう恐れもあるからです。

情報共有を効率化するため、一元管理するためのツールやシステムの活用も検討しましょう。

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7.スクラム採用の注意点

スクラム採用にはデメリットもあるため、以下の点に注意しなければなりません。

  1. 社員の意識醸成には時間がかかる
  2. 採用担当者にはマネジメント力が求められる
  3. 目標共有がなければ失敗に終わる

①社員の意識醸成には時間がかかる

スクラム採用が社員へ浸透および定着するまでには、ある程度の時間が必要です。

「採用活動に携わるのは人事部といった一部社員のみ」企業の場合、まず現場社員へ採用活動への参加を意識させることから始めなければなりません。

しかしスクラム採用では、本業務との両立や採用活動に関する知識の習得などの負担が増加するため、現場社員の理解を得るのに時間がかかるかもしれません。

日頃から経営者が採用の重要性を伝えていれば、採用活動全般およびスクラム採用への理解と浸透がスムーズに進むでしょう。

②採用担当者にはマネジメント力が求められる

スクラム採用全体を総括する採用担当者には、高度なマネジメント力が求められます。スクラム採用の進捗管理とともに、これまでに採用活動に携わったことのない現場社員への指導や管理も行わなければならないからです。

このように採用担当者は、プロジェクトマネージャーとしての役割を担います。高いマネジメント能力を持つ採用担当者がいない場合、適切な人材を採用あるいは育成するところから着手する必要があるでしょう。

③目標共有がなければ失敗に終わる

スクラム採用の目標(ゴール)を明確化し、全社員へ共有する必要があります。主体となって採用活動を行う各社員が目標を理解していないと、活動の方向性にズレが生じてしまい、期待する成果を得られなくなる恐れもあるからです。

経営者は必ず「スクラム採用で何を達成したいのか」を伝え、スクラム採用をマネジメントする採用担当者は、つねに目標と社員の活動内容がリンクしているか、確認しましょう。

また目標と現状の差を把握できる仕組みを作ると、社員は目標達成に向けた適切な活動を行えます。

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8.スクラム採用の事例

スクラム採用に取り組み、成果を上げている事例も多数あります。ここでは3社の事例を解説しましょう。

  1. ヘイ
  2. メルカリ
  3. BASE

①ヘイ

ヘイでは社員の増強を目標として、創業時からスクラム採用を実施しています。多くの権限を社員へ譲渡し、採用したい人物像の設定やアプローチ、採用の可否などは各チームに一任。人事担当者は、一次面接の設定など採用活動のサポートを担います。

各社員が採用は全員の仕事という認識が浸透しており、採用イベントや会社説明会にも多くの社員が参加しているのです。結果約10か月で90名の採用に成功しました。

②メルカリ

メルカリでは、創業時からスクラム採用に近いリファラル採用を実施。現在では入社経路の半数以上がリファラル採用となっています。

リファラル採用による採用活動を浸透させるために経営陣がリファラル採用を率先し、「気軽に人材を紹介してよい」という風土を醸造。また紹介人数のノルマは設定せず、「自分が一緒に働きたい」と思える人材を重視する意識を定着させました。

採用候補者との交流会にも、既存社員の参加が可能です。

③BASE

BASEは、採用方式をスクラム採用へ変更し、採用業務を段階的に現場へ移行。

現場にチームマネージャーを置き、経営層とチームマネージャーが人材要件をすり合わせて採用方針を統一したうえで、採用計画の策定や求人票の作成、各種面談などを任せました。面接後は選考者全員で「内定判定会議」を開催し、応募者の適正を判断します。

またチームマネージャーがスクラム採用による成果を社内全体へ伝えるので、スクラム採用に対する社員の意識も向上したのです。スクラム採用を実施した結果採用決定人数は前年比で約43%増加、入社決定率は約20%増加を達成しました。