「自己申告制度」は、社員の意向や本音を知ることができる重要な人事制度で、日本では約8割の企業が導入しています。自己申告制度を活用することで、社員の適性やキャリア意向をふまえた人事異動を行うことができます。
この記事では、自己申告制度の目的や運用のポイント、課題と対策について紹介します。人事責任者や担当者がやるべきこともピックアップしましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
1. 自己申告制度とは? 定義や意味
自己申告制度とは、社員が企業側に意向や意見を申告できる制度のことです。具体的には次のような項目が一般的です。
- 将来的なキャリアの意向
- 異動・転籍の希望
- 自己評価
- 企業への不満 など
主な目的は人事管理や人材育成で、社員の能力開発や評価の補完などに活用する企業が多く、近年では社員の満足度向上や職場環境の改善のためにモーラルサーベイとして用いる企業もあります。
自己申告制度は現在約8割の企業で導入されており、私たちにとってなじみ深い人事制度の一つです。
一方で自己申告制度には制度自体が形骸化しやすいという課題があるので、目的を明確化して運用することが重要です。
2. 自己申告制度はなぜやるの? 目的と活用例
自己申告制度は、各企業が自社の目的に合わせて活用しています。代表的な4つの目的と活用例について説明します。
①人材の最適配置や社員のキャリア形成に活用する
社員に将来のキャリア意向や担当職務への意欲・適性等を聞き、適材適所やキャリア開発のための人事異動に活用するという目的があります。人事が申告内容をもとに、各社員のキャリアを見据えた異動やスキルアップの研修などを検討します。
ただし、適性の自己評価には意味がないとする専門家もいます。自分が思う適性と他人から見た適性は異なることがあるからです。そのため人事担当者は、受動的に社員の希望を叶えるのではなく、社員の能力や適性を最大発揮できる最適なキャリアを考え、人事異動に活用するのがよいでしょう。
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②評価制度の補助として活用する
自己申告制度を評価制度と組み合わせ、社員の自己評価を補助的に活用する企業もあります。上長や人事からの一方的な評価を補完し、正当な評価を受けられているかどうかを確認するという活用方法です。
また自己評価にあわせて自分自身の取り組みや課題を振り返らせる記入欄を設けることで、内省の機会を与え業務の改善意欲の向上をねらうという活用もできます。
③社員教育やコミュニケーションに活用する
コミュニケーション不足を組織課題ととらえている企業では、自己申告制度を社員教育や上司・部下のコミュニケーションに生かしています。
具体的には、次のような活用方法があります。
- 評価に不満を抱いている場合に、上司や会社が求めているものをフィードバックし自己成長を促す
- 一般社員から管理職に対する不満を吸い上げ、管理職研修の内容に活かす
- 上司が部下のキャリア意向を知り、普段の業務指示や指導に活かす
④職場環境や人事制度の改善に活用する
各職場が抱える不満や問題点を吸い上げ、職場環境の整備や人事制度の改善に活用している企業もあります。
ポイントは、社員の本音を聞き出すことです。そのためには、評価には影響しないと明記したり、モーラルサーベイ(従業員意識調査)のように職場の活気や雰囲気についてのアンケート項目を用意するなどが有効です。社員が忖度してしまう組織風土が根付いていると形骸化してしまうので注意が必要です。
社員からストレートな不満やレベルの低い発言が出てくる場合がありますが、スルーすると制度の形骸化だけでなく、社員の不満につながります。人事担当者は、受け止めて必ず何かしらのフィードバックをするよう心がけるのが重要です。
3. 自己申告制度はどうやってやるの? 一般的な運用方法
実際に自己申告制度はどのように運用しているのでしょうか。一般的な運用方法について説明します。
(1) 対象者
対象者は企業によって様々です。一般的には全社員が対象の企業が多いですが、ジョブローテーション対象者や、管理職以下の一般社員など限定している企業もあります。
(2)頻度・時期
頻度は年1回としている企業が大多数ですが、年に2~3回行っている企業もあります。
実施時期は活用目的によって様々ですが、評価と同時期に行っている企業と、自己申告を単独で実施している企業の2つに大別することができます。最もオーソドックスなのは評価時期である3月頃に面談を集中させる運用ですが、ほかにも4月の異動に活用するために半期前の10月に実施している企業もあります。自社の状況を踏まえて柔軟に決めるのがよいでしょう。
(3)運用フロー(例)
自己申告制度を異動検討に活用する場合は、次のような9ステップが一般的な運用フローです。
- 【人事】自己申告書を配布
- 【社員】自己申告書の記入、提出
- 【人事】自己申告書を回収
- 【社員】所属長と面談
- 【社員】人事と面談(希望者)
- 【人事】取りまとめ
- 【人事】異動検討、決定
- 【人事or上長】フィードバック面談
- 【人事】制度の振り返りとメンテンナンス
面談の相手は所属長が一般的ですが、なるべく本音を聞き出すことができるよう、希望すれば人事や他部署の役職者と面談ができるなどの配慮があるとよいでしょう。職場環境改善に活用している企業では、直属の上長には言いにくい不満を吸い上げる必要があるので、その点に配慮し申告内容や面談は上長を通さず人事とのみ行うようなフローを組んでいます。
4.自己申告書の項目のポイントとは?【フォーマットあり】
自己申告書とは?
自己申告書とは、自己申告制度で社員に記入してもらうフォーマットのことです。各企業が目的に合わせて自由にカスタマイズしています。
全員に同じフォーマットを適用している企業が一般的ですが、より効果的に活用するために一般社員と管理職などの階層によってフォーマットを変えている企業もあります。また、目的を明確にするために「能力開発シート」「人材開発提案シート」など、呼び名を工夫している企業もあります。
自己申告書を効果的に活用するためのポイントは、目的を踏まえた項目にすることです。項目は多ければ多いほどいいというものではありません。回答を回収しても活用できない情報なら、ただ社員にストレスを与えるだけです。まず自己申告制度の目的を明確にした上で、不要な項目は削除するようにしましょう。
自己申告書フォーマットサンプル
▼WordファイルのDLはこちら▼
自己申告書フォーマットのサンプルをご用意しました。目的に合わせてカスタマイズしてお使いください。
異動の希望部署ややってみたい仕事などは、チェックボックスから選べるようになっていると親切です。また職場環境や人間関係の不満については、本音をフリーテキストで記入しづらいので、段階評価できる形にしておくと答えやすくなります。
自己申告書の一般的な項目
自己申告書の一般的な項目は、次の8つです。
- 現在の職務状況
- 仕事への適性
- 将来のキャリア意向
- 異動、転勤、昇任・降任希望
- 自己評価(振り返り)
- 現在の職場環境・人間関係
- 自由意見欄
- その他(健康状態や趣味など)
一つずつ説明していきます。
①現在の職務状況
現在の仕事内容や状況について聞く項目です。量や質、満足度などを聞き、問題や不満がないか確認します。
②仕事への適性
現在の仕事の適性を聞きます。どのような業務が得意か、チェックボックスで回答できるようになっているとより詳しく聞き出すことができます。
③将来のキャリア意向
将来のキャリアについてどのように考えているか聞きます。自由記述欄に自分の言葉で記入してもらうことで、その人のキャリア意識のレベルがわかります。また、異動機会が多い企業では「将来やってもいい仕事」といった聞き方で弱い希望を取っておくのも一つの手です。
④異動、転勤、昇任・降任希望
異動や転勤、昇任・降任などの希望を聞きます。検討しやすいように希望理由を論理的かつ具体的に記載させるのが重要です。また、下記の表のように短期から中長期的なキャリアまでを聞けば、キャリアプランに妥当性があるかどうかを確認することができます。
⑤自己評価(振り返り)
今期の自分の取り組みについて、自己評価と課題などを聞きます。
⑥現在の職場環境・人間関係
現在の部署の環境や人間関係について状況や改善案を聞きます。不満はフリーコメントに記載しにくいので、雰囲気や上司・同僚の対応について段階評価できるようにしておくとよいでしょう。
⑦自由意見欄
経営や他部門への要望や意見、自己啓発についての取り組みなど、特に申告しておきたい事項について自由に記載できる項目です。ただ、「自由意見」と書いてあると何を書いてよいかわかりにくいので、特に記載してほしいテーマ例を与えるとよいでしょう。
⑧その他(健康状態や趣味など)
そのほか、健康状態や趣味について記載項目を設けている企業もあります。
5.自己申告制度のメリットや効果
自己申告制度には主に4つのメリットがあります。
①自社の組織課題に合わせた運用ができる
一番のメリットは、柔軟性のある制度なので、自社の組織課題に合わせた運用ができる点です。
たとえば成果主義の企業では、人材の能力開発のためにキャリア意向・能力・適性にフォーカスした自己申告制度を目標管理と組み合わせて運用しています。ほかには、専門的なスキルや資格が職務上重要視される企業では、職務能力適性評定と組み合わせ、スキル・適性・資格に重点を置いて運用しています。管理職の能力向上のために従業員満足度調査の内容を研修に生かしている企業もあります。
このように、自社の方針や人事評価制度に合うように最適な活用ができるのが特徴の一つです。
②社員と企業側の認識のギャップがわかる
適性や意向、経営方針や人事制度について、社員と企業側とのギャップを把握することができます。
たとえば適性や評価について社員と企業側の認識にギャップがあると、社員が納得して仕事に取り組めず、モチベーションが低下し生産性が落ちてしまいます。また、経営方針や人事制度についても、現場で思わぬ不満や課題が発生している可能性があります。
そうした状態を把握するため、社員の声を吸い上げるのに自己申告制度は有効です。
③社員のモチベーションアップ
社員の適性や意向を汲んだ適材適所の配置を行うことで、社員のモチベーションアップが期待できます。
一般的にビジネスにおいてモチベーションを維持して取り組める仕事とは、やりたいこと・できること・やるべきこと(Will ・Can・Must)が重なっている仕事といわれていますが、自己申告制度は社員自身が「やりたいこと(Will)」と「できること(Can)」を申告できる制度ということになります。
社員のモチベーションを上げるためには、人事・企業側が「やるべきこと(Must)」とのバランスを見ながら、社員を最適な配置にアサインすることが重要です。
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④社員のキャリア意識の向上
将来のキャリアについて考える機会を与えることによって、キャリア形成への意識向上が期待できます。
キャリア意識を持つことによって自己理解が進み、自分が今何をすべきか明確になるので、成長のための主体的な行動を促すことができます。
参考 キャリア意識が成長への主体的行動を促す日経BizGate6.自己申告制度の課題と失敗しないためのポイント
メリットが多い自己申告制度ですが、一方で課題もあります。ここでは、主な5つの課題と失敗しないためのポイントについて説明します。
失敗した企業に学ぶ、自己申告制度のつまずきポイント
まず、自己申告制度を導入したものの、中断・廃止した企業の失敗理由を見てみましょう。
次の表は、自己申告制度の中断・廃止理由と「はい」と答えた企業の割合のアンケート結果です。
これらの理由を簡単に5つの課題に分類しました。
①形骸化しやすい
まず、自己申告制度の全体的な課題として「形骸化しやすい」という特徴があります。
なぜかというと、1960~90年代に本格導入した企業が多いので、導入当初の目的が曖昧になったまま慣行化し、データが活用しきれない状況が発生しやすいからです。
この課題をクリアするためには、次の2つが重要です。
【ポイント】自己申告制度の目的と目標を設定する
どんな制度にも言えることですが、「なんのために行うのか?」という目的を明確化させることが重要です。目的が明確ではない場合は、今の人事制度と照らし合わせて自己申告制度の見直しをしましょう。
また、活用の努力も必要です。もし異動を目的として活用するなら、「〇%の社員を異動させる」といった目標を持つのがおすすめです。
【ポイント】ほかの人事制度と一緒に活用する
ほかの人事制度と合わせて活用することによって、自己申告制度を有効活用することができます。よく併用されているのはジョブローテーションと社内公募制度です。
ジョブローテーションの異動検討に自己申告内容を活用したり、自己申告で異動希望が出なかった(社員が思いつかなかった)部署に、社内公募制度で異動希望を募るといったような活用方法です。
自己申告制度の活用目的が明確になり、さらに有効活用できるのでおすすめです。
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②希望通りの異動ができない社員が不満を抱く
希望通りの異動ができなかった社員がその措置に納得できないと、不満や意欲低下の原因となり、ひいては離職にもつながる可能性があります。
それを防ぐためには、次の2つのポイントが重要です。
【ポイント】社員にフィードバックする
希望通りの異動とならなかった社員に対しては、その理由を個別にフィードバックし説明する努力が必要です。説明の際は企業側の都合だけでなく、その社員のキャリア意向や適性を踏まえて検討した旨を伝え、その配置で期待していることを伝えましょう。
【ポイント】社内広報活動を行う
自分が希望通りにならないと、「人事が全く申告内容を活用していないのではないか」という不満を抱く社員も出てきます。そうならないために、自己申告制度を異動やキャリア開発に活用しているという活動報告や、モデルケースを社内広報する取り組みも有効です。
③社員の本音が聞き出せない
社員が評価や周囲の目を気にして忖度する風土が根付いてしまっている企業では、社員が本音を言いづらくなってしまい、各部署の問題点がわからないままとなってしまいます。
【ポイント】自己申告しやすいフローにする
このような場合は、希望者は人事と直接面談することができるようにするなどの配慮が有効です。また、評価に響くことを懸念して遠慮する社員もいるので、職場の改善提案や不満などを聞く際には、評価には一切関係ない旨を明記しておくとよいでしょう。
④社員の自己評価や希望が客観性、信頼性に乏しい
社員が自己申告制度をただの異動希望書として捉えていると、申告内容が客観性や信頼性に欠けたレベルの低い内容になるという状況が散見されます。
【ポイント】社員に自己申告制度の目的を周知する
社員に自己申告制度の目的を周知し、正しく理解させることが重要です。ただの異動希望書ではなく、自分の能力やキャリアを向上させるための資料として、主体的な活用を期待していることを伝えましょう。
⑤取りまとめに時間がかかったり、データを活用しきれない
多くの人事担当者が課題に感じているのが、申告データの取りまとめや管理、メンテナンスに時間がかかっているという点ではないでしょうか。紙やExcelで自己申告書を運用している場合、収集したデータを十分に活用するのには限界があります。たとえば、キャリア形成を目的としている場合、データを蓄積し経年変化を見ることも重要ですが、データを保存・加工・メンテナンスするというのは非常に大変な作業です。このように、管理工数がかかる上にデータを活用しきれないというのが自己申告制度の抱える課題です。
【ポイント】項目は必要なものだけに絞る
まず一つできることとして、実効に結び付かないデータはそもそもとらないことです。無意味な回答項目が多いことは社員の不満の原因にもなるので、項目は必要で管理可能な分に絞りましょう。
【ポイント】人事管理ツールを導入して効率化する
効率化で最も重要なのは無駄を省くことです。クラウドの人事管理ツールを使えば、自己申告書をWEBアンケートで一斉展開・自動回収することができるので、取りまとめが必要ありません。特に、キャリア形成に関しては申告内容と異動履歴の経年変化を見たいですよね。そういった情報にスムーズにアクセスできるのも人事管理ツールの特徴の一つです。
おすすめのツールは「カオナビ」です。人事異動のシミュレーション機能があるので、申告内容をそのまま異動検討に活用することができます。
7.人事必見! 自己申告制度でやるべきこと3つ
ここでは、自己申告制度の運用をさらによいものにするために、具体的に人事がやるべきことについてピックアップしました。人事のみなさん、ぜひ参考にしてみてくださいね。
自己申告の前に人事マネージャー以上がやるべきこと3つ
①現在の自己申告制度の振り返りと課題抽出
まず、現行の自己申告制度を振り返り、課題抽出をすることが重要です。次のチェックリストで課題を洗い出してみましょう。
- 形骸化していないか?
- 目的は明確か?
- 収集した情報を活用できているか?
- 社員の不満につながっていないか?
- 社員の本音が聞き出せているか?
- 社員が自己中心的な評価や希望を書いていないか?
- 取りまとめに時間がかかっていないか?
課題ごとの対策は、「6.自己申告制度の課題と失敗しないためのポイント」を参考にしてみてくださいね。
②自己申告制度の目的と目標を明確にする
その次に自己申告制度の目的と目標を明確にしましょう。組織課題に即した活用目的を明文化するのが重要です。
- 生産性最大化を目的とした適材適所⇒異動に活用する
- 社員の能力向上⇒研修や教育制度への落とし込む
- 従業員満足度の向上⇒不満や本音を吸い上げる など
これは自己申告制度の運用において、責任者が考えるべき最重要事項です。特に、導入から10年以上経っている会社は目的を見直し、メンテンナンスをすることをおすすめします。
③ほかの人事制度との連携を考える
自社の評価制度や教育制度などと照らし合わせて、有効活用できる可能性があるか検討してみてください。
自己申告書を受け取ったら人事担当者がやるべきこと3つ
①情報を活用可能な状態で取りまとめる
活用可能な状態とは、見たい人が見たいときに情報にアクセスできるよう保管しておくことです。申告内容は上長が見たいときもあれば、人事担当者が異動検討の際に見る場合もあります。
また、社員のキャリア意向の変化やキャリアステップを確認するためにも、経年変化を見られるとベストです。クラウドの人事管理ツールで一元管理するのが効率的でおすすめです。
②適性・キャリア志向を踏まえた異動の検討
申告内容をもとに、社員の中長期的なキャリアや能力開発を踏まえた直近の異動の検討を行いましょう。
③フィードバック面談の実施
社員に対し、今後のキャリア支援や期待することについてフィードバックし、すり合わせをしましょう。特に異動希望に沿えなかった社員に対しては、モチベーション低下の恐れがあるため丁寧な対応が必要です。
もしキャリア意識があまりにも低かったり、申告内容に現実性や客観性があまりにも欠如しているような場合は、指導の必要があります。
8.自己申告制度の企業事例
成功している企業のポイント
自己申告制度を導入して、成功している企業のポイントは次の2つです。
- 目的を明確化している
- ほかの人事制度と一緒に活用している
成功企業の事例を2つ紹介します。
① 栗田工業
栗田工業は、自己申告制度が日本で話題になった1970年代にいち早く制度を取り入れた先進的な企業です。キャリア意向を人材育成に活かすだけではなく、従業員満足度調査で現場社員の不満を吸い上げ、管理職研修に活かすなど独自の活用を行っています。そのほか、通信教育講座の受講など自己啓発機会の提供も行っている好例です。
参考 人権を尊重するクリタグループ(栗田工業)② 東京ガス
東京ガスも古くから自己申告制度を運用している企業の一つで、活用目的は社員の能力開発と適材適所です。東京ガスは教育・研修体制や人材育成制度が充実しており、組織内にキャリア開発部をおいているなど人材育成に積極的に取り組んでいる企業です。自己申告制度を人材公募制度やフリーエージェント制度と組み合わせ、異動計画やキャリア開発に活用しています。
参考 人材育成とキャリア開発活力あふれる組織の実現 | 東京ガス : 東京ガスグループ サステナビリティレポート