自己効力感とは? 自己肯定感との違い、高め方をわかりやすく

自己効力感とは、ある状況の中で必要とされる行動のこと。

たとえば、

  • 結果を出す
  • 目標を達成する

といった結果を出そうとする際「自分がうまくできるかどうか」という予期のことをいいます。

自己効力感は、

  • 測定が可能
  • 操作が可能
  • 当事者が理解しやすい概念

といった特徴を持ちます。また、自己効力感が上昇した結果、必要とされる行動を実感できるのです。

目次

1.自己効力感とは?

自己効力感とは、目標達成に必要な能力を自分が持っていると認識することです。簡単に表現すると「自信」です。具体的には、自身の能力や過去の経験から、取り組もうとしている行動に対して、「自分ならやれる」「うまくいく」と考えられる状態にあることを、自己効力感があると表現します。

自己効力感は、

  • 優越感
  • 劣等感

といった感情の発生理由を心理学的に説いたものともいえるでしょう。

自己効力感の高まりは優越感の発生に比例し、自己効力感が低くなれば劣等感が強く現れます。社会に拡散するさまざまな情報を自らの可能性としてどのように認知していくか、そのプロセスの一つといえます。

提唱者:アルバート・バンデューラ(認知心理学者)

自己効力感は、社会的認知理論の中で使用される心理学用語の一つで、スタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ博士によって提唱されました。

きっかけは、博士がさまざまな恐怖症を克服した人たちにインタビューを行ったことでした。恐怖症を克服した人たちに、ある共通点を見つけたのです。

それは恐怖症という極めて困難な病を克服することができたことから、

  • 自分は困難を克服できる
  • 自分は現状を変えることができる

と信じるようになれたというもの。このインタビューがきっかけとなり、その後の継続的な研究によって自己効力感を保持する人は、

  • 失敗
  • 困難
  • 難問

にぶつかっても、

  • チャレンジする
  • 比較的早く立ち直る

傾向にあることが証明されました。

自己効力感が高い人は、困難に立ち向かってチャレンジし、現状を打破しようという意欲的な心理になります。

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2.自己効力感の重要性

自己効力感の重要性は近年、臨床の世界だけでなく、

  • ビジネス
  • 教育
  • 予防医学
  • 産業

などさまざまな分野で認識、活用されるようになっているのです。

自己効力感が、

  • 行動変容を引き起こす客観的な先行要因になっている
  • 変容を可能とする認知的変数
  • 単なる変容に見えるが、行動変容を確実に生み出す力がある

といった特徴が、広く社会に認知されたためと考えられます。必要性を実感しても行動変容まで発展するに至らない状況が多い中、自己効力感は、確実に行動変容を生み出す効果を期待できます。

自己効力感は、実際の行動変容を生み出すことができる先行要因です。このことに対して社会が注目しています。

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3.自己効力感が高い人と低い人の特徴

自己効力感が高い人と低い人には、違いがあります。

自己効力感が高い人
  • 自分なら達成できる!
  • 自分ならできるかもしれない!
などポジティブな感覚を持って行動を起こす
自己効力感が低い人
  • きっと失敗するだろう
  • 自分ではうまくできない
と考え、行動を起こすどころかやる気すら起きないといった状況になる

この結果からも分かるとおり、自己効力感が高いほうが、良い結果を生み出すことも多いです。

自己効力感が高いとポジティブな感覚で行動を起こします。そのため、良い結果を生み出すことが多いのです。

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4.自己効力感を高めるメリットとは?

自己効力感を高めるメリットは、目標を達成するために必要な行動が取れること。目標の達成可能性も高まりますし、それ以上さらに自己効力感を高めることも可能なのです。

結果、好循環が生まれるうえに、一旦このサイクルが出来上がると、「多少の失敗があっても乗り越えていける」という強い気持ちも芽生えます。目標の達成には自己効力感が不可欠だといえるでしょう。

自己効力感が低い状態のデメリット

自己効力感が低い場合、悪循環が生まれます。

  • 自分にできるはずがない
  • きっと失敗する

といった気持ちが大きくなり、行動する意欲が減退するのです。いくら能力を有していたとしても、結果を出すことは難しいでしょう。

結果が伴わないと、

  • やっぱり自分にはできない
  • また失敗する

というネガティブな気持ちが雪だるま式に膨らみ、結果、自己効力感の低下に拍車がかかって、悪循環に陥ってしまうのです。

自己効力感を高めると目標の達成につながるだけでなく、さらに自己効力感が高まります。つまり好循環が生み出されるのです。

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5.自尊心・自己肯定感(Self-esteem)との違いは?

自己効力感に類似する言葉に、自尊心・自己肯定感(Self-esteem)があります。

  • 自尊心や自己肯定感:自分自身を信じている状態、自分を信じていると感じている程度を意味する
  • 自己効力感:目標達成に対する能力があると自分で認知するための言葉で、社会的認知理論で使用される心理学用語の一つ

目標に向かって自分をどう認知するかという意味であり、自尊心や自己肯定感とは違った意味で用いられています。

自己効力感は目標達成の能力が自分の中にあるという認知の言葉であり、自尊心・自己肯定感とは意味が異なります。

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6.社会的認知理論(社会的学習理論)と自己効力感

社会的認知理論は社会的学習理論とも共通した概念を持つ言葉で、日常の中で社会から受ける多様な情報を、われわれ人間がどのようにして認知していくか、その認知プロセスを解き明かしたものです。

そして自己効力感は、目標達成に対して自分がどのように認知していくかに焦点を当てています。つまり自己効力感は、社会的認知理論、または社会的学習理論において中核に位置する非常に重要な概念として位置付けられているのです。

日々高い目標を意識するビジネスの世界では、自己効力感をもとにした社会的認知理論の実践として多方面から注目を浴びています。

自己効力感は、社会的認知理論の中の重要な概念の一つ。自己効力感は、多方面で注目を浴びています。

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7.自己効力感の要素(行動遂行の先行要因)

自己効力感を構成する要素に、行動遂行の先行要因があります。

  • このようにやれば成功するであろう
  • 成功する方法で実行できる

といった行動遂行を導くための意識的要因のことです。下記2つの先行要因について説明しましょう。

  1. 結果予期(結果期待/outcome expectancy)
  2. 効力予期(効力期待/efficacy expectation)

①結果予期(結果期待/outcome expectancy)

1つ目は、結果予期(結果期待/outcome expectancy)。

  • 過去の経験
  • 学習済みの知識
  • 今までに積み重ねてきた見聞

といった過去のことをもとにして、特定の行動を取った際に生じる結果を予測し、今後について推測することを示す言葉です。

結果予期のビジネスにおける具体例

新入社員研修の企画について、発展性のあるカリキュラムが思いつかずに落ち込む部下を励ますにはどうすればよいのかを上司が考える場合を例に見ていきます。

  • 部下の抱えている問題について時間をかけて話を聴く
  • 自分の言葉で表現させて問題を整理させる
  • 自分自身で解決策に気付くきっかけを与える

などを、自分の経験を踏まえて考えることが結果予期です。採用活動がうまくいかず悩んでいる部下に、

  • 自分もよく利用しているSNSなどを活用した新しい募集の切り口
  • 自分や知り合いの求職活動の動き

を伝えることも、マッチングを図ろうと考える結果予期に含まれます。

②効力予期(効力期待/efficacy expectation)

2つ目は、効力予期、あるいは効力期待(efficacy expectation)です。

結果予期は、今までの経験値や見聞、実績に裏付けられた推測。それに対して効力予期は、ある結果を生み出すために必要とされる行動を、自分自身が上手に実行できると確信することを意味します。

結果予期をした場合の効力予期の例

研修カリキュラムの構成に悩む部下に対して上司は、

  • 自分の抱えている問題を言葉にして整理させる
  • 整理した内容にアドバイスを加えれば、部下は自分でまた意欲的に、立案に向けた情報収集をしてくれる
  • 自分は部下の中にある課題の本質を引き出すことができる

といった確信を持ちます。

採用活動で悩んでいる部下自身の場合、

  • 自分の就職活動の経験を思い出して採用活動に生かす
  • 求職者の立場に立った採用活動方針を立てる

などにより「幅広い分野で活躍できる人材を採用できる」といった確信を持つのです。

結果予期をしなかった場合の効力予期の例

結果予期をしなかった場合の効力予期の例を見てみましょう。

  • 研修のカリキュラムの構成をどのようなものにすればいいか決めかねている部下を励ますことができるか非常に心配だが、一人で悩ませるより一緒に考えていくことで解決策を見出すことができると考えること
  • どうしたら採用がうまくできるのか皆目見当もつかないが、求職者の意向を把握することで上手なアプローチを思いつくことができる、と部下自身が確信を持つこと

結果予期と効力予期、それぞれの特徴を理解して、自己効力感をビジネスの現場で生かせるようにしていきましょう。

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8.効力予期と結果予期の高低による影響

効力予期と結果予期の高低による影響を考えてみると、ある答えにたどり着きます。

  • 「ここまでならできる」という見通しがあれば、積極的に取り組むことができる
  • 「できるかどうか分からない」という気持ちになると、実際はできることでもあきらめてしまいがち

私たちの行動は、自己効力感によってポジティブにもネガティブにもできるのです。こうした意味で、行動変容に大きな影響力を持っていると分かるでしょう。

自己効力感をポジティブに活用して、ビジネスの発展や成功のための原動力にしていくことが理想的です。

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9.自己効力感を変化させる4つの情報源

自己効力感は、4つの情報源をもとにして一人ひとりがつくり上げていくものです。

  1. 遂行行動の達成:成功体験により達成感を持つ
  2. 代理的経験:他者が課題を遂行する行為を観察する
  3. 言語的説明:自己教示や他者からの説得的暗示
  4. 情動的喚起/生理学的状態:脈拍など生理的な反応の変化を経験する

①遂行行動の達成:成功体験により達成感を持つ

情報源の1つ目は、成功体験により達成感を持つ、すなわち遂行行動の達成です。「やったらできた!」という成功体験を持つことは、自己効力感を最も強く、また安定したものに変えます。

②代理的経験:他者が課題を遂行する行為を観察する

情報源の2つ目は、他者が課題を遂行する行為を観察すること、すなわち代理的経験です。自分以外の人の行動を見て、「これなら自分にもできるだろう」という印象を感じ取るのです。行動の観察そのものからも、自己効力感の情報源を得ることができます。

③言語的説明:自己教示や他者からの説得的暗示

情報源の3つ目の、自己教示や他者からの説得的暗示、すなわち言語的説明です。

  • 自分自身で「自分ならできる」と暗示をかけること
  • 他人から「あなたならできるでしょう」と言われること

によって、実際にやったことがなくてもできるという自信につなげます。

④情動的喚起/生理学的状態:脈拍など生理的な反応の変化を経験する

情報源の4つ目は、脈拍といった生理的な反応の変化を経験する、すなわち情動的喚起、生理学的状態です。脈拍が速まっているときは落ち着きがなくなり自己効力感が低くなります。

しかし逆に鼓動や脈拍が落ち着いているときは、冷静に物事を判断できる状態、つまり自己効力感が高まった状態だと考えられるのです。

自己効力感は、遂行行動の達成、代理的経験、言語的説明、情動的喚起や生理学的状態の4つを情報源としています。

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10.自己効力感の3つのタイプ

自己効力感は3つのタイプに分かれています。それぞれについて見ていきましょう。

  1. 自己統制的自己効力感
  2. 社会的自己効力感
  3. 学業的自己効力感

①自己統制的自己効力感の例

自己統制的自己効力感とは、自分の行動を制御する自己効力感で、たとえば「自分ならできる」という考え方のような、自分の行動をセルフコントロールできる感情のこと。

一般的に自己効力感という場合は、この自己統制的自己効力感を意味していると考えてよいでしょう。

②社会的自己効力感の例

社会的自己効力感とは対人関係に限定された自己効力感のこと。これは、乳児期から児童期といった社会性が最も発達する時期に育まれるとされています。

  • 親や祖父母との関係
  • 兄弟姉妹との関係
  • 友人やその家族との関係
  • 近所付き合い
  • 幼稚園や小学校の先生、クラスメイトの関係

などの中に自己認知能力を発達させたものです。

③学業的自己効力感の例

学業的自己効力感とは、学校などにおける学業に関する自己効力感に限定したもののこと。

  • 高い学力を保持している人物は、自己効力感が高い傾向にある
  • 学力に対して高い自己効力感があると、学習に対する満足度も高い

などが分かっており、学習や学業と自己効力感には相関関係が成り立つといわれているのです。

自己効力感には、自己統制的自己効力感、社会的自己効力感、学業的自己効力感という3つのタイプがあります。

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11.自分の自己効力感を測定するには?

自己効力感の重要性を理解するうちに、自己効力感を測定して自分がどのくらい自己効力感を保持しているか、知りたくなることでしょう。

個人の自己効力感を測る方法のうち、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)について説明します。

一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)とは?

一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)とは自己効力感の高さを測定するための質問用紙のこと。一般的な傾向を測定することを目的として開発されたもので、GSESはGeneral Self-Efficacy Scaleの略語です。

  • 理論的、実践的にも有用な認知的変数
  • 一般的な認知的傾向が測定可能
  • アセスメントで利用範囲が広い
  • 効果測定に関しても応用範囲が広い

といった特徴を持ちます。また単なる測定にとどまらず、その効果を発揮させるための職場環境整備などにも応用できるのです。

具体的な項目

一般性セルフ・エフィカシー尺度を提唱したのは、認知行動療法の権威で社会的学習理論を提唱したスタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ博士です。

博士は、私たち人間の行動を、

  1. 先行要因
  2. 結果要因
  3. 認知的要因

という3カテゴリーに分類し、自己効力感はこれらの行動を決める認知的変数になると説明しました。

そして、自己効力感を測定する項目として16個の質問を用意しました。質問はすべて「はい」「いいえ」で回答し、質問には事前に得点範囲が設定されています。「はい」「いいえ」で答えた得点が高ければ高いほど、自己効力感が高いということになるのです。

近年、一般性セルフ・エフィカシー尺度は広く認知されるようになり、ビジネスの世界以外でも、

  • 教育
  • 臨床
  • 予防医学

といった分野で幅広く活用されています。

一般性セルフ・エフィカシー尺度とは、16の質問に答えて自己効力感の高さを測定する指数のこと。

12.自己効力感を高める方法

自己効力感は、近年、さまざまな分野で注目、活用されています。この自己効力感を高める方法は、10種類あるとされているのです。

  1. 成功体験
  2. 代理体験
  3. 社会的説得
  4. 生理的・感情的状態
  5. 行動に対する意味付けや必要性
  6. 行動の方略
  7. 原因の帰属
  8. ソーシャルサポート
  9. 認知能力
  10. 健康状態

①成功体験

1つ目は、何かをうまくやり遂げた過去の体験、実績である成功体験を積むこと。自信は、自己効力感の源になっています。そのため成功した実績や体験の積み重ねが多ければ多いほど、

  • 今までもやってこられた
  • 困難な未知の問題にも立ち向かえる

といった自己効力感をより高めることが可能なのです。

ただし、

  • 平易な成功体験の積み重ねによって、落胆しやすくなったり物事を安易に考えがちになったりする
  • 自己効力感確立前に失敗しすぎると自己効力感が育まれない

といった点に注意しましょう。

②代理体験

2つ目は、他人の言動を観察することで自分の自己効力感を高め、確立する方法である代理体験です。

類似性による自己効力感の確立 「あの人にもできるのなら自分にもできる」という観察者と被観察者の類似性が自己効力感につながるもの
優位性による自己効力感の確立 「あの人よりも自分のほうが上手にできる」のように観察者が被観察者に対して優位性を感じることで自己効力感につながる

しかしどちらも自らの実体験がないため、そのことが弱点となってしまいます。

③社会的説得

3つ目は、

  • 「君ならできる」
  • 「あなたならやり遂げられる」

など、他者から励ましてもらうことで自己効力感を高める方法です。他人から高評価を受けることによって自分が思う以上の能力を発揮できるため、自己効力感の増幅が大きくなります。

しかし、他人の意見に左右されるため、

  • ネガティブな発言をされてしまうと自己効力感が一気に下がってしまう
  • 自ら成功体験を積んだわけではない

といったことも。社会からの説得だけで自己効力感を確立するのは難しいとされています。

④生理的・感情的状態

4つ目は、生理的・感情的状態です。

  • 体調を崩している日が続く
  • ストレスを感じることが多い
  • 悩みを抱えている

このような体調不良や悩み、ストレスなどを抱えている状態に関して、自分自身どのように折り合いをつけていくか、これは自己効力感に関わる問題の一つです。

  • 自己効力感が高い人は、自分自身のマイナスな状態を自己効力感を生かして対処する
  • 自己効力感の低い人は、自分のマイナスな状態に負荷を感じてしまう

この両者の進んでいく道が大きく変わることは自ずと分かるでしょう。

⑤行動に対する意味付けや必要性

5つ目は、行動に対する意味付けや必要性です。物事に取り組むときには、

  • 目的
  • 意義

を考えてから行動に移すことが重要となります。ビジネスでも、明確な目的意識を持ってプロジェクトに取り組むことは当たり前です。

自己効力感についても同様で、

  • 何のためにどのようなことを行うか
  • 取り組みに対して、自己効力感がどうして必要なのか

についての意識は非常に重要なのです。

何かを行う際に自己効力感を確立する目的を意識の中に組み込むことができれば、

  • 自身の感情
  • 困難な状況

などもコントロールしやすくなり、自己効力感を高められます。

⑥行動の方略

6つ目は、

  • 課題や問題を解決したり成し遂げたりする方法などを知っている
  • それらの解決方法を活用して実際に行動できる

ということを意味する行動の方略です。

  • 自分の力で課題を成し遂げた経験
  • 過去に経験済みであること
  • 先輩や経験者に教えてもらったことがある
  • 話を聞いたり、本で読んだりしたことで知識がある

なども方略とされています。解決方法や取り組み方法を事前に理解していれば手順に従って進めるだけで何のストレスも感じません。モチベーションも高いままで取り組むことができます。

⑦原因の帰属

7つ目は、原因の帰属です。自己効力感は、物事の成功や失敗の原因がどこにあるのかという原因の帰属に大きく影響を受けます。

たとえば、プロジェクトの成功や失敗といった結果についての原因を考えてみましょう。この場合、原因が「自分の努力の結果である」と考えるときより、「自分の高い能力の結果である」と考えたときのほうが、自己効力感を高いままキープできます。

つまり失敗でも成功でも「結果は自分の能力から起因したもの」と考えることで、自己効力感が高まるのです。

⑧ソーシャルサポート

8つ目は、ソーシャルサポートの活用です。

自己効力感は個人的なものですが、一人で取り組むことに限定した言葉ではありません。もちろん、一人で取り組み成功体験を自分の中に蓄積することも大切ですが、自分を応援してくれるサポーターが多くいることもポイントになります。

  • ソーシャルサポーターの存在を認識
  • ソーシャルサポーターとつながりを持つ

これらは、困難や課題に直面したときの問題解決に力を与えてくれるだけでなく、元来自分が持っている以上の力を発揮するきっかけにもなるのです。ソーシャルサポーターの活用は、自己効力感に不可欠だといえるでしょう。

⑨認知能力

9つ目は、過去・現在・未来といった時間軸上で、自身を振り返り、未来を予想する能力のことを指す認知能力です。

認知能力が高ければ高いほど自己効力感も高い状態を保てるという相関関係にあります。

  • 過去の自分を振り返ることで反省できる
  • 現在の自分の状況を的確に判断し、分析できる
  • 未来のリスクを事前に想像し、認知できる

など自分が取るべき言動を的確に選択していけるからです。

⑩健康状態

最後は、良好な健康状態の維持です。若いうちは健康が当たり前で何も感じないかもしれません。しかし年齢を重ねるにつれ、

  • ちょっとした体の不調
  • 加齢などによる体力の衰え
  • が出やすくなり、
  • 判断能力の低下
  • 注意力の低下

につながりますし、これらが原因で気持ちが不安定になることも増えます。さらに心身の不調は、「今の自分の健康状態ではできない」といった自己効力感の低下を生じさせてしまうのです。

健康状態と自己効力感は無関係と思いがち。しかし自己効力感を高め維持するには、健康状態の維持は大きなキーワードとなるのです。

自己効力感は、成功体験、代理体験、社会的説得、生理的・感情的状態など計10項目の影響を受けて高まります。

13.自己効力感と看護について

自己効力感は、わが国でも急激に進んでいる高齢化社会が直面している介護の世界でも、重要な概念となっています。自己効力感は介護に対してどのような関係性の中で影響を与えているのでしょう。具体例を交えて説明します。

セルフケア不足看護理論(ドロセア・オレム)

介護と自己効力感の関係を語る上でポイントになるのは、1959年から2001年にドロセア・オレム氏によって開発されたセルフケア不足看護理論です。オレム介護モデルという名前でも知られており、

  • リハビリテーション
  • プライマリケア

といった自立生活運動支援の場で活用されています。セルフケア不足看護理論とは、セルフケアの段階にあるにもかかわらずなかなかセルフケアのステップへ進めない患者に対するケアのこと。

たとえば、リハビリなどの効果によって可動域が拡大している患者が、これまで行われてきた看護師からのケアを当たり前に感じ、セルフケアを避けるケースがあります。

そのままでは機能回復の妨げになってしまうこともあるため、セルフケアが十分に機能していない患者に対して自己効力感を高めるケアを行うのです。それにより、

  • 自分でもセルフケアができるかもしれない
  • 自分でもセルフケアをやってみよう

という自己効力感をつくりだすことができます。

自己効力感の与える効果【看護における事例】

自己効力感の与える効果を看護における事例から見ていきましょう。

  • 70歳女性
  • 誤嚥性肺炎で入院したが、急激に意識レベルが低下する
  • 家族は娘夫婦がいるが共働きで日中不在

母親が入院後、急激な意識レベルの低下に陥ったことで混乱状態になった娘夫婦は、病院や看護師に対する不信感を強めていきました。

看護師もそんな娘夫婦に対して距離を置くようになり、この状況を打開しようと病院側は、アルバート・バンデューラによる自己効力感という概念に注目したのです。

  • 娘夫婦とのコミュニケーションを増やす
  • 娘夫婦に嚥下訓練や看護ケアに参加してもらう

といった試みを通して、病院と患者、娘夫婦との間で信頼関係を構築できるまでになりました。

看護師・看護学生の自己効力感

自己効力感は、ビジネス、教育、産業、予防医学などの分野でも幅広く活用されています。中でも、看護師や看護学生は、病気を抱え心身ともに弱っている患者とやりとりする必要があるため、重い問題を抱えてしまいがちです。

そんなとき看護する側が、

  • 私なら患者との人間関係を構築できる
  • 私なら患者さんのニーズを汲み取ることができる
  • 患者一人ひとりに適したケアを実施できる

という自己効力感を持つことができれば、看護やケアのトラブルが軽減し円滑に運ぶようになるでしょう。

自己効力感はさまざまな分野で注目されており、看護の世界ではひときわ果たす役割が大きくなっています。