セルフメディケーションとは、市販薬を活用しながら自分の健康を維持することです。ここではセルフメディケーションについて、解説します。
目次
1.セルフメディケーションとは?
セルフメディケーションとは、自分の健康状態を日頃から把握して生活習慣の改善に取り組み、市販薬を活用しながら軽微な症状を自らケアすること。
現代社会は、「医療の進歩などで高齢化が進み、平均寿命が長くなっている」「高齢化や食生活の欧米化が進み、生活習慣病が増えている」といった新たなステージを迎えています。
セルフメディケーションはこれらを社会的背景とし、健康に生きるための取り組みのひとつとして注目を集めているのです。
WHOの定義
世界保健機関の定義によるセルフメディケーションは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」。定義から、日頃からのこまめなセルフメンテナンスが重要だとわかります。
2.セルフメディケーション税制
健康診断受診者が市販薬を購入した際に受けられる所得控除のことです。医療費控除とともに解説します。
医療費控除の特例
医療費控除の特例は、健康の維持増進や疾病の予防に対する取り組みの一貫として設けられました。取り組みを行っている個人が、スイッチOTC医薬品を購入した際の費用について、所得控除を受けられる制度です。
セルフメディケーション税制が導入された背景
セルフメディケーション税制が導入された背景には、年々上昇していく医療費があります。国民医療費は今や40兆円を超え、その額は年々増加し、財政を圧迫する大きな原因ともなっています。
今後はいかに医療費を削減していくかが大きな課題といえるので。そこでセルフメディケーションに税制優遇を設け、医療費のを目指しました。
従来の医療費控除とセルフメディケーション税制の違い
従来の医療費控除とセルフメディケーション税制との違いは、下記のとおりです。
- 医療費控除額:「その年に支払った医療費の総額-保険金等で補填される金額)-(10万円または総所得金額等の合計額の5%のいずれか少ない額)」で、控除限度額は200万円
- セルフメディケーション税制の控除額:「(その年に支払ったスイッチOTC薬の総額-保険金等で補填される金額)-1万2千円」で、控除限度額は8万8千円
医療費控除との選択が可能
セルフメディケーション税制は、医療費控除との選択が可能です。
仮にスイッチOTC医薬品購入費以外の医療費の額が10万円と総所得金額等の5%相当額、いずれか低いほうの金額である適用下限額を超えても、セルフメディケーション税制と従来の医療費控除は併用して受けられません。
3.セルフメディケーション税制のメリット
ここではセルフメディケーション税制のメリットについて、解説します。
- 税負担を減らせる
- 健康増進につながる
- 気軽に活用できる
①税負担を減らせる
セルフメディケーション税制を利用すれば、スイッチOTC医薬品購入額の1万2千円を超過した額が所得から引かれます。課税対象から減額されるため、税負担を減らせるのです。
②健康増進につながる
セルフメディケーションは、自身の健康に責任を持つ・軽度な不調を自身で手当てすること。そのためセルフメディケーションの利用は、健康保持・増進につながります。
③気軽に活用できる
セルフメディケーション税制の対象は、市販されている薬です。通院といった手続きなくスイッチOTC医薬品を購入するだけで、セルフメディケーション税制の対象になる気軽さがあります。
4.セルフメディケーション税制の仕組み
セルフメディケーション税制の仕組みには、さまざまな条件があります。ここではセルフメディケーション税制の仕組みについて、解説しましょう。
- 控除を受けられる条件
- 対象期間
- 対象の医薬品
- 対象金額
- 申請方法
- 申告時の必要書類
①控除を受けられる条件
セルフメディケーション税制の控除を受けられる対象条件は、下記のとおりです。
- 所得税・住民税を納めている
- 健康の維持増進・疾病予防への取り組みとして、申告者が申告対象となる一年間、特定健康診査といった所定の検査や検診のいずれかを受けている
②対象期間
セルフメディケーション税制の対象期間は、各年の1月1日~12月31日までの一年間。セルフメディケーション税制は医療費控除などと同様、年度単位で計算しない点に注意しましょう。
③対象の医薬品
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、薬局やドラッグストアなどで購入できるスイッチOTC医薬品です。「パッケージにマークが記載されている」「レシートの商品名の先頭にマークがついている」ので、税制対象だとわかります。
④対象金額
1月1日~12月31日の間に購入した、対象となるスイッチOTC医薬品の合計金額が1万2千円を超えると、セルフメディケーション税制の対象金額になります。上限は、8万8千円です。
⑤申請方法
必要書類を準備したあと、近くの税務署や国税庁のホームページでセルフメディケーション税制を申請します。書類の記入漏れや添付書類の抜けがないよう、あらかじめチェックしておきましょう。
⑥申告時の必要書類
セルフメディケーション税制を申告する際に必要な書類は、下記のとおりです。
- セルフメディケーション税制の明細書
- 本人が健康の維持増進および疾病予防への一定の取り組みを行ったと、明らかにする書類
様式は、国税庁のホームページよりダウンロードできます。
5.セルフメディケーション税制の明細書の書き方
セルフメディケーション税制の明細書はどう書くのでしょう。4点から解説します。
- 住所・氏名
- 申告する方の健康の保持増進および疾病の予防への取組
- 特定一般用医薬品等購入費の明細
- 計算方法
①住所・氏名
セルフメディケーション税制の明細書の右上に住所と氏名を書く欄があります。所定の欄に、自身の氏名、住所を記載します。
②申告する方の健康の保持増進および疾病の予防への取組
明細書に記載されている取組のら、該当する・健康の保持増進・疾病の予防への取組を記載することです。取組にチェックマークをつけます。
③特定一般用医薬品等購入費の明細
スイッチOTC医薬品を購入した薬局やドラッグストアの名称・購入済みの医薬品名を、記載します。
④計算方法
計算方法は、「実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の総額-保険金などで補填される金額-1万2千円」。控除額の上限は、8万8千円です。
6.セルフメディケーションに関するよくある疑問
セルフメディケーションに関するよくある疑問を3つ解説します。
- 提出する証明書類はコピーでもいい?
- 健診結果を知られたくないときはどうする?
- 領収書の保管は必要?
①提出する証明書類はコピーでもいい?
提出する証明書類は基本、原本を提出します。提出書類の詳細は下記のとおりです。
- 証明書類として領収書を提出する場合、原本を提出する
- 結果通知表は、コピーでの提出も可能
②健診結果を知られたくないときはどうする?
結果通知表を添付書類として提出する際結果を知られたくない場合は、結果部分を黒塗りにしたり結果部分のみを切り取ったりしましょう。
③領収書の保管は必要?
セルフメディケーション税制を利用する場合、領収書の保管が必要です。確定申告期限の翌日から5年を経過する日までの間、OTC医薬品を購入したと証明する領収書を保管しておかなければならないとなっています。