社内報とは「企業が社内に向けて発行する刊行物」のこと。ここでは社内報の目的や作り方、運用のポイントを解説します。
1.社内報とは?
社内報とは、企業が発行する刊行物のこと。社内報を発行する主な目的は「経営理念や社内情報の共有」「社員のモチベーションの向上」「社員間のコミュニケーションの促進」です。
従来は新聞や冊子のような「紙媒体」で発行されるのが一般的でした。近年、Web環境の発達により、動画や音声メッセージなどを「デジタル媒体」で発信する企業が増加しています。
英語表記
社内報を意味する英語は複数あり、発行する企業によって異なります。一般的に使われている英語表記は下記のとおりです。
- a house magazine
- a house organ
- in‐house newsletters
- a house journal
- company newsletter
2.社内報の目的
多くの企業が社内報を発行する目的はさまざま。ここでは企業が社内報を発行する主な目的について説明します。
- 情報共有
- 社員のモチベーションアップ
- 社内コミュニケーションの活性化
- 家族や就活生へのアピール
①情報共有
もっとも大きな目的は、社内の情報を共有すること。「企業理念」「経営戦略」「仕事の方向性」など、経営陣が社員に伝えたいメッセージを効果的に発信できます。社内報は全社員が閲覧可能であるため、これらの浸透にも効果的です。
また各部署の業務内容や成果をわかりやすく発信すれば、社員は所属部署以外の情報を得られます。部署間の連携、ひいては組織の全体像や現状などの理解も深まるでしょう。
②社員のモチベーションアップ
社員の業績や社内外での活躍を社内報で取り上げると、読んだ社員の意識改革やモチベーションの向上が期待できます。同じ会社で働く仲間の活動や取り組みを知ると、刺激や気づきを得られて視野が広がるからです。
また自社の社会貢献の様子や製品の良さを積極的に伝えれば、会社への愛着や誇りが社員に芽生え、エンゲージメントも高まるでしょう。
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③社内コミュニケーションの活性化
社員共通の話題である社内イベントや、社内部活動などの様子を発信すると社員間の会話が広がり、コミュニケーションの活性化が期待できます。相談や提案などもしやすくなり、チームワークの向上にもつながるでしょう。
また社内報で社内全員が同じ情報を共有するため、社員間での情報格差を減らせます。情報不足によるトラブルや二度手間を回避でき、チーム作業の効率化も可能です。
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④家族や就活生へのアピール
社内報には自社のビジョンや方針、業務内容や職場環境などが書かれることもあります。そのため家族や就活生などが社内報を見ると、自社への理解が深まるのです。
たとえば社員の親は、自分の子どもがどのような会社で働いているかを知れるため、企業に対して親近感や信頼感を持てます。
その企業で働く子を親が応援するようになれば、社員は安心して働けるでしょう。またリアルな社内の様子をわかりやすく伝える社内報は、就活生へのアピールにも有効です。
3.社内報で使えるジャンル別ネタ50選
社内報で取り上げる内容は「興味をもって読まれるか」「どのような効果が期待できるか」から考えるのがコツです。ここでは社内報で使えるネタをジャンル別に紹介します。
- 会社情報紹介や社長メッセージ
- 自己紹介
- 新入社員紹介
- 社員紹介
- 部署紹介
- 抱負
- 社内や社外のイベント
- 季節
- 時事
- 箸休め
①会社情報紹介や社長メッセージ
多くの企業では経営陣と一般社員が会話をする機会は、ほとんどありません。経営理念や方針を定期的に発信すれば、社員の理解が深まり全社に浸透しやすくなります。また社内の最新情報や連絡事項など、全社員が知っておくべきネタも取り入れましょう。
【ネタの例】
- 社長メッセージ・役員コラム
- 新役職者の運営指針発表
- 自社が直面している問題についての意見表明
- 内定式・入社式の案内
- 新製品・新サービス紹介
②自己紹介
社内報の定番ネタである自己紹介は社員同士の意外な共通点が見つかり、コミュニケーションの起点になるコンテンツです。普段接する機会の少ない経営陣やほかの部署で働く人の人柄を知り、社員同士のつながりを深める効果が期待できます。
【ネタの例】
- 私の子供時代
- 私の「好きすぎる」こと(趣味、特技)
- 私のオフの過ごしかた
- 私の座右の銘・好きな言葉
- 新任管理職の自己紹介
③新入社員紹介
フレッシュな新入社員の紹介は、その人柄を全社員に知ってもらうきっかけになります。また就活生に見せると、「この企業で働きはじめたときの自分」をイメージしやすくなり、応募へのモチベーションを高められるでしょう。
【ネタの例】
- 新入社員の過去の成功体験
- 新入社員同士の紹介
- 新入社員がつなぐ、ひとこと夢リレー
- 新人さんいらっしゃい! 新入社員の意気込みを聞きました
- 私、実はこんなギャップを持っています
④社員紹介
身近な人を紹介する記事には多くの社員が興味を持ちます。たとえば自分が載っている記事はもちろん「同じ部署の同僚」や「プロジェクトで組んだ仲間」「社食で見かけるあの人」など。
とくに複数の支社を持つ企業では、ほかの拠点で働く社員を紹介すると離れていても自社の社員という意識が生まれるでしょう。
【ネタの例】
- 推しメン紹介(部署自慢のメンバーを紹介)
- あなたへの感謝状(感謝を伝えるメッセージ企画)
- 注目社員の1日密着レポート
- 入社同期組紹介
- 社員の家族・ペット紹介
⑤部署紹介
普段自分と接点のない他部署では、どのような人がどのような仕事をしているのかがわからないもの。これらの点をわかりやすく発信する部署紹介記事は、部署間の連携強化や就活生へのアプローチに有効です。
【ネタの例】
- 新設部署、部門の紹介
- 異部署交流座談会
- 注目部署の1日密着レポート
- あなたの部署のお仕事、もっと教えて
- ●●のことなら●●部に聞け
⑥抱負
自己紹介とは別に社員の抱負や意気込みを自由に発信すると、全体の士気があがりやすくなります。新年度や新プロジェクト立ち上げといったタイミングで抱負や目標を掲げるのも効果的です。
硬い印象になり過ぎないよう、イラストを多用したり写真に吹きだしを付けたりすると、読みやすい記事になります。
【ネタの例】
- 新入社員の抱負
- 新年度の抱負
- 年男年女の抱負
- 社長の抱負
- 年末の所管と新年の抱負
⑦社内や社外のイベント
社内イベントについての記事は、自社の記録ともなります。過去記事を振り返り、新しいイベントを企画する際の参考にするのも可能です。多くの社員が参加したイベントなら、舞台裏を紹介すれば興味を持って読んでもらえるでしょう。
【ネタの例】
- 研修旅行レポート
- 入社式レポート
- 忘年会レポート
- アワード授賞式レポート
- 全社会議レポート
⑧季節
季節に関する記事は、誰にでも共感して読んでもらえるテーマです。季節と社内で話題になる要素を絡めて、気軽に楽しく読めるコラムにしましょう。
【ネタの例】
- 最新の新生活アイテム、入学式のエピソード
- 梅雨の乗り切り方、今年の父の日トレンド
- 夏休みの計画、夏季休暇に向けた社内制度の紹介
- 内定式の様子、ハロウィントレンド予測
- バレンタイン特集、感染症予防のコツ
⑨時事
オリンピックやワールドカップなどの大型スポーツイベントや、新型コロナウイルス、テレワークなどの時事ネタは多くの人の興味を引くテーマです。時事ネタに業界のトレンドを絡める記事なら、さらに社員の好奇心を刺激するでしょう。
【ネタの例】
- オリンピック、ワールドカップ、祭り、サミットなど期間限定イベントの詳細や感想
- 新型コロナに関する情報
- 今年の10大ニュース
- 今話題の本・映画・ドラマなどの詳細や感想
- 所属業界で話題のニュース
⑩箸休め
親近感を持って毎号楽しみに読んでもらうには、箸休め企画も必要です。「読めば笑顔になるもの」「思わず好奇心をくすぐられるもの」など、仕事と関係ない内容でも問題ありません。
【ネタの例】
- ときめく!あがる!気持ちが高まるご当地スイーツ
- わたしは断然〇〇派!社内白熱討論会
- 言い得て妙!〇〇川柳
- 今なら笑える&今でも笑えない私の小さな大失敗
- 何気ないけど気になることを本気で調べてみました
4.社内報の作り方
社内報を作る際、どのように進めていけばよいのでしょう。ここでは社内報の作成手順について説明します。
- 発行する目的を決める
- 企画
- スケジュールと担当者の決定
- アウトラインの作成
- 執筆や撮影の実施
- 原稿やデザインの確認
- 発行や公開
①発行する目的を決める
社内報は、作る目的によって「記事の内容」「デザイン」「構成」が異なります。方向性を定めるためにも最初に、発行目的を明確にしましょう。たとえば以下のような目的があります。
- 社員間の関係を構築してコミュニケーションを深める
- 社員のモチベーションを向上させる
- 社内の情報を全社員が公平に共有する
- 企業ブランディングや人材確保に活用する
②企画
決定した目的に沿って、社内報に掲載する企画内容を決めます。まず「何を伝えるか」を考えてテーマを選定し、次に「どのように伝えるか」を検討するという流れです。
企画を決める際は「伝えたい情報」の資料と「伝え方」の参考になる雑誌やWeb媒体を準備しておくとスムーズに進められます。日ごろから社内の話題に常にアンテナを張って、ネタを集めておきましょう。
企画段階で確認
企業としての方向性や経営陣の考えが正しく伝わる内容かどうか、企画段階で上司の意向を確認します。社内報は企業のブランディングや、求職者へのアプローチにも活用されるツールだからです。
社内だけにとどまらず、取引先や顧客、就活生など外部の目に触れる場合もあるため、記載する情報には充分注意しなければなりません。
③スケジュールと担当者の決定
企画内容が決定したら、インタビューやコラム制作など、コンテンツを作るために必要な時間を見積り、具体的なスケジュールを決定しましょう。
紙媒体の場合は「原稿執筆」「編集」「校正」のほかに「印刷にかかる時間」を、動画や音声メッセージで発信する場合は「台本作成」「収録」だけでなく「収録後の編集にかかる時間」を含めて日程を計算します。
担当者の割り振りを決める際は、社内報全体のボリュームだけでなく、担当者の業務負担もふまえて決定しましょう。
④アウトラインの作成
執筆に入る前、社内報の全体像を設定します。最初にアウトラインを明確にしておくと、認識の相違による無駄な作業を回避できるからです。
具体的には、まず「記事のボリューム」「企画の数」「記事の基本構成」「メインとする企画」などの構成を決定。そのあと「どの企画をどこに配置するのか」「写真や原稿の位置」などをラフデザイン案に起こし、おおむねのレイアウトを確認します。
⑤執筆や撮影の実施
執筆前に、コンテンツごとに必要な情報を収集します。取材やインタビュー、写真や動画の撮影を行う際は、余裕を持った日程でアポイントを取りましょう。
記事執筆や撮影を外部へ依頼する場合、企画の趣旨と方向性を伝え、締め切りや報酬などを決めなければなりません。 伝達ミスによる不要なトラブルを防ぐためにも、依頼内容を書面に記して相手に渡しましょう。
⑥原稿やデザインの確認
「読者の目線から読みやすいか」「興味を持ってもらえるか」といった視点で、文字の大きさや行間、写真、デザインのレイアウトを確認。
必要に応じて文章の校正や修正、写真や音声などのデータへ編集や加工などを行い、最後に全体をとおして「内容に誤りがないか」「情報に不備はないか」を最終チェックします。ただし1人では見落としが起きやすいため、最終確認作業は複数人で行いましょう。
⑦発行や公開
確認作業が終わったら、紙媒体の場合は印刷を実施。社内で印刷するか印刷会社に依頼するかは、予算や時間などに応じて決定しましょう。デジタル媒体の場合、指定場所にアップロードすれば完了です。
社内報の発行あるいは公開後は、多くの社員に読んでもらえるように社内SNSや掲示板などで積極的にアナウンスします。
5.社内報運用のポイント
定期的に社内報を作るなら、継続しやすい運用体制を作りましょう。ここでは4つのポイントについて説明します。
- 適した媒体の選定
- 担当者と発行頻度の決定
- 興味を惹くコンテンツの準備
- 運用体制の整備
①適した媒体の選定
社内報を発信する媒体には「紙媒体」と「デジタル媒体」があります。それぞれの特徴をふまえて、自社に合った媒体を選択するとよいでしょう。
紙媒体のメリットは「デザインやレイアウトの自由度が高い」「手元に置いて何度も読み返せる」という点、デメリットには「印刷のコストがかかる」「閲覧数を把握しにくい」という点が挙げられます。
一方、デジタル媒体は「PCやスマホからいつでもアクセスできる」「閲覧数を把握しやすい」という点がメリット、「興味のある記事しか読まれない」「PCに不慣れな社員に周知されにくい」などの点がデメリットです。
②担当者と発行頻度の決定
社員の興味や関心を引くためにも、発行頻度は可能な限り高くして、情報を新鮮なうちに届けましょう。
しかし総務や広報などの業務の片手間に行われることも多いのが、社内報の運営の現状。「時間」「労力」「コスト」がかかる業務なので、担当者は持ち回り制にし、業務に支障が出ない程度の記事数を割り当てましょう。
③興味を惹くコンテンツの準備
社内報の内容は、発行する目的によって変わります。しかし最も大切なことは、読み手である社員が興味を持つコンテンツを準備すること。
たとえば自社の活動方針や達成目標を説明するコンテンツでは、難解なビジネス用語はさけて、一般の社員にもわかりやすい言葉を選ぶと読んでもらいやすくなります。
社内報の話題で盛り上がり、社員のコミュニケーションが活性化するようなコンテンツを目指しましょう。
④運用体制の整備
社内報の運用は、基本的には社内のリソースで進めます。スムーズに制作するために、日頃から各部門との協力体制や情報を収集する体制を整え、確認や承認、制作などのフローも明確にしておきましょう。
社内報の制作に多くの部門がかかわるほど、社員の認知度が高まる効果もあります。自社での運用体制が整わないうちは、デザインや編集などを信頼できる専門の外部業者に依頼するのもよいでしょう。
6.社内報の成功事例
多くの社員に愛着をもって読まれている社内報を発行している企業の事例は、自社で社内報運営に取り組む際、参考にできます。ここでは社内報の成功事例を2つ紹介しましょう。
ニトリホールディングス
創業1967年のニトリが社内報の発行を開始したのは1979年のこと。それ以来、途切れることなく40年以上も紙媒体の社内報を毎月発行してきました。
最大の特徴は、企画から執筆までほとんどを自社で行っている点。同じ会社で働く仲間が書くリアルな記事だからこそ、社員の心にまっすぐに届くのでしょう。
またニトリは「ニトリン」というWebメディアも運営しています。こちらは企業や社員の想いを外部に向けて発信しており、企業ブランドの向上や人材確保に効果を上げています。
マクロミル
マクロミルの社内報の特徴は、紙媒体とデジタル媒体をそれぞれの利点を使い分けていること。
紙媒体の冊子では、経営陣の日常を取材したコンテンツなど、職場では見られない貴重な素顔を紹介。一方デジタル媒体では、Webメディアの特徴を生かして最新の情報を毎日更新しています。
またデジタル媒体では、「感謝を伝えたい人」「成長した人」など、社員にスポットを当てた特集企画も掲載。紙媒体は広報誌として社外でも活用され、採用やブランディングにも役立っているのです。