資金繰りとは?【簡単に】融資と出資のメリット・デメリット

資金繰りとは、その名のとおり資金の流れをコントロールすることです。ここでは資金繰りに必要なものやメリット・デメリット、資金繰り表などについて解説します。

1.資金繰りとは?

資金繰りとは、会社の収入と支出を管理して収支の過不足を調整すること。一般的には「お金を工面する」「資金調達のために融資元を探し回る」といったように、どちらかといえばネガティブなイメージを持たれがちでしょう。

また「資金繰りをしているから、会社の経営状態が悪いのだろう」と思われる場合も少なからずあります。しかしこれは誤解なのです。会社を継続、また成長させるためには、資金繰りを行い借入金の支払いが滞らないよう気を付けなければなりません。

資金=利益ではない

続いて念頭に置いておきたいのが「資金=利益」ではない点。言葉の意味は後述するものの、会計上の利益は必ずしも利益だけを表すわけではありません。そのため利益と実際の現金は一致しないのです。

  • 例1:1月に売上が発生して3月に入金があった場合、経理処理上は売上と利益が計上されるものの、資金は増えていない
  • 例2:100万円の設備を購入して翌月に現金100万円を支払った場合、経理上は減価償却として数年にわたって処理される

資金とは?

「資金」とは、事業の元手や経営のために使用される金銭のこと。以下に挙げるとおり、会社としてすぐに支払いに利用できるものを指します。

  • 現金
  • 当座預金
  • 普通預金
  • 通知預金
  • 定期預金
  • 譲渡性預金
  • 売戻し条件付き現金
  • コマーシャルペーパー
  • 公社債投資信託

利益とは?

「利益」とは、収益から費用を差し引いたもの。最終的に得られる利益はひとつではあるものの、段階ごとに次の5つに分かれるのです。

  1. 売上総利益:商品をつくったり仕入れたりするのにかかったコストと売上の差額。現場では一般的に「粗利」と呼ばれる
  2. 営業利益:売上総利益のうち、売上原価に含まれなかった販売管理費を差し引いた利益
  3. 経常利益:事業全体から経常的に得た利益
  4. 税引き前当期利益:支払う税金を差し引く前の利益
  5. 当期純利益:費用や法人税などを差し引いて最終的に残った利益

キャッシュフローとは?

キャッシュフローとは、資金繰りと同じく現金出入りの流れを把握すること。意味合いは同じですが、流れを把握する目的が異なります。

  • 資金繰り:将来的なお金の出入りを予測し、今後の方針や戦略に使用するもの。将来の設計
  • キャッシュフロー:決算の数字に基づいて財務内容を分析するもの。実績の報告

資金と利益の特徴を区別して「資金繰り」の正しい意味を見直しておきましょう。資金=利益と誤解したままだと、経理処理=資金繰りの管理と勘違いしてしまいます

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2.資金繰りに必要なもの

「資金繰り」という言葉の意味を理解したところで、実際に必要な要素を見ていきましょう。資金繰りには「融資」と「出資」の2つがひんぱんに出てきます。それぞれの言葉の意味や相違点について解説しましょう。

融資とは?

「融資」とは、銀行などの金融機関や投資家からお金を借りること。身近な言葉に言い換えるなら「借金」です。個人の場合は自宅や車を購入するためのローンが融資に、法人の場合は設備の購入資金や運転資金の調達が融資に当たります。

会社の運営には当然、お金が必要です。たとえば病院を開くには病院施設を建てたり、必要な医療器具を買い揃えたりしなければなりません。

しかしこれらに必要な資金をはじめから個人で用意できる人はほとんどいないでしょう。そこで銀行といった金融機関から「融資」をしてもらい、必要設備に投資する資金を準備します。

出資とは?

「出資」とは、事業の成功に期待し、経営に参画すること。成長に意欲的で活発的なベンチャー企業などが出資を募る傾向にあります。

出資手法として挙げられるのは個人投資家やベンチャーキャピタル、クラウドファンディングなど。融資は返さなければいけないお金ですが、出資は返さなくてもよいお金です。

しかしこれはあくまで調達側の考え。出資者は出資した金額以上のリターンを求めています。また新株の発行や増資引受先の確保なども必要です。

融資と出資はどちらも資金を調達するという意味合いでは同じといえます。端的にいえば、融資は返すもの、出資は返さなくてもいいもの、と区別できるでしょう

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3.融資と出資のメリット・デメリット

返さなければならない「融資」と、返さなくてもよい「資金」の関係について、もう少し掘り下げてみましょう。融資と出資、会社にとってどちらが有利になるのでしょう。ここでは融資と資金それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

融資のメリット

融資のメリットは3つです。

  • 経営権(株式)を渡す必要がない:経営の自由度を保持したまま資金調達が可能
  • 低金利で融資を受けるのも可能:審査さえとおれば公的機関から低金利で融資を受けられる
  • 必要最低限の金銭だけを受けられる:調達側から必要な金額を申し込んで審査を受けるため、必要以上の金銭を受ける心配がない

融資額は企業の信用や返済力によって上下します。信用を重ねていけばより大きなお金を集められるでしょう。

融資のデメリット

一方、融資には次のようなデメリットが存在します。

  • 基本、毎月の返済義務が生じる:多くの場合、一定の期間ごとに借入金額を分割して返済する「分割返済」。経済状況や事業の特徴によって返済期限に全額一括で返済する「期日一括返済」の選択も可能
  • 返済には利子の上乗せが必要:審査や契約状況によって前後するものの一般的には、年数%から10%程度の利子(利息)がかかる
  • 審査条件が厳しい場合も:特にスタートアップ直後の企業は担保を持たず、信用も低いため希望どおりの金額を借りられない場合もある

出資のメリット

続いて、出資のメリットについて見ていきましょう。出資のメリットは以下のとおりです。

  • 原則、返済義務がない:出資は株主の購入と引き換えに行われるため、返済の必要がない。純粋に利益を出すことだけに注力することが可能
  • 利息の発生がない:利益が出た場合は「配当(利益や剰余金の分割、建設利息の支払いなど)」を行う必要がある
  • 投資家との人的つながり、信頼を得ているという自信が生まれる:投資家からの情報提供や業務提携などの支援も期待できる

出資のデメリット

もちろん出資には、いくつかのデメリットも存在します。

  • 投資してくれる先を見つけるのが困難:事業に際立った部分がなければ、ベンチャーキャピタルや投資家の目に留まるのは難しい。投資したくなるような事業計画をプレゼンする必要がある
  • 高度な経営判断が必要になる場合もある:株式投資の場合、出資額に応じて株式を発行するため、経営の自由度が下がりやすい。場合によっては経営権を外部に握られる危険も

会社経営は融資を受けるもの

必要な資金をあらかじめすべて用意できれば融資も出資を受ける必要はありません。しかし現実的な話として難しいものがあります。資金を融資もしくは出資で前借し、その資金で会社経営を進めていくのが一般的です。

資金繰りとしては融資よりも出資のほうが楽に見えるでしょう。しかしよほど強い人脈や期待できる事業案がプレゼンできない限り、難しいのが現実です。

融資と出資、資金繰りの方法としてお金を手元に置いておくという意味では同じとなります。現実的な問題から、一般的には出資より融資を受けるほうが多いです

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4.忘れてはいけない資金繰り表

「資金繰り表」とは、その名のとおり会社の資金繰り状況を表した表のこと。売上による入金や仕入れなどによる出金にもとづいて、損益計画書では分からないお金の出入りを把握します。

ここではこの「資金繰り表」の必要性や、資金繰り表を構成する項目について見ていきましょう。

資金繰り表はなぜ必要か

資金繰りがうまくいかないと、損益計算書上に利益があっても倒産する、つまり黒字倒産に陥る場合もあります。資金繰り表では企業の収入と支出を集計し、さらに可視化。資金繰り表の作成により、資金不足の防止や資金繰り計画の改善に役立てられるのです。

資金繰り表を使えば、事前に自社のキャッシュフローを把握できます。資金繰り表を作成し、資金化していない資金を見直すと、一気に資金繰りが改善できるかもしれません。

資金繰り表に入れる最低限必要な項目とは?

資金繰り表には2つのタイプがあります。

  • 実績資金繰り表:過去の実績にもとづいて記載し、将来的なキャッシュフローを予測する
  • 予定資金繰り表:過去の収支にもとづいて記載し、将来の出入金を予測する

どちらの場合も、資金繰り表を作成する際は次に挙げる4項目の意味を理解しておきましょう。

  1. 営業収支
  2. 経常収支
  3. 経常外収支
  4. 財務収支

①営業収支

「営業収支」とは、事業のなかでどれだけ現金の売上および支出をしているかを表したもの。営業収支における利益は、以下の計算式から算出できます。

営業収支=売上総利益(営業収入、つまり売上高から売上原価を差し引いたもの)-販売費および一般管理費(商品仕入れ代以外の費用)

この営業収支がプラスであれば、単純に資金が安定しているといえます。

②経常収支

「経常収支」とは、事業以外の財務活動で収支したお金を表したもの。借入金の返済や利息の支払いなどをここに記載するのです。経常収支は次の計算式から算出できます。

経常収支=営業収支+営業外収支-営業外費用

経常収支は、企業の経営成績を特に把握しやすい項目といわれているのです。経常収支と前述した営業収支がプラスになれば、企業の経営状態は良い方向に進んでいるといえるでしょう。

③経常外収支

一方業務の収支に直接かかわらない設備投資費や税金の支払いなどは「経常外収支」として記載します。これらは多くの場合毎月発生するものではないため、1回の金額は必然的に増える形になるのです。

必要器材の購入や設備補修などの金額によっては、この経常外収支が大きなマイナスになる場合も。また資金繰りが難しくなると経常外収入の動きが大きくなる傾向にあります。

④財務収支

財務収支とは、借入金の調達と返済のこと。銀行からの借入額や返済額を記載します(借入金の返済額はマイナスとして記載)。

財務収支がプラスになっていれば、借入額(返済すべきお金)が増えています。つまり経営が厳しくなっているという意味なのです。担当者はこの項目がプラスばかりにならないよう、つねに確認しておく必要があります。

資金繰り表は資金不足の防止、および今後の資金繰り計画の改善に必要な表です。記入項目の意味をそれぞれ正しく理解して、黒字倒産を防ぎましょう

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5.資金繰りは悪化すると黒字でも倒産の可能性あり?

事業を行うためのお金が足りない状況を「資金繰りの悪化」といいます。資金繰り悪化の原因は「入るお金より支払うお金が多い」「入金前に支払いが来る」の2つです。資金繰りの悪化は「黒字倒産」を招きます。

黒字倒産とは?

黒字倒産とは、損益計算書上利益が出て黒字の状態にあるにもかかわらず、資金繰りが悪化して倒産してしまうこと。つまりキャッシュフローが尽きて倒産することを意味しているのです。

損益計算書では、1事業年度で会社が儲かったのか、もしくは損をしたのかが分かります。しかしここでは結果のみが記載されているため、実のところ資金繰りがうまくいっているかどうかは判断できません。

支払いが先になってしまったり、入金が遅れたりすると、手元に残る資金がどんどん少なくなり、実質の倒産状態になるのです。

黒字倒産の原因

黒字倒産が起きる最大の理由は「手元資金の消滅」。「勘定合って銭足らず」という言葉を知っているでしょうか。これは帳簿上利益が出ているにもかかわらず、手元に資金が残っていない、つまり黒字倒産の状態です。

たとえば今手元に100万円あるとしましょう。ここで80万円の商品を仕入れ、120万円で売ったとした場合、決算書上は40万円の黒字になります。しかし商品の支払いは3か月後。つまり3カ月間は残った20万円でやりくりしなければなりません。

ここに新商品の購入や給与の支払い、事務所家賃の支払いなどが重なります。こうして払わなければならないのにお金がない、つまり黒字倒産となってしまうのです。

黒字倒産を防ぐには

帳簿上に利益があっても、手元の資金で支払いきれなくなったときに黒字倒産は起こります。黒字倒産に陥らないためには、どのような対策が必要なのでしょうか。ここでは黒字倒産を防ぐポイントについて解説します。

意識的にキャッシュフローしておく

先に述べたとおり、キャッシュフローとは過去のお金の流れを把握するもの。今期の結果をもとに来期はどうすればよいのか、といったように長期的な目標を立てる際に役立つのです。

「キャッシュフロー経営」という言葉があります。財務状況を把握する際は、貸借対照表や損益計算書だけでなくキャッシュフロー計算書を確認し、どれだけの資金が手元に残っているか、意識して確認しておきましょう。

資金繰り表を作成

黒字倒産を防ぐには「損益計算書」と「貸借対照表」の知識も必要です。

  • 損益計算書:収益、費用、利益を記載して会社の利益を知るための決算書
  • 貸借対照表:決算日時点での財政状況をあらわす決算書

これらの意味を理解したうえで資金繰り表を作成し、こまめに記載しておけば、ある程度今後の見通しを立てたうえで黒字倒産を防げます。資金繰り表を活用して、つねに自社の資金繰り状況を把握しておきましょう。

対策をあらかじめ考えておく

資金繰り表を作成すると、自社の資金繰り状況の把握、また効果的なコントロールが可能です。資金繰り表から将来的な資金の余裕が分かれば、早い段階で次の事業活動へ投資できるでしょう。

もちろんキャッシュフローや資金繰り表を分析して資金不足を知るだけでは黒字倒産を防げません。不足分をどこから新たに生み出すか、具体的な対策も必要です。

資金繰り表の活用、およびキャッシュフローの健全化が黒字倒産を防ぐ鍵となります