進捗管理とは、計画と現状のズレを管理すること。今回は進捗管理の意味や重要性、メリットや失敗する原因、方法や無料ツールなどを解説します。
目次
1.進捗管理とは?
進捗管理とは、計画と現状のズレを把握し、適切な対策を講じること。物事の進み具合を示す「進捗」に、取り仕切ることを意味する「管理」を合わせた言葉で、「しんちょくかんり」と読みます。
進捗管理の内容や手法は、業種によって大きく異なり、統一されていません。たとえば製造業界・IT業界では、品質管理の一手段として、進捗管理が取り入れられています。
進捗管理の英語表記
進捗管理を英語で表すと、「Progress Management」。「Progress」は進展や前進、「Management」は管理や経営を意味する英単語です。
2.進捗管理が重要な理由
進捗管理が重要視されるのは、限られた資源で期限や目標を達成するため、また最大限の成果を生み出すためです。
業務に充てられる人や物、金には、限りがあります。その都度適切に割り振るには、業務の現状、そして計画とのズレを正確に把握しておかなければなりません。また大勢がかかわる業務にてひとつの遅れは、そのほかの作業や全体にも影響を与えます。
進捗管理は現状把握のための基本的な手段で、手法や体制の最適化に欠かせません。
3.進捗管理において重要な「見える化」
進捗管理の「見える化」とは、業務の進み具合を目で見えるよう表すこと。各所の進み具合が不透明なままでは、思わぬ遅延や抜け漏れなど、さまざまな問題が生じかねません。昨今、この「見える化」に注目が集まり、積極的に取り組む企業が増えています。
進捗管理を見える化する方法として挙げられるのは、下記のとおりです。ここでは、進捗管理を見える化する方法について説明します。
- 日報
- 共有のカレンダーやホワイトボード
- ガントチャート
- 進捗管理ツール
①日報
その日の業務内容を1日ごとに記入し、報告する方法のこと。単調な作業が繰り返されるため、形だけの報告になりやすいです。
②共有のカレンダーやホワイトボード
業務の進み具合を、カレンダーやホワイトボードに物理的に記入し、共有する方法のこと。最小限の費用ですぐに取り組めるものの、社外からは更新できません。更新の遅れや漏れが起こりやすく、テレワークが増えた現状にはそぐわないといわれています。
③ガントチャート
左側に完了までの作業の一覧表を、右側に実施時期の棒グラフを記載し、進み具合に合わせて調整する方法のこと。
アメリカ人のヘンリー・ガントにより、工場での進捗管理法として考案されました。作業の一覧表を作成するため、作業漏れがほとんど起こりません。シンプルでわかりやすく、どのような層にも抵抗なく受け入れてもらえます。
④進捗管理ツール
進捗管理を見える化してくれるツールを使う方法のこと。クラウドを経由しているツールなら、外出先でも確認や更新が可能です。進捗管理ツールの詳細は、のちほど詳しく説明します。
4.進捗管理を行うメリット
ここでは、進捗管理を行うメリットを説明します。
- 納期遅延の防止
- 業務漏れや問題の早期発見
- 業務量の均一化
- 生産性の向上
①納期遅延の防止
進捗管理をすれば、各所の進み具合が正確に把握でき、納期遅延を防止できます。各所の進み具合が不透明なままでは、遅延を早期発見できません。納期近くでの遅延の発覚は、予定より低品質な納品、それによる信頼の低下につながります。
また致命的な遅延は、納期違反をも引き起こしかねません。適切な進捗管理を行い、つねに進み具合を把握しておけば、そうした事態を予防できます。
②業務漏れや問題の早期発見
進捗管理は、業務の漏れや問題の早期発見、その都度の解決につながります。適切な進捗管理には、業務の細分化とそれぞれの現状観察が欠かせません。業務の漏れや問題も発見しやすく、いち早く日程調整や再配分などの解決手段を講じられるのです。
その都度対応できるため、あとから立ち戻る必要がなく、無駄な作業も発生しません。
③業務量の均一化
進捗管理をすれば、従業員ごとの作業状況が正確に把握でき、能力や業務量に応じた再配分、追加割り当てが行えます。
進捗管理は各従業員の作業状況を見える化し、管理側にわかりやすく伝えてくれます。各従業員が自ら報告するシステムを作っておけば、管理側が各個人に確認する手間もかかりません。
能力や業務量をかんたんかつ正確に把握でき、適切な業務の再配分・追加割り当てが行えます。
④生産性の向上
進捗管理をすれば、達成意識や協力体制が高まり、生産性の向上につながります。進捗管理は現状と目標を見える化し、つねに従業員全体に共有。余計な手間をかけずに、協力体制を強化してくれます。つねに目標を意識できるため、無駄な作業も発生しません。
責任感や達成意識の高まりなども期待でき、結果として生産性の向上につながります。
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5.進捗管理が失敗する原因
現状を見える化しただけで、進捗管理が成功するとは限りません。以下のような要因は、進捗管理の失敗につながるのです。ここでは、進捗管理が失敗する原因を説明します。
- 無理のあるスケジュール
- 信頼関係の不構築
- 業務の優先順位づけが不十分
- 進歩状況の認識のズレ
- ゴール設定の共有不足
①無理のあるスケジュール
スケジュールは本来、業務量や人員規模、起こりうるトラブルなどを適切に考慮して立てるもの。裏づけのないスケジュールは崩れやすく、適切に進捗管理をしていても実現できません。まずは多くの要素を考慮して、無理のないスケジュールを立てましょう。
②信頼関係の不構築
信頼できない相手に、人はマイナスな報告をしたがりません。保身に走るあまり、業務の遅延を意図的に隠す恐れもあります。また業務の奪い合いや押しつけ合い、それによるトラブルも考えられるのです。
進捗管理を成功させるためにも、普段から相談しやすい環境を作り、信頼関係を構築しておきましょう。
③業務の優先順位づけが不十分
業務の優先順位を間違えると、別業務の終了待ちなど、全体の進行にも支障が生じます。進捗管理により業務の漏れは防止できても、遅れは生じやすく、生産性も向上しません。まずは仕事の全体像をとらえ、業務の優先順位や順序をきちんと定めておきましょう。
④進捗状況の認識のズレ
進捗状況の認識にズレがあると、進捗管理は上手くいきません。例として、業務ごとに未着手と着手、完了を更新する進捗管理表を考えてみましょう。従業員間で各ステータスの基準が異なれば、進捗管理表の意味も見る人により変わってしまいます。
そのような状態で進捗管理をしても、正しい現状は把握できません。進捗管理を始める前には、その詳細を全従業員で共有する必要があります。
⑤ゴール設定の共有不足
仕事のゴールが共有できていなければ、効果的な進捗管理は行えません。仕事の目的や納期が曖昧なままでは、各従業員がそれぞれの認識で業務にあたってしまいます。工程に無駄が生じやすいのはもちろん、問題の早期発見も期待できません。
進捗管理をするときは、目的や納期も一緒に共有しておきましょう。
6.進捗管理を成功させるためのポイント
進捗管理を成功させるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。ここでは、進捗管理を成功させるためのポイントを説明しましょう。
- タスクの細分化
- 定期的な進捗状況の報告
- チーム内責任者の選定
- 円滑なコミュニケーション
- 進捗管理の定義統一
- 計画と現実の比較
①タスクの細分化
タスクをできるだけ細分化すれば、業務の漏れを防止しやすくなります。大まかな計画で終わらせるのではなく期間ごとにすべきタスク、忘れやすいタスクなどを洗い出し、それぞれの優先順位を設定しておきましょう。
②定期的な進捗状況の報告
定期的に進捗状況を報告する場を設ければ、進捗管理がより円滑に進みます。報告は責任者に対してのみでなく、関係する従業員全員に行いましょう。確認漏れや記憶違いを防ぐためにも、口頭で終わらせず資料を用意するようにしてください。
また進捗状況とともに問題や課題、その解決法を報告させれば、より高い効果が見込めます。
③チーム内責任者の選定
チーム内責任者を選定すれば、責任の所在が明確になり、進捗管理がより円滑に進みます。全体責任者だけでなく、細分化したタスクごとの責任者も定めておきましょう。人望や経験などを考慮し、相応しい人物を選出すれば、全体が上手くまとまります。
④円滑なコミュニケーション
普段から信頼関係を構築し、円滑なコミュニケーションを重ねておけば、進捗管理も成功しやすくなります。ミスや遅延、疑問などは、どうしても無くならないもの。それらを報告しにくい環境は、結果的に仕事への悪影響をもたらします。
円滑なコミュニケーションは、適切な進捗管理はもちろん、成果の向上にも欠かせません。普段から信頼関係の構築に努め、良好な雰囲気を保っておきましょう。
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⑤進捗管理の定義統一
定義や基準がズレたままでは、適切な進捗管理は行えません。進捗率の基準は特に明確に定め、従業員全体に必ず事前共有しておきましょう。成果に則ったわかりやすい基準を設ければ、認識のズレも起こりにくくなります。
⑥計画と現実の比較
進捗管理を成功させるには、計画と現実のズレの正確な把握、それに対する対策が欠かせません。計画と現実のズレは、報告がひんぱんであるほど正確に把握できます。しかしあまりに行きすぎると、かえって従業員の負担にもなりかねません。
遅延しそうな場合のみその都度報告させるといった、兼ね合いの取れた方法を模索してみましょう。また遅延が発生したときは、できるだけ早めに日程調整、計画の立て直しなどを行います。
7.進捗管理に役立つ無料・有料ツール
専用のアプリやツールを活用すれば、効率的に進捗管理が行えます。用途に沿った必要な機能を見極め、最適なツールを選びましょう。
無料ツール
ここでは下記を説明します。
- Excel(エクセル)
- Googleスプレッドシート
- Asana(アサーナ)
- Stock(ストック)
- Trello(トレロ)
①Excel(エクセル)
Microsoft社の表計算ソフトで、テンプレートを活用して進捗管理が行えます。テンプレートの種類は、Microsoft社公式のものから別の企業独自のものまでさまざま。項目の追加といったカスタマイズの自由度も高く、比較的かんたんに進捗管理を始められます。
予算やセキュリティに不安のある企業におすすめです。
②Googleスプレッドシート
Google社のクラウド表計算ツールで、テンプレートやアドオンを活用して進捗管理できます。クラウド上で複数人による同時作業が可能なうえ、Googleアカウントを持っていれば料金もかかりません。
Excelとほぼ同じ手間、操作感で、比較的かんたんに進捗管理を始められます。
③Asana(アサーナ)
Facebook創業メンバーの一人が開発した管理ツールで、豊富な機能で業務や目標の進捗管理が行えます。主な機能は「列やカードで視覚的に管理できるかんばんボード」「業務と期限の両方を管理できるタイムライン」など。
プレミアム・ビジネスなどの有料コースと無料のベーシックがあります。
④Stock(ストック)
シンプルで使いやすい進捗管理ツールです。進捗管理以外にも、情報共有やチャットの機能が利用できます。登録から30日間は全機能がお試し無料、さらにその後も20ノートまで料金がかかりません。
⑤Trello(トレロ)
付箋のような感覚で使える進捗管理ツールです。カード型で表示される業務を、進捗状況ごとに振りわけて管理。ガントチャートの自動生成を含め、基本的な作業はフリープランの範囲で行えます。
有料ツール
ここでは下記を説明します。
- kintone(キントーン)
- Jooto(ジョートー)
- Backlog(バックログ)
①kintone(キントーン)
サイボウズのクラウド型管理ツールです。社員一名あたりの月額料金は、ライトコースが780円、スタンダードコースが1,500円です。コミュニケーション機能が充実しており、進捗を含めたあらゆる情報を一括管理できます。
②Jooto(ジョートー)
1,600社以上が導入するクラウド型管理ツールです。月額料金は、スタンダードプランが1ライセンス500円、エンタープライズプランが1ユーザー1,300円。フリープランなら4ユーザーまで料金がかかりません。
外部メンバーまで管理できるほか、GoogleカレンダーやSlack、Chatworkとの連携も可能です。
③Backlog(バックログ)
大手から中小まで幅広い企業が導入する管理ツールです。課題を大きさごとに、親課題と子課題に細分化できるのが特徴。ユーザー数ではなく、機能とストレージによって料金が決まります。