視座とは、物事をとらえる際の立場や立ち位置のこと。ここでは視点や視野との違い、視座を高めるメリット、方法などを解説します。
目次
1.視座とは?
視座(しざ)とは、物事を見るときの立場や姿勢のこと。
人々はそれぞれ異なる経験やバックグラウンドを持つため、同じ事象を見ても異なる視点でとらえることがあります。そのためビジネスシーンにおいても、視座は個々の認識や評価に影響を与え、意思決定や問題解決において重要な役割を果たすのです。
なお視座は英語で「viewpoint」と表されます。
視座が高いとは?
「視座が高い」とは、経営者や管理者など上層部の立場で物事をとらえられる様子を指します。
たとえば資料の修正を指示されたとしましょう。視座が高い社員は指示どおりに修正するだけでなく、修正が必要となった背景や原因、上司あるいは取引先の意図などをくみ取り、より最適な修正を考えられるのです。
自社の事業や業務への理解が高いベテラン社員は視座が高い傾向にあります。
2.視座、視点、視野の違い
視座と似た言葉に「視点」や「視野」があります。それぞれの言葉の意味の違いを知って、正しく使い分けましょう。
意味
「視座」とは物事を見る立ち位置を示す言葉です。一方「視点」は物事を見るときの観点、「視野」は物事をとらえる範囲を意味します。
たとえば企業の現状を見る場合、3つの言葉には以下のような違いがあります。
- 視座:経営陣や一般社員など、どの立場で見るか
- 視点:業績や商品、組織など、どの観点で見るか
- 視野:時間軸(長期、短期)や規模(国内、アジア、世界)など、どの範囲で捉えるか
使い方
「視座」は、物事をとらえるときの立場を示すため、場合によっては「視点」や「視野」に置き換えられます。しかし「視点」と「視野」は明確に意味が異なるため、お互いを置き換えることはできません。
「視点」は物事を見る方向や観点を示すため、全体を見る様子を表すときに使うのは不適切です。
一方「視野」は物事の全体像を把握する範囲を示すときに使います。また「視点」は視線が集まるところを指しますが、「視野」は実際に見えている範囲を示すという点も異なるのです。
3.視座が高い人、低い人の特徴
視座が高い人材が存在している組織では、よりよい判断や戦略、イノベーションやチームワークが生まれ、成果や競争力の向上が期待できます。
では具体的に「視座が高い人」とは、どのような人を指すのでしょうか。ここでは「視座が高い人」と「視座が低い人」の特徴をそれぞれご紹介します。
視座が高い人
物事の全体像を広い視野で把握して、多角的な視点で判断できるのが特徴です。また自分の感情や偏見、思い込みを排除して、さまざまな意見や価値観を尊重できます。
そのため自分の働きやすさだけでなく、組織全体のリスクや利益を考えた行動や発言ができるのです。
たとえば目標を設定する際、視座が高い人であれば、自分だけでなくチームや組織全体の成長を意識し、来期や数年後まで見据えた考察を行ったたうえで、適切な目標を設定するでしょう。
視座が低い人
視座が低い人には、視野が狭く偏見や先入観にとらわれやすいです。
自分に与えられた仕事をこなすことだけに集中してしまい、その仕事が組織に与える影響や意味、目的などを意識するのが難しいでしょう。
また問題に直面したとき、原因の究明や課題の洗い出しをせず、対症療法で乗り切ってしまう傾向もあります。広い視野で深く考察することが苦手なため、新しいアイデアを生むのも苦手です。
組織を成長させるには、このような社員の視座を高める必要があるでしょう。
4.視座を高めるメリット
各社員の視座を高めると、組織の成長が見込めるほか、さまざまなメリットが期待できます。ここでは視座を高める6つのメリットを解説しましょう。
- 全体最適の思考を習得
- 生産性の向上
- リスク管理能力の習得
- 新しいアイデアの創出
- 周囲からの信頼度アップ
- モチベーションの向上
①全体最適の思考を習得
企業内のさまざまな立場で物事をとらえられるようになり、物事を全体最適の思考で考えられるようになります。
全体最適とは、組織やシステム全体がもっともパフォーマンスを発揮できる状態のこと。組織が効率的に利益を生み出すためには、全体最適が欠かせません。
視座が低い状態では、与えられた仕事をこなして自分の成果を上げること(部分最適)が優先事項になりがちでしょう。しかし視座が高い人は自分の仕事がどのような役割を持っていて、どのように他部署へ影響するのか、といった点を考えて行動できます。
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②生産性の向上
与えられた仕事の背景や意味、上司の意図まで捉えて仕事に向き合えるため、社員の生産性が向上します。
視座が低い状態では、目の前にある仕事をコツコツとこなすことしかできません。視座が高まると全体像を把握できるようになるため、関連する業務なども意識した質の高い仕事ができるのです。
また視座が高まって「自分の仕事が企業に貢献している」という自覚が芽生えると、仕事へのモチベーション向上につながり、さらに生産性が上がる可能性があります。
③リスク管理能力の習得
現場の社員や経営陣、消費者などさまざまな立場で現状を見られるため、リスクの予測や、発生したトラブルの的確な対応などを検討できます。
リスクを回避あるいは短時間で解決できるとその分本業務へ注力できるため、企業や個人の目標を効率的に達成していけるでしょう。高い視座によるリスク管理能力は、組織の安定性や成果に大きく寄与します。
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④新しいアイデアの創出
視座が高まると全体最適の思考ができるようになるため、さまざまな立場を考慮したうえで効果的なアイデアを生み出せます。全体最適の思考では、単なる部分最適や個別の利益追求にとらわれず、組織やチーム全体の利益を重視するからです。
また、異なる立場や視点から情報を収集し、多様な情報を組み合わせて、斬新な発想や革新的なアイデアが生まれる可能性もあります。
⑤周囲からの信頼度アップ
視座の高い社員は、さまざまな立場の人や、自分の業務範囲外の事象にも配慮できるため、周囲からの信頼度が向上するでしょう。上司からの信頼度が高まると、全社で取り組むような重要業務を任されることがあります。
また部下の仕事を同じ立ち位置で観察できるため、的確なフィードバックが可能です。部下の成長やパフォーマンス向上につながるため、部下からの信頼も得られるでしょう。
さらに顧客の立場で考えることもできるため、クライアントからの信頼も獲得しやすくなります。
⑥モチベーションの向上
自分の仕事をさまざまな立ち位置から見られるようになると、「何のためにやるのか」という目的を理解でき、モチベーションが向上する可能性があります。
仕事の目的や意味を理解すると、「自分が取り組んでいる仕事は、自社の目標達成に不可欠だ」と実感できるため、意義のある仕事に取り組むことへの誇りを持って主体的に行動するようになるでしょう。
自ら積極的な改善や効率化を追求するようになり、仕事のパフォーマンスが大きく向上する場合もあります。
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5.視座を高める方法
視座を高めるには、ロールモデル人物を設定して観察したり、さまざまな立場の人と交流して視野を広げたりする方法があります。これらを含めて6つの有効な方法を解説しましょう。
- ロールモデルの観察や交流
- 視座が高い人との交流
- 幅広いコミュニティに参加
- 視座をひとつあげて思考
- 書籍や動画での学習
- フレームワークの活用
①ロールモデルの観察や交流
視座が高い人をロールモデルとして、発言や行動を注意深く観察し、自分の思考へ取り入れる方法です。言動だけでなく、ロールモデルがなぜそのような発言や行動をしたのかに注目し、その背景や思考過程まで考察します。
ロールモデルに「視座を高めるための手本にしていること」を打ち明けて、定期的に1on1をしてもらうのもオススメです。
思考過程を本人に解説してもらうと、同じような発想ができるようになり、「あの人ならこの問題をどうとらえるか」と自問できるようになるでしょう。
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②視座が高い人との交流
周囲に視座が高いと感じる人を見つけたら、積極的に交流しましょう。視座が高い人とかかわって対話を重ねて相手の感じ方や思考方法と自分との違いを明確に意識すると、自身の思考の偏りや制約に気づけるからです。
より多角的な視座を持てるようになり、新たな思考の枠組みを得られるでしょう。とくに同じ事象を見たときには、相手と自分の感じ方の違いに注目しましょう。自分に足りない思考を得られるチャンスとなります。
③幅広いコミュニティに参加
今まで出会ったことがないさまざまなタイプの人と交流し、思考を観察するのもオススメです。
職場や既存の友人関係だけでなく、さまざまな分野や業種のコミュニティに参加すると、独自の思考や価値観に触れられるため、より幅広い視座を身につけられます。異なる分野の知識を組み合わせて、創造的な問題解決やイノベーションを生み出せるかもしれません。
さまざまなタイプの人々との交流は、柔軟な思考を養成するうえでも重要といえます。異なる意見や価値観に触れると、自身の固定概念や偏見に気づけることがあるからです。
③視座をひとつあげて思考
視座を高めるには、今の自分よりひとつうえの立ち位置で物事を見る訓練も有効です。
たとえば、現在社員の立場で物事を見ている人は、経営陣の立場に立つと企業全体が見渡せます。さらに上の立ち位置で見れば、業界全体や他業種を含めた経済界の動向といった考察も可能です。
上の立場で見ることが難しい場合は、「自分があの人だったらどう考えるか」と想像してみましょう。
「自分が部長だったら」「自分が社長だったら」「自分があの企業の経営者だったら」など、自分ならばどのように思考して、どのように行動するかを考える練習になります。
④書籍や動画での学習
書籍や動画で新しい観点や価値観に触れて視座を高める有意義な方法です。自己啓発書や専門書、ドキュメンタリー映画やトークショーなど、さまざまなジャンルの情報源の活用をオススメします。
また自身が理想とする人物や成功者などの書籍や動画から、理想のロールモデルが見つかるかもしれません。
ただし書籍や動画での学習はインプットだけになりやすいもの。学んだことを人に話したり、実践したりして、アウトプットも同時に行いましょう。
⑤フレームワークの活用
「イシュー・アナリシス(解決策を3段のロジックツリーに書き出していく手法)」といったフレームワークを活用して、視座を高めるトレーニングをする方法もあります。
このトレーニングでは、自分よりふたつ上の立ち位置で物事を考察できるため、広い視野で全体像や問題の大きさを見極められるようになるのです。
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