職場の人間関係は、転職理由にも挙がるほど影響力が大きい問題のひとつ。職場の人間関係が悪いと円滑に業務が進行できずに生産性が低下するばかりか、最悪のケースでは離職が発生し企業力の低下につながります。
今回は職場の人間関係の重要性や実情をふまえて、職場の人間関係が悪くなる原因や改善する方法などを詳しくご紹介します。
目次
1.なぜ職場の人間関係は重要なのか?
会社にいる時間は基本的に週5日、約8時間〜9時間と生活の中の多くの割合を占めるうえ、一人で完結できる仕事は少なく、多くは周囲の人との連携が必要であるため、職場の人間関係は避けられません。
それにもかかわらず、人間関係が良好でないとうまくコミュニケーションが取れず連携できなかったり、円滑に業務が進められなかったりと業務に支障をきたしてしまいます。
また、仕事では多くの悩みや不安も出てくるもの。そうした胸の内を相談できる相手がいないと一人で抱えることになり、仕事をするのも仕事に行くのも辛くなってしまうでしょう。
職場は社会生活の大部分を占め、かつ人間関係は精神的に大きな影響を与えるもの。職場の人間関係が良好であることは働くうえでの重要な条件のひとつといえます。
2.職場の人間関係で悩む人は少なくない
厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%と、約半数が職場にストレスを抱えている状況にあります。
同調査による、ストレスの原因上位4つは下記のとおりです。
仕事の量 | 43.2% |
仕事の失敗、責任の発生等 | 33.7% |
仕事の質 | 33.6% |
対人関係(セクハラ・パワハラを含む) | 25.7% |
さらに詳しく結果をみると、年齢が上がるにつれて人間関係にストレスを抱える人が増えており、男性よりも女性の方が人間関係へのストレスが高いとわかっています。
職場の人間関係は転職理由にもなり得る
厚生労働省「令和3年 雇用動向調査」における「転職入職者が前職を辞めた理由」の男女TOP3は下記のとおりです。
男性※「その他理由」15.0%を除く
定年・契約の満了 | 16.5% |
職場の人間関係が好ましくなかった | 8.1% |
労働条件、休日等の労働条件が悪かった | 8% |
女性※「その他理由」24.6%を除く
定年・契約の満了 | 12.3% |
労働条件、休日等の労働条件が悪かった | 10.1% |
職場の人間関係が好ましくなかった | 9.6% |
男女ともに転職理由の上位に人間関係がランクインしており、転職の理由になるほど職場の人間関係は影響力が大きいことがわかります。
3.職場の人間関係の悩み・ストレスがもたらす悪影響
職場の人間関係の悩みやストレスがもたらす悪影響を従業員と企業それぞれの視点から解説していきます。
従業員
職場の人間関係が悪いことで転職する人がいるほど、人間関係の影響力は大きいもの。職場の人間関係の悩みやストレスは、従業員に以下のような悪影響をもたらします。
心身の不調
職場の人間関係が悪いと心身ともに不調をきたしてしまうもの。人間関係の悩みやストレスからは、下記のような症状をもたらすことがあります。
- イライラしやすくなる
- 集中力が低下する
- 疲れやすくなる
- 頭痛
- 肩こり
- 胃痛
- 食欲不振
- 眠れない
上記のほか、身なりに気を遣えなくなっている、無断欠勤が続いてしまう場合も要注意です。心身の不調は業務に支障をきたすだけでなく、最悪のケースではうつ病などを発症して働けなくなってしまう恐れもあります。
モチベーション・生産性の低下
職場の人間関係が悪いと仕事も進めにくく、さらには心理安全性や生産性の低下をも招く恐れがあります。くわえて、職場でのやりがいや楽しさも感じられず、モチベーションの低下にもつながります。
個人的に受ける人間関係からの悪影響が業務の質にも響き、評価にも悪影響が出る恐れもあるのです。
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企業
職場の人間関係による悪影響は、最終的に企業に大きな打撃を与えてしまいます。企業にもたらす悪影響は、下記のとおりです。
離職率の向上
職場の人間関係は転職理由にも多く、改善されなければ従業員は最終的に離職を選択する従業員が増えてしまうことで、離職率の向上につながります。
優秀な人材は転職先も見つかりやすいため、職場の人間関係による悩みやストレスが改善されないと早期に見切りをつける場合も。
優秀な人材の離職は企業力の低下につながり、競合他社に転職してしまうことで結果的に競合の企業力強化に貢献してしまうことになるのです。
企業イメージの低下
離職率は求職者によっても重要な指標であり、離職率の高い企業は何らかの問題があるとみなされ、よいイメージを持たれない傾向にあります。結果、人手不足な状況にあっても求人に応募者が集まらないといった事態に陥ってしまうでしょう。
また、パワハラといったハラスメントがあれば、従業員が訴訟を起こすこともあり、公になれば企業イメージの低下を招くことは必至です。
4.職場の人間関係が悪くなる原因
職場の人間関係が悪くなる原因は、さまざまです。下記で主な原因をみていきます。
コミュニケーションが不足している
コミュニケーション不足は人間関係を悪くしてしまう主な原因です。職場には多様な価値観や考え方を持った人がいるため、当然合わないと感じる人もいるでしょう。それでも円滑に仕事を進め、良好な人間関係を築くにはコミュニケーションが欠かせません。
コミュニケーションが不足したままだと相手のことを理解できず、苦手な人に対してマイナスなイメージを抱いたままになり、人間関係も拗れてしまうでしょう。
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ギブアンドテイクのバランスが取れていない
人間関係はギブアンドテイクで成り立つといっても過言ではありません。ギブは他者に利益を与えることであり、テイクは他者から恩恵を受けること。
テイクばかり求める人やギブ側になることが多く必要以上の負担を背負ってしまう人が出てくると、バランスが崩れて人間関係がギクシャクする原因となってしまいます。
苦手な上司・同僚がいる
職場内に苦手な上司・同僚がいるとそれだけでストレスとなるもの。同じチームや部署で日常的に関わることが多い場合は、その分ストレスも大きくなってしまうでしょう。
苦手・合わないとわかっていても、仕事では割り切って接さなければいけないため、余計にストレスに感じてしまうことも。このような状態が続くと、相手と良好な人間関係を築くことが難しくなってしまいます。
従業員同士の競争意識が高い
従業員同士の競争意識が高いと職場内がピリピリした雰囲気になりやすく、気づかないうちにストレスが蓄積されて人間関係も悪くなりやすいものです。とくに、ノルマがある場合はそのストレスも相まって、人間関係にも悪影響をおよぼす恐れもあります。
ハラスメントや嫌がらせがある
あってはならないことですが、パワハラやセクハラなどのハラスメントや嫌がらせなどが横行している職場があるのも事実です。こうした職場は当事者でなくてもストレスを感じてしまい、良好な人間関係を築くことが難しいだけでなく、悪化する一方です。
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5.職場の人間関係の悩みを解消する方法
職場の人間関係の悩みを解消するのはかんたんではなく、完全な解消が難しいケースもあります。だからといって諦めるのではなく、方法を押さえてまずは解消に努めるのも大切でしょう。
ここでは、職場の人間関係の悩みを解消する方法を5つお伝えします。
- 仕事だけの付き合いだと割り切る
- 相手に期待しすぎない
- 働き方を変えてみる
- 異動や転職を検討する
- 第三者に相談する
①仕事だけの付き合いだと割り切る
職場は友達を作る場所ではなく、仕事をするだけの場所と割り切ってみましょう。「仲良くならなきゃ」と気を負わず、割り切って仕事に集中することも大切です。
やるべき仕事をしっかりこなし、成果を出せばおのずと信頼が得られるため、自然と人間関係の悩みが解消されるかもしれません。
②相手に期待しすぎない
相手に期待しすぎると、そうでなかったときに「裏切られた」と感じてしまうもの。相手に非がなくとも、マイナスな印象を抱いてしまう原因を自分で作ってしまっている可能性もあります。
相手には期待しすぎず、テイクばかり求めないようにすることも人間関係の悩みを解消するためには必要です。
③働き方を変えてみる
リモートワーク制度がある場合、活用することで職場の人と物理的距離を置いて仕事ができます。同じチームや部署の場合は最低限のコミュニケーションが必要になるものの、出社して顔を合わせるよりもストレスは軽減されるはずです。
働き方が選べる場合は、そうした制度も活用してみましょう。
④異動や転職を検討する
自分の努力ではどうにもならない、日々ストレスで心身に不調をきたしてしまうほどの悪影響がある場合、その場から離れるのも方法のひとつ。まずは異動を検討してみて、それでも解決しない場合の最終手段として転職を検討してみましょう。
人間関係の悩みを我慢し続けることが正しいわけではありません。実際に人間関係を理由に転職している人も多くいるからです。ただし、異動や転職は今後のキャリアにも影響するため、慎重に検討しましょう。
⑤第三者に相談する
相談することは決して悪いことではなく、自分を守るためには大切な対応です。ハラスメントや嫌がらせなど、自分の手に負えない悩みは人事や相談機関など、第三者に頼ることも手段です。人事に相談すると、何らかの処置をとってくれる可能性もあります。
6.職場の人間関係を良好にするコツ
あわせて、職場の人間関係を良好にするためのコツもご紹介します。コツを意識して職場の人と接することで、良好な人間関係が築けるようになるかもしれません。
- 相手のよいところを見つけてみる
- 最低限のコミュニケーションは欠かさない
- リラックスできる時間を作る
- 相手をコントロールできないと意識する
①相手のよいところを見つけてみる
相手のよいところを探す癖をつけることで、マイナスな印象を抱いていた人に対しても接しやすくなる可能性があります。苦手な人や気が合わない人に対しては、ネガティブな面に注目してしまいがちです。視点を変えて相手のよいところを見つけてみると、苦手意識が解消されるかもしれません。
②最低限のコミュニケーションは欠かさない
挨拶・感謝・謝罪・報告など、最低限のコミュニケーションはしっかり行うことが大切です。これらを自分ができていないと、相手からも最低限のコミュニケーションを受け取れません。
また、相手に対してよいと感じたことは積極的に褒めたり、伝えたりしてみましょう。苦手な人にもこうした対応ができるようになるとベストです。
③リラックスできる時間を作る
ストレスを抱えすぎてしまうと、相手に対しても余裕がなくなってしまうもの。リラックスできる時間を作って、心に余裕が持てるようセルフマネジメントすることもコツです。
気持ちに余裕がないなと感じたら一人になれる場所に行く、好きなお菓子を食べて休憩するなど、自分がリラックスできる方法を見つけてみてください。
④相手をコントロールできないと意識する
相手は自分の思い通りにはならないことを理解した上で接することもコツです。相手から悪い感情を抱かれている、攻撃される場合は自分に原因がある可能性も考えられます。相手にばかり原因を求めず、自分を見つめ直してみることもときには大切です。
7.職場の人間関係をよくするために企業ができること
職場の人間関係を良くするため、企業側からアプローチすることも大切です。ここでは、職場の人間関係を良くするために企業ができることをご紹介します。
- コミュニケーション促進の取り組み
- メンター制度の導入
- アンケート・サーベイの実施
①コミュニケーション促進の取り組み
コミュニケーション不足に陥らないよう、企業側からコミュニケーションが促進される取り組みを実施してみましょう。コミュニケーション促進のためにできることは、下記のようにさまざまです。
- 社内報の作成
- 社内イベント、部活動の開催
- フリーアドレス制度
- オープンスペースやカフェスペースの設置
- サンクスカードの実施
- 他部署とのランチ、飲み会補助
こうした取り組みのなかで、参加型となるものに従業員を強制しないようにしましょうす。強制によってストレスに感じ、良好な人間関係が築けなくなってしまう恐れもあるからです。企業側ができるのは、あくまで機会の提供といえるでしょう。
②メンター制度の導入
メンター制度とは、年齢の近い先輩社員が若手をサポートする制度のこと。メンターはよき相談相手となり、人間関係をはじめさまざまな相談ができる存在です。
精神的なサポートができるため、心理的安全性も高まり、良い人間関係が構築しやすくなる可能性に期待できます。
メンター制度とは? メリット・デメリット、成功事例を簡単に
メンター制度とは、年齢の近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポートする制度です。精神面のサポートをメインとすることから、社員の心理的安全性を高める効果に期待できます。
今回はメンター制度について、導入...
③アンケート・サーベイの実施
アンケートやサーベイを実施すると、従業員が抱えている人間関係の悩みに先回りして対処できます。従業員の人間関係に関する状況を調査し、結果から必要な対策を講じましょう。
また、コミュニケーション促進のための取り組みを行なった効果も測れるため、自社にあった取り組みの発見にも役立ちます。