職能別組織とは? 事業部制組織との違い、メリット・デメリット

職能別組織とは、職能や機能別にわけた組織構造のこと。権限がトップに集約されるため統率しやすく、部署ごとに専門性が発揮されるため組織全体が効率化される点が特徴です。

今回は職能別組織について、事業部制組織との違いやメリット・デメリット、職能別組織を運用するポイントなどをわかりやすく解説します。

1.職能別組織とは?

職能別組織とは、職能や機能によってわけられた組織のことです。機能別組織とも呼ばれ、「営業」「人事」「製造」など、職種別に部門を編成する形で組織が構成されます。

権力がトップに集中する基本の組織構造であり、各部署がそれぞれの役割を果たすことで組織全体に貢献する仕組みです。役割ごとの部署編成を重視し、幅広い業務を展開する場合は同じ部署内に異なる業務担当者が所属するケースもあります。

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2.職能別組織と事業部制組織の違い

類似する組織構造に各事業部が独立した機能を持つ事業部制組織があります。職能別組織との主な違いは、以下2点です。

組織編制の違い

  • 事業部制組織:製品やサービスごと、地域や顧客セグメントごとに事業部が編成される
  • 職能別組織:組織全体が役割分担をして1つの製品・サービスを作り上げるものの、事業部制組織では事業部ごとに役割を完結しながら担当の製品・サービスを作り上げる

職能別組織は経営層が各部署を束ねる一方、事業部制組織は事業部内完結型であるため、経営層の負担が少なくなるといったメリットがあります。

意思決定権の違い

事業部制組織は、事業ごとに事業部として組織編成するため、各事業部にはある程度大きな裁量権が与えられます。基本的に事業部内で事業が完結する組織構造であるため、経営層の意思決定を待たずしてスピーディーに事業活動を進められます。

一方、職能別組織はトップに権限が集約される組織構造であるため、部署が独自に重要な意思決定を行えません。

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3.職能別組織のメリット

最も一般的な組織形態である職能別組織。機能別に業務を分担することにはさまざまなメリットがあります。職能別組織のメリットを詳しくみていきましょう。

指示や意思が迅速に伝達

トップに権限が集中することは、組織統制しやすい点にメリットがあります。情報が集約されるため俯瞰的に経営判断を行いやすく、指揮命令系統の一元化により組織内の意思疎通が取りやすいため重要な意思決定が円滑に行えることも利点です。

運営コストの削減

経営層の直下に役割別に部門が配置されているため、業務の重複が発生しません。業務の重複が発生しないことは人的・経済コストの抑制に有効であり、効率的かつ最適化された組織運営を可能とします。

専門的スキルの向上

部署に応じて求められるスキルが明確かつ固定されていることは、専門性の向上に有効です。おのおのが特化して業務に対応できるため、企業全体の生産性向上による利益増大が期待できます。

そして、部署ごとの仕事内容が大きく異なることは、部署同士が競争関係になりにくい傾向にあります。

経営方針のブレを防止

最終的な決定権をくだすのは経営層であるため、決定の方向性や方針が不安定になりにくい点はメリットです。各部署に権限があると組織の方向性がブレる可能性がありますが、経営層に権限が集約していることで安定的な組織運営を可能とします。

ノウハウの蓄積

役割やスキルに特化していることは、業務の知識や経験などのノウハウが蓄積できるメリットもあります。ノウハウが蓄積されれば問題が起こったときにも適切な対応が取りやすく、社員の育成にも活用できます。

業務の効率化

各部署に専門的な人材がいるため、効率的に業務が遂行できます。所属する従業員はその部署の業務や必要なスキルに精通しているため、各部署が効率的に仕事を進めることで結果、企業全体の効率が向上します。

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4.職能別組織のデメリット

優れたメリットを持つ職能別組織には、デメリットも存在します。職能別組織を採用する際は、デメリットを理解したうえで対策を考えながら組織構造を整えていくことが必要です。

責任の所在が不明確

組織全体の責任の所在は明確である一方部署を超えたトラブルが発生した際の責任の所在が不明確になる点はデメリットです。

縦割り型の組織構造では部署間での連携がとりにくく、解決までに時間を要してしまう恐れもあります。最悪のケースでは部署間で責任の押し付け合いが生じ、組織全体の統率が崩れるリスクも考えられます。

経営者の負担が増加

部署ごとに指揮する部長が存在するものの、事業の方向性など重大な決定を下すのは経営者の役割です。横断的な指示を下さなければならない点で負担が大きいため、経営者の負担を軽減できる人材の採用や育成が重要となります。

ゼネラルマネージャーの育成が困難

企業の管理職の1つであるゼネラルマネージャーは、部署の全体的な管理を担う役職です。広い視野が必要となるゼネラルマネージャーは、部署ごとに精通した人材を育成する職能別組織では育成しにくい役割です。

企業全体を俯瞰して決断を下せる人材が育たないことは、ゼネラルマネージャーだけでなく次期経営者・幹部候補の不足につながります。

複数業務への対応力が低下

展開する業務が多いほど事業内容の把握が困難になったり、担当者の不在時の対応に困ったりするシーンが増えてしまいます。積極的に事業を展開する場合には、職能別組織よりも事業部制組織の方が効率面で適しています。

部署内における人間関係の悪化

部署間の競争関係は減るものの、ノルマを設けて競争関係をあおると部署内での競争が激化して人間関係に悪影響をおよぼす可能性もあります。競争関係が激化すると協力体制が崩れやすく、組織全体の利益損失を招きかねません。

お互いが協力しつつ切磋琢磨できる関係性が理想であり、部署全体のパフォーマンス最大化を目指すことが大切です。

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5.職能別組織運用のポイント

職能別組織のメリットを最大化して優れた組織を作るには、職能別組織が陥りやすい課題を理解した上で対策を取り入れながら組織編成を進めていくことがポイントです。ここでは、職能別組織の運用を成功させるためのポイントをお伝えします。

部門間でのコミュニケーションの促進

職能別組織は、部署間のコミュニケーションが減りやすい点に注意が必要です。部署間のコミュニケーションの希薄化は、組織運営における問題やトラブルの原因になり得るもの。

チャットツールといったコミュニケーション促進に役立つツールを導入し、部署間の連携を強化することにも着目することがポイントです。

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部門間を超えたプロジェクトの推進

部署間のコミュニケーション促進にも役立つのが、部門間をまたいだプロジェクトを推進することです。各部署が持つ専門性が生かせれば、プロジェクトも効率的に遂行できます。

そのためにも組織全体を俯瞰できる人材をプロジェクトマネージャーに配置する、進捗管理システムを導入するなどしてプロジェクトの全体最適を追求することが大切です。

職能を高める人事施策の実施

各部署に精通した人材が育成できることは、職能別組織の大きなメリット。そのメリットを最大化し、部署ひいては組織全体のパフォーマンスを向上させるには、教育制度やジョブローテーションを活用してより専門スキルを高めるとよいでしょう。

評価制度には職務遂行能力やスキルのほか、改善提案や情報共有の積極性なども項目に入れ込んでみましょう。

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6.職能別組織の企業事例(Panasonic株式会社)

元々事業部制組織を採用していたPanasonic株式会社は、1990年台後半の急速な家電のデジタル化に伴い、経営面でも厳しい局面を迎えました。

このとき、社内では100を超える事業部が存在。部署間で事業の重複も見られたことから、2001年に長年続いた事業部制を廃止し、職能別組織が導入されました。

結果、一時は業績が回復したものの、機能が分かれたことで市場ニーズを俯瞰しきれず、2012年に過去類を見ない赤字を計上。こうした状況をふまえて2013年に再度事業部制に組織再編し、それ以降は順調に売り上げを伸ばしています。

このように、再編したからとその組織構造が適しているとは限らないため、問題の原因や時代の変化に応じて適した組織構造を形成することがポイントです。