シエスタ(制度)とは?【スペインの昼寝文化】意味を解説

国内の企業でも注目を集めているシエスタ制度。一体どういったものなのか、シエスタ制度のメリットとデメリット、目的などを解説します。

1.シエスタとは?

シエスタ(siesta)とは、日照時間の長いスペインで生まれた習慣で長いお昼休憩のこと。シエスタと聞くと「昼寝」を連想する人もいるかもしれませんが、「昼間にとる休憩」を意味する言葉なので、昼寝をしなくてもこの時間のことをシエスタと呼ぶのです。

昼休みに昼寝の時間を取り入れると、睡眠不足の解消だけではなく午後の集中力向上や脳と体のリフレッシュ、さらに病気の予防にも効果的とされています。

シエスタはスペインの習慣のひとつで、「長い昼休憩」のことです。シエスタには集中力アップやリフレッシュなどの効果があります

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2.シエスタ制度とは?

日本国内で導入され始めているシエスタ制度。これは、お昼の休憩時間を通常より長く取ると働く人の生産性が向上するとして注目されている制度です。シエスタ制度について詳しく解説しましょう。

シエスタ制度の由来

スペインをはじめとするラテン諸国に根付く「シエスタ」の習慣を、日本の企業において取り入れたものがシエスタ制度です。スペインなどの国では、午後2時~午後5時を営業時間外として従業員の休憩時間にあてているお店や企業が多く存在しています。

その間、昼寝をしていても家に帰って家族と食事をしていても、ジムに通うのも散歩するのもそれぞれの自由です。日本でもいくつかの企業はこれを日本流にアレンジして導入しています。

シエスタ制度の目的

シエスタ制度の目的は業務の効率化にあります。

昼食後、睡魔に襲われて仕事が捗らないといった経験をしたことはありませんか? 人間の体は24時間を一周期として体内リズムが変動しており、このリズムが上昇している時間に活動が活性化するといわれています。

そして、午後1時~午後4時頃はこのリズムが低下し、判断力や集中力が鈍るとされている時間帯なのです。

昼寝やリラックスする時間を取った後、仕事に復帰して生産性を高めます。さらに睡眠不足の解消や病気の予防、現代人に多いカフェインの取り過ぎを防ぐなど、健康面でも効果が期待されているのです。

シエスタ制度の導入方法

日本でシエスタ制度を導入している企業は、「AM9:00:出社~PM1:00~3:00:シエスタ~PM8:00:退社」などのように、退社時間を後ろにずらして、1日8時間の労働時間を確保する場合が多いです。

また、シエスタの時間をどのように使うかは従業員の判断に任せるのが理想とされており、その日の状況や体調、ライフスタイルに合わせて調整できます。この点は働く側にとって魅力的なポイントでしょう。

日本におけるシエスタ制度は従業員の業務の効率化や生産性の向上を目的に行われています。シエスタを取り入れると、集中して業務を進められるのです

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3.最適なシエスタ制度の時間は?

シエスタは、業務の効率化に有効だと分かりました。しかし時間はどれくらい確保するのがベストなのでしょうか。ここではシエスタの時間を昼寝にあてたと仮定して、時間別にそれぞれどのような効果があるのか解説します。

10分から20分の短い時間

10分から20分といった短時間の昼寝をした場合、どうなるでしょうか。

実は短時間睡眠でも、集中力や体力の回復に十分な効果を発揮するのです。短時間のちょっとした睡眠でも脳は十分な休息がとれ、さらに浅い眠りからの目覚めなので、起きたあともすぐ活発に動き出せます。

短時間に抑えるからこそのメリットは大きいといえるでしょう。実際、シエスタの本場スペインの人々も、昼寝の時間は20分ほどで、あとは食事や余暇、家族との時間にあてていることが多いようです。

30分程度

30分ほどの睡眠を取った場合はどうでしょうか。

睡眠には身体的な回復を行う「レム睡眠」と、脳が眠る「ノンレム睡眠」の2種類があり、最初に脳を休ませるノンレム睡眠に入り、次に記憶の情報整理を行うレム睡眠に移行するのです。

30分という数字は、ちょうどノンレム睡眠がレム睡眠に切り替わるタイミング。レム睡眠に入ってしまうとすぐに起きることが難しくなってしまいます。起きてもその後、30分程度は気だるさを感じ、すぐ仕事に戻るのは難しいかもしれません。

60分以上

60分というと比較的長い昼寝になります。

30分睡眠のときよりも起きるときの気だるさが残り、しばらくぼーっとする時間が必要になります。専門家の研究によると、60分の昼寝はノンレム睡眠の中でも「徐波睡眠」と呼ばれる段階を踏むため、人の顔や名前などを覚えやすくなるそうです。

しかし、昼間に1時間以上の睡眠を取ると体内時計が乱れ生活が不規則化することも考えられますので、注意が必要でしょう。

90分以上

90分以上の睡眠はレム・ノンレム睡眠のサイクル一周分の時間です。うまく睡眠サイクルが一周した時間帯に起きられれば、すっきりとできる人もいるかもしれません。

しかしこれだけ眠ると夢を見る人も少なくないでしょう。また、寝起きに頭痛がする人もいるかもしれません。

健康面では、90分以上の昼寝はかえって病気になる確率が高まるという説もあります。また、昼食後に90分以上熟睡すると、エネルギーが消費されず脂肪がたまりやすくなります。

シエスタの時間は長すぎるとデメリットも大きいようです。生産性を上げるつもりが逆効果にならないよう注意しましょう

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4.シエスタ制度のメリットは?

シエスタ制度を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょう。ここでは「昼寝」によるシエスタをメインに、企業でシエスタを導入した際に考えられる具体的なメリットとポイントを解説します。

  1. 生産力の向上
  2. 労働時間のフレックス制度が導入できる
  3. 従業員のモチベーション向上
  4. 体力回復・集中力アップにつながる
  5. ストレス解消
  6. 睡眠不足の解消

①生産性の向上

最も大きいメリットは生産性の向上です。昼食後は体内リズムや気温の上昇に影響され、パフォーマンスが落ちる時間帯ですが、この時間に睡眠を取り休息すると脳の疲れがリセットされ、作業効率化が見込めます。

また、厚生労働省が発表した資料によると「起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率、起床後17時間を過ぎると飲酒運転と同じ作業能率まで低下する」とのことです。

睡眠を取らずに夜遅くまで働くのは、脳の限界を考えても非効率だと分かります。

②労働時間のフレックス制度が導入できる

日本におけるシエスタは「働き方改革」が背景にあります。シエスタ制度の導入によって、従業員は自分の働きたい時間帯に働くことができるようになるのです。

早く帰りたい日はシエスタを利用せず、1時間の昼休憩を取れば従来通り定時に退社できますし、夜まで働く必要がある日は休憩を取って作業効率をアップさせます。フレックスタイム制と組み合わせてシエスタ制度を導入すると、働き方改革が進むでしょう。

③従業員のモチベーション向上

眠くなりやすい時間帯に昼寝ができると、仕事がはかどるため、従業員にとっては嬉しいポイントです。

また、シエスタの利用方法を個人に委ねれば、個々のライフスタイルに合わせた働き方を尊重する形になるため「会社に無理に働かせられている」といった意識を抱きにくくなります。仕事への満足度や、自社へのロイヤリティ向上にもつながるでしょう。

④体力回復・集中力アップ

昼間に10~20分睡眠を取るだけで、体力の回復が期待できます。午前中の数時間とはいえ、日本の会社員は長時間、満員電車に揺られて出社してくる人も少なくありません。それに加えて業務を行うのですから、体力は確実に奪われています。

昼寝をすれば、体力回復とリフレッシュしが叶うため、精力的に仕事に復帰できます。スタミナ回復や身体能力の伸びに効果があるため、スポーツの分野では昼寝を採用しているアスリートも多いです。

⑤ストレス解消

仕事が忙しくなり疲れてくると、ストレスがたまって脳の許容範囲を超えてしまいます。いわゆるキャパオーバーの状態です。この状態で仕事をしても効果は見込めません。

しかし、この状態で睡眠を取ると、外部からの情報を一時的に遮断し、脳をクールダウンさせてストレスをリセットできるのです。

もちろん、昼寝以外のことに時間を使ってもよいでしょう。散歩など適度な運動もストレス解消に効果があります。従業員の自主性を尊重すると、より高い効果が期待できるでしょう。

⑥睡眠不足の解消

昼寝は睡眠不足の解消にも役立ちます。睡眠不足は仕事のパフォーマンス低下はもちろん、ストレスを増大させ、健康被害をもたらすことでも知られます。

人間の体は眠っている間に一日の疲労を回復し、さらにウイルスへの免疫力をつくるといわれていますが、睡眠不足に陥れば免疫システムが弱くなり、さまざまな病気にかかりやすくなるのです。

さらに、精神面でも落ち込みやすくなるなどの被害があるといわれています。日本人の多くは睡眠不足が深刻化しているとの声もあり、睡眠不足を昼寝で解消する、これは健康を守る意味でも効果的です。

シエスタを導入して昼寝をすると、「生産性の向上」「労働時間のフレックス制度が導入できる」「従業員のモチベーション向上」「体力回復・集中力アップ」「ストレス解消」「睡眠不足の解消」といったメリットが得られます

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5.シエスタ制度のデメリットは?

シエスタのメリットを見るといいことづくめのように思えますが、デメリットや気を付けなければいけない点もあるのです。シエスタ制度の導入によって起こり得る4つのデメリットと、それぞれの注意点を確認していきましょう。

  1. 退社時刻が遅くなりすぎないよう注意
  2. 寝すぎてもダメ
  3. 体内時計の乱れ
  4. 頭痛が起きやすくなる

①退社時刻が遅くなりすぎないよう注意

シエスタ制度はその性格上、通常業務と並行するとどうしても退社時間が遅くなってしまいます。

しかし、あまりにも毎日遅くまで会社に残ると就寝時間が遅くなってしまったり、従業員が家族や友人とのプライベートな時間を取れなかったりといった弊害が発生し、仕事にも悪影響を及ぼす可能性も高いです。

シエスタの時間をあらかじめ設定するなどルールを設けて、業務に支障が出ないような仕組みづくりが重要でしょう。

②寝すぎてもダメ

長く眠りすぎると、ノンレム睡眠時に緩んでいた脳内の血管が急激に収縮したり、自律神経が乱れたりするといわれています。結果、寝起きに気だるさを感じたり、休憩を取る前よりもかえって眠くなってしまったりという人も少なくないようです。

個人差はありますが、深い眠りに入るのは若い人で20分、高齢者だと30~40分ほどといわれています。従業員が自分で、自身にあった睡眠時間を管理する必要があるでしょう。

③体内時計の乱れ

昼寝の時間を多く取りすぎたために夜の睡眠の質が悪くなり、逆に睡眠不足を引き起こしてしまう場合も。もし夜、なかなか寝付けず睡眠不足になり、それをシエスタの休憩で補おうと昼寝の時間を長く取ってしまったら、悪循環に陥ってしまいます。

睡眠不足を解消するためのシエスタ制度が逆に体内時計を乱してしまうといった事態にならないよう、適度な時間に限定しましょう。

④頭痛が起きやすくなる

昼寝の後に頭痛がする場合、2つの可能性が考えられます。

  • 緊張性頭痛:文字どおり筋肉の緊張によって生じるもので、頭部を締め付けられるような痛みが特徴。頭を固定しない、もしくは長時間うつ伏せで寝てしまった場合によくみられ、首や肩の筋肉が硬くなり頭痛を引き起こす
  • 偏頭痛:原因は寝すぎによるもので、血管の拡張と血流の変化によって引き起こされる。熟睡から目覚めた体は一気に血がめぐり出し、結果、血管を取り巻く三叉神経が引っ張られることによってズキズキとした頭痛が起こる

シエスタで起こり得るデメリットは、大きく分けると生活習慣への配慮と「寝すぎ」の問題のようです。うまく管理し、上手にシエスタを取り入れるよう仕組みづくりを行いましょう

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6.各国で導入されているシエスタ制度

シエスタは各国でどのように評価され、導入されているのでしょうか。どのような業種の海外企業が導入しているのか、その事例や、日本企業が関心を示すようになった社会的背景について、深堀りしていきましょう。

企業で使われているシエスタ制度

シエスタ制度の規定は導入企業によって異なり、一般的に、正午以降の時間帯でランチタイムとは別に、休憩やお昼寝を許可する制度となっています。

時間も「1回15分、5回まで」と明確にルールを決めている場合もあれば、午後最大3時間の休憩を許可しているなど企業によって状況はさまざまです。

業種によっては「全員が寝ていては仕事が回らない」「お客様に迷惑をかける」といった事情があります。そのため、時間差でシエスタを取ったり、従業員数の少ない企業では電話応対に自動音声を採用したりするなどの工夫をしているのです。

海外企業の間で導入が盛んに行われている

海外ではGoogleやNike、UberやZapposなど、業種を問わず世界的な大手有名企業がシエスタ制度を導入しています。

Nikeは社員によって、いわゆる「朝型」と「夜型」の人間がいると捉え、全員がフレキシブルな働き方ができるようシエスタ用の部屋を用意しているのです。

Googleでも同様に、福利厚生の一環として「EnergyPod」と呼ばれる昼寝専用チェアを導入し、コーヒーやシャワーを提供するなど大掛かりな対応をしています。

日本でもシエスタ制度が導入され始めている

日本でシエスタ制度が注目され始めたきっかけは、前述の「働き方改革」と「労働人口の減少」です。有給休暇の取得や残業時間の削減が義務化され、日本企業は生産性の向上が大きな課題となりました。

また、労働人口の減少が大きな社会問題となり、人手不足の問題もどんどん深刻化する昨今、人材の確保・定着という課題にも取り組まなければなりません。

そのような中、生産性向上と従業員満足度向上の両方に効果が期待されるシエスタ制度を導入する企業が日本でも徐々に増え始めているのです。

海外の大手企業が大々的に導入するシエスタ制度。日本企業が直面する課題解決のヒントを握っているのかもしれません