就職活動を行っていく中で避けて通れないのが合格通知と不合格通知です。学生にとってはできればもらいたくない不合格通知。この不合格通知をあえて送らない、つまりサイレントお祈りをする企業も少なくありません。
ここでは、サイレントお祈りの意味やその実態、メリットやデメリットについて見ていきます。
目次
1.サイレントお祈りとは?
サイレントお祈りとは、不採用に関して何も通知がないことを意味する俗語です。本来であれば書類やメールなどで不採用の連絡をするのが一般的ですが、最近ではあらかじめ「通過者のみ連絡」といった説明もないまま、不採用についての明確な連絡をしないといったケースもあります。
合否が分かればそれぞれ対処できますが、サイレントお祈りの場合は明確な合否すら分かりません。そのため次の行動が取れなくなってしまうのです。
言葉の意味
続いて「サイレントお祈り」の言葉の意味について見ていきましょう。
サイレントの意味
「サイレント(silent)」とは静かな、無口な、沈黙などの意味を持つ言葉です。黙っている、言及しないと訳されることもあります。
お祈りの意味
「お祈り」とは神や仏に救いを求めること。儀式を通して行う場合は礼拝ともいいますが、救いを求めること自体は祈願や祈祷などともいわれます。
お祈りメールとは?
サイレントお祈りと対で使われるのがお祈りメール。企業からメールで送付される不採用通知の末尾に「今後の活躍をお祈りいたします」といった一文が添えられていることから、こういったメールはお祈りメールと呼ばれているのです。
学生の間では不採用通知=お祈りメールといわれてきましたが、やがて「連絡がない場合はご縁がなかったということでご了解ください」という通知が広まり、それが不合格の場合は連絡しない「サイレントお祈り」へと変わっていきました。
2.サイレントお祈りの実態
求人広告、求人情報誌を発行する株式会社アイデムが2016年6月に発表した調査によれば、選考結果の合否連絡において「不合格者には通知しないことがある」と回答した企業は全体の22.4%に及びました。
内訳を見ると従業員規模が大きくなるほど「通知しないことがある」と回答する割合が増加しています。採用人数が多いと予想される3000人以上の大企業においては、31.8%が不合格者には通知しないことがあると回答しました。
サイレントお祈りに対する学生の考え
この実態に対し、学生たちは怒りの声を上げています。「大手ほどマナー知らず」、「合否にかかわらず連絡が欲しい」、「サイレントお祈りによって企業全体の印象が悪くなる」などの声が相次いでいるのです。
返事をしないということはビジネスマナーとしても問題ありと感じられます。これから社会人となる学生に対して、先方からのアクションに対していつまでも回答しないといった悪い例を企業自らが示しているようなものです。
数千数万の応募者がいる大手企業の場合、お祈りメールといえども手間はかかりますし発送ミスが起こることも考えられます。しかしその行為が企業の品格を汚していることに気付くべきです。
3.何日目からサイレントお祈り?
ほとんどの学生が経験したことのあるサイレントお祈り。2016年10月には「何日目でサイレントお祈りと感じたか」の調査結果が発表されています。
1位は22.5%が回答した「1週間」。2位に17.5%の「4日目」、3位に9.5%の「6日目」と続きます。合計すると約8割が1週間以内に連絡がない場合は不合格だったと結果を受け止めているようです。
ぎりぎりまで期限を延ばした結果に採用、といったケースは考えにくいといった理由も挙げられるでしょう。
4.企業はなぜサイレントお祈りをするのか? その理由
多くの就活生が怒りの声を上げるサイレントお祈り。企業はなぜサイレントお祈りをするのでしょうか。
手間がかかる
応募者一人ひとりに落選を通知する場合、かなりの時間がかかることは想像に難くありません。特に大企業の場合は連絡する人数が数千数万に及びます。
中にはある程度数が絞れるまでは選考通過者のみに連絡し、二次選考、三次選考と進んでいく中では不採用の場合も連絡するといった企業も少なくありません。
ネームバリューのある企業は必然的に就活生の応募数が多くなります。サイレントお祈りは大手企業になればなるほど割合が高くなる、と理解しておくとよいでしょう。
人材を確保したい
手間より深刻なのが「内定辞退対策にボーダーの学生を引き止めておきたい」とする理由です。
企業は採用計画に基づいて行動するため、採用予定数を事前に決めて採用活動を展開しています。その際、内定辞退を見込んで予定数より多い学生に内定を出しますが、内定辞退が増え、採用予定数に届かないこともあるのです。
こうした状況を見越して採用のボーダーラインに立つ学生を「採用予備群(キープ)」として確保した結果、サイレントお祈りにつながってしまいます。
対応の数を減らす
不採用の通知をすると「なぜ私が不採用となったのか教えてください」といった質問や「なぜ落とされなくてはいけないのか」「自分はしっかりと準備をして面接に臨んだ。何が足りなかったのか教えてほしい」という問い合わせが発生する場合も。
志望者一人ひとりに回答していては本来の業務がストップしてしまいます。もちろんすべての就活生に当てはまるものではありませんが、こういった事態を避ける目的でも「サイレントお祈り」が行われているのです。
エラーを減らす
志望者の数が多ければ多いほど、合格者に対して誤って不合格通知を出してしまった、不合格者に合格通知を出してしまったというヒューマンエラーが発生しやすくなります。
パソコンで応募者の情報を管理していても、情報の入力はひとつずつ手入力で行わなくてはなりません。アドレスの打ち間違いでメールが届かない、誤送信してしまうなどのリスクはメールを送る件数が多ければ多いほど高くなるでしょう。
それらのエラーを減らすために連絡数の少ない選考通過者のみに連絡し、不採用の人には「サイレントお祈り」をするという企業もあるのです。
5.サイレントお祈りが引き起こすデメリット、問題
やむを得ない事情でも、サイレントお祈りには企業全体に対するデメリットがあります。
企業のイメージダウン
応募者にとって、採用選考の合否は人生を左右する重要事項です。配慮を欠いたサイレントお祈りによって会社に対する信用が著しく低下する可能性は高いでしょう。
また不採用になった人とはもう関わることはないと思われがちですが、会社と不合格者との関係は採用選考だけとは限りません。将来顧客になることや、取引先の担当者として再会することもあります。
安易なサイレントお祈りは会社の将来の取引チャンスを失う危険もはらんでいるのです。
担当者や社名がさらされることも
最近ではインターネット上やSNS、匿名掲示板などで会社や担当者を誹謗中傷するケースも増えています。インターネット上に掲載された情報をすべて削除することはできません。
サイレントお祈りによって不合格者が抱いたマイナスイメージが全国の就活生や取引先、一般消費者にまで広がれば会社の受けるダメージは計り知れないものとなるでしょう。
少子高齢化が進み、深刻な労働力不足が叫ばれる中で品格のない企業として拡散され、より人材が集まらなくなるという事態も考えられるのです。
6.サイレントお祈りの対応、対策、対処法
「もしかしてこれってサイレントお祈りかも?」と感じた就活生は以下のような対応、対策を講じるとよいでしょう。
待つ
さまざまなデメリットを理解した上で、それでも企業がサイレントお祈りをせざるを得ない場合もありますが、中には単に忙しくて連絡が追い付いていないといった場合もあります。
前述の通り、採用結果を一人ひとりに通知するため、大企業になればなるほど時間がかかるもの。企業が合否の結果を出すスピードには差がありますが、基本的には1週間もあれば結果が出ると考えてよいでしょう。
そこからさらに1週間、合計2週間経っても何の連絡もない場合、サイレントお祈りである可能性が高いといえます。
問い合わせる
ある程度待っても何の連絡もない場合、担当者に直接問い合わせるのもよいでしょう。電話やメールを使用して失礼にならないよう問い合わせる方法もあります。
ただし直接問い合わせるのは、選考から1週間以上経過しているなどある程度の日数が過ぎてしまったときのみです。短期間での問い合わせは企業を急がせるため、反対にマイナスイメージを植え付けてしまうことも。
面接時に結果の連絡方法を確認しておきましょう。
別の選考を受ける
2週間以上経っても何の連絡もない、選考結果について問い合わせたメールにも返信がない、このような場合はこちらから見切りをつけることも重要です。
選考結果を待っている間にも日は経過していくため、サイレントお祈りかもしれない、と悩んで待つよりも、切り替えてほかの選考に目を向けたほうがよい場合もあります。
採用、不採用の結果にかかわらずそれまでの選考を振り返って、よりよいパフォーマンスで選考に挑む気持ちも肝要です。