SQ(Social Intelligence Quotient)とは、対人能力や社交性の高さを表す指数。日本語で「社会的指数」や「社会的知能指数」などと訳されます。
近年ではリーダーの資質にこのSQが求められているのです。
1.SQとは?
SQとは“Social Intelligence Quotient”の略称で、日本語では「社会的知能指数」などと呼ばれます。
米国の心理学者ダニエル・ゴールマン氏が2007年にEQに続いて提唱した第3の概念で、氏は「他者と関わるときに発揮される社会性や対人能力」と定義。
そのためEQでは、「自身の感情をコントロールして場にふさわしい行動がとれるか」や「相手の感情などを理解し、適切な行動をとって関係を良好に保てるか」などの点に注目します。
管理職にとってSQは必要
企業や組織などで部下を持つ管理職やリーダーには、相手の感情を理解して良好な関係を築くSQが必要です。SQの高い管理職がいると部下のモチベーションが向上しやすくなり、部下の能力開発や育成がスムーズに進むのです。
2.SQを構成する2つの要素
SQの要素は、
- 相手の感情などを理解する「社会的意識」
- 適切な行動をとって関係を良好に保つ「社会的才覚」
の2つです。
社会的意識
社会的意識とは、相手の言葉や態度からその人の感情や意図、思考を汲み取る能力。
社会的意識を高めるには相手の話を心から傾聴し、相手の感情によりそう姿勢が必要です。たとえば仕事が遅れている部下に対して、上司が対処や対策を指示するのではなく、仕事が遅れている原因や部下の考えなどを聞き出してみましょう。
社会的才覚
社会的才覚とは、良好な人間関係を構築するための行動がとれる能力。
EQが高いと相手の感情や考えに対して十分に理解と共感ができ、会話だけでなく態度や姿勢などをとおして相手を肯定的な気持ちに導けるようになります。
3.SQと間違えやすい言葉
EQに似た語として以下の4つが挙げられます。
- IQ
- EQ
- AQ
- CQ
これらはいずれも人の能力を表す指数ですが、なかでもCQはグローバル戦略を展開する企業が注目し始めているのです。ここでは4つの指数をそれぞれ解説します。
IQ
“Intelligence Quotient”の略語で、日本語で「知能指数」と訳されます。
いわゆる「頭のよさ」を表す指数ですが、見る能力は学力ではなく情報処理能力や頭の回転の速さです。IQの測定では以下のような項目が基準として挙げられます。
- 一般知識
- 言語表現力
- 記憶力
- 理解力
- 集中力
- 問題解決力
EQ
“Emotional Intelligence Quotient”の略語で、日本語では「感情指数」あるいは「心の知能指数」と訳されます。
自分の感情をコントロールする力や、相手の感情を理解する力を表す指数です。EQの測定では以下のような項目が基準として挙げられます。
- 自己洞察力
- 自己制御力
- ストレス耐性
- 他人への共感力
- 社会的能力(他人と関係構築や協力などが行えるか)
EQ(心の知能指数)とは? 高い人の特徴、高めるメリットと方法
EQはIQと並びビジネスで注目される能力のひとつで、起業する人に必要だとされています。EQの要素や効果などについて解説しましょう。
1.EQとは?
EQ(Emotional Intelligence...
AQ
“Adversity Quotient”の略語で、日本語では「逆境指数」と訳されます。
逆境に陥った際に個人の対応能力を表す指数です。AQは「コントロール」と「責任」、「影響範囲」と「持続時間」の4つの要素から判断され、その結果によって5段階のレベルに分けられます。
- レベル1:逆境に陥ったら逃避する
- レベル2:ダメージを受けても生き残れる
- レベル3:正面から対処にあたる
- レベル4:逆境の管理と解決を目指す
- レベル5:逆境をチャンスととらえて活用しようとする
CQ
“Curiosity Quotient”の略語で、日本語では「好奇心指数」と訳されます。
新しい知識や経験に対する好奇心の強さを表す指数です。CQの測定では、25個ほどの質問に対して「はい」と回答した数の多さで測る方法があります。CQはその高い好奇心から多様性に適応できると期待されており、CQが高い人材を海外展開やダイバーシティなどの自社戦略で活用しようと考える企業も増えています。
4.SQの高いリーダーの特徴
SQの高い人材は高度なリーダーシップを発揮し、周囲によい影響を与えます。
実際に米国の大手金融機関を対象とした調査では、SQの高い人材がリーダーを勤めると業績も高まる傾向があると報告されているのです。SQの高いリーダーにはどのような特徴があるのかを見てみましょう。
常に前向きである
将来や次世代など先のことを考える傾向にあるため、ビジョンや目標に対して前向きな姿勢で取り組みます。
このような人は仕事においても高い目標を掲げてポジティブに挑戦し、その言動はチームメンバーにひきつけて自信や前向きな感情をもたらします。その結果チーム全体のモチベーションが上がり、目標を達成しやすくなるのです。
共感能力がある
相手の意見や考えを肯定し、喜怒哀楽などの感情に寄り添える共感能力が高い傾向にあります。
以下の言動ができるリーダーは、共感力が高いといえるでしょう。
- 常に周囲に関心を持ち、メンバーをよく観察している
- 相手の言葉の真の意味を考えながら会話を進められる
リーダーとメンバー間の信頼関係の構築や良好なコミュニケーションを維持するために、この共感能力は重要な能力なのです。
傾聴力がある
メンバーの感情や考え方などを十分に聞き出すためには傾聴力も欠かせません。
傾聴の目的は単に話を聞くことではなく、相手の表情やトーンまで気を配り、相手の本当の気持ちや発言の真意などを読み取ること。傾聴力の高いリーダーは以下のような効果をもたらします。
- メンバーと信頼関係が構築しやすくなる
- メンバーの潜在的な課題を発見しやすくなる
いずれもメンバーのモチベーションやエンゲージの向上につながるでしょう。
コミュニケーションスキルが高い
コミュニケーションの基本である「聞く」と「話す」の2つのスキルが高いことも大切です。
聞くスキルはさきほどの傾聴力、話すスキルは相手に自分の意図や気持ちなどを伝える「発信力」や「表現力」が挙げられます。たとえば以下のようなコミュニケーションスキルが求められるでしょう。
- 相手の立場や気持ちに配慮できる
- 伝えたいことを正確に理解できる
- 相手が理解しやすいように的確に伝えられる
- テンポよく会話を進められる
SQの高いリーダーがいるとメンバー間に円滑なコミュニケーションが生まれ、仕事の効率アップにつながります。
影響力がある
言動や働きかけによって相手の心を動かし、考え方や行動を変化させる影響力を持っています。
このとき肩書や役職などから発生するポジションパワーではなく、SQの高いリーダー自身が持つ経験や技術、人間性などの魅力によってプロジェクトのメンバーによい影響を与えるのが特徴です。
影響力が高いと以下の効果が期待できます。
- メンバーの説得がしやすい
- チームの士気が高揚する
- 困難時の支援や協力を獲得しやすい
人を育てられる
SQの高いリーダーは人を育てる能力、つまり人材育成にも優れています。人を育てる際に必要なスキルは以下の3つです。
- プロジェクトの現状を把握して問題点を洗い出す現状把握スキル
- プロジェクト構成員の一人ひとりにあった目標設定ができる目標計画設定スキル
- メンバーと良好な信頼関係を築けるコミュニケーションスキル
SQの高いリーダーはメンバーの状況に応じて的確なアドバイスや指導を行えるため、グループ全体のレベル向上につながるでしょう。
チームの雰囲気によい影響を与える
SQの高いリーダーが存在するチームには笑顔が多く、チームの雰囲気がよくなる傾向にあります。
その理由はリーダーがよく笑うことと考えられているのです。ヒトには相手の行動を自分自身の行動のように感じる脳内神経細胞があり、よく笑うSQの高いリーダーがいると、それを見たメンバーも笑顔になる傾向があります。
笑顔が多いリーダーであるほど職場の雰囲気がよくなっていくでしょう。
SQを生かしたリーダーシップの例
SQの高い警視庁機動隊員の事例です。
2013年6月4日に行われた「2014 FIFAワールドカップアジア予選」で日本が勝利して出場が決定したとき、渋谷駅前には歓喜したサポーターが集結して騒然としていました。そのようななか1人の男性隊員が「私たちはチームメイトです。日本代表のようなチームワークで安全に移動してください」などユーモアを交えた呼びかけを実施。
この呼びかけに共感したサポーターたちはこの隊員に協力し、安全を確保できたのです。
5.SQとソーシャルキャピタル
SQは企業の継続的な経営に欠かせない「ソーシャルキャピタル」においても重要です。
ソーシャルキャピタルとは日本語で「社会関係資本」と呼ばれ、社会や地域での信頼関係や結びつきを指します。自社と地域との間はもちろん、社内においても信頼関係を構築していく必要があるため、企業における「ヒト」や「モノ」と並ぶ新しい資源として注目されているのです。
SQの高い人は社内外の人との間に立って信頼関係を構築できるため、SQの高い人材の採用や育成に力を入れている企業も増えています。
ソーシャルキャピタル (社会関係資本)とは? 事例で簡単に
ソーシャルキャピタルとは、人々の関係性やつながりを資源としてとらえる概念のことです。ここではソーシャルキャピタルを構成する要素や重要性、メリット、デメリットについて解説します。
1.ソーシャルキャピ...
SQの高い社員がソーシャルキャピタルを生み出す
SQの高い人材はさまざまな人と円滑なコミュニケーションをとれるため、社内外の信頼関係や人脈などを構築しやすくなり、ソーシャルキャピタルが実現しやすくなるのです。
社内では配置転換や研修、社内イベントなどを通してチームや部署を越えた信頼関係を作れます。同様に社外に対しては、取引はもちろんCSR活動やSNSなども信頼関係の構築に有効です。
6.SQの高め方
SQは、人間の考えや思考について理解し、どのように行動するべきかを考えられる能力です。これらの点を日常的に意識してトレーニングすると、SQを高めていけるでしょう。
ここではSQを高める方法を3つ紹介します。
人を観察する
観察力を持っていると、相手が話すときの表情や仕草、言葉のトーンなどから相手の状態を理解し、協調できます。
この人を観察する力はすなわちSQの要素である「社会的意識」といえるのです。観察力を鍛えるためには常に周囲に注意を払い、その人たちの言動と関係性を把握しましょう。そして自分がどのような行動を取ればよい影響を与えられるかを考えることが大切です。
人の感情を推測する
EQを高めることもSQの向上につながります。
EQを高めると人の感情を推測できるようになるからです。そのためには、まず自分の感情に気づけるようになることが大切。自分の感情に気づけるようになると、周囲の状況や会話の状態などからその人がどのような感情を持っているかを推測しやすくなるためです。
相手の感情を読み取れるようになると、SQの要素である「社会的才覚」を習得できるでしょう。
多くの人と交流する
自分自身が所属する組織やグループ内にとどまらず多くの人と交流すると、観察力や感情を推測する力が身に付きやすくなります。
さまざまな人の考えを聞き、感情や行動を観察できるからです。仕事中の言動はもちろんですが、休憩などで交わされる雑談も活用しましょう。雑談からも相手の意見や価値観などを聞き出せますし、メンバー同士が気軽に話せるよい雰囲気を作れます。
7.証券用語としてのSQ(特別清算指数)
証券業界におけるSQは”Special Quotation(特別清算指数)“の略語。
株価指数の先物取引あるいはオプション取引などにおいて、最終決済に用いられる「清算価格」を意味します。この清算価格のことを「SQ値」あるいは「特別清算数値」と呼び、取引最終日までに決済をしないでいると自動的に清算価格で最終決済が実行されるのです。
SQ(特別清算指数)の関連用語
先物とオプションの決済が重なる「3月、6月、9月、12月」のSQ値を「メジャーSQ」と呼び、そのほかの月のSQは「ミニSQ」とも呼ばれます。このSQ値は相場の短期的な強弱を見極める際の参考になるのです。日経平均株価が1週間にわたってSQ値以上を維持した場合は日経平均が上昇しやすいとされ、逆に日経平均がSQ値を下回った場合は相場が弱含みになる予兆と考えられています。
SQ値の算出方法
各月の取引最終日の翌日となる第2金曜日がSQ算出日(SQ日)とされており、指数構成銘柄の始値で計算された値がSQです。日経225先物取引やオプション取引の特別清算指数は、SQ算出日における銘柄それぞれの寄り付き価格をもとにして指数を計算して算出。必ずしも日経平均の始値とは一致せず、実際の株価指数よりも短期的には割高あるいは割安になる場合もあります。