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玉突き人事とは、「社員Aが異動した穴を社員Bで埋め、そしてその社員Bの穴を社員Cで埋める」いうような連鎖的な人事異動のこと。しかしあえて玉突き人事を発生させることもあるのです。
目次
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1.玉突き人事とは?
玉突き人事とは、「社員を異動させたあと、別の社員をそのポストへと異動させる」ことを繰り返す人事異動のこと。
ビリヤードの「玉突き」が語源で、玉がほかの玉にぶつかって連鎖的に動くことになぞらえています。
玉突き人事の例として、「突発的な異動で部署内の人員が不足し、やむを得ずほかの部署から社員を異動させた」というケースが挙げられるでしょう。
急な退職者が出た場合も同様です。玉突き人事は応急処置のような人事異動といえるでしょう。
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配置転換との違い
配置転換とは、社員を勤務地や職種、業務内容なども含めて異動させる人事異動のこと。玉突き人事との大きな違いは、配置転換には企業側の明確な目的や意図がある点です。たとえば昇進やスキルアップなどが目的に挙げられます。
玉突き人事は、突発的に生じた空席を埋めるために行う異動であり、その多くは計画的な人事異動ではありません。
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ジョブローテーションとの違い
ジョブローテーションとは、社員の能力やスキルを向上させるために、経験としてあらゆるポストへ異動させていく計画的な人事異動です。その目的は、社員にさまざまな職種を経験させることによって、能力やスキルを向上させることです。
人材の適材適所のほかに、コミュニケーションの活性化やマンネリ化防止といった目的で行われることもあります。
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横滑り人事との違い
横滑り人事とは、現在の役職やポストと同程度の地位のまま、違う部署や支店に異動する人事異動のこと。つまり異動後も、給与や地位の高さは変わりません。
玉突き人事は、一見すると横滑り人事と同じような人事異動に見えることもあります。しかし横滑り人事は連鎖的に起こることはほとんどなく、単独の人事異動として発生するという点が玉突き人事との大きな違いです。
玉突き人事は、配置転換やジョブローテーションのように戦略的な人事ではありません。しかし、その中でも可能な限り適切な人材を適切な場所に配置することが重要です。
人材管理システム「カオナビ」なら、一元管理された人材情報をもとに、社員を適材適所な部署・ポジションへと配置可能。人事の検討に必要な人材情報がすぐに引き出せるため、急な玉突き人事が発生しても可能な限り適材適所な配置を検討できます。
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2.玉突き人事のメリット
玉突き人事は、突発的に発生する穴埋めに行われる以外に、人員不足の解消や社員の不正防止など、そのほかの意図をもって行われる場合もあるのです。
ここでは、玉突き人事が行われる具体的なメリットについて説明します。
業務内容の是正
さまざまな人材が異動していく玉突き人事によって、悪しき風土が改善される可能性があります。
長く人事異動がなかった部署内には暗黙のルールや組織風土が根付きやすく、業務内容のルーティン化やマンネリ化、社員同士のなれ合いなどが生じるでしょう。
そこへ玉突き人事で異なる価値観を持つ人材を配置し、業務改善や既存社員の意識向上などを狙うのです。
人員不足の解消
予定外の退職など突発的な人員不足が発生した際に、応急処置として玉突き人事が行われます。
急遽人材採用を行っても、採用して教育をしなければなりません。戦力化するまでに数か月ほどはかかるでしょう。
しかしそれを待っていては日々の業務を滞ってしまうため、ひとまず社内の人材を異動させて人員不足を解消するのです。
問題のある部署の改善
問題のある部署を改善するために、あえて玉突き人事を行うこともあります。たとえば
- 部署内でコミュニケーションが停滞している
- 部署内の人間関係が悪化している
などの理由から、業務に支障が出ているケースが挙げられます。
放置してしまうと生産性の低下や業績悪化にもつながりかねません。玉突き人事を利用して人材を再配置し、問題解決を狙います。
社員の不正防止
社員の不正防止のために、意図的に玉突き人事を行って人材の入れ替えを行うこともあります。長年同じ顔ぶれで仕事を行っていると、部署内のヒエラルキーや暗黙のルールが発生してしまい、不正や癒着が起こることがあるからです。
玉突き人事で人材を再配置すると、新しい人材に対する緊張感が部署内に漂います。部署内の悪しき風土が改善され、不正の抑止につながるでしょう。
人員バランスの適正化
通常の人事異動では人員配置のバランスが崩れてしまうときに、玉突き人事を行うこともあります。
通常の人事異動は3月や9月など異動時期が定まっています。しかし年次によっては社員数の過不足があり、最適な人事異動が行えない場合があるからです。
突発的な玉突き人事で人事異動を行うと、異動時期を待たずに人員配置のバランスを調整できます。
このように、玉突き人事は意図して行われる場合もあります。その際重要となるのは、適切な玉突き人事ができているかという点です。そのためには組織全体の人員の過不足やスキルバランス。社員の評価やスキル情報等を把握しておく必要があります。
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3.玉突き人事のデメリット
予想外の人事異動となる玉突き人事では、異動させられる社員から反感を買うことも少なくありません。また人材育成計画を妨げてしまうため、企業側としても予想外の痛手となる弊害も生じることもあるのです。
ここでは、玉突き人事が引き起こすデメリットや弊害を解説します。
人材の流出
希望とは違う部署や役職へ異動させられた社員は「この企業ではキャリア形成が難しい」と感じて離職する恐れがあります。
とくに専門性の高い業務に就いていた社員や若年層は転職市場で有利になることが多いので、他企業への転職を検討しかねません。
やむを得ない玉突き人事であっても、社員の希望や意思を尊重する必要があります。
キャリア形成の阻害
通常の人事異動は社員の能力や経験、本人の希望などを踏まえて、キャリア形成を達成するために行われます。
しかし、玉突き人事で空いたポストを埋めていくことを優先しすぎると、異動させた社員のキャリア形成を阻害してしまうおそれがあるのです。
突発的な玉突き人事を実施したとしても、その後にジョブローテーションなどでキャリア形成をフォローする必要があるでしょう。
人間関係の再構築
玉突き人事によって異動した社員にとって、新しく人間関係を再構築していく手間はデメリットとなります。異動先も人間関係が変動するため、生産性やモチベーションの低下、士気の悪化が生じるおそれがあるのです。
さらに転勤を伴う異動の場合、その影響は対象者の家族にまで及びます。人間関係だけでなく職場環境が大きく変わるため、社員によっては大きなストレスを感じてしまうでしょう。
適材適所の人材配置が困難に
本来の人事異動は適材適所を考慮して人員配置を行いますが、玉突き人事では業務の維持継続を先決するため、それぞれの役割やスキルまでは配慮が及ばないことがほとんどです。
もともと適性が高い部署へ配置した人材を、適性が低い部署へ異動させることになるためその後の人員配置が複雑になり、適材適所が困難になるおそれがあります。
社員負担の増加
異動した先と残された部署の双方において、ほかの社員へ負担がかかります。異動先の部署では新しく配属された社員への教育、人間関係の構築が求められます。異動元の部署では、空いた役割を埋めるために残った社員で業務を行わなければいけません。
突発的な玉突き人事では、満足のいく引き継ぎや新体制が整うまでの受け入れ準備を行う余裕がないため、どうしても社員への負担が大きくなりがちです。
玉突き人事は社員の離職やエンゲージメントの低下を引き起こし、ひいては組織全体の生産性低下につながります。急遽玉突き人事が必要になった際にも、そのデメリットを抑えるため、しっかりと組織と社員の状況を確認しておきましょう。
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4.玉突き人事の防ぎ方
玉突き人事は、急遽の欠員を補てんするための最終手段です。可能であれば玉突き人事を行わずに、計画的な人事異動を行ったほうがよいでしょう。ここでは、玉突き人事を起こさないようにするための注意点について説明します。
長期的な組織計画の作成
玉突き人事を起こさないためには、事前に長期的な組織計画を作成しておくことが大切です。以下のような点を検討して計画を実行すれば、突発的な玉突き人事を実施する必要がなくなるでしょう。
- 人材管理をどのように行っていくのか
- 生産性の向上や社員のキャリア形成の実現にはどのような組織体制が最適か
- 組織体制を実現するにはどのような人材がどれくらい必要か
戦略的な人事異動
長期的な組織計画と経営戦略にもとづいた人事異動を行うと、玉突き人事を必要とするトラブルを回避できるでしょう。戦略的な人事では計画的な異動を実施し、異動前にはジョブローテーションなどで必要なスキルを習得させます。
社員が希望するキャリア形成と生産性の向上を両立していけるため人材が定着しやすくなり、退職による玉突き人事を防げるのです。
社員の育成基本計画を作成
長期的な組織計画や戦略的な人事異動と平行して、社員一人ひとりの育成基本計画を作成しておきましょう。上述したとおりあらかじめ人事計画を立てておけば、玉突き人事の必要性は低くなります。
もしやむを得ずに玉突き人事を行うことになっても、社員が納得できる育成計画があれば、異動先でもモチベーションの低下や離職を防げるでしょう。
社員のキャリアプランを把握
突発的な人事異動で社員のキャリア形成を阻害しないように、社員のキャリアプランを事前に把握しておきましょう。
やむを得ず社員の望むキャリアプランとかけ離れた玉突き人事をする場合でも、その社員の意思や希望を理解していることを示すことが大切です。社員の不満やストレスの軽減、人材の流出防止効果が期待できます。
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人事異動の基準を明確化
正当な理由や根拠にもとづいた人事異動を原則とし、入社時の就業規則や誓約書に人事異動の範囲や基準を記載しておくと、急な玉突き人事を防げるでしょう。
たとえば一人の人事異動を打診した際に十分な納得を得られず、その社員が退職してしまって玉突き人事が生じることがあるからです。
あらかじめ人事異動の基準を明確に書面で定め、社員の理解と同意を得ておきましょう。
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5.やむを得ず玉突き人事を行う場合の対応
玉突き人事は組織を不安定にする可能性があるため、行わないに越したことはありません。しかし病気や急な退職などで、やむを得ずに玉突き人事をせざるを得ない場合もあるでしょう。
玉突き人事によるリスクを減らすために注意すべき点を説明します。
異動させる人材を見極める
異動先でも問題なく活躍ができる人材を選定する必要があります。とりあえず補てんしたものの、能力不足で業務が停滞してしまうようでは意味がありません。
玉突き人事は短期間で決定しなくてはならない人事異動ですが、最適な人材を見極めることを重視しましょう。
適切な人選を行うには、その社員の
- 行動基準
- 意識や思考
- 価値観
などのコンピテンシー(行動特性)に注目するのがポイントです。
異動する社員に十分に納得してもらう
人事異動が決まった社員と複数回に分けて話し合いの場を設け、十分に納得を得ることも重要です。
玉突き人事では、本人の意思に反した人事異動となることがありますが、無理に人事異動を行うとモチベーションやパフォーマンスの低下、最悪の場合は退職につながりかねません。
本人の納得を得ずに強行してしまうと、問題の解決どころか新たな問題が生じるおそれがあります。
異動する社員や部署をフォローする
異動する社員への社員に対するフォローは必要不可欠です。本人が納得して異動した場合でも、新しい職場環境や業務内容に慣れずに負担がかかることもあるからです。
また異動先の部署や異動元の部署においても、人員入れ替えによる負担から、生産性やモチベーションが低下する可能性があります。そのため人事や経営層は双方に気を配る必要があるのです。
不正や違反に注意する
労働契約法によって人事異動には制限が定められているため、無計画に玉突き人事を行うと法令に抵触する恐れがあります。法令に反するケースは以下のとおりです。
- 就業規則に異動に関する記載がない
- 就業規則にない職務内容や勤務地への異動になる
- 権利の濫用にあたる(必要性がない、動機や目的が不当、社員が不利益をうけるなど)
そのほか労働組合法7条(不当労働行為)や労働基準法3条(均等待遇)、男女雇用機会均等法6条(性別を理由とする差別の禁止)などの違反にも注意しましょう。
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