サブスクリプションとは、消費者がモノの利用権を借り、利用した期間に応じて料金を支払うビジネスモデルのことです。
目次
1.サブスクリプションとは?
サブスクリプションとは、利用できる期間「利用権」を支払うサービスのことで、略して「サブスク」と呼ばれます。
英語では「subscription」と表記し、定期購読という意味を持つのです。昔からある新聞や雑誌の定期購読もこのビジネスモデルが使われてきました。定額制サービスと同義と考えてよいでしょう。
デジタルの進化に伴い、音楽配信やソフトウェア販売が一般的になりました。最近では車や家電、飲食店などでもサブスクリプションを導入するケースが増えてきています。
2.利用者側のサブスクリプションのメリット
サブスクリプションを利用すると、消費者である利用者側にどういったメリットがもたらされるのでしょう。利用者のメリットは導入するサービスによってさまざまですが、共通するのは費用面です。
通常どおり購入するケースと比較して、どのような点で違いがあるのか、またどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
イニシャルコスト(初期費用)を大きく抑えられる
イニシャルコスト(初期費用)を抑えられるという点は費用面での大きなメリットです。これは、特に家電や自動車など金額の大きい買い物の場合に効果的でしょう。
たとえば単身赴任や学生の新生活など、期間限定で一人暮らしを始める人向けの家電レンタルサービスなども増えてきています。
また「毎年新しい車に乗りたい」「期間限定で車が必要」という人は、車のサブスクリプションを利用すれば費用面をぐっと抑えられるでしょう。
気軽にさまざまなサービスやモノを試せる
気軽にさまざまなサービスやモノを試せる点も、サブスクリプションの大きな魅力です。前述の家電や車など額が大きい場合はもちろん「気になるけど、買ったら損をするかも」と二の足を踏んでいたサービスや商品を試すきっかけが与えられます。
サブスクリプションは、そのコストパフォーマンスの高さでも注目を集めるサービスですので、一回の契約期間中に支払う額が低額である場合も多いです。
またスマホやPCから簡単に登録・解約ができるため、気軽にいろいろなサービスやモノを試して、新しい体験や比較ができます。
維持や管理の必要がない
維持や管理費を節約できるのもメリットです。サブスクリプションは商品を購入する場合と違い、サービスやコンテンツの利用権を購入する、すなわちサービスを借りる形式のものがほとんど。
つまり商品の受け取りや返却に時間をかける必要がなく、また購入した商品のメンテナンスや保管場所を作る必要もありません。特に自動車など維持費に費用がかかるものの場合、非常に大きなメリットとなるでしょう。
3.販売者側のサブスクリプションのメリット
次は視点を変えて、販売者側から見たサブスクリプションのメリットについて解説しましょう。提供するサービスによって異なりますが、4つあります。
- 継続的な収益が期待できる
- リスクヘッジ
- ユーザーへアプローチしやすい
- ユーザーデータの収集ならびに分析が進めやすい
①継続的な収益が期待できる
販売者や企業にとって重要な収益の安定化を図れます。利用者にとっては安価で気軽に借りられるサブスクリプションですが、価値のある体験を定期的に提供できるサービスからユーザーは離れません。
たくさんのユーザーが毎月課金をしてくれるサブスクリプションモデルは毎月確実な入金があります。利用者が増えれば増えるほど、より安定した収益が期待できるのです。
②リスクヘッジ
サブスクリプションサービスはシンプルなビジネスモデルですので、物販モデルなどと比較して売上試算が容易かつリアルに予測できるのです。
毎月定額制のサービスの場合、「利用者×単価」で毎月の売上が計算できます。現時点の登録ユーザー数や、解約率を計算すれば翌月の収益や見積もりを予測し、経営指標も立てられるでしょう。
採算ラインを明確にして無駄なコストをカットし、将来のキャッシュフローを読んでいけば、新しい商材開発の目途も立てられます。
リスクヘッジとは?【意味・使い方をわかりやすく】言い換え
「リスクヘッジ」とは危険を予測し、それを避けるよう対策を取ること。ここではリスクヘッジの意味や使い方、具体的例などについて見ていきます。
1.リスクヘッジとは?
リスクヘッジとは、将来のリスクを予測...
③ユーザーへアプローチしやすい
高単価の商品をユーザーに知ってもらえる、手に取ってもらいやすくなります。たとえば数十万、数百万の商品でも、定額の課金ならユーザーは初期コストを抑えられるため、導入障壁が下がり、商品を気軽に試します。
つまりサブスクリプションモデルの導入によって、見込み客が顧客になりやすい、新規ユーザーを獲得しやすいといった好循環が生まれるパターンもあるのです。
④ユーザーデータの収集ならびに分析が進めやすい
顧客が継続的にサービスを利用するサブスクリプションモデルは、利用状況などのデータ分析を容易にかつ手厚く実行できます。
特に音楽配信サービスやゲームなどコンテンツの販売では、ユーザーの好むジャンルのコンテンツが計測可能なため、データを材料にその後のコンテンツ育成や制作におけるプランを打ち出せます。
データ分析はユーザーの解約防止や新規呼び込みのプランを立てる際にも効果を発揮するでしょう。
4.サブスクリプションのデメリット
サブスクリプションは、使い方や運営方法によってはデメリットも発生します。得をするためにサブスクリプション契約したのに、ビジネスを成功させるために新しいビジネスモデルを取り入れたのに、損をしたら元も子もありません。
そうならないために、利用者と販売者、それぞれの視点からサブスクリプションのデメリットを見ていきましょう。
(利用者)長く使えば使うほど損になる可能性がある
サブスクリプションサービスを長く使ったためかえって損になるケースがあるのです。音楽や、映画・ドラマなどの映像コンテンツ、ソフトウェア・ライセンスなどの分野はサブスクリプションがどんどん浸透しています。
これらの「コンテンツ系サービス」「低単価でさまざまなサービスを購入できるもの」は、長期間利用しても損をしにくいです。
しかし家電や自動車などは長く利用し続けた際、「買ったほうが安かった」という事態になる可能性があります。大きな買い物に分類される商品は、期間を決めて利用したほうがよいでしょう。
(利用者)使っていなくてもコストがかかる
定額制のサブスクリプションサービスは、使っていなくても費用が発生するサービスがほとんど。つまり読まなくても購読している新聞が送られてくるのと同じです。使わなくなったサービスでも利用者が解約しない限り毎月の支払は発生します。
音楽や動画の配信サービスなど月々の支払額が少ないサービスの場合、契約していたことを忘れてしまい、結果、「使っていないのに毎月払っていた」という状況にもなりかねないのです。契約しているサービスは定期的にチェックし、使わない場合は解約しましょう。
(販売者)ブランドの価値が下がる可能性も
サブスクリプションサービスは商品を安く提供するもの。利用者にとっては有難いですが、高級志向の商品を扱う販売者は、ブランドの価値を下げないよう注意しなければなりません。
たとえば高級車を安価で利用できるようになると、長年築き上げてきたブランドに傷をつけてしまったり、消費者に安価なブランドだと認識されたりする恐れがあります。
このような場合はブランドを毀損しないように時間をかけてビジネスモデルを練り、サービスを開始することが重要です。
(販売者)新規商品開発のコストがかさむ
サブスクリプションサービスの大きなデメリットは「ユーザーが飽きたら解約される」こと。サブスクリプションを利用するユーザーは、興味のあるコンテンツ、さらに新鮮なコンテンツを求めています。
このような欲求にこたえ、興味を引くコンテンツを常に供給しなければサービスからの離脱が目立つようになるでしょう。特に低単価の商品帯では、定期的に新規商品開発を行う必要があり、そのコストがかけられない販売者は撤退するケースも見られます。
5.代表的なサブスクリプションサービス
前述のとおり、サブスクリプションサービスは音楽配信やソフトウェア販売などにとどまらず、家電や車、洋服などにも適用できるビジネスとして注目されています。つまり消費者ニーズが、商品やサービスの「所有」から「利用」に変化してきたといえるのです。
ここでは、サブスクリプションのビジネスモデルとして一般的な6種類のパターンを紹介します。(以下、価格はすべて月額料金・税込表示、2020年9月現在)
映像・音楽・書籍
映像や音楽、書籍はサブスクリプションと相性がよく、いち早く消費者に浸透しました。
映像分野で代表的なものは、「Hulu」(月額1,026円)「Netflix」(月額880円~)「Amazonプライムビデオ」(月額500円~)などです。映画やドラマなどの映像作品を配信するほか、それぞれのメディアでオリジナルコンテンツを作成して、話題を呼んでいます。
また音楽配信領域では各社さまざまなサービスと連携させ「聴き放題」「通信料がかからない」など工夫を凝らしています。代表的なサービスは、「Spotify」(月額980円)「Apple Music」(月額980円、学生は480円)「AWA」(980円、学生は480円)などです。
書籍はAmazonが運営する「Kindle Unlimited」(月額980円)がその書籍数で業界を牽引しており、雑誌に特化した「dマガジン」(440円)、「楽天マガジン」(418円)などはドコモ会員や楽天会員から支持を集めています。
ゲーム
AppleやGoogleが進出しているゲーム業界のサブスクリプションも注目を集めています。「Apple Arcade」(月額600円)は100作品以上の専用タイトルが遊び放題で、セガやカプコンなど有名ゲームメーカーも参入しているのです。
日本版リリースは未定ですが、Googleの「Google Play Pass」は世界的に注目を集めています。Google Play上のアプリでもサブスクリプションモデルを採用したゲームが多数配信されているのです。
従来、ゲーム業界を牽引してきたSONYと任天堂は、それぞれ「PlayStation Now」(月額1,180円)やオンラインマルチプレイが可能な「PlayStation Plus」(月額850円)、「Nintendo Switch Online」(月額306円)を展開し、幅広い層から支持を集めています。
自動車・交通
自動車のサブスクリプションサービスでは、高級車を安価で長期レンタルできる「NOREL」やナイル株式会社がオリックス自動車と提携して提供する「カルモ」が台頭し、車好きの間で話題を呼びました。
大手自動車メーカーのトヨタも新しいサービスとして「KINTO」を全国展開し、注目を集めています。
交通領域では、NEXCO西日本が展開する高速道路乗り放題サービス「ドライブパス」があります。こちらは乗り降り自由で観光施設やサービスエリアでの特典があり、観光需要に一役買っているのです。(※月額料金は車種・エリアによって異なる)
ファッション・美容
ファッションや美容といった分野でもサブスクリプションが浸透しています。
特に人気が高いのはアパレルで、専任コーディネーターが選んだトレンドの洋服が毎月家に届く「エアークローゼット」(月額7,480円~)、定額で洋服が借り放題の「MECHAKARI(メチャカリ)」(月額3,280円~)などは有名でしょう。
また1か月分のワイシャツが借りられる「YClean(ワイクリン)」(月額9,680円~)や宅配型クリーニングサービス「リネット」もユニークなサブスクリプションとして話題です。
「BLOOM BOX(ブルームボックス)」(月額1,650円~)や「My Little Box」(月額3,350円)などコスメBOXが毎月届くサービスもあります。こちらは月額で商品が届くというサービスで、もちろん返却の必要はありません。
飲食
飲食業界もサブスクリプションに進出しています。毎朝のコーヒーや朝食、定期的に利用しているお店のランチなどを通常より安く利用できるといったものです。
ランチ1食200円以下で食べられる「always LUNCH(オールウェイズランチ)」(新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、無期限休止中)や、コーヒーが飲み放題になる「coffee mafia(コーヒーマフィア)」(月額3,000円~)、指定のラーメンを1日一杯無料で食べられる「野郎ラーメン」(月額9,460円~)などが話題を呼んでいます。
家電・小売
人気の家電サブスクも各社それぞれしのぎを削っています。
家具を一つひとつ選んでレンタルできる「CLAS」(月額400円~)や、ダイソン製品を購入前にレンタルできる「Dyson Technology +」(月額1,100円~)、カメラのサブスクリプション「GooPass」(月額6,380円~)も愛好者から人気を集めています。
他にも日本酒やワインが毎月自宅に送られてくる「KURANDO CLUB(クランド クラブ)」や「THE STELLA(ザ ステラ)」、さらには季節の花を毎週届けてくれる「Bloomee LIFE(ブルーミー ライフ)」など、余暇を充実させるユニークなサブスクリプションも増えてきました。
6.サブスクリプションで成功するには
このようにすでにさまざまな業界が、サブスクリプションというビジネスモデルを取り入れ、成果を出しています。
ここでは、サブスクリプションで成功するためにはどのような点に気を付け、どう注力すればいいのか、前述の「販売者側のサブスクリプションのメリット・デメリット」の内容を踏まえて解説しましょう。
- 継続性をひたすら上げる
- 商品・サービスの展開を幅広く
- LTVを最大化してゆく
①継続性をひたすら上げる
一つはサービスの継続性を上げること。継続性とは、販売者側が提供するサービスを顧客がサービスを「継続」して利用するという意味になります。
9割以上の顧客が継続してサービスを利用すれば事業は成長しますが、離脱が多いと新規顧客の獲得に力を入れねばならず長期的な成長が難しいといわれているのです。
鮮度の高いサービスを求める顧客に飽きられず、「来月もこのサービスを利用しよう」と思われるためには商品開発努力が必要不可欠でしょう。
②商品・サービスの展開を幅広く
顧客に飽きられないサービス体験を提供するため、さまざまなユーザー層に合わせた商品展開を行い、ケースに応じて顧客一人ひとりにフィットしたサービスを細かく用意していくといった企業努力も必要です。
内容は扱うサービスによって異なります。カスタマーサービスの強化や、ユーザーの指向に合わせておすすめの商品を画面上で提示するといったシステム面の強化も、これに当たります。
③LTVを最大化してゆく
LTVとは、一人あるいは一社が、特定の企業やブランドと契約してから契約終了するまでにどれだけの利益をもたらすのかを算出したもの。Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略で、「顧客生涯価値」という意味を持ちます。
LTVの向上は、ビジネスの基本でありサブスクリプションにおいても重要です。LTVの最大化するには、アフターフォローの徹底、サービスのアップグレードやアップセルを目指すなどが必要だと考えられています。
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