寸志とは、労いや感謝の気持ちを表すために贈る少額の金銭や物品のこと。本記事では、寸志と似た言葉の違いや、ビジネスで寸志を渡すメリット、寸志を渡す場面などについて解説します。
目次
1.寸志とは?
寸志とは、「心ばかりの贈り物」を意味する言葉で、労いや感謝の気持ちを表すために贈る少額の金銭や物品のことです。「寸志」という言葉の「寸」は少し、「志」が心遣いを意味します。ビジネスでは、上司から宴会を取り仕切った幹事に渡す金銭や、会社から従業員に支給する金銭などを指します。
寸志は、目上の人が目下の人に金銭や物品を渡す際に謙譲して使う言葉で、目上の人に対して使うのはマナー違反です。寸志ではない、ほかの言葉に言い換えましょう。
言い換え方
寸志の言い換え方は、以下の4つです。
- 松の葉
- 寸情
- 寸意
- 薄謝
いずれも、寸志と同様に「心ばかりの贈り物」を表します。基本的に、目上の人から目下の人に対して使うものの、「松の葉」は目上または同格・同輩の人にも使用できます。
ただし、のし袋やのし紙の表書きとしては「寸志」を使用するのが、もっとも一般的です。
2.寸志と似た言葉との違い
下記のような寸志と似た言葉との違いを解説します。
- ご厚志・ご芳志
- ボーナス・賞与
- 謝礼金
- 心付け
①ご厚志・ご芳志
ご厚志(ごこうし)やご芳志(ごほうし)は、寸志を受け取った側が使う言葉です。
「寸志」には「わずかばかりの」といった謙遜した意味を含まれているため、「寸志を頂いた」と表現するのは失礼にあたり、マナー違反です。そのため、「ご厚志を頂きました」「ご芳志を頂きました」などと表現します。
なお、「厚志」は手厚い親切心、「芳志」は相手を敬う心遣いを意味し、芳志のほうが、よりかしこまった表現とされています。
一般的によく見聞きする義援金や協賛金、寄付なども、ご芳志またはご厚志に当たります。
②ボーナス・賞与
ビジネスにおいて、寸志とボーナス・賞与は、どちらも会社が従業員に対して支払う金銭を指すという点では同じですが、支給される仕組み、タイミングや金額が異なります。
一般的に、ボーナス・賞与は決まったタイミングで支払われ、一定の条件のもとに金額が決まっています。一方、寸志は、決まったタイミングはない場合が多く、金額もボーナス・賞与より少額であることがほとんどです。
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③謝礼金
寸志と謝礼金は、意味合いが異なります。
寸志は、労いの意味を込めて目上の人から目下の人へ渡すものです。一方で、謝礼金は善意を受け取った際に感謝の気持ちとして渡すもののことで、そこに立場の上下は関係ありません。たとえば、講師への講演料などで使われる言葉です。
ただし、契約に基づく報酬とはニュアンスが異なるため、注意して使い分けましょう。
④心付け
心付け(こころづけ)は、主にプライベートで使用する言葉です。お世話になる人、あるいは、お世話になった人に感謝の気持ちを込めて渡す少額の金銭のこと。寸志のように「労う」という意味ではなく、あくまでも感謝の気持ちを伝えるものです。
心付けは、冠婚葬祭でお手伝いをしてくれた方や、旅館に宿泊した際の仲居さん、リフォームの工事業者、引越し業者、などに渡すのが一般的です。
3.ビジネスで寸志を渡すメリット
ビジネスで寸志を渡すメリットは、従業員のモチベーション向上です。モチベーションが向上した結果、仕事の生産性向上、ひいては業績の向上が期待できます。
また頑張りを労う気持ちや心配りを形で表せる点、言葉で示すよりも効果的という点もメリットと言えます。
4.寸志を渡す場面
続いて、ビジネスとプライベートの2つに分けて、寸志を渡す具体的なシーンについて解説します。
ビジネス
ビジネスにて寸志を渡す場面は、主に「宴会」と「会社からの支給」の2つです。
宴会
まず、親睦会や懇親会、新年会、送迎会、キックオフ、打ち上げなどの宴会やイベントごとで渡されることが多いでしょう。その理由は以下の通りです。
- 自身も会費を払って参加しているが、幹事への労いやみんなの会費の足しにしてほしいといった心遣いを表現したい
- 宴会の主賓として招待されて会費が免除されているが、一定の金額を寸志として包みたい
特に、会費が免除される主賓は寸志を包むのがビジネスマナーとされています。
会社から支給
寸志は、会社から従業員に支給されることも多いでしょう。毎月の給料やボーナスのようにタイミングが決まっておらず、金額も比較的少ない場合に「寸志」と表します。
求人票の待遇に「寸志」と記載している会社もあり、たとえばボーナスの条件を満たさなかった従業員や、本来ボーナスの対象ではない雇用形態(派遣社員やアルバイトなど)の従業員に対して、寸志を支給する会社もあります。
なお、寸志も、税金が差し引かれる対象となるため、取り扱いには注意しましょう。
プライベート
プライベートにて、寸志を渡す場面は、主に「結婚式・披露宴」と「葬儀」の2つです。
結婚式・披露宴
結婚式や披露宴では、新郎新婦や親族から、感謝の気持ちを表すお礼として、ウエディングプランナーやカメラマンなどの関係者に少額の金銭を渡す慣習があります。しかし、慣習の変化によって寸志を渡さないことも増えており、会場によっては受け取らないとルールを決めているところもあるため、注意しましょう。
葬儀
葬儀では、葬儀業者や霊柩車およびマイクロバスの運転手、受付などお手伝いしてくれた方に感謝の気持ちを込めて寸志を渡すことがあります。ただし、相場は地域の習慣によって異なり、葬儀会場の決まりや慣習の変化によって渡さないことも増えてきています。
5.寸志の相場
続いて、寸志のおおまかな相場を紹介します。何円と決められているものではありませんが、参考にしてください。
宴会
宴会の場合の相場は、5,000円〜1万円程度です。1人あたりの会費と同額か、数千円プラスした金額が目安となっており、たとえば会費が3,000円ならば5,000円、8,000円ならば1万円といったイメージを持つとよいでしょう。
会社から支給
会社から従業員に支給する場合、相場は1~5万円程度で、基本的にはボーナス・賞与よりも少額になることがほとんどです。ただし、会社ごとに金額がまったく異なり、多いところでは10万円程度のところもあるでしょう。
6.寸志を渡す際のマナー
次に、寸志を渡す際のマナーについて解説します。ポイントは以下の4つです。それぞれについて深堀します。
- 目上の人から目下の人へ渡す
- 封筒に入れて表書きをする
- 早めのタイミングで渡す
- 渡さなくていいケース
①目上の人から目下の人へ渡す
ビジネスにおいて、寸志は目上の人から目下の人に対して渡すもので、集まりの目的や参加者によって、誰が寸志を包むか異なります。
自分が目上にあたっても、近い立場の人が複数いて判断に迷う場合は、相談して決めるとよいでしょう。
②封筒に入れて表書きをする
ビジネスにて、寸志として金銭を渡す場合は、封筒に入れて「寸志」と表書きをします。のし袋を使用してもよいものの、ビジネスでは白封筒でも問題ありません。
濃墨の筆ペンで封筒の上半分に「寸志」、下半分の中央に自分の名前を書きます。なお、金銭ではなく品物で寸志を渡す場合は、熨斗(のし)を付けましょう。
③早めのタイミングで渡す
会場に着いたら、早めのタイミングで寸志を渡すのがベターです。
宴会であれば、会場に着いてすぐの挨拶のタイミングで、労いの言葉とともに幹事に手渡すとよいでしょう。早めに渡すことでタイミングを失わず、幹事もお礼を言いやすくなります。なお、寸志は目立たないようにして渡してください。
④渡さなくていいケース
寸志を渡さなくていいケースもあり、たとえば以下が当てはまります。
- 歓迎会の主役として招待された若手や役職がない従業員の場合
- 自身が主役だが、会社が宴会費用を負担する場合
一般的に、新人歓迎会の主役は寸志の必要がなく、宴会費用が会社負担なら寸志を受け取った側が困るため、渡す必要はありません。
いずれの場合も、どうしても気持ちを表したい場合は「御礼」として少額を包むか、菓子折りを手渡す程度に留めましょう。
7.寸志を受け取った場合のマナー
寸志を受け取った場合に守りたいマナーが2つあります。
- お礼を伝える・報告する
- 基本的にお返しは不要
①お礼を伝える・報告する
まずは、寸志を受け取ったタイミングでしっかりとお礼を伝えましょう。
金銭を受け取った側が「寸志」と言うのは失礼にあたるため、「ご厚志」「ご芳志」に言い換えるように気をつけてください。たとえば「ご厚志をいただき、ありがとうございます」といったようにお礼を伝えるとよいでしょう。
また、宴会であれば、冒頭の挨拶で幹事から全体に向けて報告するのが慣習です。「〇〇さんよりご厚志を頂戴しました。ありがとうございます」と伝えます。ただし、金額を言うのはマナー違反になるため注意しましょう。
②基本的にお返しは不要
基本的に、寸志に対するお返しは不要です。その代わりに、お礼の言葉で気持ちを伝えますが、どうしてもお返ししたい場合のみ、菓子折りやお礼状を贈ることもあります。