サステナブルとは、経済成長と環境保護の両立を追求することです。ここではサステナブルについて、解説します。
目次
1.サステナブルとは?
サステナブルとは、経済成長と環境保護の二者択一ではなく、地球環境や人類の文明・経済システムの持続可能性を追求するという概念のこと。
そもそもサステナブルとは、「持ちこたえる」「維持できる」「耐えうる」といった意味を持つ言葉です。英語で「Sustainable」と表記します。近年、経済成長や環境保護を両立させるといった意味でサステナブルという言葉に注目が集まっているのです。
2.サステナブルが注目される背景
サステナブルが注目される背景にあるのは、下記の2つです。
- SDGs
- CSR
①SDGs
SDGsは、「Sustainable Development Goals」の略語で、「持続可能な開発目標」と訳されています。2015年9月の国連サミットで国連全加盟国193か国の全会一致で採択されました。17のゴールと169のターゲットから構成されています。
「誰一人取り残さない(leave no one behind)」よう、2030年までに持続可能なよりよい世界を目指しているのです。
②CSR
CSRは「Corporation Social Responsibility」略語で、「企業の社会的責任」と訳されています。個々の企業に対して自社の利益の追求のみでなく、社会や消費者に対しても責任を負うことを求めています。
たとえば「自然環境に配慮した製品の開発や提供」「法令を遵守した経済活動」などが企業に求められているのです。
CSR(企業の社会的責任)とは? 意味、企業のCSR活動例を簡単に
収益を求めるだけでなく、環境活動やボランティア、寄付活動など企業としての責任を持って社会貢献へ取り組むCSR(corporate social responsibility)という考え方。
ここでは、...
3.サステナブル経営とは?
環境や社会、経済などの持続可能性に対して配慮して、企業活動自体の持続可能性を実現する経営のこと。これらは従来、CSRのひとつでしかありませんでした。
しかし2015年9月、国連サミットの採択によって2030年にSDGsの達成を目指すことが決定。その結果、サステナブルへの積極的な取り組みを実施するという意識が経営者層にも広く浸透してきたのです。
4.サステナブル経営のメリット
サステナブル経営にはメリットがあります。それぞれについて解説しましょう。
- 企業価値が向上する
- コストやリスクの削減につながる
- 社会から信頼を得られる
①企業価値が向上する
サステナブル経営は、今や世界的な動きです。今や、サステナブル経営への取組が、社会的役割や責任を果たしている企業であるという証明になります。サステナブル経営を行うと、企業価値を上げられるのです。
②コストやリスクの削減につながる
たとえば「廃棄物のリサイクル」「自然エネルギーや自然サイクルの積極利用」「天然資源の使用量削減」「テクノロジーを活用した業務の効率化」などを行うと、調達コストや価格変動といったリスクを減らせます。
またサステナブル経営をとおして組織そのものが柔軟性を持てれば、さらなる効率化が図れるでしょう。
③社会から信頼を得られる
持続可能な社会は、地球規模の非常に大きな課題です。このような全世界的な問題に取り組む企業は、社会からの信頼も厚くなります。
社会から信頼されれば従業員も自身の仕事に誇りを持てるため、「消費者」「労働者」「経営者」すべてがWin Winの関係になれるのです。
5.サステナブル経営を成功させるポイント
サステナブル経営を成功させるためのポイントは、7つです。それぞれについて解説しましょう。
- 環境や社会貢献製品の開発
- 事業戦略との整合性
- 事業活動における環境負荷の低減
- ガバナンス体制の見直し
- 会社全体での意識統一
- ソーシャルビジネス
- 職場環境の整備
①環境や社会貢献製品の開発
環境にやさしい製品や循環型社会を考えたサービスの開発を行うと、サステナブル経営を成功させられます。
たとえばサステナブルに関する事業を単独事業として企画推進するのではなく、自社の既存の事業とコラボレーションさせて製品化を進めるのです。これにより利益を得ながら、サステナブル経営を実現できます。
②事業戦略との整合性
企業の経営者は、自社の事業戦略とサステナブル経営が同じ方向を向いているとつねに確認しなければなりません。方向性が異なれば、サステナブル経営の取り組みが曖昧になり、持続可能な社会実現に貢献できなくなるからです。
サステナブル経営が自社の事業展開にもよい影響を与えると認識し、そのうえで事業戦略との整合性を確認しながら取り組みます。
③事業活動における環境負荷の低減
多くの企業活動は莫大なエネルギーを消費し、環境に負荷を与えるもの。そのため新技術も取り入れながら、環境に多くの負荷をかけない事業活動を模索する必要があります。
たとえば「梱包材の削減」「リサイクルやリユース」「植物由来の代替品を活用」「FSC認証やMSC認証のある原料の使用」」などです。
④ガバナンス体制の見直し
サステナブル経営はガバナンス(企業活動において遵守すべき規範や指針を定め、社員に対して規範や指針を浸透させること)が土台になります。
普段から「コンプライアンスの遵守」「社員に対するコンプライアンス教育の実施」「非常時の体制、制度の構築」などに取り組み、サステナブル経営を土台から支えるとよいでしょう。
⑤会社全体での意識統一
サステナブル経営を実行しても、社員一人ひとりの意識がサステナブルな社会の実現に向いていなければ、大きな変革は生まれません。
個々の社員が、サステナブルやSDGsといった目標に向かって高い意識を持ち、実現のため自分に何ができるのか考える必要があります。それとともに会社全体でも、サステナブル経営に取り組む統一された意識が必要です。
⑥ソーシャルビジネス
ソーシャルビジネスとは、企業が行う事業を介して社会が抱える貧困や差別、地球環境や教育などさまざまな問題を解決に導くビジネスのこと。
ソーシャルビジネスは企業活動で、利益を生み出したり活動や支援を継続して行ったりできます。社会的意義のある付加価値の高いビジネスとして、注目を集めているのです。
⑦職場環境の整備
サステナブル経営を追い求めるあまり、社内の環境や体制がおろそかになってしまってはいけません。社員の職場環境に関してもサステナブル経営の精神をもとに整備、充実させる必要があります。
たとえば「ワークライフバランスの見直し」「育児や介護休暇取得率向上」「労働安全衛生の管理」「テレワーク体制の充実」といったきめ細やかな配慮です。
6.サステナブル経営の事例
サステナブル経営の事例として、5社の経営内容をかんたんに解説します。
- カルビー
- ユニクロ(ファーストリテイリング)
- イケア
- サラヤ
- キヤノン
①カルビー
カルビーは、菓子などの製造を手掛ける食品メーカーです。同社では、「食の安全や安心を確保」「多様なライフスタイルへの貢献」といった、サステナブル経営を目指し、以下のような取り組みを行っています。
- 社員のライフワークバランスに配慮する
- 社員に対してさまざまなチャレンジの機会を設け、新たなステージで活躍できる職場づくり
- オフィスのモバイルワークの標準化
- ダイバーシティの課題として、10年間で女性管理職の20%以上の引き上げ
②ユニクロ(ファーストリテイリング)
ユニクロ(ファーストリテイリング)は、日本だけでなく世界にも多くの店舗を構える衣料品メーカーです。
- プラネット(Planet)
- ピープル(People)
- コミュニティ(Community)
といった3本柱を掲げ、サステナブル経営に取り組んでいます。たとえば環境負荷の少ない衣服作りとして原材料調達やデザイン、生産までの製造過程でさまざまな工夫をこらして、リサイクルなども含めた環境や社会への負荷を減らした商品を提案しているのです。
③イケア
イケアは、家具メーカーです。家具の素材選びや環境や気候への影響、両方を考えたサステナブル経営を行っています。
たとえば、「省エネルギーを実現する製品の開発や製造」「森林を管理し、管理下にある木材を試用して価格・デザイン性だけでなく環境負荷も削減」「廃棄物を削減できるデザインや素材の提案」などです。
自社製品をとおして、消費者もサステナブルな社会の実現に貢献できます。
④サラヤ
サラヤは、家庭用、業務用洗剤、食品などを製造販売するメーカーです。企業テーマは、「世界の衛生・環境・健康に貢献する」こと。主力製品のひとつであるパーム油を原材料としたヤシノミ洗剤を製造しながら、「ボルネオ環境保全プロジェクト」に取り組んでいます。
このプロジェクトは、売上の一部を分断された熱帯雨林にいる動物の救出と森への帰還を目指すもの。消費者は、商品を買うことでこのプロジェクトを支えられます。
⑤キヤノン
キヤノンは、カメラでも有名な電気機器メーカーです。社会的ニーズのある事業部門の強化や持続可能な社会に役立つ製品開発などを積極的に行っています。
とくに環境の分野でその取り組みが評価され、環境コミュニケーション大賞の環境報告書部門で連続して「優良賞」を獲得しているのです。高い技術力を生かして製品を作り、サステナブルな社会へ多角的なアプローチを続ける取り組みが注目を集めています。