人事管理や労務管理は、企業にとって必須かつ最重要業務のひとつです。ここではそういった業務のひとつ、社員情報管理やその活用方法について説明します。
目次
1.社員情報管理とは?
社員情報管理とは、社員の個人情報や採用情報、配属履歴などを記録・利活用すること。HRテクノロジーの発展により、広範囲かつ膨大な量の社員情報をペーパーレスで記録できるようになりました。
ひとつの場所に社員情報を集め、人事や労務など複数の領域で活用・共有すると、社員情報を効率よく更新・追加できるうえ、関連情報へのアクセスを容易にするのです。
人材戦略に活用するために社員情報を蓄積・分析・共有する
従来、社員情報管理は、社員名簿や実績、スキルなどの記録・保管に主軸が置かれていました。しかし現在、HRテクノロジーの進化にともない、社員情報管理システムを導入する企業が増えています。
それぞれの部門で蓄積した社員情報を共有・分析し、統合することが、効果的な人材戦略につながると考えられているからです。
社員情報とは?
社員情報とは、基本情報(氏名や連絡先、所属や雇用区分など)や人材戦略に関する情報(所持する資格や評価履歴、本人のキャリア希望やプライベートに関する意向など)をまとめた情報のこと。
分析・活用が前提となるため、やみくもに情報収集するのではなく、どのような目的で情報を利用したいのか明確にする必要があります。
2.社員情報管理の目的とは?
なぜ社員情報管理をするのでしょうか。ここでは、社員情報管理をする目的について4つの観点から解説します。
- 社員の情報の見える化と一元管理
- 人事戦略への活用
- 人事労務業務の効率アップ
- 社員の労働環境を改善
①社員の情報の見える化と一元管理
システムで社員情報管理をすると、部門ごとに点在する社員情報を一元化できます。そのため膨大な社員情報を把握しやすくなるのです。
また企業には、「労働者名簿の作成と保管」が義務付けられています。社員情報管理を行えば、労働者名簿の代わりとして、社員の「個人情報」「雇用に関する履歴」「業務でのスキル・実績など」を最新の状態でまとめておけるのです。
②人事戦略への活用
社員情報管理というシステムを利用すると、社員の成績や評価、保有スキルなどをもとにして、より適切な人員配置を検討できます。
また本人の意向や価値観を記録・共有できるようなデータベースなら、個々のモチベーションや周囲への影響まで考慮したきめ細かな人材戦略も実現できるでしょう。
③人事労務業務の効率アップ
人事・労務業務は、社員個人と組織全体の成果に直結するため、繊細な気配りが求められます。また大きな手間と配慮が必要な一方、ミスや対応の遅れが許されないクリティカルな領域でもあるのです。
社員情報管理によって単純作業や分析作業を自動化・効率化できるため、担当者の工数や負担が減るうえ、分析結果を活かした人材戦略にリソースを割けるようになります。
④社員の労働環境を改善
昨今、テレワークの普及によってこれまで以上に労務管理者の目が届きにくい状況へと変わりつつあります。そこで社員情報管理に勤怠管理を連携させて勤務状況を把握すると、社員の長時間労働を防げるのです。
またそれにより、社員の労働環境や割り当てられた業務量、業務レベルや適性などを見直す機会が得られる可能性もあります。
3.社員情報管理にはどのような方法があるのか?
社員情報管理には、下記2つの方法があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
- 紙やエクセルなどの表計算ソフトで管理するもの
- 社員情報管理システムを導入してWebやクラウド上で管理する方法
①紙やエクセルなどの表計算ソフトで管理する方法
紙やエクセルなどのファイルで管理する場合、既存のテンプレートやソフトを使えます。そのため書式や運用ルールを作ってしまえば手をつけやすくなるのです。
しかし社員全員分のファイルを管理する必要があるので、「パソコンの容量を圧迫する」「保管場所に困る」といったデメリットが考えられます。また紙もエクセルも横断的な検索がしづらいため、集計に手間がかかりがちです。
さらには、閲覧場所が限られたり、最新データが不明になったりというトラブルが発生する可能性もあります。
②社員情報管理システムを導入してWebやクラウド上で管理する方法
社員情報管理システムを導入すれば、各部門で点在していた情報をひとつのデータベースに集約できるため、情報の集計や分析、検索を自動化できます。またクラウド上に情報を保管するため、社員数が増えても保管場所に困りません。
社員に直接入力してもらえるため、新規登録・更新がリアルタイムで行えます。さらに関係者同士の情報共有やデータ移行も、スムーズになるのです。
4.社員情報管理で必要な項目とは?
社員情報を労務管理や人事管理にも役立てたいという場合、社員の基本情報を集めるだけでは不十分です。社員それぞれの実績や評価、勤怠状況、スキルや資格など、目的や計画に沿った項目を収集する必要があります。
一体どのような項目を収集すればよいのでしょうか。
- 社員の基本情報
- 社員の人事評価情報
- 社員の勤怠情報
- 社員の能力情報
①社員の基本情報
あらゆる社員情報管理で必要となるのが、社員の氏名や年齢(生年月日)、性別や連絡先といった基本属性です。これらは社員情報管理の基礎となり、雇用形態や所属部署、役職・等級のような社内での立場や給与額で活用されます。
そのためつねに最新かつ正確に情報把握できるよう、定期的な整備や運用ルールの決定が必要です。
②社員の人事評価情報
社員情報を人事管理に活用する際、人事評価の履歴は有効です。
「能力・業績・情意など評価の詳細」「目標と達成率」「実績」を記載できると、その社員がこれまでどのように自社に貢献してきたか、どんなフィードバックに対して努力や成長を見せてきたか、大きな時間軸から判断できます。
より公平な観点で人材戦略を練るために重要な項目です。
③社員の勤怠情報
労務管理に不可欠なのが勤怠情報です。「出勤」「退勤」「休憩時間」「遅刻」「早退」「欠勤」など、社員の勤務状況を把握します。
「法律や就業規則にもとづいて適切な勤怠管理がされているか」「過度な残業や長時間労働が発生していないか」に注視して、労働環境の是正に役立てるのです。
また遅刻や欠勤が増えるなど勤怠状況の変化から、「社員の体調やメンタルの不調」「モチベーションの低下」などの可能性に、いち早く気付けるようになりました。
④社員の能力情報
社員の能力情報は、人事管理のなかでも人材育成や人員配置に必要な情報です。
資格や技術はもちろん、業務に必要な知識や経験、コミュニケーション力や問題解決力のようなポータブルスキルなどを記録しておくと、社員のキャリアパスや人事異動を検討する際に活用できます。
適材適所の人員配置や業務分担、自社が求める水準に達していない社員の底上げにも役立つのです。
5.社員の情報管理システムを選ぶときのポイント6つ
社員情報管理システムを導入する際、どんな点から選べばよいのでしょうか。そのポイントについて、解説します。
- 自社に合っているか
- 無料トライアルで試せるか
- セキュリティは万全か
- データの連携は可能か
- 操作性・カスタマイズ性はどうか
- サポート体制は十分か
①自社に合っているか
導入目的を満たす項目や機能」だけでなく、「システム形態」について見ておきましょう。2つとも予算や使い勝手にかかわります。システム形態ごとの違いは下記のとおりです。
オンプレミス型:自社にサーバーを構築する方式で、ほぼ希望どおりに仕様変更できる。既存システムとの連携が柔軟なものの、導入には時間と費用がかかり、運用やメンテナンスについても選任の担当者をつける必要がある
クラウド型:手軽に導入できるうえに初期コストが安価。「クラウド上でバックアップが取れる」「複数デバイスから接続できる」メリットを持つが、機能はサービス範囲にとどまる
②無料トライアルで試せるか
社員情報管理システムの多くが、無料トライアルを設けています。導入を検討する際は、一度利用してみましょう。
無料トライアル中に、「自社に必要な項目や使いたい機能がついているかどうか」確認できるうえ、システムの操作によって「目的に沿った運用ができるか」イメージしやすくなるのです。
③セキュリティは万全か
社員情報管理システムでは、個人に紐付いた機密情報を利用します。不正や人的ミスが起こらないよう、「トラブルを未然に防ぐ機能が搭載されている」などセキュリティが万全のものを選びましょう。
扱う情報の性質から、セキュリティに自信のあるシステムがほとんどです。しかしより厳重な情報保護を意識しましょう。セキュリティ機能には、「社員情報の公開範囲や閲覧制限の設定」「操作履歴の自動記録」「2段階認証」「情報の暗号化」などがあります。
④データの連携は可能か
「既存の社員情報管理ソフトやツールのデータを連携できるか」という点も重要です。すでに多くのデータを蓄積している場合、新しいシステムの導入時に連携体制が悪いと、データ移行の工数が増えてしまうため、本末転倒になってしまいます。
システム導入時には、データ移行の工数や時間を考慮に入れましょう。導入工数の観点からコストがかさむ場合、「既存ツールはそのまま利用して必要な部分で新しいシステムを併用する」という選択肢もあります。
⑤操作性・カスタマイズ性はどうか
クラウド型の社員情報管理システムは汎用性の高さが特徴ですので、実にさまざまな機能を備えています。「自社の運用方針に必要な機能だけに絞って利用できるか」「活用範囲を広げたい場合、機能追加が自在か」なども見ておきましょう。
組み合わせの自由度が高いと、自社の人材戦略に合わせて拡張可能です。社員が使用することを想定したうえで、「操作がかんたんか」「分かりやすい画面や表記になっているか」「ヘルプページが充実しているか」なども、確認しておきましょう。
⑥サポート体制は十分か
社員情報管理システム導入前後のサポートも、確認しておきたい点です。
「自社に最適な設定・運用の相談」「操作説明の研修」「活用事例の共有」「導入後の操作案内やトラブル対応」など、受けられるサポート内容とその期間や金額、方法(メール・チャット・ウェブ・対面)について、チェックします。
そのうえで管理者と社員にとって最善な形で運用できる環境を整えましょう。
6.社員情報管理の活用事例について
社員情報管理システムを活用して、さまざまな成果や効果を出すべく、多くの企業が導入を進めています。社員の多様性や個性に着目した人材管理を目指すカオナビの導入事例を2つ、ご紹介しましょう。
テルモ
テルモでは、事業の拡大とグローバル化にともない、「経営スキルを備えた人材」を育成するという戦略を掲げています。160か国以上、4800名を超える社員から幹部候補生を選抜するためにカオナビを導入しました。
カオナビは使い勝手の良さに定評があるため、システム操作に馴染みのない経営層でも扱いやすかったのです。また人事部と経営陣の間で情報を共有するスピードが上がりました。それによって優秀な人材をさらに磨く育成施策ができるようになったのです。
グローバルキッズ
グローバルキッズでは、職員が1000名を超える頃から「顔と名前が一致せず、パーソナルなコミュニケーションが取りにくい」状態になっていました。
そこで顔写真と社員情報が一覧できるカオナビを導入したところ、コミュニケーションの密度が上がり、離職率の大幅な減少に成功したのです。また社員情報は、採用活動や育成計画への活用、行政監査へのスムーズな対応にも活用されています。