消費税とは事業者が販売する商品やサービスなどの価格に上乗せされて広く課税される税金のこと。今回は税率や仕組み、その対象、そして計算方法について解説します。
目次
1.消費税とは?
消費税とは、商品やサービスの提供などの取引に対して課される税金のことで、消費者が負担して事業者が国に納税する仕組みです。このように実際に税を負担する者と納める者が異なるものを「間接税」といいます。
消費税は商品などの取引に対して課税されますが、生産や流通といった各段階で二重に課税される状況にならないよう、税が累積しない仕組みとなっているのです。
消費税が課税される取引には、地方消費税分も含まれています。商品やサービスなどの価格に上乗せされた消費税と地方消費税分は、最終的に消費者が負担し、事業者が納めるのです。
2.消費税の税率と基本的な仕組み
現在、2019年10月から税率が10%に引き上げられ、同時に「軽減税率」と呼ばれる税率が8%のまま据え置かれる取引が混在しています。消費税について正しく理解するためにも、税率や基本的な仕組みについて把握しておきましょう。
消費税の税率と軽減税率
消費税は医療や福祉、教育などの一部を除き、ほとんどの商品やサービスの提供などを課税対象としています。2019年10月1日より消費税が8%から10%に引き上げられました。
これによって、通常用いる税率である「標準税率」は10%、特定の商品の税率を一般的な税率より低く据え置く「軽減税率」は8%に設定されたのです。
なお軽減税率の導入は低所得者への経済的な配慮を目的としています。軽減税率が適用される品目は、飲料食品、飲料食品の譲渡、新聞の譲渡です。
たとえばハンバーガーショップの店内で食べるイートインの税率は10%ですが、テイクアウトの場合税率は8%となります。テイクアウトにアルコールがセットとなっている場合、料理は8%ですが、アルコールは10%となるのです。
消費税の基本的な仕組み
消費税は事業者が販売する物品やサービスなどに上乗せされる税金のこと。消費者は商品を購入したり、サービスの提供を受けたりする際に、その取引代金に対する消費税を負担し、事業者に消費税を上乗せした金額を支払います。
そして事業者は、消費者から預かった消費税を消費者に代わって国に納税するのです。商品、サービスなどの消費・流通に対して広く課税するため、消費額が同じであれば等しい負担を課することになります。
このように消費能力に応じて納税額も変化するため、税の負担能力の等しい人には等しい負担を求められるのです。これを税負担額の「水平的公平」が保たれるといいます。
たとえば、酒税やたばこ税、車のガソリンなどの揮発油税なども水平的公平が保たれている中に含まれるのです。
消費税の負担者と納税者
消費税は、実際に税金を負担する者(担税者)とその税金を納める者(納税義務者)が異なる「間接税」です。対して、法人税や所得税など担税者と納税義務者が同じである税金を「直接税」といいます。
販売店などは、一般的にメーカーなど他の業者が作った商品を購入し、販売します。販売を目的とした商品の購入を「仕入れ」といい、これは「消費」と同じく購入する行為ですが、目的が消費ではなく、販売です。
そのため、「仕入れ」と「消費」は別の経済活動といえます。消費税は「消費」に課せられる税金であり、「仕入れ」に課せられるものではありません。
つまり消費税は、生産・流通の段階で2重に課税負担が生まれない仕組みを整えているのです。
3.課税対象となる取引とならない取引
消費税はすべての取引に課せられるものではありません。課税対象となる取引とならない取引があります。それぞれのポイントについて解説しましょう。
課税対象となる取引
消費税の課税対象となるには以下の4つの要件があります。
- 国内で行う取引:海外で行われる取引については、原則として消費税は課せられない
- 対価を得て行うもの:原則として対価が発生しない無償取引は消費税の課税対象から外れる。例外的に一部の無償取引でも消費税が課せられるケースも
- 事業者が事業として行うもの:事業者とは個人事業者または法人を指すつまり、個人事業者もしくは法人以外が行う取引は消費税の課税対象にはならない
- 資産の譲渡、資産の貸し付け、役務の提供(実体のない取引は対象外):資産の譲渡については、商標権や特許権などの無形財産も含まれる
課税対象とならない取引(不課税取引)
国外取引、事業者が個人で行う取引など対価性のない取引は不課税取引となります。不課税取引の具体例は下記のとおりです。
- 給与・賃金の支払い:雇用契約であるため事業には該当しない
- 寄付金・祝金・補助金:一般的に「対価」として授受されるものではない
- 保険金:保険事故に対して支払われるものであって、「対価」ではない
- 国外取引:外国での宿泊や飲食などが該当する
- 出資に対しての配当:株主の地位に対して支払われるもので、「対価」ではない
- 損害賠償金:一般的に「対価性」がないといわれている
- 盗難・減失:資産の譲渡などには該当しない
- 自家用車の売却:個人での車の売却は、事業者が事業として行うものではない
非課税取引
「広く公平な負担」という消費税の性質になじまないものや、社会政策上の配慮によって課税が適さない取引については非課税取引となります。非課税取引の具体例は下記のとおりです。
- 社会保険医療
- 行政サービス手数料
- 学校の授業料や入学金
- 教科書の購入費用
- 土地の売買や貸付
- 住宅の貸付
- 株の売買(手数料は課税対象)
- 訪問介護サービスなどの費用
- 預金や貸付金の利子
非課税取引は上記のように極めて限定的なものとなっています。不課税取引と似ていますが、不課税取引は消費税の課税要件を満たさないのに対し、非課税取引は、課税要件を満たしても社会政策上の配慮などから課税が適当でないと判断された取引を指すのです。
免税取引
消費税は国内における商品の販売やサービス提供に対して負担を求める税であるため、輸出によって外国で消費されるものについては、消費税が免除されます。
免税とは、一定の要件を満たした場合に、資産の譲渡などについて課税される消費税が免除されること。免税取引の具体例は下記のとおりです。
- 外国人観光客向けの免税店
- 外国貨物の譲渡または貸付
- 国際輸送
- 国際通信
- 国際郵便
非課税取引と免税取引は似ていますが、消費税額の計算上大きな違いがあるので注意しましょう。具体的には、取引のために行った仕入れについて仕入税額を控除できるかどうかの違いです。免税取引の場合、原則として仕入れにかかる消費税額が控除されます。
4.消費税の納税義務と免税事業者
消費税はすべての事業者に課されるものではなく、納税義務のある事業者が定められているのです。しかしどのような事業者に納税義務があるのでしょうか。さまざまな点から解説します。
消費税の納税義務
事業者が国内で事業として行った資産の譲渡や役務の提供などに対して、消費税が課税されます。ここでの資産の譲渡とは物販などの資産の譲渡、不動産の賃貸などの貸付、およびサービスの提供など役務の提供のこと。
消費税は国内の取引に広く公平に課税されますが、事業者の事務処理などの負担を考慮し、小規模事業者は消費税を免除する措置が取られています。小規模事業者とは、「その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者」です。
このように消費税の納税義務が免除される事業者を「免税事業者」と呼びます。なお、免税事業者でも課税事業者への変更を選べるのです。
基準期間とは?
基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者は消費税が免税となりますが、基準期間とはいつを指すのでしょうか。基準期間は、個人事業主と法人で異なります。
個人事業主の場合、基準期間とはその年の前々年を指します。たとえばその年が2020年の場合、基準期間は2018年となるのです。法人の場合、その事業年度の前々事業年度を指し、たとえば当期が2020年3月期の場合、基準期間は2018年3月期となります。
ただし事業年度が1年ではない法人などで前々事業年度が1年に満たないような場合、その事業年度開始日の2年前の日の前日から、同日以後1年経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間が、基準期間となります。
課税売上高
課税売上高とは、消費税抜きの売上です。基準期間の課税売上高は、個人事業主であれば2年前、法人であれば2期前のデータがベースとなります。課税売上高(税抜)は、売上から返品などをした金額の合計額を控除する必要があるのです。
つまり、純売上高が課税売上高となります。法人で基準期間が1年に満たない場合、課税売上高を年換算する必要がありますので、基準期間の判断と同様、注意しなければなりません。
また、課税事業者の場合は消費税抜きの金額が課税売上高となりますが、免税事業者の場合は消費税込みの金額が課税売上高となります。売上に関しては、消費税が課税される売上と課税されない売上が存在する点に注意が必要です。
5.消費税の計算方法
消費税額は、売上の際に消費者から預かった消費税から仕入れや経費支払いの際に支払った消費税を控除すると、算出できるのです。
消費税の計算方法には、一般課税方式と簡易課税方式の2つがあります。ここからは、それぞれの計算方法と、仕入控除金額の計算方法や課税売上高の算出方法について解説しましょう。
一般課税方式と簡易課税方式
消費税の計算方法には、一般課税方式と簡易課税方式があります。
- 一般課税方式:課税売上にかかる消費税額から課税仕入などにかかる消費税額を引いて求める
- 簡易課税方式:事業者の事務処理負担を減らす目的で、みなし仕入率を利用して求めるもの。課税売上にかかる消費税額から課税売上にかかる消費税額にみなし仕入率を掛けたものを引いて求める
みなし仕入率とは、売上から控除できる税額を算出するための割合で、事業者の業種ごとに指定されています。事業者が複数の事業を行っている場合、各事業に応じたみなし仕入率を使用して、売上から控除できる額を算出するのです。
なお簡易課税方式を選べるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者となります。
仕入控除税額の計算方法
仕入控除税額とは、事業者が仕入や経費支払の際に支払った税額のことで、2重課税を防ぐために消費者から預かった消費税から控除できます。
仕入控除税額の計算方法は3種類です。
- 全額控除方式:仕入税額を全額控除するが全額控除できない場合、個別対応方式または一括比例配分方式を選択する。課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ課税売上割合が95%以上の事業主が選べる
- 個別対応方式:課税仕入にかかる消費税を3種類に分け、そのうち課税売上のみに対応する消費税と非課税売上のみに対応する消費税を、課税売上割合で按分した額を控除する
- 一括比例配分方式:課税仕入などにかかる消費税額に課税売上割合を掛けて控除できる税額を計算する
課税売上高の算出方法
課税売上割合とは、その事業者の全体の売上に対する課税売上高の割合のこと。これによって、仕入控除税額の計算方法が異なるので、課税売上割合の計算は非常に重要です。
課税売上割合は、課税期間中の課税売上高を課税期間中の総売上高で割ると算出できます。分母となる総売上高とは、国内における資産の譲渡などの対価を合計した額のこと。これは、課税売上高と輸出免税売上高、非課税売上高の合計額となります。
分子となる課税売上高とは、国内における課税資産の譲渡などの対価の合計額で、これには輸出免税売上高も含まれるのです。値引きや返品などは総売上高と課税売上高から控除して計算します。ただし賃倒になった売上高は控除しない点に注意が必要です。