職務という言葉は、仕事でよく使われます。職務の類義語や業種別職務の例などについて、詳しく解説しましょう。
目次
1.職務とは?
職務とは、組織に所属する従業員や公務員一人ひとりが担当する仕事のことです。各自が仕事をする上で求められている役割や、果たすべき任務と言い換えられます。職務を明確にすることで、自他共に仕事内容や責任の範囲がわかるので、業務やそれに伴うコミュニケーションが効率的になります。
2.職務の意味と他の言葉との使い方の違い
職務の意味は、仕事として従業員がそれぞれ取り組む任務や役目です。英語では「duty」といいます。
各従業員に割り当てられた仕事の内容が類似または共通しており、これを遂行するために必要な知識・熟練・責任がほぼ同じで、これら一群を職務と呼びます。職務の内容や権限、責任の範囲や資格要件などは職務分析で明らかにされるのです。
職務と事業との違い
事業は、辞書によると次のように表記されています。「生産、営利などの一定の目的を持って継続的に、組織・会社・商店などを経営する仕事」「大きく社会に貢献するような仕事」。
つまり事業は、会社や組織などが行う仕事を表し、事業内容は仕事の内容を表したものになるのです。
職務と業務との違い
業務は、会社の各部署で行われ、事業で発生する一部の仕事です。「業務」の意味は辞書によると次のように表記されています。
「職業や事業などに関し、継続して行われる仕事」「法律で、社会生活において反復・継続して行う活動」「職業上の活動に限らず、娯楽のための個人的な行為も含まれるが、家事や育児など家庭生活上の活動は含まれない」。
職務内容と事業内容と業務内容の違い
職務内容・事業内容・業務内容はそれぞれ、別の事柄を表します。
- 職務内容:業務の中で従業員個人が取り組む仕事。部門や部署ごとに担当する内容は変わり、履歴書や職務経歴書などの書類には職務内容を記入する
- 事業内容:会社全体が取り組む仕事
- 業務内容:会社が取り組む事業にて発生する仕事で、販売や製造、営業などがある
3.そのほか職務の類義語
職務にはさまざまな類義語が存在するため、区別が難しくなっています。言葉の意味と使い方について、解説しましょう。
- 任務
- 役職
- 職責
- 職位
- 職掌
①任務
任務とは、組織やその一員として、与えられて責任を持って果たさなければいけない務めのこと。重要度は職務よりも上です。使い方は、「警察官の任務を遂行する」「秘密の任務をおびる」などになります。
②役職
役職とは、役目や任務、職務のことで、特に管理職を意味します。たとえば「社長」「専務取締役」「執行役員」「部長」「課長」など会社でのポジションを表しているのです。使い方は「役職に就く」「役職手当」などになります。
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③職責
職責とは、仕事で生じる責任のこと。役職ごとの職責を一覧にしている企業もあります。職責の使い方は「最後まで職責を全うしたい」「任期を終えるまで職務上の職責を果たす」などです。
④職位
職位とは、職業上の地位や仕事の集まりのことで、「会長」「社長」「専務」「常務」などです。役職と意味の違いはほとんどありません。書類などで役職を記入する欄には、職位と同じ内容を書きます。
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⑤職掌
職掌とは、担当している仕事もしくは仕事内容が類似した職務や職種をグループ分けしたもの。通常、職務の機能と態様などによって「作業職掌」「事務職掌」「技術職掌」「管理職掌」「専門職掌」などに区分されます。
4.業務別職務の例
職業を分類した際の、業務別の職務例は次のとおりです。これら細分化された職務をそれぞれ詳しく紹介します。
- 管理職
- 事務職
- 販売職
- 専門的・技術的職
- サービス職
- 農林漁業作業者
- 生産工程・労務作業職
- 運輸・通信従事者
①管理職
「組織の業務管理・改善」「人材育成」「経営理念・方針の浸透」「コミュニケーション管理」「目標管理」「スケジュール管理」などがあります。
具体的な職業は次のとおりです。「法人・団体の役員や課長・店長などの管理職」「国会議員、知事などの公務員管理職」「地方公共団体の局・部・課長」など。
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②事務職
「書類の作成や処理」「ファイリングや整理」「データ入力や電話応対」「来客応対」など業務全般を担います。
具体的な職業は、「一般事務」「営業事務」「経理事務」「総務事務」「人事事務」「労務事務」「法務事務」「貿易事務」「学校事務」「医療事務」など。
総務事務員の職務に当たるものは「人事」「人材開発」「労務管理」「広報」「総務」「企業法務」「運営事務」「施設運営」などです。
③販売職
「主に店舗で商品(有形商材)の販売」「接客」「レジ打ち」「商品の品出しと在庫管理」「店舗レイアウト」などを担います。一般的にキャリアアップするとスタッフのシフト管理や売上管理、本社への報告業務などにシフトしていくのです。
具体的な職業は、「商店・コンビニエンスストア・スーパーなどの販売店員」「レジ係」「スーパー店長」「新聞拡張員」となっています。
④専門的・技術的職
専門的・技術的職業従事者とは、高い専門知識を有しているスペシャリストのこと。
具体的な職業は、「研究者」「農林水産技術者」「製造技術者」「開発技術者」「建築・土木・測量技術者」「情報処理」「通信技術者」「医師」「保健師」「看護師」「弁護士」「記者」「美術家」「音楽家」「写真家」「舞台芸術家」などです。
⑤サービス職
「理容・美容」「クリーニング」「法理」「接客」「娯楽」「居住施設やビルなどの管理サービス」などを担います。
具体的な職業は、「理・美容師」「クリーニング工」「調理人」「接客」「タクシードライバー」「鉄道乗務員・船舶乗務員」「公共サービス」「医療・福祉」「スポーツインストラクター」「通訳」など。幅広く、職業によって職務も多岐にわたります。
⑥農林漁業作業者
「農産物の栽培や収穫」「家畜・養蚕・家禽」「そのほか動物の飼育」「材木の育成や伐採、搬出」「水産動植物の捕獲や採取、養殖」などを担うのです。
具体的な職業は、「農耕作業員」「畜産作業員」「植木職」「造園師」「育林作業員」「漁労作業員」「船長・航海士・機関長・機関士」「海藻・貝類採取作業員」「水産養殖作業員」など。
⑦生産工程・労務作業職
「生産設備の制御・監視」「機械・器具・手道具などを用いた原材料の加工」「製品の製造作業」「機械の組立・修理作業」「製品の検査作業 」などを担います。
具体的な職業は、「製銑・製鋼・非鉄金属製錬設備制御・監視員」「鋳造・鍛造設備制御・監視員」「金属工作設備制御・監視員」「金属プレス設備制御・監視員」「鉄工・製缶設備制御・監視員」などです。
⑧運輸・通信従事者
「電車やバス、自動車、航空機の運転や関連する駅構内係」「ボイラー・オペレーター」「クレーン・ウインチ運転」「ビル設備管理員」などを担います。
具体的な職業は、「鉄道運転従事者」「自動車動車運転従事者」「船舶・航空機運転従事者」「発電員・変電員やボイラー・オペレーター」「クレーン・ウインチ運転従事者」「定置・建設機械運転従事者」などです。
5.職務を使った用語
職務を用いた用語は数多くあります。ビジネスシーンでよく見聞きする用語について、解説しましょう。
- 職務権限
- 職務分掌
- 職務経歴書
- 職務給
- 職務質問
- 職務怠慢
①職務権限
職務権限とは、官公庁や企業などで役職に応じて求められた権限のこと。たとえば企業や組織では職務権限規定により、「執行役員」「部長」「課長・マネージャー」「係長」「主任」などと役職によって権限が定められています。
目的は、「役職のなすべき職務と責任、権限範囲を明確にし、その責任体制のもとで職務を遂行する」です。
②職務分掌
職務分掌とは、企業や組織において、役職や特定の担当者それぞれが取り組む業務内容を明確にして、職務における責任の範囲や権限を適切に配分すること。
明文化された文書は「職務分掌規程」「職務分掌表」などと呼ばれます。大手企業やベンチャー企業などをはじめ、多くの企業が規程を文書化しているのです。
職務分掌とは? 業務分掌との違い、メリット、規定の作り方
職務分掌とは会社や組織の部署や部門、担当者などの役割を明確にすること。今回は職務分掌について解説します。
1.職務分掌とは?
職務分掌とは、組織にて役職者や担当者それぞれが果たすべき責任や、職責をま...
③職務経歴書
職務経歴書とは、これまで経験してきた仕事の内容や実績、それらを通じてつちかった知識を採用担当者に伝える書類のこと。
一般的に企業は応募者から履歴書の提出を求めます。さらに必要とする職務経験や能力・技術・知識などを持つか判断するため、職務経歴書の提出を求める場合があるのです。
④職務給
職務給とは、従事する職務の難易度や責任の度合いを評価して給与を支払う賃金のこと。
それぞれの職務について知識や努力、熟練、職務の困難度と重要度などについて職務の相対的評価を評価します。そして職務と範囲、必要とされる能力を規程した「職務記述書」を作成し、職務の価値に応じて賃金額を定めるのです。
職務給とは? 職能給との違いやメリット・デメリットを簡単に
職務給とは、従事する仕事内容を評価基準とした報酬制度です。ジョブ型雇用や同一労働同一賃金が導入されている動きに伴い、職務給を適用する企業も増えつつあります。
今回は職務給について、その仕組みや職能給と...
⑤職務質問
職務質問とは、警察官が異常な挙動やそのほか事情から判断して、何らか犯罪をしそうな人に質問すること。
各都道府県警察は、地域警察官全体の職務質問技能が向上するよう、地域警察官の職務質問技能伝承を行う係「職務質問技能指導班」を設置しているのです。職務は指導要領にもとづき、各都道府県警察で定めています。
⑥職務怠慢
職務怠慢とは、自分が受け持っている仕事をさぼったり、放棄したりすること。
一般企業での職務怠慢とされる具体例は、「無断遅刻」「無断欠勤」「遅刻過多」「職場離脱」「勤務成績不良」「勤務時間中の私用メール」など。「就業に関する規律の違反」「企業秩序を乱した」と認められる場合、懲戒処分の対象になる場合もあります。