出勤簿とは、労働者の出勤日や労働日数、労働時間などを記載する書類です。作成・保管が義務付けられている書類であり、企業は事業場ごとに作成する必要があります。
今回は出勤簿について、詳しい記載事項や書き方、記載対象となる従業員や保存期間などをわかりやすく解説します。
目次
1.出勤簿とは?
出勤簿とは、労働者の出勤日や労働日数、出勤・退勤時間などを記載した書類です。法定三帳簿のひとつであり、事業場ごとに作成・保管が義務付けられています。企業には労働時間を適正に把握する責務があり、出勤簿はそのための役割を持ちます。
労働基準法において出勤簿の作成について明確な記載はありませんが、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、作成と保管について明記されています。
法定三帳簿とは?
法定三帳簿は、「出勤簿」「労働者名簿」「賃金台帳」の3つの書類の総称です。労働基準法などを根拠として、事業場ごとに作成・保管が義務付けられています。
労働者名簿、賃金台帳の記載事項は、下記のとおりです。
労働者名簿 | ・氏名 ・生年月日 ・履歴 ・性別 ・住所 ・従事する業務の種類 ・雇入れの年月日 ・退職の年月日およびその事由 ・死亡の年月日およびその原因 |
賃金台帳 | ・賃金計算の基礎となる事項 ・賃金の額 ・氏名 ・性別 ・賃金計算期間 ・労働日数 ・労働時間数 ・時間外労働 ・休日労働 ・深夜労働の時間数 ・基本給・手当その他賃金の種類ごとの金額 ・控除額 |
出勤簿は、賃金台帳と関連深い書類です。なぜなら、正しく賃金を算出するには、出勤簿で適正な労働時間を把握・管理している必要があるからです。
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2.出勤簿を作成する目的
出勤簿を作成する目的は、主に以下2つです。
労働時間を適正に把握するため
従業員の労働時間を適正に把握することは、企業の責務の一つです。労働日数および労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録するために出勤簿を作成します。
いつ何時間働いたかだけでなく、休憩時間や時間外労働、休日出勤についても細かく把握・記入する必要があります。36協定を締結している事業場では、協定に違反しないためにも出勤簿の作成・管理が欠かせません。
賃金台帳を適正に作成するため
賃金は労働時間をベースに計算されるものです。そのため、労働日数や労働時間数、時間外・深夜・休日労働時間数を正しく把握する必要があります。賃金台帳には、労働日数や労働時間数なども記入します。賃金台帳の事項を正しく記入するためにも、出勤簿を作成し正しく記入することが求められるのです。
3.出勤簿とタイムカードの違い
タイムカードとは、出勤・退勤時間を管理する書類・ツールです。タイムカードの場合、出退勤の時間のみ記録されるため、時間外労働や休日出勤の時間数までは細かく記録できません。また、出勤時に打刻を忘れて後から打刻した、用事があり退勤の打刻ができなかったなど、打刻時間が正確な出勤・退勤時間とは限らない場合もあるでしょう。Webで打刻する形式であれば修正などもできますが、自己申告となるため信ぴょう性に欠けると判断される恐れがあります。
そういった点からも、タイムカードを出勤簿と同等の扱いにすることはでません。万が一タイムカードを出勤簿として扱う場合には、別途残業許可証や作業日報など労働時間を証明する補足資料が必要です。
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4.出勤簿の記載対象となる従業員
対象となるのは、雇用しているすべての従業員です。ただし、高度プロフェッショナル制度対象労働者は記載対象外となります。
高度プロフェッショナル制度対象労働者とは、高度の専門知識を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者のこと。始業・終業時間が指定されないなど、働く時間帯の選択や時間配分を自ら決められる立場にあります。
しかし、制度上は高度プロフェッショナル制度対象の労働者も健康管理時間の把握が必要であり、実質的にはすべての労働者の労働時間の管理が必要です。
高度プロフェッショナル制度とは?【簡単に説明すると?】
高度プロフェッショナル制度は、働き方改革の中でも注目を集めている制度。新聞紙面やインターネット上にも、特定された高度な専門的業務に関する新しい働き方として多く登場しています。
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管理監督者およびみなし労働時間制の労働者も記載対象に
2019年4月の労働基準法・労働安全衛生法の改正により、労働時間の把握が義務化。これにより、これまで記載対象外だった管理監督者およびみなし労働時間制の労働者も記載対象となりました。
管理監督者とは、部長や工場長など労働条件の決定やその他労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことです。管理監督者であるかは役職名に関係なく、職務内容から実態に即して判断されます。みなし労働時間制とは、事前に決められた労働時間を働いたとみなす制度です。営業職など事業場外で業務することが多い職種に適用されます。
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労働監督者とは、経営者と一体的な立場で仕事をしている人のこと。労働監督者として認められる定義や判断基準、注意点などについて詳しく解説します。
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みなし労働時間制とは?【わかりやすく解説】残業、違法
みなし労働時間制とは、実際の労働時間にかかわらず一定時間労働したとみなす制度です。
ここでは、みなし労働時間制について解説します。
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5.出勤簿の記載内容・書き方
出勤簿に決まったフォーマットはなく、下記内容が記載されていれば出勤簿として成立します。
- 出勤日・労働日数・日別労働時間数
- 始業・終業時刻、休憩時間数
- 時間外労働を行なった日付・時間数
- 休日労働を行なった日付・時間数
- 深夜労働を行なった日付・時間数
ここでは、出勤簿の記載内容と書き方を解説していきます。
出勤日・労働日数・日別労働時間数
従業員ごとの出勤日、労働日数、日別の労働時間数の合計を記載します。いつ出勤し、出勤日ごとに何時間労働したか、そしてひと月合計何日出勤したかを正しく記入することが必要です。
始業・終業時刻、休憩時間数
日毎の始業・終業時刻と休憩時間数は、1分単位で正しく管理することが必要です。労働基準法によって、休憩時間は以下のように与えることが義務付けられています。
- 6時間超8時間以内の労働:45分
- 8時間超の労働:1時間
休憩時間は固定時間数が定められていますが、適宜記載が必要です。
時間外労働を行なった日付・時間数
いつ、何時間の時間外労働を行なったかを記載します。法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められており、それ以上の労働は時間外労働です。ただし、変則時労働時間制の労働者はこの限りではありません。
原則は法定労働時間を超えて働かせることはできず、その必要がある場合には「36協定」の締結が必要です。しかし、36協定においても労働時間の上限が設けられており、それを破ると罰則の対象となります。上限を超えないためにも、より正確な記録が必要です。
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休日労働を行なった日付・時間数
法定休日は少なくとも週に1日、月に4回必要です。これに加えて会社の所定休日が設けられており、法定休日と所定休日をあわせて週2日の休日が設けられるケースが一般的です。休日労働については、法定休日と所定休日それぞれについて記載が必要です。休日労働では割増賃金が加算されるため、その計算のためにも正確な時間数を記載しましょう。
深夜労働を行なった日付・時間数
深夜労働は、22時〜翌朝5時までの労働です。深夜労働についても別途割増賃金が加算されるため、正確な時間数の記載が求められます。22時以降が所定労働時間となる夜勤の場合でも、割増賃金の加算対象です。22時以降の残業は割増賃金に加えて時間外労働の割増率も加算されるため、それぞれの記載が必要となります。
6.出勤簿の保管期間
出勤簿は労働基準法第109条により、原則5年間の保管義務があります。当該従業員の出勤簿に最後の記載があった日から5年間であるため、退職以降も5年間の保存が必要です。
賃金請求権が時効によって無効となるまでの期間が5年間に延長されたことから、出勤簿の保存期間も5年になりました。従業員の退職後であっても、給与や残業代などに問題が発生した場合に出勤簿が必要となります。
出勤簿の作成・保存に違反した際の罰則
出勤簿は労働基準法により、保管が義務付けられている書類です。保存義務となる期間中に廃棄・紛失した場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。誤って廃棄してしまったり、紛失してしまったりしないよう、細心の注意を払って保管しましょう。
7.出勤簿を作成する際の注意点
出勤簿を作成する際は、以下ポイントに注意しましょう。
記載事項に漏れのないようにする
出勤簿を作成するにあたって決まったフォーマットはなく、必須事項が記載できていれば出勤簿として成立します。ただし、必須事項が一つでも漏れていたら出勤簿として認められません。いつ出勤し何時間労働したか、かつ出勤・退勤時刻や時間外労働時間の有無など、詳細まで正確に記載する必要があります。
記入漏れを防ぐためにも、作成時点で必須事項に漏れがないよう、そして正確に記録できるフォーマットで作成することがポイントです。
紙での作成にはコストがかかる
出勤簿の作成方法についても決まりはなく、紙での作成でも問題ありません。紙で作成するメリット・デメリットは下記のとおりです。
メリット | デメリット |
・システム導入・ランニングコストがかからない ・PCスキル・IT知識不要 |
・作成・記入に手間がかかる ・管理場所が必要 |
従業員数が少ない場合には紙の方が管理しやすく、従業員数100人未満までであれば紙でも運用できます。しかし、5年間保管しなければならず、紙の書類は保管場所が必要です。従業員数が増えるほど作成・記入の手間がかかり、保管数も増えるため注意しましょう。
8.出勤簿に関するよくある質問
ここでは、出勤簿に関するよくある質問に回答していきます。
出勤簿のテンプレートはありますか?
「出勤簿 テンプレート」と検索することで、テンプレートがたくさん出てきます。たとえば、下記サイトではさまざまな形式のテンプレートがダウンロードできます。
bizocean:「出勤簿・出勤表」の書式テンプレート・フォーマット一覧
※リンクをクリックすると外部サイトに飛びます
テンプレートの種類は豊富なため、出勤簿の管理担当者が管理しやすい、かつ他の人も見やすいテンプレートを選んでみましょう。
出勤簿は印鑑の押印だけでも大丈夫ですか?
印鑑の押印だけでは、出勤簿として認められません。というのも、押印だけの出勤簿では、労働時間や時間外労働数などが把握できないためです。従来は押印だけの出勤簿がメインでしたが、2019年4月1日より労働時間が詳細にわかる形式での作成が義務付けられています。