週休3日制とは? 義務化、メリデメ、企業事例、公務員

週休3日制とは、1週間のうち3日間を休日とする制度のこと。週休3日制を導入する目的やメリット・デメリット、企業の導入事例などを解説します。

1.週休3日制とは?

週休3日制とは、1週間に3日間の休日を設ける制度のこと。政府は週休3日制の推進を図っており、2021年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」において、「選択的週休3日制の推進」を盛り込みました。

個人の自由な時間が増えるため、リスキリングによるスキルアップや離職率の低下などの効果が期待されています。

企業の導入状況

2021年6月の厚生労働省に発表した「経済財政運営と改革の基本方針 2021」によると、週休3日制(週休2日制よりも休日が多い制度)を採用している企業は全体の8.3%。数値で見れば1割以下であり、現状まだ週休3日制は普及していません。

選択的週休3日制との違い

週休3日制と選択的週休3日制の違いは、希望者を対象としているかどうか。選択的週休3日制の対象は、社内において週休3日を希望する従業員のみで、週休3日制を希望しない従業員は週休2日制を適用します。一方週休3日制は原則、全従業員を対象とするのです。

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2.週休3日制の3つのパターン

現在見られる週休3日制のパターンは3つです。それぞれの労働時間、給与、仕事量について説明します。

  1. 給与維持型
  2. 総労働時間維持型
  3. 給与減額型

①給与維持型

給与額はそのままで休日だけが増えるパターン。休日が1日増えても仕事量は減らないため、給与額は据え置きです。ただし「1日8時間×5日」でこなしていた業務のすべてを「1日8時間×4日」でこなさなければならず、残業が増加しやすくなります。

②総労働時間維持型

週休3日を確保する分、1日の労働時間を増やすパターン。週休2日制では「1日8時間×5日」が一般的である一方、総労働時間維持型では「1日10時間×4日」になります。

総労働時間は変わらないので給与額もそのままです。出社日はすべて長時間労働となるため、いざ導入すると従業員は負担を感じるかもしれません。

③給与減額型

給与減額型は、休みを1日増やした分給与額も減額されるパターン。休日は増えますが、総労働時間の減少にともなって給与額も減少します。そのため給与をベースとして計算される厚生年金や各種手当の額も減ってしまうのです。

このような点から、給与減額型は従業員から不満や反対の声が出る恐れもあります。

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3.週休3日制導入の目的

働き方改革の一環として、週休3日制を導入する企業は増加傾向です。企業が週休3日制を導入する目的について説明します。

  1. 多様な働き方の実現
  2. 副業や兼業の促進

①多様な働き方の実現

週休3日制の導入の大きな目的は、従業員の多様な働き方を実現すること。休日が増えれば、仕事以外に時間を多く割けるようになるからです。

具体的には、「リカレント教育」「子育てや介護」「ボランティア活動」「ブライベートの時間に当てる」など。休日が増えるため、体とメンタルのリフレッシュ効果も期待できます。

②副業や兼業の促進

週休3日制には、従業員の副業や兼業を後押しする狙いもあります。従業員がキャリアアップや収入増を実現するには、新しいスキルや経験の習得が不可欠です。しかし週休2日制では、十分な休息と学習時間を確保するのは難しいでしょう。

週休3日制で休日を1日増やせば、学習時間の確保だけでなく副業や兼業に使える時間を捻出しやすくなります。

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4.週休3日制のメリット

従業員側には休日が増えるというメリットがある一方、企業側にもメリットが存在するのです。週休3日制が企業側にもたらすメリットを説明します。

  1. 離職率の低下
  2. イノベーションの促進
  3. 経費の削減
  4. 優秀な人材を確保

①離職率の低下

週休3日制は従業員のワークライフバランスを充実させ、離職率の低下につながります。休日が増えるとプライベートの時間も増えるため、ワークライフバランスを重要視する従業員の満足度が向上するからです。

また育児や介護などさまざまな事情で週休2日勤務を続けられない従業員も、週休3日制なら仕事を続けやすくなります。このような従業員の離職も防止できます。

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②イノベーションの促進

週に3日の休みがあると心身に余裕が生まれ、新しいアイデアの創出につながりやすくなります。また休みが増えると、スキルアップのための学習がイノベーションのきっかけともなりえるでしょう。

たとえば新たに得た知識や技術やセミナーや勉強会などで作った人脈から、新ビジネスや業務効率化などのヒントを得られるといったものです。

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③経費の削減

コストの削減も、週休3日制のメリット。企業が1日稼働すればコンピューターの稼働や照明、冷暖房など多くのエネルギーを使用します。当然これらの使用には費用がかかるものです。

週休3日制の導入で休日を増やせば、エネルギーにかかる費用を削減できます。また従業員一人ひとりの交通費が削減されるのもメリットといえるでしょう。

④優秀な人材を確保

週休3日制に魅力を感じている人材が多く集まり、人材不足の解消につながる可能性もあります。近年ワークライフバランスを重視する労働者が増加し、「週休3日制の企業に就職したい」と考える人も増えているからです。

さらに週休3日制を導入している点自体が強みとなり、企業の採用ブランディングとしても活用できます。

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5.週休3日制のデメリット

週休3日制はメリットだけでなくデメリットもあるので注意が必要です。週休3日制のデメリットを説明します。

  1. 業務負担の増加
  2. ビジネス機会喪失のリスク
  3. 体制や勤怠管理の複雑化
  4. コミュニケーションの減少

①業務負担の増加

週休3日制で休日が増えると、従業員の業務負担が増加します。それまで週5日でこなしてきた業務を週4日でこなす必要があるため、1日の業務量が増加し、その分従業員の負担も大きくなるのです。

また週休2日制と同じペースで業務を進めても、週休3日制では業務が回らない可能性もあり、結果的に業務が停滞してしまうリスクもあります。

②ビジネス機会喪失のリスク

休日が1日増えるため、ビジネス機会の喪失が懸念されます。週休3日制の担当者は取引先とのコミュニケーションが遅延しやすくなり、取引先の信用を損ねる恐れもあるからです。

複数の担当者でフォローし合う体制や、システムによる自動返信などでコミュニケーションのタイムラグを減らす必要があります。

③体制や勤怠管理の複雑化

週休3日制を導入する際、勤務体制や給与体系、評価管理や勤怠管理など既存の制度を大幅に変更しなければなりません。制度の複雑化は避けられず、人事部門や管理職などに大きな負担がかかる恐れもあります。

また評価管理や給与体系の不備は、従業員の不満や不信感を高める要素です。早期に改善しなければ離職者を出してしまうでしょう。

④コミュニケーションの減少

従業員の出勤日数が減り、従業員同士のコミュニケーションが希薄になります。コミュニケーション不足は、チームや組織の連帯感を弱めてしまうかもしれません。またオフィスに通う回数が減少するため、会社そのものに対する愛着の低下も懸念されます。

会社や仕事への愛着がなければ、従業員の意欲やモチベーションも上がりません。これらは生産性の低下や離職率の上昇の原因になり得ます。

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6.週休3日制の導入ポイント

週休3日制の導入で失敗しないためには、いくつかの点に注意が必要です。週休3日制を導入する際のポイントを説明します。

  1. 制度導入の目的を明確化
  2. 適用する従業員を決定
  3. 勤務時間を調整
  4. 副業と兼業の可否を提示

①制度導入の目的を明確化

「なぜ週休3日制を導入するのか」を明確にしましょう。たとえば「働き方改革の一環」と「兼業や副業の推進」では、それぞれに必要な制度整備や運用方法が変わりますし、それぞれの運用に合わせて各制度を整備しなければなりません。

とくに給与減額型を導入する際は、目的を十分に従業員へ伝えないと「会社はただ給与をカットしたいだけ」と捉えられてしまう恐れもあります。

②適用する従業員を決定

制度をどの従業員まで対象とするかについても、十分な検討が必要です。同じ従業員でも、仕事やプライベートに対する考え方は千差万別。

よって、制度の対象を全従業員にしてしまうと、「もっと働きたい」という従業員から不満が出る恐れもあります。従業員アンケートでニーズを把握し、場合によっては選択的週休3日制も視野に入れましょう。

③勤務時間を調整

休日が1日増えるため、勤務時間の調整が必要です。それまでと同じ業務量では仕事が回らなくなる可能性も高いからです。総労働時間維持型であれば、1日の勤務時間を増やさなければなりません。

また何曜日を休日にするかも決める必要があります。休日は上層部だけで決定せず、従業員の不満と業務の支障が少ない曜日を選ぶべきです。

④副業と兼業の可否を提示

「給与減額型を取り入れる」「能力開発を目的とする」場合、従業員の副業や兼業を認めるかどうかも、決める必要があります。給与減額型で減った収入分を、副業や兼業で補填したい従業員もいるからです。

またスキルアップやキャリアアップに、副業や兼業が有効な場合もあります。ただしその際は週休3日制を導入する目的と理念にもとづいて副業や兼業の可否を決定し、従業員へ周知する必要があるのです。

副業や兼業を許可するならば、就業規則も変更しなければなりません。

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7.週休3日制はいつから義務化される?

2023年4月現在、週休3日制は義務化されていません。厚労省は、「従業員一人ひとりの多様な働き方を実現するために、企業の週休3日制の導入の推進を積極的に行っていく」という方針を示し、選択的週休3日制の促進と普及を掲げている状況です。

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8.週休3日制は公務員にも適応される?

公務員に週休3日制が適用されるかどうかは、未定です。政府の方針としては、最初に民間企業の週休3日制の導入を推進し、その後、公務員の職場にも普及させていくという考えのようです。

ただし公務員は副業が禁止されているため、導入ではこの点が大きな課題となります。

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9.週休3日制を導入する企業の事例

すでにいくつかの大企業が週休3日制を導入しています。どのような変化と効果が見られたのかを含め、週休3日制を導入した企業の事例を見ていきましょう。

ヤフー

ヤフーは2017年に介護や育児が必要な従業員を対象とした「えらべる勤務制度」を導入。これは従業員の申請によって、給与減額型の週休3日を承認する制度です。

すでに200人以上の従業員が利用しており、「会社を辞めずに済んだ」「ワークライフバランスがより充実した」などの声が聞かれ、離職防止効果が出ています。

600

600は、会社設立と同時に完全週休3日制を導入。制度の特徴は、土日と週の真ん中にあたる「水曜日」が休日になっている点です。

一週間ずっと働き詰めにならないため、従業員のモチベーションや満足度を維持する効果が見られています。またクラウドをうまく活用して生産性や業務効率を高めており、週休3日にもかかわらず利益倍増を実現しているのです。

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループは2020年から「週休3日・4日勤務」制度を導入。休日の利用目的は不問で、利用開始時期や休日とする曜日の選択も自由で、「スキル習得」「育児や介護」「健康維持」「プライベートの充実」などさまざま。

制度の開始に合わせて、人事査定に影響しない評価方法も整備しました。制度利用者はマイナス評価を下される心配がありません。