退職面談は、退職を希望する従業員と上司または人事担当者が行う面談のこと。退職面談の主な目的は、今後の社内改善や離職防止に活かすための情報収集です。退職面談はその目的を理解し、ポイントを押さえて実施できないと、本来の効果が得られなくなってしまいます。
今回は退職面談の目的や実施のメリット・デメリット、面談で話す内容や質問例などをご紹介します。
目次
1.退職面談とは?
退職面談とは、退職を希望する従業員と人事担当者、または上司が行う面談です。一般的に退職日の直近、退職手続きを終えた後に実施します。
退職面談では、退職理由や仕事に対する満足度など、今後の採用や社内改善につなげていくための質問をしていきます。引き留めのために行うものではなく、今後の社内での離職防止や社内改善に生かすことが大きな目的です。
2.退職面談の目的
退職面談の主な目的は、従業員の退職の原因を把握し、今後の人事施策や社内改善につなげることです。
労働人口が減少している現代では、いかに今いる従業員を定着させるかが重要です。離職はこれまでの採用・教育コストを損失するだけでなく、戦力を失うことになります。
離職率を下げるには、退職の原因を分析し、今後の人事施策や社内改善に活かすことが必要です。原因を究明し改善しないと、同様の理由で離職する人が後を絶たなくなってしまう恐れがあります。
引き留めのために実施するものではないことを念頭に、今後の人事施策や社内改善につなげられる情報が得られる面談にできるよう工夫が必要です。
3.退職面談を実施するメリット
退職面談は任意で実施するものです。退職面談を実施することで、企業は以下のようなメリットが得られます。各メリットを詳しくみていきましょう。
- 退職者からフィードバックが得られる
- 退職する根本的な原因を把握できる
- 人事施策や社内改善のヒントが得られる
①退職者からフィードバックが得られる
なかには「退職する身であるから」と正直に話してくれる場合もあります。
退職者の意見は、今後の社内改善や人事施策を検討・実行するうえで貴重な情報です。社内で退職者と同じような悩みや不満を抱えている従業員に対して、離職に発展する前にアプローチできるようになるでしょう。
退職者から正直なフィードバックを受けるためにも、企業側は真摯な姿勢で適切な質問を投げかけ、回答をしっかり受け止めることが大切です。
②退職する根本的な原因を把握できる
退職面談では退職理由について質問することが重要です。退職につながった根本的な原因が把握できれば、今後の対応次第で同様の理由での離職を防げる可能性があります。しかし、円満退職を望む従業員はネガティブな理由を伝えることを避ける場合もあるでしょう。
本音を引き出すためにも、以下を意識して面談に臨んでみてください。
- 退職者について、周囲の人から事前にヒアリングする
- これまでの貢献について会社を伝える
- 共感の姿勢を崩さずに傾聴する
- 話しやすい空間・雰囲気で実施する
③人事施策や社内改善のヒントが得られる
退職理由が企業側の問題が原因であるケースも少なくありません。完全に私的な理由でない限り、企業側には改善の余地がある状態です。退職理由や退職の背景を聞くことで、退職に至らずに済む制度を整える必要性や企業が対処すべきだったポイントが明らかになるでしょう。
同様の状況に陥った従業員の退職を防ぐための人事施策や社内改善のヒントが得られ、定着率の向上を図れるようになります。
4.退職面談を実施するデメリット
退職面談でメリットを得られるのは、主に企業側です。一方で、以下のようなデメリットもあります。デメリット解消のポイントとあわせてみていきます。
- 従業員に不安を与えてしまう
- 業員との関係性が損なわれる恐れがある
①従業員に不安を与えてしまう
退職面談は「引き留めにあうのでは」「脅されるのでは」「めんどくさい」などの理由から、従業員側からしたら基本的には実施したくないものです。さまざまな憶測から不安に感じ、面談時に萎縮して本音を話せなくなってしまう恐れもあります。
退職面談は引き留めの場ではなく、企業が今後の離職防止に生かすための情報収集が主な目的です。その点を事前に伝え、従業員の不安を払拭する必要があります。
また、退職者だからと企業側が強気な態度で面談したり、脅すような行為を働いたりすることは厳禁です。退職面談に悪い印象がついてしまうと、従業員も本音を話さなくなってしまい、退職面談の目的が果たせなくなってしまいます。
②従業員との関係性が損なわれる恐れがある
退職面談では、企業側が退職者の意見を尊重する姿勢でいることが重要です。従業員側もさまざまな悩みや葛藤の末、退職という結論を出しているはずです。企業側がその意思を尊重せず、相手を責めるような面談にしてしまうと、従業員との関係性が損なわれてしまいます。
退職するからと相手を無下に扱うのではなく、これまで貢献してくれたことの感謝や会社として力になれなかったことへの謝罪の気持ちを伝えつつ、退職理由などを丁寧にヒアリングすることが大切です。
退職後も顧客や取引先となる可能性があるため、企業イメージを低下させないためにも従業員とは良好な関係を維持したまま退職してもらうことがベストです。
5.退職面談実施のポイント
退職面談は、従業員にとっては基本的にネガティブなものです。従業員の不安を解消し、本音を引き出してお互いが有意義な時間となる面談にするためには、以下ポイントを押さえて退職面談を実施しましょう。
退職手続きを終えた後で実施する
退職面談を実施するタイミングは、企業が自由に設定して問題ありません。おすすめは、退職手続きを全て終えたタイミングです。退職することが公式的に決まっているため、退職者も引き留めにあう不安なく安心して面談に臨めるでしょう。
一方、引き留めも目的の一つとして退職面談を実施する場合には、面談内容がその後の退職手続きに影響が出ない点についても十分に説明し、退職者が不安に感じないように実施することがポイントです。
カジュアルな形式で行う
退職面談はカジュアルな形式で実施することで、従業員の心理的安全性を高められます。人事面談のようなフォーマルな雰囲気で実施すると萎縮してしまい、本音を伝えられない恐れがあります。
暗い閉め切った部屋の実施を避けるなど、相手がリラックスできる環境を選ぶことがポイントです。
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適切な面談担当者を選定する
退職面談の目的を達成するには、従業員の本音を引き出すことが重要です。そのためには前述したポイントであるカジュアルな形式で行いつつ、従業員が本音を話せる面談担当者を選定するとよいでしょう。
退職面談は、必ずしも人事担当者や上司が実施するものとは限りません。従業員が話しやすい相手を選定することで本音を引き出しやすくなる可能性があるため、同じ部署の先輩社員や以前所属していた部署の上司など、適切な担当者を選定しましょう。
これまでの感謝の気持ちを伝える
退職面談では、まず従業員に対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。退職の結論を出し、それを伝えることは勇気のいる行動だったはずです。
そうした従業員の気持ちを尊重する姿勢を見せることで、面談への抵抗感や不安を解消できるかもしれません。心理的安全性を高めることで本音を話しやすくなり、退職面談がお互いにとって有意義な時間となるでしょう。
6.退職面談の質問例と質問意図
退職面談では、具体的にどのような内容を話し合うのでしょうか。ここでは、質問の具体例と質問意図から退職面談で話すべき内容をみていきます。
退職理由について
- 退職を考えるきっかけとなった具体的な出来事はありますか?
- 退職を決めた主な理由はなんですか?
- 退職の一番の決め手はなんですか?
- 何かが違えば、退職の結論には至りませんでしたか?
退職理由は退職面談で必ず収集しておきたい情報であり、退職面談の主軸となるため必ず質問すべき内容です。重要なポイントは、退職のきっかけと決め手です。
この点が把握できれば、人事施策や社内改善につなげやすくなるでしょう。本音を引き出すためにも、退職者が話しやすい雰囲気を作ることが大切です。
会社に対する評価について
- あなたから見た会社の良い点と悪い点を教えてください
- 職場環境や人間関係に不満や問題点はありましたか?
- 上司やリーダーから十分なサポートを受けられたと感じますか?
- 会社の雰囲気や文化についてどう感じていましたか?
- 仕事にやりがいを感じられていましたか?
会社に対する評価を質問する意図は、会社と従業員のギャップを把握するためです。企業側が十分な環境を提供できていると感じていても、従業員にとっては不十分と感じる部分は少なからず存在します。
このギャップを埋めてこそ、従業員の満足度やエンゲージメントを高められるでしょう。待遇やスキルアップ・キャリア支援、職場環境や人間関係など、さまざまな視点から意見をもらえるよう質問してみてください。
退職後や転職先について
- 退職後はどのようなキャリアを目指していますか?
- 新しい職場に求める働き方や環境はありますか?
- 転職先を探している(探した)基準はなんですか?
- 転職先への入社の決め手はなんですか?
退職後や転職先に関する質問では、今の職場・仕事に足りていないと感じていることが間接的に把握できます。とくに、転職先の決め手は裏を返せば自社に足りていない・改善余地のあるポイントです。
退職者が今後希望するキャリアや他社との比較から、自社で改善が必要な点や今後取り組むべきことが見えてくるでしょう。
退職の再検討について
- ほかの部署やエリアに移動することで新たなキャリアを積んでみるのはどうでしょうか?
- 時短勤務に変更して仕事を続けることはできないでしょうか?
- どういった条件が改善されれば、会社に留まろうと思えますか?
退職を再検討してもらいたい場合、退職理由に応じた条件を提示することも一つの方法です。従業員の要望に応えることで、退職を見送ってくれる可能性があるかもしれません。
ただし、退職の意思が強い人には無理に引き留めるような質問をし続けないよう注意しましょう。
退職スケジュールについて
- 正式な退職日はいつに設定しますか?
- 有給休暇が◯日残っていますが、消化してから退職しますか?
- 引き継ぎはどれくらいの期間を見込んでいますか?
退職手続きを行う前に退職面談を実施する場合には、スケジュールについても確認しておくと良いでしょう。
退職するにあたり、従業員が必要とするサポートや懸念事項を把握できます。退職のプロセスを明確にしておくことで、企業側も従業員側も退職に向けて動きやすくなります。
退職手続きの流れとやるべきこととは? 必要な書類も簡単に
従業員の退職に伴い、企業・従業員側ではそれぞれ手続きが発生します。退職手続きは流れに沿って順番に行う必要があり、それぞれ各種手続きに必要な書類も多いため、漏れなく対応することが重要です。
今回は企業側...
7.退職面談の注意点
退職面談を実施する際は、以下のポイントに注意しましょう。
無理に引き留めない
従業員はさまざまな悩み、葛藤の末に退職という結論を出しています。そのため、退職を決めた従業員の意思を尊重し、無理に引き留める姿勢は避けましょう。
一方、配置転換や雇用形態の変更など、条件次第では就業が継続できそうなケースでは退職を再検討してもらう代替案を提示した上で引き留めることも一つの方法です。しかし、そうしたケースでも退職の意思が強い場合には、退職の意思を尊重しましょう。
感情的にならずに受け止める
質問例にもあったように、退職面談では会社の不満などネガティブな内容も多いです。
ネガティブな要素については本音を引き出せないと、根本的な改善も難しくなってしまいます。面談担当者は回答によっては不快な思いをしてしまうかもしれません。
感情的に受け止めず、受け入れる姿勢を崩さないことが重要です。あくまで情報収集の一環と認識し、割り切ることも必要です。
ヒアリングに徹する
退職者の回答によっては、言い返したり弁明したくなったりすることもあるかもしれません。しかし、そうすると退職者が萎縮してしまったり、会社にネガティブなイメージを持ったりしてしまう恐れがあります。
どんな内容であっても受け入れ、今後社内をより良くしていくための情報であることを理解して、ヒアリングに徹することが大切です。
8.退職面談の代替手段:退職アンケート
退職面談は改めて面談の時間を取る手間があること、対面で話すことからなかなか本音が引き出せないといったデメリットがあります。こうしたデメリットを解消できる退職面談の代替手段として、退職アンケートが有効です。
対面せずに回答できるため本音を引き出せやすく、従業員も空いた時間で回答できるといったメリットがあります。
退職面談と退職アンケート、どちらを実施するか迷う方に向けて、退職アンケートのメリット・デメリットをご紹介します。
退職アンケートのメリット
退職アンケートのメリットは、以下3つです。
- 本音を引き出しやすい
- データ分析できる
- 効率的に調査できる
①本音を引き出しやすい
退職アンケートは対面で質問しないため、従業員も本音を言いやすくなるでしょう。退職理由は必ずしもポジティブな内容とは限らず、建前上は会社への不満を上司や人事に対して直接言わないことが一般的です。
しかし、それでは会社の根本的な問題を把握・解決できないため、本音を引き出すことが重要であり、その際にアンケートが役立ちます。
②データ分析できる
アンケートでは回答が形に残り蓄積されていくため、退職者の回答結果を分析しやすい点もメリットです。退職者の傾向がわかれば、今いる従業員にそうした傾向がみられた際に先手を打って対策できるでしょう。
③効率的に調査できる
アンケートなら従業員と面談担当者のスケジュール調整をする必要がなく、通常業務をストップせずに空き時間で回答できるため、効率的に調査できます。
アンケートシステムやアンケート機能が搭載した人事管理システムを利用することで、システム上でアンケートの配布・収集・分析まで一貫して行える点もメリットです。
退職アンケートのデメリット
一方で、退職アンケートには以下のようなデメリットもあります。
- 明確な回答が得られない場合もある
- 退職者に合わせた質問ができない
- 会社側の気持ちを伝えられない
①明確な回答が得られない場合もある
アンケートは気軽に行える分、適当に回答されてしまうリスクがあります。当たり障りのない回答では、本音は得られません。また、従業員が会社に対してネガティブな感情を持っていると、そもそもアンケートに協力してもらえない可能性もあるでしょう。
基本的には一問一答の選択形式が多いため、明確な回答を深掘りできません。記述式で回答を書き込める場合もあるものの、手間と感じられてしまったり、本音を言いたくないなどの理由から回答が得られない恐れがあります。
②退職者に合わせた質問ができない
アンケートは一律のフォーマットで実施することが多く、退職者一人ひとりに合わせた質問をしたり、回答をその場で深掘りしたりすることもできません。
本音を引き出すことが難しく、表面的な回答しか得られないことで、退職者の不満や企業が改善すべき本質的な課題が引き出せない可能性がある点はデメリットです。
③会社側の気持ちを伝えられない
アンケートは一方方向となるため、会社側から感謝の気持ちを伝えるなどの良好な関係を維持するための対応ができません。対して、面談では従業員にこれまでの感謝の気持ちを伝えるなどして良い雰囲気を作りつつ対話できます。
アンケートは非対面、かつ一方的なコミュニケーションとなってしまうため、お互いの気持ちを伝え合えない点もデメリットです。