退職届はどのように書くのでしょう。マナーの観点からも気になるポイントがあるかもしれません。ここでは退職届の書き方についてポイントや準備するもの、封筒の書き方などを解説します。
目次
1.退職届の書き方は手書きが正解?
退職届は、パソコンで書いても問題ありません。
そもそも退職届の目的は、「退職をする」意思を企業へ正確に伝え、あとから相互間でトラブルが起きないようお互いに確認すること。よって目的が達成できるのであれば、パソコン・手書きのどちらで作成しても大丈夫です。
ただし企業によっては手書きで義務づけられているかもしれません。退職届のフォーマットを用意している場合もあるので、勤務先に確認しておくとよいでしょう。
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2.退職届の書き方のポイント
退職届の内容は基本的に定型文となるため、自分で記載内容を考える必要はありません。定型となる項目について解説します。
- タイトルと書き出し
- 日付
- 退職理由
- 提出者と宛先
①タイトルと書き出し
一般的に1行目の「退職願」または「退職届」は、上下の中央のやや上から書き出します。横書きの場合は中央です。2行目の「私事(または私儀)」は、便せんの下に記して改行します。横書きの場合は右端に書くのです。
②日付
提出日と退職日の日付を書く際、西暦・和暦どちらでも構いません。ただし「西暦と和暦、決めたほうで統一して書くよう」気をつけましょう。体裁を整えやすくなる縦書きの場合、漢数字を使うと無難です。
③退職理由
退職届を出す際「一身上の都合(自分の意思で退職すること)」以上に詳しいことを書く義務はありません。実際に会社を辞める理由として下記が挙げられるものの、とくに詳細を書く必要はありません。
- 転職
- 引っ越し
- 仕事や人間関係への不満
- 結婚
- 妊娠、出産
- ケガや病気
- 家族の介護
④提出者と宛先
提出者については、所属・氏名を行の下に書きます。所属は正式な部署名を書き、名前はフルネームで記載して捺印をしましょう。
宛先は組織の最高執行責任者とし、役名とフルネームを書きます。その際、自分の名前より上にするとよいでしょう。敬称は「殿」または「様」とします。パソコンで書く場合は署名部分を空けておき、プリントしたら手書きで記載しましょう。
3.退職届を書く際の注意点
退職届を書く際の注意点を解説します。
- 原則、撤回できない
- 退職日の2週間前までに提出する
- 退職届が無効になるケースもある
- 会社都合の場合は不要
- 「提出必須」ではない
- 退職願や辞表と間違えない
①原則、撤回できない
退職願または退職届を一度提出したら、たとえ提出者が撤回を要求したとしても、企業側に取り消す義務はありません。
退職届は、労働者側から労働契約の解除を申し出た形になるため、撤回できないことになります。ただし事情によっては、企業が撤回に応じる場合もあるのです。基本、撤回はできないため、提出する場合はよく考えて行います。
②退職日の2週間前までに提出する
民法の第627条1項には、次のような内容が記されています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」
正社員のように雇用期間が決まっていない労働者が退職する場合、申し入れから2週間という期間が決められています。しかし業務の引き継ぎを考えると、退職届は1か月前くらいには提出しておいたほうがよいでしょう。
③退職届が無効になるケースもある
退職2週間前に退職届を出したとしても、無効になるケースもあります。次の条件に当てはまる労働者は注意が必要です。
- 年俸制
- 完全月給制
- 雇用契約に期間の定めがある
年俸制の場合、民法627条に具体的な記載があり、法律上「無効」の扱いとなるのです。「完全月給制」および「雇用契約に期間の定めがある」労働者は、1か月ごとに雇用契約を更新するため、2週間前の退職届が受理されない場合もあります。
④会社都合の場合は不要
会社都合にて退職する場合、退職願および退職届の提出は不要です。むしろ会社都合にもかかわらずこうした書類を提出してしまうと、自己都合退職扱いとなる可能性があります。
自己都合退職に認められると、「失業保険の受給が遅れる」「失業保険の受給額が減る」可能性も高いです。もし退職届の提出を求められた場合、安易に提出しないように気をつけてください。
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⑤「提出必須」ではない
「退職の意思表示は必ずしも書面で」と決まっているわけではありません。本人から口頭で退職の申し出をし、これに対して企業が承諾をすれば合意したとみなされ、退職が成立します。
これは正社員だけでなく、パート・アルバイトであっても同様です。民法上も、契約の申込み・承諾・解約は必ずしも書面で行うことを求めていません。
⑥退職願や辞表と間違えない
退職届は、退職願や辞表と似た言葉です。しかしそれぞれ違う意味を持ちます。
- 退職願…退職の意思を伝える書類
- 退職届…退職願が受理され、退職日が決まってから提出する書類
- 辞表…役員が役を辞するときに提出する、または公務員が辞めるときに提出する書類
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4.退職届を書く際に準備するもの
退職届を書くときにあわてないよう、準備するものについて解説します。次に挙げるものを押さえておくとよいでしょう。
- 用紙
- ペン
- 封筒
①用紙
退職届では、一般的に下記が使用されています。
- B5(182×257mm)
- A4(210×297mm)
A4はご自宅のプリンター用紙でも準備できるので用意しやすく、B5はコンパクトで手渡ししやすいです。また用紙の種類は、コピー用紙・白い便せんが一般的に使われています。柄入りやイラスト入りの用紙は使わないようにしましょう。
②ペン
退職届を記入するときのペンは、黒のボールペンを使いましょう。サインペンや筆ペン、カラーペンは避けてください。
水性インクを使った黒のボールペンは消えやすくなってしまいます。油性かゲルインクのボールペンを使うようにしましょう。ボールペンの太さは、太すぎず細すぎない0.7mmくらいがちょうどよいです。
③封筒
一般的な茶色の封筒は、日常業務の書類を入れることが多くコストも低くなります。退職届は退職の意志を示す大事な書類となるので、白色や無地の封筒を使いましょう。封筒の大きさは、書類を三つ折にしたときに入るサイズを想定するとよいでしょう。
書類の大きさに適した封筒サイズは、次のとおりです。
- B5…長形4号
- A4…長形3号
また封をする際、セロハンテープを使わないようにしてください。
5.退職届における具体的な退職理由の書き方
退職届を出す際、退職理由をどのように書けばよいのでしょうか。下記について、それぞれ例文を交えて紹介します。
- 自己都合退職
- 会社都合退職
①自己都合退職
基本、「一身上の都合により」と書けば問題ありません。しかしより印象を良くする書き方もあります。具体的には、次のような例文です。
- 家庭の事情で引っ越すことになり、転職せざるを得ない状態になりました。
- 体力に問題が生じ、勤務することが困難になりました。
- 尽力しましたが業務内容が自分に適さず、これ以上の勤務は会社にも損害を生じさせてしまいます。
②会社都合退職
会社都合退職の場合、「一身上の都合」と書くのは控えましょう。必ず「貴社、退職勧奨に伴い」など、会社の都合であるとはっきりわかる文面にします。例としては下記のとおりです。
- このたび、貴社の退職勧奨に伴い、◯年◯月◯日をもって退職いたします。
- このたび、貴社の都合による支店閉鎖に伴い、◯年◯月◯日をもって退職いたします。
6.退職届の書き方
退職届の書き方について、縦書き・横書きそれぞれのポイントを解説します。ついでテンプレートの入手方法についても説明しましょう。
縦書き
縦書きの場合、以下のようなポイントを押さえましょう。
- 1行目…中央に「退職届」と書く
- 2行目…下寄せで「私事、」と書く
- 3行目…本文
- 4行目…本文よりも字下げで提出日を書く
- 5行目…日付よりも字を下げて所属部署を書く
- 6行目…下寄せで氏名を記す
- 7行目…会社名を書く
- 8行目…会社名よりも上の位置から代表者を書く
横書き
横書きの場合、以下のようなポイントを押さえましょう。
- 1行目…中央に「退職届」と書く
- 2行目…右寄せで提出した日付を書く
- 3行目…左寄せで退職する企業の正式名称と代表者名を省略せずに書く
- 4行目…右寄せで所属部署名を書く
- 5行目…右寄せで自分の氏名を記し、捺印のスペースを空ける
- 名前から2行改行し、本文を書く
- 文末は右寄せで「以上」と書いて締める
テンプレートの入手方法
退職届のテンプレートは社労士・弁護士事務所のホームページから、無料のものをダウンロードで入手可能です。退職届以外にも退職願や休職願、企業側が行う各種手続きの書類や手続きのチェックシートなどをダウンロードできる場合もあります。
7.退職届に必要な封筒の書き方
退職届を入れる封筒について、次の項目を解説します。
- 封筒の書き方
- 封筒への封入方法
- 郵送する場合の添え状の書き方
①封筒の書き方
退職届を入れた封筒に何も書かずに提出すると、マナー違反と受け取られます。封筒の表には、大きな字で「退職届」と書きましょう。字の位置は、中央やや上がきれいに見えます。
封筒の裏には、所属部署名とフルネームを記入してください。できるだけ左下に書くようにしましょう。もし封筒に封をした場合は、「〆」のマークを書いてください。
②封筒への封入方法
退職届は三つ折にして封筒に入れましょう。これは、退職届に限らず手紙などにも通じるマナーとなります。三つ折の折り方、そして封筒の入れ方の順序は次のとおりです。
- 退職届の下部分が内側になるよう1/3を折り曲げる
- 残りの1/3を上から折って重ねる
- 時計回りと反対に90度回転させる
- 向きを変えず、封筒の裏側から入れる
③郵送する場合の添え状の書き方
郵送する場合の添え状には、おもに次のような内容を記入します。
- 退職届を作成した日付
- 宛先
- 所属していた部署とフルネーム
- 退職届を送付した旨が記載された本文
退職届と添え状の大きさが異なるとバランスが悪くなり、相手への印象も悪くなります。そのため添え状は、退職届と同じサイズのものを使用しましょう。