退職代行とは?【メリット・デメリット】代行の流れ

退職代行とは、労働者が何らかの理由で会社を退職できない場合に、本人に代わって退職の意思表示を行うサービスのことです。

1.退職代行とは?

退職代行とは、労働者本人に代わって弁護士や代行業者が会社に退職の意思を伝えるサービスのこと

「退職の意思を会社に伝えたら、上長から執拗に引き止められたり、今辞めたら損害賠償を請求するぞ、と脅迫や嫌がらせを受けたりした」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。

このように、「会社が辞めさせてくれない」といった悩みを抱える労働者に代わって退職届を提出するのが、退職代行サービスです。

10年以上前から続くサービス

近年、退職代行サービスは新聞やテレビ、インターネットやSNSなどさまざまなメディアで見かけるようになりました。

それまではほとんど見られなかったサービスであるため、比較的新しいサービスだと思えるものの、実のところ10年以上も前から「弁護士が行う業務の一環」として続いているのです。

現在ある代行サービスというより、「未払い残業代請求などの相談を受けた際、労働上の問題が発覚した。労働環境が劣悪で退職できない会社に勤めている労働者の代わりに弁護士が退職の手続きを行っていた」という側面が強いものでした。

退職代行の成功率

退職代行サービスのなかには「退職代行の成功率100%」とうたう広告もありますが、これには理由があります。どのような企業でも民法627条にもとづき、解約の申し入れの日から2週間で退職できるという決まりがあるためです。

しかしこれが迅速かつ円満に退職できるか、という問題になると別の話になります。会社によっては一定の手間と労力が掛かる場合もあるため、100%の迅速・円満を約束することは困難でしょう。

退職代行とは、「会社が辞めさせてくれない」という悩みを抱える労働者に代わって第三者が退職届を提出するサービスです

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【人事労務業務を効率化し、担当者の負担をグッと減らす】

カオナビならコストを抑えて労務管理・タレントマネジメントを効率化!

●紙やExcelの帳票をテンプレートでペーパーレス化
給与明細の発行や配布がシステム上で完結できる
年末調整の記入や書類回収もクラウドで簡単に
●人材情報の一元化・見える化で人材データを活用できる
●ワークフローで人事評価の運用を半自動化できる

詳しくはこちらから

2.退職代行の流れ

実際に退職代行を利用する場合は、どのような流れで進められるのでしょうか。退職代行は、一般的に以下6つのステップで進められます。ここでは退職代行の流れについて、一つずつ見ていきましょう。

  1. 申込みもしくは相談する
  2. 利用者の情報を共有する
  3. 利用料金を支払う
  4. 担当との今後の打ち合わせ
  5. 打ち合わせた内容を実行し、その経過報告をする
  6. アフターフォロー

①申込みもしくは相談する

まずは利用者から退職代行サービスに申込みをします。退職代行サービスがどれだけ便利なサービスだったとしても、業者からアプローチすることは基本ありません。労働者自身からの申込みが必要となります。

業者への連絡方法はいくつかあり、電話やメール、LINEを使用するのが一般的です。

退職代行専門業者で相談料を取っているサービスは基本、ありません(弁護士事務所を除く)。有給休暇や退職金の取り扱い、非弁のリスクなど気になる点があれば、あらかじめ無料相談をして申込みを判断するとよいでしょう。

②利用者の情報を共有する

申込みが完了したら、次は利用者情報を共有します。

  • 必要となる利用者の個人情報:氏名、生年月日、電話番号、住所、雇用形態、勤続年数、契約期間、身分証の画像、希望する退職時期など
  • 利用者が所属する会社に関する情報:会社名、勤務先の電話番号、所属部署など

「有給休暇をすべて消化したい」「返却してほしい私物の有無」「離職票といった送付を希望する書類」など、退職に当たっての希望はこの段階で伝えておきましょう。

③利用料金を支払う

ひととおり情報を共有したら、今後の流れや利用料金に関する説明を受けます。退職代行サービスは基本的に先払いです。本格的な打ち合わせの前に、利用料金を支払いましょう。

支払方法は業者によって異なるものの、現金振込やクレジットカード決済が一般的です。ほかにもLINE Payやビットコイン、そのほか電子マネーでの支払いを受け付けているところもあります。

入金完了後、業者側が支払いを確認した段階から本格的な退職代行作業が始まります。

④担当との今後の打ち合わせ

はじめに共有した情報よりもさらに詳しい質問を介して、具体的な打ち合わせが進んでいきます。担当者との打ち合わせは、質問メール(ヒアリングシート)を利用するのが一般的です。この打ち合わせでは以下のような点を決めていきます。

  • 決行する日時
  • 退職理由
  • 退職希望日
  • 会社からの貸与品の有無
  • 発行を求める書類
  • 返却や処分を求める私物の有無
  • 有給休暇や退職金について

代行業者のなかには電話スタッフの役割まで、利用者が詳しく設定するサービスもあります。しかしこれは失敗の原因にもなりかねないため、あまり推奨されません。

日時と伝える内容だけを決めて、あとは退職代行業者のスタッフに連絡してもらうとよいでしょう。

⑤打ち合わせた内容を実行し、その経過報告をする

退職手続き開始後は、すべて代行業者におまかせとなります。代行業者は先のヒアリングにもとづき、退職の連絡を実行するのです。

1回で退職を認めてもらえることもあれば、複数回連絡が必要になる場合もあります。いずれも依頼者は状況の共有を受けるのみ。直接のやり取りはありません。

退職の意向を伝え、依頼者側から会社へ送付すべきものが伝えられれば、退職代行は一段落となります。

⑥アフターフォロー

代行業者によっては退職後のアフターフォローを行っている場合もあります。失業給付の申請や転職のサポートなどを希望する場合は、退職代行完了後に相談してみるとよいでしょう。

なおこれらに関しては業者によって進め方が異なります。アフターフォローを依頼する際は必ず担当者の話を聞きながら進めましょう。

退職代行が実現・完了するまでのイメージを具体的に描いていたほうが、サービス利用中の不安や疑問が少ない状態で済ませられます

労働力不足の解消、生産性向上、エンゲージメント向上で注目される「キャリア自律」とは? 要点や具体的な取り組みがわかる キャリア自律の解説資料をプレゼント⇒こちらから

3.退職代行サービスを利用すべき状況とは?

いわゆるブラック企業と呼ばれる会社の存在や、相次ぐ退職時のトラブルから、退職代行サービスを利用する人が増えてきました。

退職代行サービスを利用する理由は、「自分で辞めることを試みたもののうまくいかなかった」「自分から辞めることを言い出しにくい労働環境にある」「上司や人事に強く説得された」などが大半を占めているのです。

ここでは退職代行サービスを利用すべき状況について、解説します。

会社側と話したくない直接やり取りをしたくない場合

まずは上司や人事、同僚など会社側と直接やり取りをしたくない場合です。退職に関するやり取りはすべて退職代行サービスが代行してくれるため、会社の人間と直接連絡を取る必要がありません。

「上司が日常的に高圧的な叱責を行っている」「勇気を出して退職の意思を伝えても罵声や嫌がらせなどのパワハラを受ける」場合などに有効です。

退職の意思を伝えても「後任が育つまで待ってほしい」「後任が決まるまで受け付けられない」といったケースにも効果があります。

引き継ぎをしたくない場合

状況によるものの多くの場合、引継ぎの完了を待たずに退職できます。引継ぎに法律上の義務はありません。民法には、「雇用期間の定めのない者は2週間前に退職を伝えればいつでも退職できる」旨が明記されています。

そのため、「引継ぎをしないことが会社に対する業務違反とならない」場合、または「引継ぎをしないことで会社に具体的な実害が生じない」場合、引継ぎの完了を待たずに退職できます。

「人手が足りないから後任が採用されるまでは退職の申し入れは受けられない」という会社の言い分は基本的に通用しません。

何がなんでもすぐに辞めたい場合

退職代行サービスの利用を考える人のなかには、何がなんでも今すぐ辞めたいと思っている人もいるでしょう。しかし代行業者のホームページなどには「即日退職OK」と明記しているものはそう多くありません。その代わり多いのが「即日対応OK」という表記です。

これは「即日の退社を約束するものではないが、支払い完了後は即日対応できる」という意味になります。民法では、無期雇用労働者については2週間前までに退職の申し入れをすればよいという決まりがあるのです。

つまり支払確認完了したその日のうちに退職の意思を伝え、その後の2週間に有給休暇を使えば、実質的な即日退社が可能になります。

会社から退職を認めてもらえない場合

上司や人事に退職の意思を伝えても「一旦預かるから時間をかけて考え直してほしい」「このプロジェクトか完了するまで退職は認められない」というように、会社が退職を認めない場合もあります。このような場合にも退職代行サービスが有効です。

退職代行業者のなかには弁護士と提携している業者もあります。万が一法的な手続きが必要になった場合も対応を依頼できるため、安心できるでしょう。

会社側の都合で退職が認められなかったり、さまざまなハラスメントによって退職の申し出ができなかったりする場合は、退職代行サービスの利用を検討するとよいでしょう

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

4.退職代行サービスのメリットとは?

退職を考える労働者に代わって退職の処理を行う退職代行サービス。本サービスを利用すると、スムーズに退職できます。しかしそのほかにもメリットがあるのです。ここでは退職代行サービスを利用するメリットについて、見ていきましょう。

退職を切り出しづらい人の心理的負担が減る

多くの場合、退職は自分で話を切り出し、会社とよく話し合って退職します。しかしさまざまな事情からそれが難しい、退職を切り出しにくい人もいるのです。このような場合、心的負担は増す一方になるでしょう。

退職代行サービスを利用すると、本人に代わって退職の意向を会社に伝えられます。第三者が間に入るだけでも、依頼者の心理的負担を大きく減らせるのです。

どのような理由でも100%退職できる

退職代行サービスを利用すると、100%退職できます。これは大企業やブラック企業であっても同じです。その理由は、民法627条にある法律上の取り決めにあります。

たとえ就業規則上「退職は1か月前に申し出る必要がある」と書かれていても、民法は就業規則や労働契約より優先度が高い決まりになるのです。そのためどのような企業でも民法627条にもとづき、解約申し入れの日から2週間で退職できます。

上司との面会がない

退職代行サービスを利用する理由として意外と多いのが、「上司の顔も見たくない」「辞めると伝えることすら億劫」というケース。

退職代行サービスを利用すれば、早ければ即日から上司との接触を断てます。これはパワハラや社内いじめを受けている際にも有効です。

「上司と面会の場を持たないまま退職できる」「会わずに済むため精神的な苦痛を減らせる」点は、依頼者にとって大きなメリットになるでしょう。

退職後にトラブルになる心配がない

「退職代行サービスを利用した結果、会社から訴られないか、損害賠償請求をされないだろうか」と不安に思う人もいるでしょう。結論からいえば、訴えられることはありません。これは労働基準法にも次のように定められています。

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない(労働基準法第16条)」

退職代行サービスには法律の専門家がついています。自分で調べる手間や心理的苦痛を減らせるでしょう

入社手続き、年末調整、人事評価、スキル管理など時間が掛かる人事業務を効率化。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」でリーズナブルに問題解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

5.退職代行サービスのデメリットとは?

退職代行サービスにはいくつかのデメリットも存在します。ここでは「費用」「悪質な代行業者」「元上司との関係性」の3つから、退職代行サービスのデメリットについて解説します。

退職に費用がかかる

具体的な金額は業者によって異なるものの、サービスの相場は3万円から5万円といわれています。これは退職や転職に理解のある企業や、円満な人間関係を築けている環境であれば払わずに済む費用です。

しかし退職代行サービスでは有給休暇の代行申請も行っています。そのためサービス依頼にかかる費用を、有給休暇の消化でカバーできるのです。

悪質な退職代行業者が存在する

残念ながら、退職がうまくできなかった場合の返金を受け付けていなかったり、弁護士資格を持たない業者が弁護士法に違反してサービスを行ったりと、悪質な退職代行業者も存在します。

依頼者は、悪質な代行業者に依頼してしまう可能性がゼロではないことも念頭においておきましょう。

なお弁護士資格を持たない業者が法律相談や示談交渉など、退職届を代わりに提出する以外の法律事務に該当する行為を行った場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が適用されます。

元先輩や元上司との関係性が悪くなる

退職代行サービスを利用した場合、退職後も会社の上司や先輩、同僚と良好な関係を保つことは難しいと考えたほうがよいでしょう。退職代行を使うと、本人による退職前の挨拶もないまま、いきなり会社を辞めます。

退職後の人間関係を気にする場合は、代行サービスの利用を見直したほうがよいかもしれません。

退職代行に対して理解のない人がいる点もデメリットのひとつです。しかし基本、退職代行の利用が周囲にはばれません

労働力不足の解消、生産性向上、エンゲージメント向上で注目される「キャリア自律」とは? 要点や具体的な取り組みがわかる キャリア自律の解説資料をプレゼント⇒こちらから

6.退職代行を利用した場合に考えられる退職リスク

退職代行サービスの利用にリスクはないのでしょうか。ここでは退職代行を利用したことによる退職リスクについて、4つのケースを例に解説します。

ケース1:会社から嫌がらせを受ける

第三者からの退職申し出に対し、会社が委任関係や代理関係を確認できないとして、退職処理を拒否する可能性があります。また退職条件や退職時期について協議や交渉を申し入れられ、業者では対応できない事態に陥る可能性も考えられるのです。

この場合は弁護士に相談してみましょう。なるべく会社との接点を持たずに退職できないか検討することが重要です。退職日まで有給休暇を使用すれば、会社に出勤せず退職できます。

ケース2:損害賠償請求をされる

損害賠償請求をされるリスクもゼロではありません。いわゆるブラック企業には、「勝てる見込みがなくても嫌がらせで訴えたい」と考える人も残念ながら一定数存在します。

とはいえ、実際のところ損害賠償請求には正当な根拠と費用が必要になるため、社員を引き止めるためだけに訴訟に踏み切るケースはほとんどありません。場合によっては損害賠償の請求自体が違法となる可能性があります。

もちろん退職に当たって労働者側に雇用契約上の義務に違反する行為などがあった場合、損害賠償請求を受ける可能性もあります。しかしこれは、退職代行を利用してもしなくても同じです。

ケース3:協議を持ちかけられる可能性がある

退職代行業者に対して、会社から「この時期まで退職を待ってほしい」「最低でも引継ぎだけは終わらせてほしい」と協議を持ちかけられる場合があります。

しかし悪質な業者が存在するデメリットの部分でも触れたとおり、弁護士法資格を持たない代行業者は依頼人に代わってこれらへの対応はできません。

退職代行業者が代行できるのは、退職の意思表示を行うなどあくまで単純作業のみ。協議を持ちかけられる可能性がある場合は弁護士に依頼しましょう。

ケース4:懲戒解雇

可能性は非常に低いものの、労働者からの退職申し入れに対して不当な因縁をつけ、懲戒処分といった強硬措置を取ってくる可能性もまったくないとは言い切れません。懲戒解雇は会社が労働者に対して行う処分のなかで、もっともダメージの大きい処分です。

しかし労働者が退職代行を利用しただけで懲戒解雇はできません。単なる懲戒処分だけであれば、そのまま無視していても問題ないのです。しかし退職金を支払わないなどの実害を受ける際は、弁護士に依頼し、早急な対策を講じましょう。

会社による懲戒解雇や損害賠償請求には、実のところ意味はありません。むしろ会社は社会的評判を下げるリスクとなるのです

懲戒解雇とは? 理由や条件、手続きなどをわかりやすく解説
懲戒解雇とは、労働者に科されるペナルティの中で最も重い処分です。 懲戒解雇の意味 懲戒解雇の理由 懲戒解雇の要件 懲戒解雇の判断基準 懲戒解雇の手続き 懲戒解雇を言い渡された際に残っていた有給休暇に...