近年、市場規模が急速に拡大し、注目を集めるタレントマネジメント。経営環境や働き方の変化への対応を目的に、導入する企業が増加しています。
その一方で、聞いたことはあるものの、詳しくは知らないという方も多いかもしれません。この記事では、タレントマネジメントの調査や導入検討に役立つ
- タレントマネジメント
- タレントマネジメントシステム
それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。
目次
1.タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、経営目標の達成や業績の向上を、経営資源のひとつであるヒトを活用して実現する人材マネジメントの手法のひとつです。
具体的には、従業員のスキルや能力、個性といった人材情報の一元化・可視化を実施。その人材情報をもとに配置や育成を実施し、従業員のパフォーマンスやエンゲージメント向上などを目指します。
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2.タレントマネジメントのメリット
タレントマネジメントを実施することで得られるメリットを、人事の主な4つの業務に沿ってご紹介します。
①人材の調達
人材の調達は、経営目標の達成やプロジェクトの実行に必要な人材を確保することです。タレントマネジメントの実施が、内部や外部に問わず、効率的な人材の調達につながります。
採用基準を明確にできる
社内のハイパフォーマーに共通する行動特性を可視化し、分析することで、採用すべき人材のモデルや基準が明確になります。また、離職者の傾向も明らかになり、採用のミスマッチ防止にもつながります。
必要な人材が発掘できる
人材情報を一元化するため、人材検索がスムーズになります。将来のリーダー候補や、プロジェクトに必要な人材の発掘に役立つでしょう。
②人材の配置
人材の配置とは、社員のスキルや能力に合わせて配置を行うことです。能力に合った配置は、社員のパフォーマンスを高めます。タレントマネジメントにより可視化した人材データをもとに配置を検討すれば、勘や経験を頼りにするよりも効果的な配置が可能です。
個人のパフォーマンスを引き出せる
一人ひとりの能力やスキルといったデータにもとづいた適材適所の配置は、社員のパフォーマンスを効果的に引き出せます。また、自分にマッチする仕事に取り組んでいる実感はモチベーションアップにもつながります。
チームのパフォーマンスを高められる
社員の能力やスキルといった情報だけでなく、個性や性格、エニアグラムといった人材データも人材配置に役立ちます。スキルバランスや社員同士の相性を考えながら、配置検討を行えば、さらに高いパフォーマンスのチーム編成も期待できます。
③人材の育成
人材の育成とは、社員の能力を磨き、質を高めることで、企業の業績向上を目指す活動のことです。タレントマネジメントにより可視化した、社員のスキルや能力、個性といったデータにもとづき育成を計画、実施することで効率的な育成を実現します。
一人ひとりに合わせた育成ができる
上司の勘や経験にもとづく非合理な育成から脱却し、社員それぞれの能力やキャリア感を把握した上で適切な育成ができます。計画的な育成はきっと、計画的な人事戦略の後押しになるはずです。
育成の引き継ぎがスムーズになる
育成データを蓄積しておけば、部下が異動することになっても、次の上司にスムーズに育成データを引き継げます。引き継ぎの失敗による不適切な育成や、情報収集による人的負担の発生を防げるでしょう。
④人材の代謝
人材の代謝とは、人材の新陳代謝のことです。流動性が激しい環境のなかで、優秀人材を確保しながら、ふさわしくない人材に対して退出を促します。タレントマネジメントによってハイパフォーマーとローパフォーマーの特定が簡単になり、それぞれに必要な引き止め、退出促進の施策実行が効率的になります。
エンゲージメントの向上・離職防止ができる
タレントマネジメントよる配置や育成は、社員のパフォーマンスを高めます。自分の能力が発揮できる社員は、自ずとエンゲージメントが高まり、離職防止にも効果を発揮します。
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ローパフォーマーが特定できる
社内の人材データ可視化により、ローパフォーマーの特定もスムーズです。過去の評価結果や面談結果も合わせて確認することで、具体的なフォローの施策も検討しやすくなります。
3.タレントマネジメントのデメリット
タレントマネジメントのデメリットを導入時と運用時に分けてご紹介いたします。課題を知り、対策を知っておくことで導入がスムーズになるでしょう。
導入時のデメリット
実施のイメージが湧かない
タレントマネジメントという言葉や概要を知っていても、具体的に何をすればよいのかわからないという人は少なくありません。
目的や効果が不明確なままで導入を進めてしまうと、手段の目的化が起こります。本来の目的が「企業の成長」にもかかわらず、「タレントマネジメントを成功させるために、タレントマネジメントを実施している」というような状態に陥ってしまうのです。
最悪の場合、タレントマネジメント自体が頓挫する可能性があります。
対策1:過去の導入事例を参考にする
タレントマネジメントの効果や方法を学ぶことも大切ですが、より実践的に学ぶ場合は、同業他社の事例の確認がオススメです。導入の具体的なイメージがしやすくなります。
タレントマネジメントに関するサービスを提供している企業のホームページで、自社に似た業種・業態の導入事例を確認するとよいでしょう。
対策2:タレントマネジメントシステム会社に相談してみる
タレントマネジメントシステムを提供する企業にデモンストレーションを依頼するのもひとつの手段です。システムのデモンストレーションに加えて、タレントマネジメントの意味や効果、また自社に合わせた活用方法なども説明してくれます。
デモンストレーションは1時間程度です。前もって質問をまとめておけば、効率的に知りたい情報が手に入るでしょう。
社内の理解を得る必要がある
タレントマネジメントは人事だけで行うものではありません。経営層から現場の社員までが連携して取り組んでいく人事戦略です。
経営戦略と深く関わることから、経営層からの理解が重要です。また、社員のパーソナルな情報や育成状況といったデータの定期的な回収は、少なからず現場の社員の負担となるため、社内全体での理解も欠かせません。
対策1:他社事例を元に勉強会を実施する
他社事例を元に勉強会を開催します。タレントマネジメントの実施にどんなメリットがあるのかを自分ゴト化してもらうことで、社内の納得度も高まるでしょう。
対策2:タレントマネジメントに関するセミナーを勧める
プロが講師を務めるセミナーの受講を勧めるのもひとつの手です。セミナーは人事系の企業やタレントマネジメントシステムを提供する企業が、定期的に開催しています。
実際にセミナー会場に訪れなくても、オンラインかつ無料で観られるものが多いので、タレントマネジメントを知ってもらいたい人たちに気軽に勧められます。
運用時のデメリット
人材情報の収集がうまくいかない
集めた人材情報をもとに人材マネジメントを実施するタレントマネジメントにとって、人材情報の収集は、心臓部といっても過言ではありません。
しかし、
- うまく情報を現場から吸い上げる仕組みができていない
- 現場の社員が自発的に情報を提供してくれない
などの原因からうまくいかないケースがあります。
対策1:情報収集のルールづくりや協力の呼びかけ
人材データの登録・更新のルールを設定しましょう。たとえば、資格情報が更新された場合には、3日以内に更新するなどです。ルールで仕組み化すれば、タレントマネジメントの運用もスムーズになります。
また、ルールを設定したらその周知や協力の呼びかけも忘れずに行いましょう。その際には実際に行動してもらうためにも、相手目線でタレントマネジメントのメリットを語ることを意識することが大切です。
対策2:タレントマネジメントシステムを導入し、情報収集を効率化
タレントマネジメントシステムにはアンケート機能が備わっています。アンケートの一括配信、回収、集計が一貫してできるので、効率的な情報収集が可能です。また、未回答者を可視化できるので、それをもとに催促を行えば、回答率の向上が期待できます。
集めた人材情報の管理に手間がかかる
人材情報をうまく集められても、それを紙やExcelで管理していると、情報の検索やファイルのやり取りに時間がかかってしまいます。そのうえ書類やファイルの受け渡しミスや操作ミス、紛失などによるヒューマンエラーで、さらに業務を圧迫する可能性があります。
対策:人材情報をシステムで一元管理する
人材情報をシステムで一元管理すると、紙やファイルのやり取りが大幅に減少し、人材情報の管理がスムーズになります。また、情報を一元管理することで、必要な情報も条件を絞り検索するだけでアクセスできます。
人材情報をうまく活用できない
人材情報を集めたものの、分析や課題の可視化など、活用できなければ意味がありません。活用できたとしても、分析や資料制作に時間がかかり、ほしい情報がすぐに手に入らない場合も、改善の余地があります。
対策:分析やグラフ化をシステムで効率化する
集めた人材情報をそのまま分析にかけたり、グラフ化したりできるシステムを導入すると、タレントマネジメントの実務が効率化できます。人的コストの削減や社員の負担軽減の実現も可能です。
また、システム導入により、属人化していた業務を他の人でも実行できるようになれば、柔軟な働き方にもつながるでしょう。
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4.タレントマネジメントシステムとは?
タレントマネジメントシステムとは、その名を通りタレントマネジメントの運用を効率化するためのシステムです。
従業員のスキルや経験、個性といった人材情報を一元管理するデータベースが基礎にあり、そのデータの収集や活用を効率化する機能が備わっています。
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5.タレントマネジメントシステムのメリット
ここではタレントマネジメント実施における人的負担を減らし、その効果を高めるシステムのメリットについてご紹介します。
人材データ把握の効率化
タレントマネジメントの要であり、特徴でもある一方、その手間を理由にデメリットにも挙げられる人材データの回収、管理をスムーズにします。
- 検索機能で、経営戦略やプロジェクトに必要な人材がすぐに見つかる
- アンケート機能で必要な情報をパッと回収できる
データにもとづく最適配置の効率化
可視化された社員の能力やスキルといったデータや、組織全体のバランスを確認しながら最適な配置検討が可能です。組織図の自動生成の機能があれば、組織改変の時期にわざわざExcelやPowerPointで組織図を作成する必要もありません。
- 所属データを元に組織図の自動生成
- マトリクス分析を使って組織のバランスを見ながら配置検討
能力やキャリア感に応じた育成の効率化
検索機能を使えば、力を入れて育てるべき人材、面談などのフォローが必要な人材がすぐにわかります。アンケート機能による育成状況の回収で、社員の現状のアップデートも簡単に。人材データが一元管理されているので、異動時に必要な育成情報の引き継ぎもスムーズです。
- 人材データや面談履歴など育成に関わるデータの蓄積
- 社員個人のデータや特定の条件に当てはまるリストの共有(権限設定あり)
6.タレントマネジメントシステムのデメリット
タレントマネジメントを効率化するためのシステムですが、デメリットもあります。しかし、デメリットはおよそシステムの選び方を工夫することで対策が可能です。
導入時のデメリット
導入コストがかかる
専用のシステムを導入するため当然コストがかかります。デメリットのように感じられますが、実際にタレントマネジメントを実施している企業の約7割が、システムの導入や導入の準備をしているという調査結果があります。
このことからタレントマネジメントの運用において、システムの導入は重要と言っても過言ではないでしょう。
導入を検討する際は、社内のサーバーにシステムを設置するオンプレミス型よりも、クラウド型の方が、初期費用を押さえられます。月額のランニング費用が発生しますが、最新の状態で機能を活用できるなど、さまざまなメリットがあります。
データ登録に手間がかかる
タレントマネジメントをシステムで運用する際には、人材情報の登録は避けて通れません。社員全員の情報を手作業で入力するとなると、人的負担はかなりのものです。
そこでシステムを選ぶ際は、次のような機能があるものを選びましょう。
- 社員が自ら情報を入力できる
- アンケート調査をそのままデータベースに反映させられる
- いま使っているCSVの項目をシステムの項目に紐づけてデータを取り込める
運用時のデメリット
担当者がうまく使いこなせない
担当者のタレントマネジメントへの理解が薄い、システムの機能が多すぎるなど理由から、システムをうまく使いこなせないことがあります。
タレントマネジメントやそのシステムは、導入して終わりではなく、PDCAを回し活用することが重要です。そのためシステム会社を選ぶ際には、下記の要素をポイントに検討してみるとよいでしょう。
- 導入後もシステムの使い方を教えてくれる
- 過去の導入事例から、具体的な活用方法を教えてくれる
全社で活用できない
タレントマネジメントは人事だけでなく、組織全体で取り組む活動です。システムを人事が活用できていたとしても、経営層や現場の社員が活用できなければ、導入の効果は薄れてしまいます。
システムを検討する際には、機能の多さも魅力に映りますが、誰でも使いやすいUIのシステムを選ぶという観点も重要です。