他責思考とは、トラブルの原因が自分以外にあると考える傾向のこと。特徴、改善方法、自責思考との違いなどを解説します。
目次
1.他責思考とは?
他責思考とは、問題が発生した際に自分以外に原因があるとする考え方のことです。他責思考の人は、物事がうまく運ばなくても自分のせいだと考えないため、当事者意識が低く責任感が希薄な傾向にあります。そのためビジネスシーンでは、同じミスをくり返すこともしばしばです。
一方で当事者意識からくる重圧やストレスが軽減できる、事柄を客観的に観察できるなどの側面もあります。
2.他責思考と自責思考の違い
他責思考が自分以外に責任の所在を求めるのに対し、自責思考ではすべての問題に対して自分に責任があるのではないかと考えます。つまり自責思考は他責思考と対極にあるのです。
たとえば商品の不具合でクレームを受けた場合、他責思考の人は「顧客の使い方が悪かったのだろう」と相手のせいにするでしょう。自責思考の人は「自分の説明不足が原因かもしれない」と考えるのです。
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1.自責思...
3.ビジネスで自責思考が求められる理由
ビジネスシーンにおいては、他責思考よりも自責思考の人材が求められる傾向にあります。社員の成長や職場の人間関係などの観点から、企業が自責思考を重要視する理由を説明しましょう。
当事者意識の向上
自責思考は仕事に対する当事者意識を高め、主体性と責任感が生まれます。当事者意識とは、目の前の事象に対して自分が行う、あるいは解決すべきことだと認識すること。
当事者意識がない社員は、「自分がやらなくても誰かがやるだろう」と仕事を他人任せにする傾向にあります。このような社員がいると、部署やチームの生産性が低下する恐れがあるのです。
当事者意識を向上させるには、責任は自分にあると考えられる自責思考が欠かせません。
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成長機会の増加
自責思考を持つ社員は、問題が発生した際に自分の責任として捉えるため、成長のチャンスをより得られます。自身の行動を振り返り、問題点を見つけて改善しようと考えるからです。
問題の発見と改善を繰り返すことでさまざまなノウハウが蓄積され、スキルアップも自ら積極的に行うようになるでしょう。自責思考を持つ社員はこのような積み重ねが増え、成長が促進されます。
自己分析を実施
自責思考の社員はつねに自分の行動を振り返り、自己分析を繰り返しているため、自分自身の問題点や弱みを深く理解しています。そのためトラブルが生じたときも、トラブルの原因と自分の思考や行動をひもづけて考える傾向にあるのです。
トラブルの改善策はもとより、予防策もあわせて考案するでしょう。その結果自責思考の社員は、トラブルへの対応力が向上します。
4.他責思考の人の特徴
他責思考を持ちやすい人には共通して見られる特徴があります。他責思考を持ちやすい人の特徴を4つご紹介しましょう。
他人まかせ
仕事への姿勢や発言が消極的で他人まかせの社員は、他責思考を持っている可能性があります。他責思考の人は物事を自分ごととしてとらえず「ほかの人がやってくれるだろう」と考える傾向にあるからです。
責任感が希薄なため、自分に与えられた仕事を他人に丸投げする行動も見られます。またトラブルが発生しても「自分の責任ではない」と考えるため、問題解決にかかわろうとしないでしょう。
責任転嫁
自分が責任を取るべきだという意識が低く、トラブル時には責任を逃れようとして言い訳をする傾向にあります。さらにトラブルの責任を他人へ押し付けようとするかもしれません。
ほかにもプライドが高く自分のミスを受け入れられず責任転嫁するタイプや、面倒ごとを避けるために責任転嫁するタイプも存在します。
同じミスを再発
他責思考の社員は、自分の失敗によって問題が生じても、自分に責任があると認めないため、同じミスを繰り返す傾向にあります。
自分の行動を振り返って改善するという意識が低いため、上司や同僚の負担を増大させ、顧客にも迷惑をかけるかもしれません。他責思考の社員がいると、部署やチームの生産効率や顧客満足度を低下させる可能性があります。
謝罪の拒否
ミスを認めると、叱責を受けたり自身の立場が悪くなったりする可能性があるからです。このような状況を回避するために、他人に責任を転嫁して謝罪を避ける傾向にあります。
また他責思考を持つ人は、「相手が間違っている、自分が正しい」という考え方を持っていることも少なくありません。このような考え方も相手のせいにする考え方であり、謝罪を拒否する理由になりえます。
5.他責思考になる原因
人のせいにする行動には、自分を守ろうとする心理が影響していると考えられています。ここでは他人思考になる5つの要因について、詳しく説明しましょう。
叱責や指摘の回避
他人に責任転嫁してしまう要因のひとつに、叱責や指摘から逃れたいという心理が挙げられます。
仕事でミスをすれば上司や同僚から誤りを指摘され、注意や叱責を受けるのが一般的です。しかし極端にプライドが高い人や、打たれ弱く傷つきやすい人は、他人からの叱責や指摘に対して嫌悪や恐怖を感じることがあります。
その結果、自分を守るために他人を責めるという防衛本能が働くのです。
承認欲求や自信が過剰
過剰な承認欲求や自信も、他責思考につながります。
承認欲求が強い人は、自分のよい評価を周囲へアピールしたいという願望を持つため、失敗を恐れる傾向にあるからです。また自信過剰の人はプライドが高い傾向があり「失敗することは恥ずかしい」「自分が失敗するはずがない」と考えがちです。
このような心理から自分のミスを認めるのを嫌がり、他責思考に陥りやすくなります。
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外発的動機付けによる責任感の低下
外発的動機付けによって仕事をしている社員は、他責思考になりやすい傾向があります。
外発的動機付けとは、給与、福利厚生、勤務条件など外部からもたらされる要因でモチベーションが向上すること。外発的動機付けで働く社員は仕事自体に興味を持っていないことが多く、「お金を得る手段としてこの仕事をやっている」と考える傾向にあります。
そのため仕事への責任感が希薄になり、問題が発生しても積極的に解決することはなく、他人まかせになりがちです。
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業務への慣れ
毎日の仕事に慣れてルーティーン化することも、他責思考になる要因のひとつです。
決まった仕事を淡々と進めていると、「自分はただ目の前の仕事を終わらせればよい」という心理状態になりやすく、業務改善や新しい仕事に積極的に取り組もうという気持ちが低下します。
その結果面倒な仕事や責任の重い仕事は他人に押し付けようという他責思考に陥りやすくなるのです。
自己肯定感の低下
自分に自信が持てず自己肯定感が低くなると、他責思考を抱きやすくなります。
自己肯定感が低いと他人の言動を過剰に否定的に受け止めてしまうことがあり、自分の心が傷つかないよう防衛しようとするのです。この防衛本能から問題を他人のせいにして責めたり、面倒なことを他人に押し付けたりする他責思考が生まれることがあります。
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6.他責思考のメリット
ビジネスシーンにおいて否定的に捉えられがちな他責思考にも、評価できる点があります。ここでは他責思考のメリットをふたつご紹介しましょう。
ストレス軽減
他責思考は、問題が発生しても自分のせいだとは考えないため、精神的なダメージを受けにくくなります。そのため仕事のよるストレスを軽減できるのです。
とくにベンチャーやスタートアップ企業では、他責思考を持っているとフラットな精神状態で問題に向き合える可能性があります。他責思考の社員は問題が生じても一人で抱え込まないため、社内で共有と改善に取り組めるでしょう。
客観的な視点での問題解決
他責思考を持つ社員は問題を客観的に捉えようとするため、原因や改善点の発見につながることがあります。
他責思考の社員は、問題の原因は自分以外の要因にあると考え、広い視野で問題をとらえようとします。そのため問題の本質を把握して、根本的な解決方法を考案するかもしれません。
7.他責思考のデメリット
責任感が希薄でミスを他人のせいにする傾向が強い他責思考は、ビジネスにおいてさまざまなリスクをもたらす可能性があります。は他責思考のデメリットを3つご紹介しましょう。
周囲との関係が悪化
他責思考は失敗の原因を自分以外の要因に求めるため、周囲との人間関係を悪化させるリスクがあります。
自分のミスを認めずに問題をただ他人や環境のせいにすると、責任感のない人だと思われて周囲からの評価や信用が低下するでしょう。また問題を改善するための発言ではないため、発言を重視されることもありません。
このような状況が続くと、他責思考の社員は職場で孤立する可能性があります。
成長が困難
「自分は悪くない」と考える他責思考には、成長の機会を失う危険性があります。
他責思考をすることで「自分のミスを認めて、行動を振り返り、改善する」という成長のために欠かせないプロセスが欠如してしまうからです。
他者に責任を転嫁し、失敗の原因や改善策を考えることを怠るため、成長が遅滞するだけでなく同じミスを何度も繰り返すでしょう。
フォローやサポートが減少
他責思考に偏った社員は、同僚や上司からのフォローやサポートを受けにくくなります。
「次は自分が責任転嫁の標的にされるかもしれない」と警戒されて距離を置かれ、フォローやサポートを提供してくれる人が減る可能性があるからです。
ますます成長の機会が減少し、信用や信頼が低下するという悪循環に陥る恐れもあります。
8.他責思考の改善方法
職場に他責思考の社員が増加すると深刻な問題を引き起こしかねません。事前に他責思考の改善へ取り組みましょう。ここでは3つの改善方法を紹介します。
長期的な視点を意識
他責思考の社員には、その場をやり過ごすのではなく長期的な視点を持つようアドバイスしましょう。
他責思考の傾向が強い社員は、「叱責や指摘を回避したい」「自分の評価を下げたくない」などと考えて他者に責任を転嫁しがちです。
責任転嫁を続けると将来的に自己評価が低下する可能性があること、失敗から学び成長することで評価を回復できることを理解させる必要があります。また職場においては、ミスに対して過度に叱責しない風土をつくることも重要です。
決定権を付与
責任感が希薄な他責思考の社員は、仕事の裁量を与えることで自分の行動に対する責任感が高まる可能性があります。
仕事における決定権を持つと自分で考えて行動できる範囲が広がり、自分の行動に対する責任感が高まることがあるからです。自分の判断で成果が上がれば自信や自己肯定感につながり、ほかの仕事にも積極的に取り組むようになるでしょう。
ただし決定権の付与は、社員の特性に合わせてアプローチする必要があります。自信がなく自己肯定感の低い社員には、自分の行動を自分で選択させることから始める方法が効果的です。
研修やセミナーへ参加
研修を実施し、自責思考と他責思考の定義、模範的な行動パターンなどを理解させる方法も有効です。
階層別研修、キャリア研修、選抜研修などに取り入れて体系的に学習すると、自身の他責思考に気付きやすくなり、健全でバランスの取れた思考スタイルを促進できます。
自社で研修を実施するのが難しい場合は、セミナーなどを利用するのも手です。