世間一般的、若手向けに使われる「第二新卒」という言葉。働き方の多様化が進む近年、第二新卒というチャンスを活かした働き方も増えてきました。
しかし、第二新卒とは具体的にどの世代を指しているのでしょう。また企業は第二新卒にどんな期待をしているのでしょうか。第二新卒の実態や既卒・フリーターとの違い、メリットやデメリットについて解説します。
目次
1.第二新卒とは?
第二新卒とは、学校を卒業し就職後1~3年で一度職を離れ、再び転職を志す人のこと。第二新卒は新卒に比べて、明確な基準がありません。新卒で入社したものの会社を3年以内に離職し、その後改めて転職活動を行う25歳前後のことを一般的に第二新卒と呼びます。
第二新卒の採用ニーズはここ数年増加傾向にあるのです。2016年に実施された「マイナビ転職 中途採用状況調査」では、6割強の企業が第二新卒の採用見通しに「積極的」と回答しました。
2.第二新卒と既卒やフリーターとの違い
第二新卒と似た言葉に、「既卒」という表現があります。既卒やフリーターとの違いを見ていきましょう。
既卒とは?
既卒とは大学や短大、専門学校や高校を卒業した後、一度も就職したことがない人のこと。第二新卒と同じく既卒にも明確な定義はありません。一般的に、短期間でも社会に出た経験がある第二新卒に対し、既卒は社会人経験が一度もない人を指しています。
最近では、新卒の就職活動が思うようにいかなかった場合、既卒となることを避け次年度に新卒として就活できるようあえて留年する人もいますが、それには当然ながら学費などのデメリットが存在します。
フリーターとは?
フリーターは、1980年代のフリーアルバイターという言葉がもとになっており、こちらも第二新卒、既卒と同じく明確な定義はなく学校を卒業した後、正社員として就職せず、パート・アルバイトとして働く若年者をフリーターと呼んでいます。
一般的に、アルバイトやパートで生活する人全般をフリーターと呼びますが、内閣府では以下のような人をフリーターとして定義付けています。
- 学生や主婦を除く15~34歳の若年者
- 主な仕事がパートやアルバイトと呼ばれる雇用形態
- パートやアルバイトで求職する意思を持った無職の者
既卒とフリーターはほぼ同じ
それでは卒業してから就職をせずに、その後アルバイトで働いていた場合、既卒とフリーターどちらに該当するのでしょう。この場合、既卒でもありフリーターでもあるということになります。既卒とフリーターは両立する概念なのです。
3.第二新卒の実態
続いて第二新卒の実態について見ていきます。なぜ第二新卒という道が選ばれるのでしょうか。
前職の最多は営業
20代若手に特化した人材紹介事業・UZUZの調査によると、第二新卒として転職活動を行う約30%の前職および現職が営業職でした。以降エンジニアや研究開発の技術職・専門職が12.4%、接客や介護などのサービス業が12.1%と続きます。
業界の最多は情報通信・インターネット業界の14.6%。以降建築・不動産業界が13.6%、小売業界が8.0%となっています。
営業やサービス、販売職は営業・販売ノルマがある、技術専門職は高い専門性を求められる、これらが転職に至る要因と予想されます。
前職の企業規模
同調査によると、第二新卒で転職活動を希望している回答者の前職企業規模に大きな差は見られませんでした。最多は1,000~4,999人の22.3%、続いて49人以下の18.3%、100~299人の17.6%という結果です。
2014年の野村総合研究所による中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」では、企業規模が大きくなるにつれて離職者が減る傾向にありましたが、本調査ではその傾向は見受けられませんでした。
なぜ退職したのか?
退職理由の最多は16.7%の「仕事が自分に合わなかった」、次いで13.8%が「労働時間が長い」、13.4%が「社風が合わなかった」となっています。反対に「福利厚生が少なかった」は2.2%、「評価制度の不満」は3.0%にとどまっていました。
このことから転職を検討するのは福利厚生や給与、評価制度でなく。社風や人間関係、仕事内容のミスマッチなどワークライフバランスが原因だと分かります。
第二新卒が再就職先に求めるもの
上記結果の裏付けとして、第二新卒が再就職先に求める条件が挙げられます。最多は共に15.2%の「良好な人間関係」と「ワークライフバランス」。次点に13.2%の「休日の多さ」となります。
本調査から、会社の知名度や規模、社会的意義のある仕事内容を重視する人が少ないことが分かります。大手志向が強い新卒就活に比べ、第二新卒には大きな変化が起きているといえるでしょう。
第二新卒では業務内容に重きを置かず、より働きやすい環境を優先し人間関係やワークライフバランスを重視する傾向にあるようです。
4.第二新卒のメリット
それでは、第二新卒のメリットについて見ていきましょう。
人材育成のコストが少ない
前述の通り第二新卒は、新卒者と比べて社会人経験があります。第二新卒には、以前の会社で研修や経験を積み、ビジネスマナーやネットリテラシーなど基本的なビジネススキルを備えている人が多く存在するのです。
新卒者を採用する際、社会人としての基本的な知識やマナーなどの研修を行う場合がほとんどですが、第二新卒ではそのコストや手間はかかりません。新卒と比べて人材育成にかかるコストが少ないというのが第二新卒のメリットなのです。
目的が明確な人材が多い
新卒時に入社できなかった会社に対して、第二新卒という立場のもと再度チャレンジする人も少なくありません。このことから第二新卒は、やりたいことや意思が明確な人物も多いとされているのです。
第二新卒の離職率は一般的に新卒より低いといわれています。これは第二新卒で入社した人材は明確な理由を持って転職活動に挑み、新卒以上に慎重な転職を行う傾向にあるからです。
意欲が高い
第二新卒は、離職した後、自分にとって価値のある仕事とは何か、自分はどんな会社に価値を感じるのか、自分を見直し、新たに就活に取り組む場合がほとんど。そのため第二新卒には、意欲が高い人材が多いのです。
また、社会や会社に染まり切っていないため、新卒と同じようなやる気とフレッシュさも持ち合わせています。仕事に対する先入観が少ないため、次の会社の文化や社風になじみやすいでしょう。
5.第二新卒のデメリット
反対に第二新卒のデメリットとは、何でしょうか。
すぐ辞める可能性が高い
新卒と同じように若くてフレッシュ、ということは裏を返せば最初の企業を早々に辞めてしまった、もしくは辞めてしまうかもしれない、ということ。
採用担当者が新卒に次ぐ世代、戦力が欲しいと思う一方で、またすぐに辞めてしまうのではと不安を抱えることも頷けます。
第二新卒でも、なぜ短期間で辞めることになったのか、自分の弱みや失敗点は何だったのか、それらをどのように改善しどう成長していきたいかなど、的確なビジョンを持つ人材なら、企業にとって魅力的な転職希望者となるでしょう。
ビジネスマナー
一度社会人になってはいるものの、すべての第二新卒者が最低限のビジネスマナーを完璧に備えているかというとそうではありません。
実は、第二新卒が企業に売り込みできるほどのスキルを擁していることはそう多くないとされているのです。
採用担当者は言葉遣いや立ち居振る舞いなど、社会人として当たり前のことが身に付いているかを見極めます。第二新卒らしいフレッシュさや素直さだけでなく、社会人として最低限のマナーが守れているかもチェックしておきましょう。
比較による不満
新卒はその企業が初めての会社であるため比較対象がありません。良い意味でも悪い意味でも「これが会社、これが社会人」と感じるでしょう。
それに対して第二新卒は短期間でも一度就職しているため、この点は前の会社のほうがよかった、これは今の会社のほうがよい、など職場の比較対象が存在します。
前の会社ではこうしてもらった、今の会社にはこれがない、など前の会社と比較しての不満が出るのではないか、という懸念があるのも第二新卒のデメリットです。
6.第二新卒を採用する方法、流れ
「新卒」という言葉は付いていますが、第二新卒の採用は中途採用と同様に考えられています。
目標や採用基準の確認
企業側はなぜ第二新卒を採用するのか、どんな人物を採用したいのかなど、目標や基準を明確にしておきましょう。目標や基準が曖昧だと、人材のどこを見ればよいのか採用時に迷ってしまい、良い採用につながらなくなります。
採用方法やコストを決定
第二新卒採用の目標や基準が固まったら、転職エージェントの利用やダイレクトリクルーティングなどの採用方法、発生するコストやスケジュールなど、採用方法やコストの詳細を確認し、決定していきます。
第二新卒の採用でも、最終的な目標は既卒や中途採用、新卒採用と変わらず「採用を成功させること」。第二新卒の採用を考えていたが予算が足りなかったため採用に失敗した、などの事態にならないよう、バランスを見ながら決めていきましょう。
募集要項や自社PRを作成
続いて、目標や基準に沿った募集要項を決定していきます。あらかじめ用意されている、いつも同じものを使っているといった場合は、社内制度や法律の改正などに変更点がないか必ず確認しておきましょう。
具体的な仕事内容や給与表記などを、求める人材に合わせて魅力的なものにチェンジしていくことも重要です。競合他社とどう争うのか、既存社員のやりがいは何なのか、など自社の強みや魅力を盛り込んだPRを作成していきましょう。
会社案内や商品パンフレットのほか、企業が新聞や雑誌などに取り上げられた場合はその記事を準備しておくのもよいでしょう。
採用担当者を決定
採用担当者は人材が最初に接触する存在です。失礼のない対応は当然ながら、将来の同僚に対する尊敬と親しみを込めた接し方も重要となります。
昨今、企業が採用したいと考えている数に対して希望者の数が少ない「売り手市場」が叫ばれています。つまり、面接や選考は企業が人材を選ぶ過程であると同時に人材が企業を選ぶ場でもあるのです。
必要に応じて、面接官のトレーニングを組み込むことも視野に入れましょう。また、不採用になる人材に対しても将来その相手とどんな関わりができるか分かりません。すべてにおいて、丁寧な対応を心掛けましょう。
募集
新卒と違って第二新卒や既卒の採用を欠員補充のため急遽行うこともあるでしょう。ある程度マニュアル化して準備を整えたら募集を開始します。
エージェント
新卒と社会人の中間的存在ともいえる第二新卒。転職希望者が自身のアピールポイントを正しく把握せず、転職市場に関する知識が乏しいまま転職活動を進めてミスマッチが生じ、双方にとってロスになる場合もあります。
そういった事態を避けるため、転職エージェントを通じて選考するのもよいでしょう。最近では第二新卒向けに転職エージェントサービスを展開する企業も増えてきました。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業側が主体的にアプローチする採用方法のこと。従来のように求人掲載サイトで募集をかける「待ち」の採用方法に対して、企業側がデータベースやSNS、イベントを通じて人材を探し直接連絡を取って採用する「攻め」の方法です。
売り手市場の加速や労働人口減少に伴う人材獲得競争が繰り広げられる中、求職者の応募を待つ方法のみでは、優秀な人材の確保は難しいでしょう。またダイレクトリクルーティングは相手と直接やりとりするため、応募から採用までの時間を短縮できるのです。
ダイレクトリクルーティングとは? 背景、メリットやデメリット、手法やプロセス、サービスについて
ダイレクトリクルーティングは、人材データベースから企業が求職者に直接アプローチする採用方法のことで、新しい採用方法として注目を集めています。
ここでは、
ダイレクトリクルーティングとは何か
ダイレク...
直接の応募
ダイレクトリクルーティングと並行して従来の募集を進めることも効果的です。サイトや広告、ハローワークなどさまざまな媒体を利用して求職者の募集を行うことで、採用に必要なリソースをある程度抑えることができます。
求める人材を求人依頼してリソースを抑えるエージェントの活用、企業自らが求める人材を探してアプローチするダイレクトリクルーティング、それぞれにメリット・デメリットがありますので自社に合った募集方法を活用しましょう。
選考
実際に募集を開始し、応募が入ってきたら選考を進めていきます。選考が進むにつれて企業への志望度が変化することもあるでしょう。
書類選考
選考の第一段階として書類選考を行います。書類選考には、人事によるものと配属予定部門のリーダーやマネージャーによるものの2種類があります。応募書類は個人情報の塊ですので、取り扱いには最大限の注意を払いましょう。
また応募書類は返却することも多いので、汚さない、書き込みをしないという点に気を付けてください。
コピーを取る際は、その管理を徹底し、廃棄する際は、必ずシュレッダーで細かく裁断します。人事部以外で選考する際、事前にレクチャーしておくと安心です。
面接選考
書類選考を通過した人材に連絡を取り面接を実施します。中途採用の場合、面接回数は2~3回が一般的です。
必要なスキルや経験を持っているか、即戦力になり得るかは現場が最も正しく判断できるため、一次面接から配属予定部署の上長が参加することも珍しくありません。
第二新卒の場合、中途採用に比べてスキル面のみで判断しない傾向にあります。しっかりとコミュニケーションを取り、転職に対する本気度や望む条件などを聞いておきましょう。
内定
優秀な人材ほど、競合他社から誘われている可能性が高いです。そのため内定を出したからといって採用に成功したとは考えないほうがよいでしょう。内定後の辞退はそれまでの努力がすべて無駄になりかねません。慎重に締めくくりましょう。
内定通知書の交付によって正式な内定となりますが、電話などで内定の連絡を行った時点でも労働契約の意思表示をしたことになります。内定を出す場合は競合状況を踏まえて速やかに行いましょう。
入社前にフォロー
人材が在職中の場合、内定が確定してから退職交渉に入ります。前職での引き継ぎ作業などもあるため内定確定から入社まで1カ月から2カ月ほどかかることも少なくありません。
企業は、内定辞退とならないよう適度にフォローしましょう。
定期的に連絡を取り、退職手続きや引き継ぎの状況を確認するなどしてコンタクトを続けることが重要です。余裕があれば職場見学などのイベントを組み込むのもよいでしょう。しかしその際、退職を急かしたりプレッシャーを与えたりしないよう注意が必要です。
入社と記録
無事入社となったら部署への配置や研修などを行います。採用活動は、一連の記録を残し、今後の採用活動のケーススタディとして活用しましょう。
時期や職種、具体的な採用手段や候補者の集まり具合などのデータを残して検証することで中途採用のノウハウが社内に蓄積されます。
選考の途中、人材が企業に対して不安に感じた点はなかったか、辞退があった場合、何が原因だったのか、何に魅力を感じて応募し選考へ進んでくれたのか、それらすべての採用活動記録は会社の強みや弱みを見直すチャンスとなるでしょう。