ターンアラウンドマネージャーとは、企業再生のプロフェッショナルです。一体どんな内容を手掛ける人物なのでしょうか。ターンアラウンドマネージャーについて詳しく解説します。
目次
1.ターンアラウンドマネージャーとは?
ターンアラウンドマネージャーとは、経営破綻した・経営破綻しそうといった企業の再生を請け負う人物のことで、組織編成などさまざまな観点で企業を再生させる重責を担います。
能力や成果によっては1,000万円以上といった高額報酬を得るターンアラウンドマネージャーも存在します。
2.ターンアラウンドマネージャーの目的
ターンアラウンドマネージャーの目的は、経営破綻した、業績が悪化した、今後業績の悪化や経営破綻が予想されるといった企業の再生。海外ではターンアラウンドマネージャーを職業として多くの企業の再生に関わる人も存在しており、日本でも注目を集めています。
- 経営破綻した企業
- 業績が悪化した企業
- 業績の悪化と経営破綻が予想される企業
の再生です
3.ターンアラウンドマネージャーが広まった背景
ターンアラウンドマネージャーの存在が日本で広まった背景を解説します。
経営の複雑化
ターンアラウンドマネージャーが広まった背景にあるのは、90年代のバブル崩壊です。このとき、倒産する企業や再生が急務となった企業が増加しました。
さらに、インターネットの普及などでインフラが整備されると経営が複雑化するとともに、企業数も急増。経営リスクの認知、経営の複雑さ、企業数の増加によって、企業再生という高度なスキルを持つ人物が切望されるようになったのです。
事業再生ファンドビジネス
再生計画の立案やファイナンスの実行など、事業再生に関わる複雑な手続きに関する事業再生ファンドビジネスの急増も一因です。
従来、取り組んでいたのは銀行などでした。しかし近年、動きが加速したため、ターンアラウンドマネージャーへの需要が高まっているのです。
4.ターンアラウンドとは?
ターンアラウンドとは、企業再生に欠かせない取り組みのこと。投資家が倒産などの問題を抱える企業に投資した後に行う取り組みで、設備投資や研究開発強化、営業の新規開拓などがあります。
ターンアラウンドと類似する言葉に、ワークアウトがあります。ワークアウトとは、財務面のリストラといった取り組みのことです。
5.ターンアラウンドマネージャーが行う実務
ターンアラウンドマネージャーが行う実務は、経営破綻した企業、経営破綻のリスクを抱えている企業のどちらの場合でも、共に企業再生を行うための多角的な施策の実施です。
従来、ターンアラウンドマネージャーの実務は、財務的処理に限定されていました。今では企業財務、経営戦略刷新、企業文化の再構築、事業再生、組織改変などを、策定された事業計画のもと、一定期間内に完遂することが求められているのです。
6.ターンアラウンドマネージャーの事例
ターンアラウンドマネージャーで最も有名な人物は、カルロス・ゴーンでしょう。彼は、約2兆円という巨額の債務を抱えていた日産に最高執行責任者として入社し、「日産リバイバルプラン」に取り組みました。
生産拠点の大胆な閉鎖、子会社の統廃合、大規模なリストラなどに次々に着手した結果、約2兆円あった負債を2003年6月までに全額返済。12%前後に下落した日産の国内シェアを20%近くまで回復という偉業を成し遂げたのです。
7.ターンアラウンドマネージャーに求められるスキル
ターンアラウンドマネージャーに求められる4つのスキルについて解説します。
- 決断力
- 誠実さ
- 財務や営業など事業に関する知識
- 明確な意志
①決断力
再生に関する施策には、従業員の人員削減や事業部の統廃合など、極めて厳しい選択を迫られる場面も多々。
どのような局面でも、企業の再生にとってそれが最善と判断できれば、固く強い意志とスピード感をもって決めるといった決断力は不可欠でしょう。なぜなら、「企業再生=決断の連続」だといっても過言ではないからです。
②誠実さ
いくら優秀なターンアラウンドマネージャーでも、一人では企業再生を成し遂げられません。ターンアラウンドマネージャーの英断を理解し、それについて来てくれる内外のステークホルダーがいてこそ、企業再生は実現します。
そのため、ターンアラウンドマネージャーには、必要ならば根気強く説明を続ける、積極的なコミュニケーションを図るといった関係各所に対する誠実さも必要です。
③財務や営業など事業に関する知識
企業再生を実現させるためには、財務や営業など事業に関する専門知識が欠かせません。債権放棄、資産売却、事業部の売却などのM&Aといった財務知識が求められる場面は当たり前のようにあります。
また、企業再生には企業体のスリム化のほか、新規取引先の開拓といった事業の拡大に向けた動きも重要です。
④明確な意志
ターンアラウンドマネージャーの根幹に、「絶対にこの企業を再生させる」という、強固で明確な意志がなければ、企業再生は成功しません。
厳しい選択を迫られたり困難な状況が襲ってきたりしても、一つ一つの判断を支える明確な意志があれば道は開けます。しかし、意志がブレていれば、決断力や誠実さに悪影響を及ぼす場合もあるのです。
8.ターンアラウンドマネージャーになる方法
ターンアラウンドマネージャーになるための方法について解説しましょう。
経営に関する知識を学ぶ
経営に関する知識がなければ、M&Aといった複雑な財務施策や人員整理といったデリケートな問題に取り組むことはできません。
財務や営業、労務や法規といった分野を中心に企業経営のプロフェッショナルとして、経営や企業再生に関する知識の多角的な習得は、ターンアラウンドマネージャーに必要不可欠です。
経営に携わり、経験を積む
企業再生の道のりは非常に複雑で、映画やドラマのようには進みません。経営に関する知識を身に付けただけでは、机上の空論と言わざるを得ないのです。
企業再生に取り組んでいるターンアラウンドマネージャーや経営者の近くで働くなどで経営に携わるという生きた経験を積むと、ターンアラウンドマネージャーとしての厚みを増すことができるでしょう。
9.ターンアラウンドマネージャーに役立つ資格
最後に、ターンアラウンドマネージャーに役立つ資格を3つご紹介しましょう。
ターンアラウンドマネージャー(TAM)
ターンアラウンドマネージャー(TAM)とは、事業再生や企業再建支援、経営計画実行支援などを体系的に習得できるもの。TAMでは、定められた13講座の中から単位を7割以上取得すると受験資格が得られます。
講座には、基礎知識、ケーススタディ、ディスカッションといったものがあります。知識だけでなく、より実務に近い知識を習得できるでしょう。
事業再生アドバイザー(TAA)
事業再生アドバイザー(TAA)では、再建企業が抱える問題点、企業再建の可能性の見極め方、事業再構築のためのリストラ策など、アドバイザーとしての幅広い分野を体系的に学びます。
試験では、再生の手法や計画立案といった分野から50問が出題され、合格の基準は60点以上および試験委員会の判定となっています。
認定事業再生士(CTP)
認定事業再生士(CTP)は、事業再生に関した高度な知識と経験を持つということを証明する資格です。試験科目には、法律や経営、会計・財務の3つがあり、1科目ごとの受験も可能で年1回実施されています。
ただし受験資格には、3年以上の実務経験および5件以上の事業再生実績、正会員3名の推薦が必要になるなど条件があるので注意しましょう。