UIとは「ユーザーインターフェース」、UXは「ユーザーエクスペリエンス」のことです。UIとUXの違いや、UI/UXデザイナーの仕事内容、必要スキル、デザイン事例を解説します。
目次
1.UI(ユーザーインターフェース)とは?
UIとは、ユーザーとさまざまなサービス(近年は主にWebサービス)の接点のこと。User Interface(ユーザーインターフェース)の略で、Interfaceという言葉は「接点」という意味があります。
UIの種類
UIは下記の3種類です。
- ハードウェアインターフェース(ハードウェア同士をつなげる)
- ソフトウェアインターフェース(ソフトウェア同士をつなげる)
- ユーザーインターフェース(人と何かをつなげる)
歴史を変えた身近にあるUIの例
身近にあるUIの例として挙げられるのは、キーボードやマウス、ATMなどのタッチパネル、固定電話のプッシュボタンなど。いずれもユーザーの操作を機器へ伝えるために開発されたUIで、それぞれ登場すると瞬く間に世界中へ浸透しました。
2.UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?
UXとは、ユーザーがサービス(製品)を使用したときに得られる体験全般のこと。User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略で、Experienceという言葉は「体験」という意味があります。
この「ユーザー体験」をいかに優れたものにするか、改善して最適なものにしていけるかが重要になるのです。
UX評価の範囲
サービス提供においては、UX評価の改善が重要です。
UX評価の範囲は広く、たとえばECサイトであれば「商品の探しやすさ」「注文のしやすさ」「デザインの見やすさ」などはすべてUXとなります。さらに「発送はスムーズだったか」「梱包に問題はなかったか」といった、商品注文後の体験もUX評価の範囲です。
3.UIとUXの違い
UIとUXの違いは「接点」か「体験」かどうか、にあります。
- UIは「ユーザーが目にする接点のすべて」で、単に視覚的なデザインだけでなく、操作性や機能性も含まれる
- UXは「サービスを使用した際に生じるユーザー体験のすべて」
そのサービスをどのように体験するか、どう感じるかは人それぞれで、「使いやすさと使いにくさ」「心地よさと不快感」などが違います。サービスの開発と提供においては、UIとUXの両方を優れたものにすることが重要なのです。
4.UI/UXの改善がなぜ重要なのか?
UIとUXはサービスや製品の成功に大きく影響します。そのため順調に成果を上げていてもUI/UXの改善が欠かせません。その理由を2つ説明します。
他社との差別化
ユーザーに評価される優れたUI/UXを開発すると、他社との差別化につながります。UI/UXが重視されるのは、UI/UXがサービスおよび企業の評価に直結するからです。
見た目のデザインや操作性、サービスを利用したときの良し悪しは、商品そのものだけでなく企業のイメージにも大きな影響を与えます。他社が提供していないUI/UXを開発できれば、競合他社ではなく自社のサービスや製品を選んでもらえるでしょう。
検索エンジン最適化(SEO)対策
UI/UXの改善は、SEOでも非常に重要です。まずUIの改善でサイト内の回遊を促せるようになり、滞在時間が延びて離脱率が下がります。
また近年の検索エンジン(とくにGoogle)は、情報量の多さよりも「情報の質の高さ」「検索ニーズの高さ」を重視する傾向にあるのです。UX改善でユーザーによい体験を提供できるようになれば、ユーザーの満足度や検索数が高まり、Googleからの評価も高まります。
5.UI/UXデザインのポイント
UI/UXデザインのポイントは「ユーザーの視点で考えること」。ユーザーから高評価を受けるUI/UXデザインのポイントを4つ説明します。
- ペルソナの設定
- 目標設定
- クライアントや開発との綿密なコミュニケーション
- 利用後の評価
①ペルソナの設定
UI/UXデザインでとくに重要なのがペルソナの設定。ペルソナ設定は「サービスの対象となる人物像」を決めることで、いわばターゲットの詳細設定です。
ペルソナ設定では、「性別」「年齢」「仕事」「地域」といった大まかなものだけでなく、「趣味」「ライフスタイル」「家族構成」「価値観」などより細かな点まで決定します。
②目標設定
UI/UXデザインではペルソナの設定と同時に目標とゴールを明確にするのが大切です。最終的な目標を明確にしなければ、UI/UXデザインの方向性は曖昧になるでしょう。
「売上アップ」「ブランドイメージのアップ」「サイトの閲覧者数のアップ」などプロジェクトごとの目標の違いによって、UI/UXデザインも大きく変わってきます。
③クライアントや開発との綿密なコミュニケーション
UI/UXデザインを成功させるには、クライアントとの綿密なコミュニケーションが必要不可欠です。クライアントの要望や企画の意図をしっかりと汲み取らなければ、成果が出せるUI/UXデザインを生み出せません。
制作段階で、開発陣とも細かにコミュニケーションを取って認識のずれをなくすのも重要です。
④利用後の評価
UI/UXデザインのさらなる改良のためにはサービス提供後のユーザーの反応(評価)をチェックするのも大事なポイントです。ユーザーから寄せられた意見や要望、さらにアンケートやインタビューなどを通して問題点や改善点を見つけていきます。
ユーザーの声を取り入れると、より満足度の高いUI/UXデザインを実現できるでしょう。
6.UI/UXデザイナーの仕事
UIデザイナーとUXデザイナーは、名称が似ているものの仕事の内容は大きく異なります。それぞれの仕事の特徴や違いを詳しく説明しましょう。
UIデザイナーの仕事
ユーザーが扱いやすい操作画面をデザインすること。たとえば「どのようなボタンにすれば操作しやすいか」「どういう色使いやフォントが見やすいか」などを考えてデザインします。
スマートフォンのアプリであれば、アプリの外観を構築している「ボタン」「画像」「カラー」「フォント」などはすべてUIデザイナーの担当範囲です。
UXデザイナーの仕事
ユーザー満足度の向上する設計を行うこと。ユーザーの行動分析やアンケートなどから、「どうすればユーザーの満足度を高められるか」を考え、ワイヤーフレームやプロトタイプを構築していきます。
ユーザーニーズや市場の調査、SEOなど情報に関する仕事が多いのがUXデザイナーです。
7.UI/UXデザインに必要なスキル
UI/UXデザインの仕事をするには、専門知識だけでなくさまざまなスキルが必要です。UI/UXデザインで生かせるスキルについて説明します。
- コミュニケーションスキル
- マーケティングスキル
- プログラミングスキル
- クリティカルシンキングスキル
①コミュニケーションスキル
UI/UXデザインでは社内スタッフやクライアント、ときにはユーザーと対話するため、さまざまな人たちと円滑にコミュニケーションを取らなくてはなりません。
とくにクライアントやユーザーの意見を反映するため「相手から希望や要望を聞き出す」スキルは必須です。またアイデアを社内やクライアントへ提案するときも、コミュニケーションスキルが高いと理解や納得を得やすいでしょう。
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②マーケティングスキル
UI/UXデザインの目的はユーザーの満足度を上げて購買を促すことであるため、マーケティングスキルも必要です。ニーズやトレンドに合ったサービスを提供して成功させるためには、市場や顧客の調査が欠かせません。
ペルソナ設計やWeb解析、統計分析などのマーケティング手法も用いて、最適なUI/UXデザインを設計していきます。
③プログラミングスキル
Webサイトやアプリ分野でのUI/UXデザインでは、プログラミングスキルが求められます。UI/UXデザインはHTMLやCSS、JavaScriptなどのプログラミング言語で実装されるからです。
近年、アプリ上のUIをかんたんに作成できる「Sketch」などの便利なサービスが生まれているため、プログラミングスキルは必須ではありません。
しかしプログラミングの知識があれば思いついたアイデアを実現できるか判断できますし、実行時のエラーに対する回避方法もあらかじめ考えておけるのです。
④クリティカルシンキングスキル
本質を見極める思考力のこと。UI/UXデザインでは、ユーザーの立場に立って物事を考え、何が最善なのかを見極めるクリティカルシンキングが求められます。
クリティカルシンキングの基本は「前提を疑う」「本質を見抜く」こと。現状に対してつねに批判的な思考を持つと、今までにない革新的なアイデアを創出できるのです。
クリティカルシンキング/批判的思考とは?【鍛え方・具体例】
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ここでは、
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8.UI/UXの事例
各企業はさまざまな独自のUI/UXを開発し、他社との差別化を図っています。企業のUI/UX事例を紹介しましょう。
UIの事例
UIは「ユーザーが操作しやすいもの」を実現することが第一です。ユーザーがサービスを利用するうえで、いかにスムーズに操作して、目的を達成できるかを考えたデザインが求められます。優れたUIを開発した3社の事例を紹介しましょう。
- カオナビ
- Snapchat
①カオナビ
カオナビでは、顔写真が並ぶユーザーフレンドリーなUIを採用しています。個々のページでは顔写真と一緒に名前やスキル、実績や入社日、業務情報などが記載されており、社内全体を俯瞰する形で人材を一元管理できるのです。
顔写真がずらりと並んだUIには、経営層が社員の顔と名前を覚えやすい点というメリットがあります。また適材適所な人材配置をスピーディに行えるのが魅力です。
②Snapchat
UIの特徴は、Googleが提唱するデザインガイドラインを無視したデザインです。一般的なUIはボタンを配置した階層的なメニューになっているものの、Snapchatはスワイプをメインにしたインターフェースを採用しています。
あえて固定化されたガイドラインと異なるデザインを実装した結果、ユーザーに独自の体験を与えることに成功したのです。
③Google
「何を目的として使用するサービスなのか」が一目でわかるUIになっています。実際、Googleのトップページに余計なものはありません。あるのはGoogleのロゴと検索フォームだけです。広告がなく、わかりやすさと使いやすさを追求したデザインといえます。
UXの事例
UXは「満足度の高いユーザー体験」を提供できるかどうかが重要なポイントです。最適なUXを実現するにはユーザーの行動や心理、ニーズなどさまざまな点を細かに分析したうえでのデザインが求められます。優れたUXを提供する3社の事例を紹介しましょう。
- メルカリ
- クックパッド
- コカ・コーラ
①メルカリ
メルカリのUXデザインは、ユーザーにポジティブな体験を提供することを最優先にしています。ユーザビリティテストを週一で実施しており、そのつど見つかった課題を改善することでUXをつねにブラッシュアップしているのです。
UX改善の一環として「使いやすい」と感じられるようにUIも改善。「かんたんに出品や購入できて楽しい」「売れて嬉しい」などの良い体験をユーザーへ提供し続けられるようになりました。
②クックパッド
クックパッドは、ユーザーが双方向で料理を楽しめるという体験をもたらした画期的なレシピサイトです。クックパッドのレシピを参考にした人は自分が作った料理を写真で投稿でき、レシピを掲載する側はそのレポート(つくれぽ)を受け取れます。
作る側は「また料理がしたい」、掲載する側は「またレシピを掲載したい」という体験を得られるサービスとなりました。
③コカ・コーラ
コカ・コーラはアプリ「Coke ON」で新しいユーザー体験を生み出しています。Coke Onはコカ・コーラの自動販売機でドリンクを購入するたびに、スタンプがもらえるアプリ。スタンプを15個集めると、1本無料でドリンクが買えるチケットをもらえます。
スタンプを集める楽しさと、無料でドリンクがもらえるお得感は、顧客満足度やブランドイメージの向上をもたらしました。
9.UI/UXに関連する資格
UI/UXデザイナーとして仕事をする際、必ずしも資格がいるわけではありません。しかし資格取得をとおして得た知識やスキルは役立つのです。UI/UXデザインで役立つ資格を3つ紹介しましょう。
- ウェブデザイン技能検定
- Webクリエイター能力認定試験
- ユニバーサルデザインコーディネーター認定資格
①ウェブデザイン技能検定
ウェブデザインのスキルを証明できる国家資格のこと。近年、UI/UXデザインはWebが中心ですので、ウェブデザインに関する国家資格の取得は大きな武器になるでしょう。
1級から3級にわかれ、いずれの級でもユニバーサルデザインや、ユーザーに配慮し目的に合致したインターフェースデザインに関する知識が問われます。ただし1級と2級の受験には、一定年数以上の実務経験が必要です。
参考 ウェブデザイン技能検定インターネットスキル認定普及協会②Webクリエイター能力認定試験
ウェブデザイン作成に関するスキルを証明する民間資格のこと。試験ではデザイン作成における「デザイン」と「コーディング」両方のスキルが問われます。
ユーザービリティやアクセシビリティを向上するデザインやレイアウトなどが出題されるため、より良いUI/UXデザインを実現できるようになるでしょう。
参考 Webクリエイター能力認定試験株式会社サーティファイ③ユニバーサルデザインコーディネーター認定資格
年齢や国籍、障がいの有無など問わないユニバーサルなデザイン開発能力を証明する資格のこと。6日間の講習と検定試験の合格で資格を取得できます。
講習では、認知科学や人間工学にもとづいた視点でデザインを分析するため、「誰もが使いやすい」「わかりやすい」デザインを行えるようになります。
参考 ユニバーサルデザインコーディネーター認定資格特定非営利活動法人 実利用者研究機構10.UI/UXの勉強に役立つ本
UI/UXに関する知識やスキルの習得には、書籍を活用するのも有効です。UI/UXデザインの勉強に役立つ本を紹介しましょう。
インターフェースデザインの心理学 第2版
UI/UXデザインを心理学の面から深く考察した本です。「人間の心理と行動原理を理解していないと、正しいデザインはできない」という考えを軸に、さまざまな研究から導き出された100の指針が掲載されています。
この本で人間の感情、思考、行動原理を理解すれば、より良いUI/UXデザインを生み出せるでしょう。
参考 インタフェースデザインの心理学O'Reilly Japanデザイン・リサーチの教科書
UI/UXデザインで欠かせないデザインリサーチについて詳しく解説している本です。成功を生み出すUI/UXデザインを実現するには、デザインリサーチによる分析やアイデア構築が欠かせません。
本書にはプロジェクト設計やチームビルディング、分析・調査手法やプロトタイピングなど、デザインリサーチのプロセスについて詳しく記載されています。
参考 デザインリサーチの教科書BNN