労働組合とは? 意味と役割、種類、メリット、作り方を簡単に

労働組合とは、労働者が団結した団体のことです。ここでは労働組合について、歴史や必要性といったさまざまなポイントから解説します。

1.労働組合とは?

労働組合とは、労働者が団結して、労働時間や賃金など労働条件を改善するため活動する団体のことです。厚生労働省によると、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」と定義されています。

特徴は、「複数人の労働者が集まることで、自由に結成できる」「労働組合を結成する際、行政機関への届出や認可を受けるのは不要」である点です。

労働組合が実現できる10のこと

労働組合が実現できる10のことは、以下のとおりです。

  1. 組合員の不満、苦情などを会社側に伝えやすくする
  2. 不当解雇やリストラをなくし、雇用の安定をはかる
  3. ルールや労働条件を話し合いで決定して、労働条件を改善する
  4. 経営情報を入手しやすくする
  5. 公正な評価、納得して働ける職場環境に改善する
  6. 労使関係づくり、組合運営アドバイスを受けられるようにする
  7. 倒産や企業売却時の力になる
  8. 同業他社の状況といった情報交換ができるようにする
  9. 労使トラブルの際、全面的にバックアップする
  10. 各種共済制度が利用できる

労働組合の必要性

労働組合の必要性は、労働環境を改善したい労働者のサポートや労働者に仕事のやりがいや充足感をもたらす点にあります。

労働者ひとりの力は小さくても労働組合があれば、労働者の代表として雇用者と対等に話し合う・労働者の意見を職場や経営に反映させられるのです。

労働組合数と組織率の状況

労働組合数と組織率の状況は、以下のとおりです。

  • 令和元年の労働組合数は約2万4千組合、組合員数は約1,000万人
  • 令和2年の単一労働組合の労働組合数は2万3,761組合、組合員数は約1,011万5千人

令和2年の推定組織率は前年より0.4 ポイント上昇の17.1%です。

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2.労働組合の種類

労働組合には種類があります。下記4種類について解説しましょう。

  1. 企業別組合
  2. 産業別組合
  3. ナショナルセンター
  4. 国際労働組合総連合(ITUC)

①企業別組合

企業を組織単位とし、企業で働く従業員が組織化した労働組合のこと。企業内組合とも呼ばれています。終身雇用といった長期雇用の多かった日本では、長く一緒に働く従業員同士で労働組合を組織し、雇用側とさまざまな交渉を進めてきました。

②産業別組合

ひとつの産業を単位産業として結成された労働組合のこと。産業別組合が結成されるのは同一産業で、「労働者の結集が組織上、有利である」「労働条件の向上と均一化に有意義である」ためです。

日本の産業別組合には、「全日本海員組合(海員)」「全日本損害保険労働組合(全損保)」の2つがあります。

③ナショナルセンター

労働組合の全国中央組織のことで、日本では「日本労働組合総連合会」「全国労働組合総連合」が該当します。労働組合における全国的規模の取り組みを主導したり、経営者側の全国組織や政府機関などと折衝したりしているのです。

④国際労働組合総連合(ITUC)

世界中にある332の組織と組合員数約2億18万人で構成された国際労働運動を代表する組織のこと。

「世界の労働者との連帯を強めながら、世界の恒久平和の実現、国際公正労働基準の確立、国際経済社会の新秩序形成に向けての活動を積極的に進めていく」ための活動を行っています。

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3.労働組合結成による企業側のメリット

労働組合結成には、企業側にもメリットがあります。

  1. 労使紛争の未然防止
  2. コンプライアンスの強化
  3. 良好な職場環境による生産性の向上
  4. 従業員の定着率向上

①労使紛争の未然防止

企業は、労働組合が従業員から集めるさまざまな意見を聴けます。そのような機会を持てれば、従業員の意見を早く経営に反映させられますし、従業員の要望をもとに労使トラブルを未然に予防できるでしょう。

②コンプライアンスの強化

労働組合があれば、労働組合を通して従業員が抱えている意識や不満、問題や意見などをヒアリングできます。従業員や職場の問題点を素早くキャッチできたり、問題が深刻化する前に対策を講じたりできるため、コンプライアンス強化にもつながるのです。

③良好な職場環境による生産性の向上

労働者の代表である労働組合と企業が協力して職場環境を改善すれば、従業員の働きやすさが増します。その結果、従業員のモチベーションや生産性が向上する風通しのよい職場となり、職場のモラルも向上するでしょう。

④従業員の定着率向上

労働組合があれば従業員は、労働環境や条件の改善を働きかけられます。労使で積極的にコミュニケーションを取るため、従業員の定着率向上や安定した労働力の長期間にわたる確保といったメリットを企業は享受できるのです。

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4.労働組合の作り方

労働組合の作り方について、解説しましょう。

  • 労働組合は誰でも作れる
  • 労働組合の条件
  • 労働組合を作る流れ
  • 労働組合を作る際の注意点

労働組合は誰でも作れる

労働組合に関するさまざまな権利について、正社員や契約社員、パートなど雇用形態を問わず働くすべての人を憲法が保障しています。そのため労働組合を結成したいと思った従業員は、いつでもどこでも誰でも自由に労働組合を作れるのです。

労働組合の条件

労働組合法で定める労働組合を結成する場合、以下の要件すべてを満たす必要があります。

  • 労働者が自ら進んで労働組合を結成している
  • 労働者が主体となり労働組合を組織している
  • 労働組合規約に必要な取り決め事項が含まれている
  • 労働条件の維持・改善を労働組合の主目的としている

禁止条件

労働組合が満たしてはならない禁止条件があります。

  • 「社長の指示に従って組織された」のように自主性を欠いた団体
  • 「労働組合法の条件である組合規約が存在しない」「規約に不備がある規約不備組合」は、労働組合法の労働組合と認められない

労働組合を作る流れ

労働組合を作る流れについて見ていきましょう。なお従業員が労働組合を作る権利は憲法で保障されています。よって行政機関への届出や会社の承認といった段取りは不要です。

①結成準備

労働組合を作る際、以下の結成準備にとりかかります。

  • 労働組合を結成するための仲間を集める
  • 集まった仲間と決意を共有する
  • 労働組合や労働組合法に関する勉強会を開く
  • 労働組合を作るための準備委員会を結成する
  • 労働組合を結成する目的や運用方針、規約や予算などについて案を作成する
  • 労働組合への加盟呼びかけや説明会を開催する

②結成大会

労働組合を結成する仲間と規約案を作成し、準備が整ったら、労働組合の結成大会(意思決定会議である組合大会)を開催します。

結成大会では、あらかじめ用意しておいた労働組合規約や予算などの承認決議を行います。この結成大会で組合規約が承認されて初めて規約は効力を発揮し、労働組合も法的な組織として存在するのです。

③企業への通知

結成大会で規約が承認されて法的な労働組合が誕生したら、企業へ通知します。通知の際、一般的に行われるのは、「労働組合結成通知書」「団体要求・組合要求書」を提出する方法です。労働組合結成通知書には、下記のような事柄を記載します。

  • 労働組合名
  • 労働組合結成日
  • 執行委員長名
  • 副執行委員長名
  • 執行委員名
  • 書記名

労働組合を作る際の注意点

労働組合を作る際の注意点は、2つです。

  • 労働組合を構成するメンバーの意見をできる限り統一する
  • 労働組合活動上、信頼できる人物を執行役員に選出する

メンバーで意見が割れると、団体交渉はスムーズに進みません。信頼できる施行役員が組合の機密情報を適切に取り扱えなければ、組織としての活動も困難になるでしょう。

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5.労働組合法で禁止されている「不当労働行為」

労働組合法が使用者に禁止している行為として、不当労働行為があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 不利益な取扱い
  2. 団体交渉権の拒否
  3. 運営への介入

①不利益な取扱い

「組合員である」「組合に加入しようとした」「組合を結成しようとした」「組合の正当な行為をした」などを理由とする、解雇そのほか不利益な取扱いは禁止されています。また労働委員会への申立てを理由とする不利益取扱いについても、禁止されているのです。

②団体交渉権の拒否

企業には、「団体交渉に誠実に応じなくてはならない」義務があります。そのため正当な理由なく企業が労働組合との団体交渉を拒否するのは法律で認められていません。また上部団体が出席する団体交渉に対して応じられないと拒否するのも、認められていないのです。

③運営への介入

労働組合の結成や運営、経理に対して、企業が支配や介入、援助してはならないと法律で定められています。

ただし「労働時間中、時間や賃金を失わずに労働者が企業と協議・交渉する」「企業が労働組合に最小限の広さの事務所を提供する」などは該当しません。

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6.労働組合についての相談

労働組合について相談したいとき、どうすればよいのでしょう。相談窓口を2つご紹介します。

  1. 各都道府県の労政主管部局
  2. 連合団体

①各都道府県の労政主管部局

労働組合についての相談は、各都道府県の労政主管部局が窓口になっているのです。中央労働委員会のWebサイトに個別労働紛争の問い合わせ一覧ページが掲載されています。一度、所轄労政主管部局を確認してみてください。

②連合団体

労働組合についての相談は、連合団体も窓口になっているのです。日本労働組合総連合会や全国労働組合総連合などのWebサイトを見ると、相談内容別の窓口が用意されています。専門の窓口もあり、電話やメールでの相談も可能です。