VUCAとは、急速に変化して予測困難な環境を意味するワードで、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4単語の頭文字から構成されています。
VUCA時代に突入している現代で、企業が発展し続けるには、この時代に求められるスキルや対策を講じることが必要です。VUCAについて、その意味や注目されている背景、求められるスキルや企業がやるべきことを詳しく解説します。
目次
1.VUCAとは?
VUCAとは、環境の変化が激しく、想定外のことが起こったり、将来の予測が難しかったりする不確実な状況のことです。元はアメリカで使われていた軍事用語で、米ソ冷戦時代に核戦争の脅威が去ったことによる、不透明な軍事戦略に対する言葉として使われ始めました。
2010年以降はビジネス用語として使われるようになり、大きな起点となったのが2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)です。そのなかでの「VUCA world」という言葉をきっかけに、「VUCA」というワードが世界的に認知されました。
VUCAは、下記4キーワードの頭文字から構成されています。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
各キーワードについて、詳しく解説します。
①Volatility(変動性)
物事が急速に変化する状況のこと。単に変化するだけでなく、短期間で急速に変化する可能性があります。短期間で急速に状況が変化するため、先を見通すことが難しく、将来の予測が困難になります。具体例は下記のとおりです。
- テクノロジーの進化
- 社会の仕組みの変化
- 情報社会における人々の価値観やニーズの急速な変化
②Uncertainty(不確実性)
不確実な要素が多く、予測できないことが発生しやすい状況のこと。不確実な要素が多い状況では、迅速な意思決定が難しくなるでしょう。しかし経営者にはそういった状況下でも判断力と推進力が求められます。具体例は下記のとおりです。
- 新型コロナウイルスの急速な感染拡大
- 地球温暖化による気候変動
- 終身雇用制度や年功序列など、従来の雇用形態の変化
③Complexity(複雑性)
さまざまな要素が複雑に絡み合い、シンプルな解決策を導き出すのが困難な状況のこと。近年でいえば、ビジネス環境のグローバル化が代表的な例です。グローバル化している環境では、習慣や常識、ルールの違いなどがあり、単一的な対応が難しい状況にあります。
そうした状況下では、複雑に絡み合う要素を柔軟に受け入れ、的確に判断することが求められるでしょう。具体例は下記のとおりです。
- ビジネスのグローバル化
- インターネット、SNSの普及
- 多様性
④Ambiguity(曖昧性)
変動性・不確実性・複雑性が絡み合って物事の因果関係が曖昧になった状況のこと。そうした状況では、既存の常識やルール、前例が通用しなかったり、答えが一つとは限らなかったりします。
そのため、問題が発生した際に原因の特定が難しく、解決策を導き出すことが難しくなるでしょう。反対に、成功した際の要因も捉えにくくなります。曖昧性のある状況では、過去の成功体験にとらわれず、新たな視点を持った柔軟な対応が必要でしょう。具体例は下記のとおりです。
- 過去に成功した手法・戦略が通用しない
- これまでにない新たなビジネスモデルが大成功した
2.VUCAが注目されている背景
元は軍事用語だった「VUCA」が注目を集めたきっかけは、2016年のダボス会議にあります。以前も世界恐慌やリーマンショックなど、VUCAに当てはまる事象は世界中で起こっていました。
現代になって、よりVUCAの注目が高まった背景には、地球温暖化による世界規模の気候変動や新型コロナウイルスのような感染症によるパンデミック、急速なテクノロジーの発展や情報社会による価値観やニーズの多様化などがあります。
絶えず新たな課題に直面することとなった現代は、まさにVUCAの時代。ビジネスにおいても将来の予測が難しく、既存の手法やビジネスモデルが通用しないシーンも増えています。そうした状況だと理解し、適応していく必要性が高まっているからこそ、VUCAが注目されているのです。
3.VUCA時代に起こること
では、VUCA時代ではどのようなことが起こりうるのでしょう。主な3つの事例を紹介します。
想定外かつ前例のない事態
複雑な要素が絡まり合い、水面下で急速に物事が変化している状況では、いつ想定外な事態や前例のない事態が起こってもおかしくありません。新型コロナウイルスによるパンデミックは、まさにその代表です。
急速な感染拡大による市場機能の低下、企業の就業スタイルの変化など、前例にない事態の中で解決策や対応策を考えなければならない状況にありました。
もし今後、新型コロナウイルスのようなパンデミックが起こったとしても、すでに前例ができたため、然るべき対応ができるでしょう。
しかし、今後また新たな事態が急に発生する可能性は否定できません。そうした状況になっても、想定外の事態に対応しつつ、前例がないなか最善の手を迅速に尽くすことが必要とされます。
新サービスの台頭による市場の変化
現代ではUberやAirbnb、SaaSなど、これまでにはなかった新たなビジネスモデルが成功を収め、新たな価値観として市場に定着しています。
VUCAはネガティブにとらえられがちです。しかし不確実なことが多く、変動性がある時代だからこそ、これまでにない新しいサービスやビジネスが生まれるチャンスが広がっているとも考えられます。
予測不可能な時代だからこそ、そこを逆手にとって誰もが予測しなかったようなサービスを生み出すことが可能です。VUCAは企業にとっては脅威である一方、飛躍するチャンスを秘めた状況でもあります。
新たな常識の誕生
今ある常識が当たり前であることを疑う必要が出てくるのも、VUCA時代に起こりうることです。現代では、身近なところでもさまざまな常識が覆されています。
在宅勤務やリモートワーク、無人販売やビッグデータの活用など、10年前には考えられなかったことが現代では常識として当たり前になりつつあります。
VUCA時代ではこのようなサイクルが短期化しやすいです。よって今ある常識がこの先も通用するとは限りません。ビジネスでも同様、今のビジネスモデルやサービスが5年後、10年後もニーズがあるかはわからないでしょう。
変化に合わせて次々と新たな常識が生まれる状況では、「今ある常識」や「当たり前」とされていることを疑い、つねに新たな視点を持てるかどうかが鍵を握っているといえます。
4.VUCA時代に求められるスキル
いつ想定外のことが起こるかわからない不確実で曖昧さをまとったVUCA時代では、一人ひとりが自ら考え、行動を起こしていく主体性が重要です。VUCA時代に対応できる人材になるには、以下のようなスキルが求められます。
- 情報収集・処理能力
- 判断力
- 仮説思考力
- 問題解決力
- 臨機応変な対応力
- リーダーシップ
①情報収集・処理能力
インターネットが当たり前となった現代では、情報収集がかんたんになった一方、すべての情報が正しいとは限りません。単に情報収集するだけでなく、情報を見極めて取捨選択する必要があるでしょう。
さらに、その情報を適切に活用する処理能力も求められます。情報に踊らされず「今必要な情報」を正しく見極めるリテラシーをもって、適切に活用するスキルが不可欠です。
②判断力
急速に変化する状況下では、迅速に判断できないと手遅れになってしまうことも。時間をかけて慎重に判断を下すことも大事でしょう。しかしその間、さらなる変化が起こり、機会損失が生まれる可能性も否定できません。
こうした判断力を備えるためにも、適切な情報収集スキルと情報処理スキルが重要です。必要なときに迅速に判断を下せるよう、日々社会動向や市場にアンテナを張り小さな変化も見逃さず、さまざまなケースを想定しておくことが求められます。
③仮説思考力
仮説思考力とは、情報がそろっていない、あるいは不確実な中でも、仮設を立てて検証していくスキルのこと。高い情報収集・処理能力を備えていても、不確実性が高い状況では完全な情報を得ることは難しいでしょう。
そうしたときに必要なのが仮説思考力です。確度の高い仮説が立てられれば、現実でも有効な判断が下せるでしょう。仮設思考力を身につけると、不確実な事象においてもさまざまなパターンで物事を考えられ、必要なときに必要な判断を下せます。
④問題解決力
VUCA時代では、先の見通しが難しいなかでも、適切な解決策を導いていく必要があります。さまざまな要素が複雑に絡み合い、物事の因果関係を特定することが難しい状況下でも、できる限り紐解いて、問題を一つずつ解決していくことが重要です。
問題によっては明確な正解がないケースもあるでしょう。しかしそのなかでもベストな策を見つけるスキルが求められます。そのためには、物事の本質を見極めるスキルも不可欠です。
⑤臨機応変な対応力
想定外の事態に素早く対応するには、臨機応変な対応力も必要です。変化が激しい状況では、物事が計画通りにいくとは限りません。計画も重要な一方、計画に固執していては状況を変えられないケースもあります。
できるだけ、物事を計画・実行する際にリスクを想定し、そのときにどう対応するか、イメージしておきましょう。自分のなかでさまざまなパターンの見通しを立てておけば、いざというとき臨機応変に対応できるでしょう。
⑥リーダーシップ
将来の見通しが難しい状況では、目標達成の難易度も高いもの。そうした状況下では方向性を示し、組織やチームを引っ張るリーダーシップが求められます。予測不可能な中でも、できる限り明確なビジョンを示し、必要な目標を提供することで、メンバーの行動や意思決定を促せるでしょう。
すべての人が次のアクションがわからず立ち往生してしまっては、組織として機能しません。「誰かに任せればいい」のマインドではなく、一人ひとりがリーダーシップを備えることで、組織全体が主体的に動けるようになるのです。
5.VUCA時代を生き抜くために企業がやるべきこと
VUCA時代を生き抜くことは、企業の持続性を高めるために不可欠です。VUCA時代を生き抜き、この先も発展していくには企業に以下のようなことが求められます。
- 明確なビジョンの策定と共有
- 継続的な情報収集と分析
- 主体的な人材の育成
- DXの推進
- 迅速な意思決定
①明確なビジョンの策定と共有
変動性と不確実性が高いなかでも、企業には一貫性のある対応が求められます。一貫性のある対応を生み出すには、明確なビジョンの策定と共有が必要でしょう。
明確なビジョンが提示されているだけでなく、従業員に浸透し、行動に反映されているかが重要です。その場しのぎ・一時しのぎにならないためにも、ビジョンの明確化と浸透は欠かせません。
②継続的な情報収集と分析
変化は唐突に訪れるものではなく、小さな変化が集約した結果、大きな変化として目に見える形となっていくもの。現代は日々テクノロジーが進化したり、消費者の価値観やニーズが変化し続けたりしています。企業は変化する市場に適応し続けなければなりません。
そのためには、日々さまざまな情報にアンテナを張り、継続的な情報収集と分析によって小さな変化もキャッチしていくことが必要です。いち早く情報をキャッチし、行動に移してこそ、変化の波にのまれず対応できるようになります。
③主体的な人材の育成
VUCA時代を生き抜くには、競争力の向上も欠かせません。ビジネス環境の変化が早い状況では、自ら考えて行動できる主体性の高い人材が求められます。
経営陣や上司の指示を待つだけでは、いざ実行するときすでに手遅れという可能性もあるでしょう。企業がVUCA時代を生き抜き、ビジネスで勝ち抜くには、主体的な人材の育成が不可欠です。
④DXの推進
変化し続けるビジネス環境に取り残されないためには、変化に対応できる戦略も必要です。そのスピードに間に合うために不可欠なのが、DXの取り組みです。
DXによって定型業務の効率化・自動化を進めれば、本来注力すべき戦略立案や意思決定などの重要業務に注力できるでしょう。人の価値を最大限発揮し、イノベーションを創出するためにもDXは重要な取り組みです。
⑤迅速な意思決定
急速な変化に対応する際、企業の方向性を示すべき経営陣に求められるのは迅速な意思決定です。意思決定に時間がかかってしまうと、判断が下せるようになったとき新たな変化が訪れている可能性もあります。
そこで必要なのは、継続した情報収集による判断材料の蓄積、意思決定プロセスの最適化やスピード感のある意思決定が行える組織体制の構築などです。
6.VUCA時代に役立つフレームワーク「OODAループ」
絶えず変化するVUCA時代の意思決定において、有用なフレームワークとして「OODA(ウーダ)ループ」の注目が高まっています。OODAループは、意思決定を迅速化させる思考法であり、下記4要素から構成されています。
Observe(観察) | 組織の内部・外部環境の変化を観察し、データを収集する |
Orient(状況判断) | 集めたデータを分析し、仮説を立てながら現状を把握する |
Decide(意思決定) | 現状に対する具体的な戦略や施策を策定する |
Act(実行) | 決定した戦略や施策を実行する |
OODAループは、変化の観察とその根拠となるデータの収集から始まるため、変化や現状に対して素早く対処可能です。また4つのプロセスを高速で回していくと、組織の内外部の変化に素早く気づけ、そのときに必要な戦略や施策を策定できます。
変化と自社が置かれている現状をいち早く把握でき、そこに対する必要なアプローチを迅速に実行できるOODAループは、VUCA時代に有効なフレームワークです。

OODA(ウーダ)ループとは? 具体例やPDCAとの違いを簡単に
OODAループとは、迅速な意思決定・行動を行うためのフレームワークです。「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」4つから構成され、目標や課題...
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