ホールパート法とは、最初に結論を伝えてから各部分の説明を行い、最後にもう一度を結論を伝える話し方のこと。メリット、PREP法やSDS法との違い、例文などを解説します。
目次
1.ホールパート法とは?
ホールパート法とは、話の全体像(結論)を最初に示し、各部分を説明したのち、結論として再度全体像を伝えるコミュニケーション手法のこと。「Whole(ホール:全体)」と「Part(パート:部分)」を組み合わせた造語です。
ホールパート法の構成では、ホールの間にパートをはさみます。具体的なステップは次のとおりです。
- ホール:これから伝える「部分」を挙げて話の全体像を提示
- パート:各部分の説明
- ホール:再び全体像を提示
聞き手が話の流れを理解しやすくなるため、主にプレゼンテーションや対話などで使用されます。
2.ホールパート法を利用するメリット
ホールパート法を用いると、より相手の理解を得られやすいです。ここでは主なメリットを4つ解説しましょう。
- 聞く側の理解度向上
- 必要な情報のみを伝達可能
- 結論の強調が可能
- Webマーケティングに効果的
①聞く側の理解度向上
話の全体像を最初と最後に提示するため、聞く側の理解度が向上します。ホールパート法では最初に結論として「何について話すのか」を明らかにし、相手との共通認識を築くからです。
話の流れが明確になり、相手は情報を効率的に吸収できます。また最後に結論を再度提示するため、復習効果も得られて理解を深められるのです。
②必要な情報のみを伝達可能
ホールパート法は、結論とそれを構成する要点を提示したうえで話を進めるため、必要な情報のみを効率的に伝達可能です。話の脱線を防ぎやすくなり、時間の短縮にもつながります。
最初に結論を述べたのち、すぐに各ポイントの説明に入るため、余計な会話が生じる心配もありません。聞き手も不要な情報に惑わされずに済み、情報を効率的に理解できます。
③結論の強調が可能
結論を2回伝えられるため、相手へ訴えかけたい要素を強調したいときに有効です。
たとえば自社製品のメリットを伝えたい場合、ホールパート法の結論でメリットを話すと、メリットが強調かつ整理されて相手へより深い印象を与えられます。また最後の結論はクロージングの役割も果たすため、成約の可能性を高められるでしょう。
④Webマーケティングに効果的
ホールパート法は、Webマーケティングのコンテンツ制作にも効果的です。
Webコンテンツは興味がなければかんたんに離脱できるため、冒頭でユーザーをひきつけなければなりません。ホールパート法を使って最初に全体像や結論を伝えるとユーザーの興味をひきやすくなり、最後まで読んでもらえる可能性が高まります。
Webマーケティングの効果を高めたいなら、コンテンツの構成にホールパート法を取り入れてみるとよいでしょう。
3.ホールパート法とPREP法、SDS法との違い
相手へよりわかりやすく伝えるための手法として、「PREP法」と「SDS法」があります。ホールパート法との相性がよく、組み合わせて使うのも可能です。ホールパート法とそれぞれの手法との違いや例文を解説しましょう。
PREP法とは?
「結論・理由・具体例・結論」の順で情報を伝える手法です。次のような構成で進めます。
- Point:結論や主張を提示
- Reason:結論や主張にいたった理由を提示
- Example:説得力を高めるための事例や具体例を提示
- Point:再度結論や主張を提示
結論を強調できるうえに相手の納得感を高められるため、文章でも会話でも役立つ手法です。
ホールパート法とPREP法の違い
ホールパート法とPREP法はいずれも結論を2回主張できる手法です。双方の主な違いは、目的と伝える情報の数にあります。
- ホールパート法の目的:複数の事柄を整理してわかりやすく伝える
- PREP法の目的:ひとつの事柄について相手の納得を高める
ホールパート法では理由や根拠、具体例まで伝えないため、相手を説得しきれないかもしれません。シーンによってはホールパート法とPREP法と使いわける必要があるでしょう。
PREP法の例文
PREP法を用いて「残業しない曜日を決めたい」という主張を伝える文例を紹介します。
- Point::残業しない曜日を決めたいと考えています。
- Reason: ここ数か月の残業時間が前年の同月よりも増えているからです。
- Example:定時退社を促すために、退社時間にオフィスを消灯するといった方法を検討しています。
- Point:長時間労働を是正するために、残業しない曜日を決めましょう。
PREP法とは? 例文で使い方をわかりやすく、SDS法との使い分け
ビジネス上でよく聞く「PREP法」や「SDS法」は、どちらも文章やプレゼンテーションで役立つ考え方です。両者の違いやメリット、デメリット、使い方や練習方法について見ていきましょう。
1.PREP法と...
SDS法とは?
「要点・詳細・要点」の順で情報を伝える手法です。次のような構成で進めます。
- Summary:全体の要点や概要を提示
- Details:要点や概要の詳細を解説
- Summary:全体の要点や概要を再度提示
ニュース番組や報告書、プレゼンテーションやスピーチ、物事の紹介などさまざまな場面で活用されています。
ホールパート法とSDS法の違い
ホールパート法とSDS法もまた結論を強調できる手法です。しかしやはり目的と伝える情報の数が異なります。
ホールパート法は複数の事柄をわかりやすく簡潔に伝えることを目的としますが、SDS法はひとつの要点について詳しく説明し、相手の理解を深めることが目的です。
たとえば複数のメリットを一度に説明したいときはホールパート法、ひとつのメリットを掘り下げて伝えたいときはSDS法というように使いわけるとよいでしょう。
SDS法の例文
SDS法を商品紹介に活用する例文を紹介します。
- Summary: このITツールはパソコンが苦手な人におすすめです。
- Details::入力した情報はリアルタイムで反映および共有されるため、余計な更新作業が発生しません。ドラッグ操作で表示項目の追加や並び替えができ、変更後は自動的に集計やレポーティングが実施されます。
- Summary:パソコンに慣れていない人が多いなら、このITツールがおすすめです。
4.ホールパート法を使った例文
ホールパート法を使用すると、さまざまなビジネスシーンにおいて情報を効果的に伝えられます。ここではホールパート法の例文を3つ紹介しましょう。
例文1:提案
顧客へ商品(パソコン)を提案するときの例文を紹介します。
- 全体像(ホール):このパソコンでおすすめしたいポイントは、「高性能」と「ソフトの充実」の2点です。
- 部分(パート)1:ひとつ目のポイントは高性能です。シリーズのなかでもワークステーションにも対応可能なハイエンドモデルとなります。
- 部分(パート)2:ふたつ目のポイントはソフトの充実です。Microsoft Officeやセキュリティソフトが最初から付属しています。
- 全体像(ホール):このように、このパソコンは「高性能」「ソフトの充実」というふたつのポイントを備えており、仕事の効率化にも効果的です。
例文2:報告
上司へ報告するときの例文を紹介します。
- 全体像(ホール):報告したいことが3件あります。
- 部分(パート)1:1件目です。明日締め切りのプレゼンテーション原稿が完成しました。ご確認をお願いします。
- 部分(パート)2:2件目です。以前お見積りを出した伊藤証券様から契約をいただきました。
- 部分(パート)3:3件目です。明日は田中商事様へ直行することになりました。午後には帰社します。
- 全体像(ホール):以上3件の報告でした。
例文3:説明
新入社員へビジネスマナーを説明するときの例文を紹介します。
- 全体像(ホール):社会人として最低限気をつけるべきことがふたつあります。それは「時間厳守」と「発言内容」です。
- 部分(パート)1:ひとつ目は時間厳守です。出勤時間はもとより、ミーティングや会議、商談などの開始時間、納期といった期限を守らねばなりません。
- 部分(パート)2:ふたつ目は発言内容です。取引先や顧客との会話やSNSなどの投稿で、他者を不快にさせるような発言をしてはなりません。
- 全体像(ホール):社会人として、「時間厳守」「発言内容」のふたつには最低限気をつけましょう。
5.ホールパート法が役に立つシーン
ホールパート法が役立つシーンは、下記のようなものです。これらのシーンにおける活用方法について解説します。
- プレゼンテーション
- 会議
- スピーチ
①プレゼンテーション
ホールパート法を使うと、プレゼンテーションをスムーズに進められます。
たとえば自社製品のメリットを複数伝える場合、いきなりひとつ目のメリットから話し始めてしまうと、相手は「いつまで続くのか」と不安になるでしょう。話す予定だったメリットについて、先に相手から質問されてしまうかもしれません。
冒頭で「本製品の特徴は3つあります」などと全体像を示すと、相手も安心かつ集中して聞けるようになります。
プレゼンテーションとは?【成功のコツを簡単に】目的、手法
プレゼンテーションとは、売り込みたい企画を相手に説明するための技法のこと。ここではプレゼンテーションの目的や手法、成功するためのコツについて説明します。
1.プレゼンテーションとは?
プレゼンテーシ...
②会議
複数の議題を議論する会議も、ホールパート法で効率化できます。
たとえば「本日の議題は3つです」と最初に全体像を提示したうえで、順番に各部分を議論していくのです。最初に議題の数を明示しているので、時間が限られた会議であっても議論の抜け漏れを防げます。
会議参加者の「時間内にすべての議題で結論を出す」という意識が高まり、発言が活性化するでしょう。
③スピーチ
プレゼンテーションと同様に聞き手の集中力を高められるため、多くのスピーチでホールパート法が活用されています。
たとえばスティーブ・ジョブズ氏が2005年のスタンフォード大学卒業式で行ったスピーチもそのひとつ。冒頭で「自分の人生から得た3つの話をします。たった3つだけです。」と述べたのち、「ひとつ目は点と点をつなげること。」と続けました。
ホールパート法を用いて簡潔かつ明瞭にまとめているため、小学生でも理解できるスピーチだといわれています。
6.ホールパート法活用のポイント
ホールパート法を活用するときのポイントには、「要点の整理」や「PREP法の併用」が挙げられます。それぞれについて解説しましょう。
要点の整理と強調
2回の全体像(ホール)で要点を強調するホールパート法では、要点を整理しておく必要があります。
ただしこの要点は部分(パート)を抜き出したものであるため、そもそも伝えるべき複数の事柄を先にまとめてなければなりません。パートの数やテーマとの関連性を十分に吟味しましょう。
また時間がないからといって、2回の全体像を省略しないよう注意が必要です。2回要点を伝えると、相手の理解を高めて強く印象づけられます。
PREP法との併用
ホールパート法の「部分(パート)」にPREP法を組み合わせると、部分の説得力が高まります。
「4.ホールパート法を使った例文」で紹介した「例文1:提案」の「部分(パート)1」にPREP法をくわえてみましょう。
「ひとつ目のポイントは高性能です。シリーズのなかでもワークステーションにも対応可能なハイエンドモデルです。CPUにインテル Core i9、メモリは32GBを搭載しているため、一般的な事務作業はもとより、動画編集や3Dデザインなど負荷の大きい作業もスムーズに進められます。」
高性能といえる根拠(パソコンのスペック)と具体例(用途)を伝えて、相手の理解と納得を促しています。