クラウド型ワークフローとは、これまで紙ベースで行っていた申請や承認を、クラウド上で行えるワークフローシステムのこと。ここではクラウド型ワークフローシステムについて解説します。
目次
1.クラウド型ワークフローとは?
クラウド型ワークフローとは、業務上で必要な申請や承認までの一連の業務を時間や場所を問わず実行できるシステムのこと。申請業務の効率化とコスト削減が期待できます。
クラウドとは?
インターネットを介してサービスやソフトウェアを利用する形態のこと。ハードウェアやソフトウェアの購入、インストールが不要なので、時間やコストをかけずにサービスを使い始められるのです。
代表的なクラウドサービスには、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoftAzureなどが挙げられます。
2.クラウド型ワークフローシステムの機能
クラウド型ワークフローシステムを導入すると、さまざまな機能を利用できます。主な機能は申請書の作成や検索、承認ルートの設定、ほかのシステムとの連携など。ここではそれぞれの機能について、説明します。
- 申請書の作成
- 申請書の検索
- 承認ルートの設定
- ほかシステムとの連携
①申請書の作成
テンプレートを利用した申請書の作成や、Excelを使った申請書のフォーマット作成ができます。もちろん作成した申請書を承認者へ申請するのも可能です。
ワークフローシステムによっては、代理申請や申請に関するファイルの添付、あるいは補足のコメントの追記などができる場合もあります。
②申請書の検索
過去に作成した申請書のデータを検索できます。以前の申請書を呼び出して新しい申請書を作る場合や、あとから印刷したい場合などに役立つでしょう。
申請者や承認者の名前、申請書の案件名や申請時期、キーワードなど複数のフィルターによって過去の申請データを検索できるので、探している申請をすぐに見つけられるでしょう。
③承認ルートの設定
承認ルートとは決済に至るまでの経路のことで、承認者や承認の順番などを指します。承認ルートをあらかじめ登録しておけば、申請書に必要事項を入力するだけで、自動的に承認者に提出できるのです。
申請者は「次はだれが承認するのか?」と、提出先を迷わなくなります。
④ほかシステムとの連携
たとえば経理システムや勤怠管理システムと連動させれば、交通費の申請や残業の申請などが決済されたとき、それぞれのシステムへ自動的に反映させられるのです。
ほかの人事システムや商品管理システムと連携させれば、必要な情報を呼び出せるようになり、申請業務が効率化するでしょう。
3.クラウド型ワークフローシステムを使うメリット
クラウド型ワークフローシステムを導入すると、さまざまなメリットを得られます。ここでは、主な5つのメリットについて詳しく説明しましょう。
- 申請や承認の業務が迅速になる
- 内部統制が強化される
- コストを抑えられる
- リモートワークでも利用しやすい
- IT人材が不足していてもすぐに導入できる
①申請や承認の業務が迅速になる
今まで紙を印刷して手書きで記入していた作業がすべてシステム上で完結するので、申請や承認の業務が迅速になります。また申請や承認業務でもあらかじめシステム上でルートを決めておけば、内容に合わせて自動的に承認者のもとへ書類データが送られるのです。
よってわざわざデスクへ赴いて提出する手間が省けます。承認する側も、どの書類データを優先的に承認すればよいか迷わなくなり、承認や決済のスピードが早まるのです。
②内部統制が強化される
内部統制とは、企業の業務を遂行するにあたり、社員が守るべきルールや仕組みのこと。
クラウド型ワークフローシステムでは、決められた申請者や承認ルートに従って進んでいくため、承認者を飛ばして次の承認者へ進める、あるいは勝手に承認するなどの不正行為を抑制できるのです。
③コストを抑えられる
今までのように申請書を印刷して使う必要がないのでペーパーレスが実現され、資源の節約とコストの節約が可能です。
またクラウド型ワークフローシステムは、自社でサーバーを設置する必要がありません。オンプレミス型のワークフローシステムと比べて、初期費用を抑えられます。
④リモートワークでも利用しやすい
クラウド型ワークフローシステムを使えば、申請から承認までの作業をインターネット上ですべて終わらせられます。働き方改革の一環としてリモートワークの導入を検討しているならば、クラウド型ワークフローシステムは必須ともいえるでしょう。
スマホでも使える
インターネットに接続していれば、スマホやタブレットでも作業の確認や完了ができるという点も大きなメリットです。PCが使えないような移動中や、仕事の合間のちょっとした時間などでも、随時確認して申請や承認作業を行えます。
至急の承認を必要とする申請があっても、わざわざ会社へ戻る必要はありません。
⑤IT人材が不足していてもすぐに導入できる
「社内にIT人材がいないから導入しても設定やメンテナンスができない」と考えてクラウド型ワークフローシステムをの導入を見送る企業も少なくありません。
クラウド型ワークフローシステムの利用者が行うのは、テンプレートや承認ルートなどの基本的な設定だけで、メンテナンスはサービス提供会社が行います。申し込みから数日で利用できる点も、クラウド型ワークフローシステムのメリットです。
4.クラウド型ワークフローシステムのデメリット
クラウド型ワークフローシステムにはデメリットも存在します。ここでは3つのデメリットについて詳しく説明しましょう。
- 紙のデータを移行する時間と労力が必要
- セキュリティリスクがあがる
- 定着しないと意味がない
①紙のデータを移行する時間と労力が必要
クラウド型ワークフローシステムを導入すれば、申請データや承認データはすべてそのままクラウド上に保存されます。
しかし導入前に作っていた書類は電子化して取り込む必要があるのです。紙の書類が多いほど、クラウドへの移行作業に多くの時間と労力を要するでしょう。
②セキュリティリスクが高まる
クラウド型ワークフローシステムでは外部のサーバーにデータを保存するため、情報漏えいに注意しなくてはなりません。IDやパスワードの管理を徹底し、ITセキュリティの知識や意識が低い社員には、教育や研修を行う必要があるでしょう。
③定着しないと意味がない
クラウド型ワークフローシステムを導入しても、使いこなせない社員がいると定着しない可能性があります。システムの導入について社内周知が行われても、使いこなせない社員が多いと、今までどおり紙での申請に戻してしまうのです。
導入前に、全社員へワークフローシステムの研修や講習会を実施しておきましょう。
5.クラウド型ワークフロー導入時のポイント
クラウド型ワークフローシステムを導入する際、何に気をつければよいのでしょう。ここでは押さえておきたい5つのポイントについて、説明します。
- 自社に必要な機能が使えるか
- 社員が扱いやすいか
- メンテナンスやカスタマイズがしやすいか
- セキュリティが厳重か
- 費用がどれくらいかかるか
①自社に必要な機能が使えるか
たとえば書類ごとに承認ルートを設定できる機能や、既存テンプレートの取り込み機能、申請期限や申請結果の通知機能などは必要です。自社の申請業務や運用に沿った機能が備わったシステムを選びましょう。
②社員が扱いやすいか
いくら便利なクラウド型ワークフローシステムを導入しても、社員が使いこなせなければ意味がありません。クリックやドラッグなどのかんたんな操作で申請や承認ができるシステムなら、ITスキルに自信がない社員でも利用しやすいでしょう。
システムによってはトライアルが利用できます。まずはトライアルで操作性を確認するとよいでしょう。
③メンテナンスやカスタマイズがしやすいか
システムメンテナンスはサービス提供会社が行うものの承認者やテンプレートの追加変更、バックアップなど、細かいメンテナンスは自社で行う必要があります。また業務フローの変更があれば、設定をカスタマイズしなければなりません。
これらがかんたんに行えるかを検討しましょう。
④セキュリティが厳重か
クラウド型ワークフローシステムの導入によって、インターネット上で自社の情報を扱うようになります。セキュリティが厳重でないと、社外秘の情報が漏えいしてしまうでしょう。
IDやアクセス権限の管理はもちろん、アクセスログの取得、VPN接続(仮想プライベートネットワーク)などが利用できると安心です。
⑤費用がどれくらいかかるか
クラウド型ワークフローシステムにかかる費用として挙げられるのは、初期費用と月額料金、サポート費用やオプション料金など。
多くはシステムを利用するユーザー数で月額料金を計算します。利用人数が多いほど運用コストがかかると考えておきましょう。企業規模によって料金プランがわかれている場合もあるようです。
6.クラウド型ワークフロー導入の手順
実際にクラウド型ワークフローシステムを導入する際、順序立てて準備を進めていく必要があります。システムの導入から運用までの手順を見てみましょう。
自社における申請書のワークフローや、その申請に対する承認者などを明らかにし、問題点や改善すべき点を洗い出していくのです。
また「どのようなシステムがあれば便利か」「どんな作業が煩雑になっているか」など、社員からの声を集めておくのも有効でしょう。
具体的には「作業にかかる平均時間を○時間にする」「○○の申請を○日で完了させる」など。目標が決まれば、実現に必要な要件がおのずと見えてくるでしょう。
上述した導入前のポイントを踏まえたうえで設定した要件や目標が達成できる機能のあるシステムを選びましょう。導入したら各種設定を行います。たとえば人事や組織情報、申請書のフォーマットや承認フロー、権限の付与などです。
運用後は結果の検証や、利用した社員へヒアリングなどを実施し、改善すべき点や問題点を洗い出します。結果をもとに承認ルートを確立していき、社内でノウハウを蓄積していきましょう。
全社で運用後に生じた問題を改善しなければなりません。また運用開始前に全社員へ教育を実施しておくと、不慣れな作業によるパフォーマンスの低下を防げます。