近年、多くの企業で導入されているワークフローシステム。ここではその種類や特徴、システム導入のメリットとデメリット、導入の手順や注意点などを解説します。
目次
1.ワークフローシステムとは?
ワークフローシステムとは、業務の流れを自動化し、モニタリングするコンピュータソフトウェアのことです。業務を電子化するとペーパーレス化や効率化など、さまざまなメリットをもたらします。
ワークフローとは?
業務の一連の流れを図式化したものでもともと製造業にて活用されていました。作業工程を設計して生産効率や品質を向上させようとするものです。また内部統制を強化して、業務コストを削減します。
ワークフローとは? 意味や使い方、システム導入のメリット
ワークフローとは、業務をすすめるための流れのことです。ここでは、ワークフローシステムについても解説します。
1.ワークフローとは?
ワークフローとは、業務を進めるための一連の流れのことです。業務を遂...
2.ワークフローシステムの種類
ワークフローシステムは、「クラウド」と「オンプレミス」の2種類にわかれます。近年、コストパーフォーマンスの観点からクラウド型が普及。ここからはそれぞれのメリット・デメリットについて、詳しく解説しましょう。
- クラウド型
- オンプレミス型
①クラウド型
端末にインストールせずともWebアプリケーションを使えるサービスのことで、「クラウドサービス」と同義で使用されています。
企業だけでなくエンドユーザーもインターネット環境さえあれば、Webブラウザからどこでも利用できます。たとえばGoogleスプレッドシートやドキュメントなどです。
メリット
クラウド型のメリットは、下記のとおりです。
- 一般的に初期費用が無料
- 自社サーバーが不要
- 基本無料でアップデートされる
- インターネット環境さえあればどこからでも使用できる
- 障害が発生した際はクラウド事業者がインターネット経由で対応してくれる
デメリット
クラウド型のデメリットは、下記のとおりです。
- インターネット上の外部サーバーを利用するため、セキュリティに関して若干の不安がある
- オンプレミス型と違ってほかのシステムとの連携が難しいため、自社の希望に沿った細かなカスタマイズは難しい
- ユーザー数による月額課金制のため、大企業ではオンプレミス型よりコストがかかる場合も
②オンプレミス型
自社でサーバーを準備し、ソフトウェアをインストールして利用する形態のこと。自社サーバーを利用するため、クラウド型よりも情報漏洩などの可能性が低く、セキュリティ面で安心できます。
また既存のソフトウェアと連携しやすい点も特徴のひとつです。自社にあった細かいカスタマイズが可能となります。
メリット
オンプレミス型のメリットは、下記のとおりです。
- 自社のサーバーを使用するため、セキュリティがしっかりしている
- 自社の希望どおりにカスタマイズできるため、多様な社内のニーズに対応可能
- ほかソフトウェアとの連携が自由にできる場合が多い
デメリット
オンプレミス型のデメリットは、下記のとおりです。
- 自社サーバーの構築などで初期費用がかかる
- パッケージソフトを購入してから社内で使用するまでに時間がかかる点
- 通常、テスト運用を経て社内で使いこなせるまでに数カ月かかってしまう
- クラウド型のように社外で利用できず、モバイルアクセスもできない
クラウド型・オンプレミス型の違い
2つの違いを見ていきましょう。
- クラウド型:初期費用が一般的に無料だが、自由なカスタマイズは難しい。しかしメンテナンスに費用がかからない
- オンプレミス型:導入までの費用は高額だが、クラウド型よりも希望に沿った細かいニーズに対応できる。またメンテナンスに費用がかかる
3.ワークフローシステムの機能
ここからはワークフローシステムの機能について、ご紹介します。
- 申請書の作成
- 申請書の検索
- 承認経路の可視化
- システム連携
①申請書の作成
テンプレートを利用したりExcelを利用したりして、申請書のフォーマットを作成できます。申請に関わる情報を添付ファイルとして追加する機能や、補足のコメントを記載する機能も備わっているのです。
ニーズに合わせてバージョンアップもできるため、申請書作成の負担を軽減できます。
②申請書の検索
過去に申請した文書を検索・表示できます。データストックから、必要な過去の稟議書もかんたんに検索・表示できるのです。これによって監査への対応も円滑になるため、コンプライアンスの強化につながるでしょう。
③承認経路の可視化
作成された申請文書を定めた経路やルールに従って、承認を得る必要のある関係者に回付できます。回付すべき新しい申請書は一覧に追加され、次の回付先に承認依頼メールが送られるのです。
回付された文書を承認画面にて承認すれば、次の承認者に回され、差し戻しにすれば申請者か途中の承認者に戻されます。
④システム連携
ほかシステムからワークフローシステムへ連携すると、たとえば交通費の精算時に経路と金額を取り込む機能によって自動精算が可能となります。
そのほかワークフローシステムからほかのシステムへ連携すると、決済済みのワークフロースケジュールへ紐づけができるのです。
4.ワークフローシステムを導入するメリット
ワークフローシステムを導入するメリットは、複数あります。ここでは5つのメリットについて、解説しましょう。
- 申請業務の効率化
- ペーパーレスによるコスト削減
- 内部統制の強化
- ヒューマンエラー防止
- テレワークの推進
①申請業務の効率化
削減できる手間は、下記のとおりです。
- 過去の決裁済み文書をファイリングから探す手間
- 申請書のフォーマットを最新のバージョンにする手間
- 申請書作成者が申請書を回付する手間
- 申請書の承認者が次の承認者に回付する手間
②ペーパーレスによるコスト削減
印刷費や用紙代、プリンターにかかわる費用が減るため、コスト削減も期待できるでしょう。さらに書類の保管にかかっていた費用、たとえば人件費も必要なくなるうえ、書類の保管スペースも必要なくなります。また権限に応じて情報を引き出すのも容易です。
③内部統制の強化
ワークフローシステムでは発注や契約時の承認が本人しかできないため、発注や承認がより確実なものになります。たとえば許可されていない物品購入ができなくなるのです。
また申請書の回付による承認の履歴は、監査法人への内部統制用資料として活用できるともいわれています。
④ヒューマンエラー防止
たとえばワークフローシステム導入によるペーパーレス化によって、書類管理の必要がなくなるため、書類紛失のリスクを軽減できます。
また申請書の回付がシステム上で標準化されるため、間違った宛先への回付によって情報漏えいするといった、申請から承認のプロセスで起こるミスも防げるのです。
⑤テレワークの推進
ワークフローシステムは、ペーパー業務をWeb上で行えるため、出社しなくとも自宅や移動中、出張中の遠隔地からでも業務が可能です。それによって申請から承認のプロセスに余計な時間がかからず、意思決定もスピードアップするでしょう。
5.ワークフローシステム導入の手順
ワークフローシステムの導入は、「全社で一斉に」「特定の部署や職種に限定して」などさまざまあります。ここからは一般的な導入の手順について、解説しましょう。
- 現状の把握と分析
- 目標の設定
- システムの選定と試験導入
- 本格導入
①現状の把握と分析
まず業務の現状を把握し、分析します。業務量を把握し、ワークフローを詳細に検討しましょう。フローチャートを用いながら業務プロセスを見直し、業務の階層構造や分岐点を把握するとわかりやすくなります。
承認者は適切か
申請書を回付するプロセスにおける承認者の見直しは、重要なポイント。「承認する部署はどこか」「だれが担当しているのか」「人数は適切なのか」などを再確認しましょう。
承認者が多すぎて承認プロセスに時間がかかりすぎるのも業務が停滞する原因になります。一方、承認者が少なすぎると特定の人に承認作業が集中してしまうのです。適切な承認者と人数の見極めが必要でしょう。
プロセスの停滞が生じていないか
業務プロセスで停滞が起きていないかどうかもチェックが必要です。1つの業務に2つ以上の作業がかかわっている場合、停滞が起きる可能性もあります。
たとえば1つの部署が申請内容を確認し承認しようとしても、別部署から書類が届かず申請書の内容を記載できないような場合です。このような場合、プロセスに停滞が生じてしまいます。
差し戻しが頻発しているプロセスはないか
申請書の差し戻しが頻発していないかもチェックしましょう。差し戻しは「申請者に起因するもの」「承認者あるいは決裁者に起因するもの」があります。差し戻しが頻発すると承認プロセスが滞り、業務にも大きな影響をおよぼすでしょう。
申請者に起因する差し戻しを防ぐためにも、申請書作成時に参考にする情報が適切かどうか、チェックしましょう。
②目標の設定
現状を把握し分析したら、次は目標の設定です。ワークフローシステムの導入に向けて目標を設定する場合は、抽象的なものではなく課題に対して定量的な目標の値を定めましょう。
たとえば申請書作成から承認までにかかる時間や申請書の数など。これらの目標は担当者の間で共有し、ワークフローシステム導入後に目標を達成できたか、確認しましょう。
③システムの選定と試験導入
どのワークフローシステムが適切であるのかを選定し、試験的に導入します。選定の際は「導入して実現できることの精査」「ほかシステムと連携できるか」「メンテナンスやセキュリティ対策」などの検討が必要です。
自社に最も適したシステムが決まったら試験的に導入し、使いやすさや効果などを確認するとよいでしょう。
④本格導入
試験的な導入が成功したら本格的に導入するのが最終段階です。各部門が関連して業務を行っているので、部門間で利用する範囲を拡大します。
関連する各部門から1~2人の担当者を選出して、プロジェクトチームを作るとよいでしょう。部門ごとに構成したワークフローをまとめられます。
6.ワークフローシステム導入時の注意点
ワークフローシステムを導入する際、何に気をつければよいのでしょう。ここではシステムを選ぶ際の注意点について、解説します。
- 自社業務とのマッチ性
- 操作性
- コスト
- システム連携
- メンテナンスやサポート体制
①自社業務とのマッチ性
「ワークフロー上の問題点がシステム導入によって解決できるか」「自社で使用しているファイル形式にてアップロードできるか」「ほかシステムと連携できるのか」を検討するとよいでしょう。
導入するシステムによって自社のワークフローを変えるのも、スムーズな導入につながります。
②操作性
最終的には全社で使うため「動作スピードの軽さ」「UIの複雑性」「直感的な操作の可能性」など、使いやすさも必ず確認します。試験的に使う際、各項目について確認したりアンケートを取ったりするとよいでしょう。
③コスト
ワークフローシステムにはさまざまな機能があるものの、多ければよいとはいえません。使わない機能があれば、その分コストが無駄になってしまうからです。
しかしコストの安さを重視して必要な機能が搭載されていなければ、導入する目標も実現できません。機能とコストのバランスを検討しましょう。
④システム連携
販売や顧客などの情報を管理している既存システムと導入した新たなシステムを連携すると、相互で最新のデータに更新できるうえスピーディーに業務対応できるのです。
これによって作業の効率もアップするでしょう。また手入力の手間を省くため、誤入力のミスも削減できます。
⑤メンテナンスやサポート体制
メンテナンス性とは、申請書の追加や変更、承認や決裁のルート変更などが発生した場合に修正できるかどうかという点のこと。またその際のサポート体制の確認も重要なポイントです。
どのようなサポートを受けられるのか、そしてそれは有償か無償なのか確認しておきましょう。