属人化とは? メリット・デメリット、原因と解消方法を解説

属人化とは、特定の業務の内容や進め方を特定の社員しか把握していない状況のこと。この状況は会社運営において大きな問題であり、早急な対処が必要です。

1.属人化とは?

属人化とは、特定の業務において詳細な内容や進め方、注意点などを担当者しか把握していない状況のことです。たとえば「この業務で使う書類のありかは、担当の〇〇さんしか知らない」という状況が該当し、今日では多くの会社でこのような問題が生じています。

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2.属人化の対義語

属人化の対義語は「標準化」です。標準化は「業務の最適化」とも言い換えられる語で、特定の業務内容やその進め方についてすべての社員が理解し、共有することを意味します。

似た言葉として「平準化」も挙げられるものの、こちらは「社員ごとの負担や労力を均一にする」という意味です。業務の理解や共有といったニュアンスはありません。

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3.属人化のデメリット・リスク

業務が属人化した会社は、業績悪化や組織力低下を招く恐れがあります。属人化のデメリットやリスクを把握し、早期に対策を取りましょう。

  1. 業務や顧客対応の遅延
  2. 品質の低下
  3. 休職や退職によるノウハウ喪失
  4. 業務がブラックボックス化
  5. 評価が難化
  6. 担当者の負担が増大
  7. 組織力の低下

①業務や顧客対応の遅延

属人化してしまった業務は、担当者が不在になると対応が遅延する恐れもあります。顧客への対応が遅れると顧客満足度の低下につながり、自社の信頼を失いかねません。

社内においても業務を代行できる人がいなければその業務が停滞し、関連する業務が玉突き状態で遅延する可能性も高いです。関連業務が多いほど全体の効率が下がり、生産性も低下するでしょう。

②品質の低下

属人化してしまった業務では、製品やサービスの品質が低下してしまう恐れもあります。担当者しか業務の正しい進め方を把握していない場合、代替スタッフや後続スタッフが担当した業務でミスや誤りがあってもわかりません。

また担当者しか業務内容を把握していないと、他者は業務の質について良し悪しを判断できないのです。適切な業務改善が行えず、気づいたら品質が低下していたケースもありえるでしょう。

③休職や退職によるノウハウ喪失

突然担当者の休職や退職、異動などが生じた場合、属人化した業務はノウハウを喪失する可能性も高いです。たとえば担当者が急病で長期入院した場合、ノウハウを失った業務は再現性が低下し、品質を維持しにくくなるでしょう。

このリスクについては事前にマニュアルを整備し、複数の担当者を付けるなどの対策が有効です。

④業務がブラックボックス化

業務のブラックボックス化とは、成果は正しいものの、そのプロセスや処理が不明な状態のこと。特定の担当者のみがその業務を行うため、不正が行われていても発見できません。

また「自分にしかできない業務」を確保するため、あえて属人化させる担当者も存在します。専門知識やスキルを独占してしまうので後続が育ちません。

⑤評価が難化

属人化した業務は、適切な評価を下しにくくなります。担当者しか業務を把握していないブラックボックス状態であるため、上司による進捗や品質の管理が難しくなるからです。

業務の質向上や担当者の成長などが把握しづらくなり、客観的な基準にもとづく評価を下せなくなります。正当な評価を得られない点は、担当者自身にとってもデメリットとなりえるのです。

⑥担当者の負担が増大

属人化した業務は、担当者の負担を増大させます。替えのきかない業務はその担当者が遂行せざるを得ず、長時間労働や休日出勤などでまかなう場合も少なくありません。

また有給休暇の取得や法定で定められた時間外労働の制限を超えてしまう状態は近年、多くの企業が取り組んでいるコンプライアンス課題となりえます。この状態を放置してしまうと、自社イメージの低下など二次的な問題を生み出す恐れもあるのです。

⑦組織力の低下

属人化した業務が増えるほど、会社全体の組織力を低下させます。属人化した業務は担当者以外の社員しか遂行できず、ノウハウも共有されない状態です。

本来その業務をつうじて習得できたはずのスキルをほかの社員が得られなくなり、組織全体の能力を下げる恐れもあります。このような問題を避けるためにも、マニュアルの整備や共有が必要です。

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4.属人化のメリット

属人化にメリットはないのでしょうか。実はメリットもあるため、会社によっては属人化から抜け出せなくなる場合もあるようです。ただし基本、リスクやデメリットによる悪影響を懸念すべきでしょう。

  1. 会社の信頼やブランド力が向上
  2. 個人のスキルアップ

①会社の信頼やブランド力が向上

属人化した業務は、担当者がその業務にかかわっている限り、会社への信頼やブランド力を維持向上しやすくなります。「この業務はあの人に任せれば大丈夫」という担当者がいる限り業務もスムーズに進み、社内では安心感を得られるからです。

また社外では顧客から「あなたが担当者だから契約する」と高い信頼を得ているケースも少なくありません。担当者の良質な対応が自社のブランド力を高めるのもしばしばです。

属人化で得た信頼度やブランド力の低下を恐れて、属人化を続けているという声も聞かれます。

②個人のスキルアップ

属人化した業務は担当者がひとりで遂行するため、担当者はその業務に関するノウハウやスキルが高まります。とくにデザイン系といった創造力が必要な業務や、法務や会計など専門知識が必要な業務はその傾向が顕著です。

また担当者個人の好みに合ったやり方でスキルアップを図れる点も、属人化のメリットでしょう。属人化した業務の担当者は、業務に用いる手法や業務プロセスをコントロールしやすいからです。

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5.属人化の原因

ごく限られたケースを除いて属人化はデメリットのほうが多く、可能な限り防ぐべきです。

しかしそのためには属人化の原因を把握し、対策を講じなければなりません。属人化の原因はさまざまで、結果的に属人化してしまうケースと社員が意識的に属人化させたケースが存在します。ここでは5つの原因を解説しましょう。

  1. 日々の業務が多忙
  2. 専門性の高い業務内容
  3. 属人化業務に対する高い評価
  4. 個人成果主義
  5. ノウハウの共有体制が不十分

①日々の業務が多忙

日々の業務が多忙になるほど、後続の育成やノウハウの共有などを行う余裕がなくなり、属人化が発生しやすくなります。周囲も「あの業務はあの人にまかせて、自分はこっちの業務を優先しよう」と考えてしまうでしょう。

人員不足が慢性化している企業や、必要な人員が十分に揃っていないスタートアップ企業などはとくに注意が必要です。

②専門性の高い業務内容

専門性の高い業務は特定の社員しか行えない場合も多く、属人化のリスクがつねにともないます。たとえばプログラミングやサイバーセキュリティなどの専門的な分野が挙げられるでしょう。

専門知識やスキルを持つ担当者に対し、そうでない社員は意見や関与がしづらくなります。その結果、担当者が自分の裁量で業務を進めてしまい、業務が属人化してしまうのです。担当者とほか社員の間で情報共有が減り、さらに属人化が進んでいきます。

③属人化業務に対する高い評価

属人化した業務の担当者は、高い評価を得やすいのも原因のひとつ。その担当者しかできない業務であれば、ほか社員よりも高い評価を付けざるを得ません。高い評価を維持するために、担当者が属人化の解消を望まない場合もあるのです。

また属人化しやすい業務を解消するための業務が評価されにくい点も、原因となりえます。たとえばマニュアルの作成やスキルの共有は、業績に直結する作業ではないからです。このような評価傾向が属人化に拍車をかけてしまいます。

④個人成果主義

個人成果主義の企業ではノウハウや知識の独占が起こり、属人化を招く可能性も高いです。個人成果主義では、各々の社員が自身の評価を上げていかなければなりません。

他者との差別化を図るため、社員は自身が持つ知識やスキルの共有を避けるようになるのです。個人ではなく部署やチームなどのグループ単位での評価を重視すると、属人化の予防効果が期待できます。

⑤ノウハウの共有体制が不十分

ノウハウを共有する体制や仕組みが不十分だと、属人化を進めてしまいます。ノウハウの共有にはマニュアルやワークフローなどが不可欠。しかし担当者がこれらを作成する時間がなく、OJTや口頭での引継ぎで済ませてしまうケースも少なくありません。

マニュアルの整備はもちろん、それらを場所や時間を問わずに共有できるツールも併用しましょう。

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6.属人化を防ぐべき業務とその理由

属人化を解消するには、引継ぎや育成、共有体制や評価制度など多くの手間が必要です。まだ属人化していない業務や、一度属人化を解消した業務には予防策を講じておきましょう。ここでは4つの業務について予防が必要な理由を解説します。

  1. バックオフィス業務
  2. 問い合わせ対応やプロジェクト進行業務
  3. 自社製品やサービスの説明業務
  4. トラブルやセキュリティへの対応業務

①バックオフィス業務

バックオフィス業務は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などリソース管理を行う業務です。会社経営に大きくかかわるため、誰が担当しても正しい手順で業務を遂行できる状態でなければなりません。

またその際には業務品質を一定に保つのも重要です。品質を維持するためにも、マニュアルやフローを作成したり定型業務を自動化できるツールを導入したりしましょう。

②問い合わせ対応やプロジェクト進行業務

顧客からの問い合わせ対応といったフローが属人化すると、担当者が変わったときに対応品質を保てなくなります。

プロジェクトの進行フローが属人化すれば、メンバーは自分のタスクが不明瞭になり、プロジェクトマネジャーは進捗状況の管理が難化するでしょう。プロジェクトの遅延や失敗につながるリスクも高まります。

対外業務や多数のメンバーがかかわる業務はとくに、属人化を防止する取り組みが必要です。

③自社製品やサービスの説明業務

自社製品やサービスの説明業務なども対外業務であるため、属人化改善の優先度は高くなります。属人化が生じてしまうと担当者によって説明にばらつきが生じ、顧客へ誤解や不安を与えてしまうからです。

「担当者によって言うことが違う」という状況が続けば、自社の信頼低下を招く恐れがあります。業務のマニュアル化や社内研修による落とし込みを行い、製品やサービスに関する基本的な情報の共有を徹底する必要があります。

④トラブルやセキュリティへの対応業務

トラブルやセキュリティへの対応業務が属人化すると、被害の拡大を引き起こす恐れがあります。トラブルでは適切な一次対応が必須です。担当者によってこの一次対応が変わってしまうと、状況の悪化や二次被害の発生といったリスクが高まります。

不適切な対応で事態を悪化させれば、対外からの信頼低下も避けられません。非常時には複数の社員が即座に適切な対応を取れるよう、これらの業務には優先的に属人化の防止策を講じておくべきです。

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7.属人化を解消する4つの対策

属人化を解消するには、社員全員へノウハウやフローを共有できる環境や体制の構築が必要です。ここでは取り組むべき4つの対策を説明します。

  1. 業務フローの見直し
  2. マニュアルの作成
  3. ノウハウや知識の共有
  4. PDCAサイクルの実施

①業務フローの見直し

属人化してしまった業務のフローを細かく書き出し、属人化してしまう要因を改善しましょう。たとえば煩雑な工程が含まれていると、遂行できる社員が限られてしまいます。

「簡略化できる工程はないか」「簡略化しても問題はないか」などの視点で見直し、新たな業務フローを作成してみましょう。可能な限りシンプルな業務フローになれば、マニュアル作成の時間も短縮できます。

②マニュアルの作成

業務の属人化を解消するには、業務の進め方を記載したマニュアルの作成が必要です。マニュアルは誰が担当しても一定水準以上の業務を行えるよう、手順の詳細だけでなく専門用語や関連ファイルの保存場所なども併記しましょう。

またすでにマニュアルが存在する場合、「初心者がこのマニュアルで業務を行えるか」という視点で見直し、必要に応じて改訂します。一定以上のスキルを持つ人しか業務を行えないようなマニュアルでは、また属人化を招く恐れがあるからです。

③ノウハウや知識の共有

手順だけでなく、ノウハウや知識の共有も属人化の解消に欠かせません。属人化した業務の担当者が研修などで直接ノウハウを伝える方法もあるものの、時間を取れない場合も少なくありません。

担当者にコツやメモ、参考サイトや書籍などの情報をまとめた文書を作成してもらい、共有ツールで誰もが参照できるような体制を作るのがオススメです。

またこれらの情報が共有されない点に起因する属人化は、社員同士でのコミュニケーション不足が原因の場合もあります。チャットやWeb会議ができる共有ツールを使うと、その点にも役立つでしょう。

④PDCAサイクルの実施

属人化した業務を改善するための取り組みを実行したら、PDCAサイクルによる改善を繰り返すのも不可欠です。とりわけマニュアルや業務フローは変更が生じる場合もあり、定期的な見直しと修正を繰り返す必要があります。

チェックと改善のサイクルは、業務が属人化していない状況を維持するために欠かせません。また同じ人が特定の業務を長く担当すると属人化しやすくなるため、担当者のローテーションも有効です。

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