ユーザー会レポート

キーワードは「連動性」と「運用」!ビジョン実現のための人事制度設計とは?

2023年3月6日

マナベル

こんにちは!カオナビ カスタマーサクセスグループ ユーザー会担当です。

2022年7月8日(金)、ユーザー会「マナベル」を開催しました。今回は、「ビジョンと連動した人材・組織戦略と人事制度の作り方」をテーマに、電話代行サービス「fondesk」や入札情報検索・管理サービス「NJSS」をはじめ、労働力不足を解決するためのサービスを幅広く展開する株式会社うるるさまにご登壇いただきました。

当日はCHROの秋元優喜さまが、「ビジョン実現のため、経営戦略と連動した人事戦略や人事制度を構築するにはどうすればいいのか」や「人事制度運用のコツ」を、余すところなくお伝えくださいました。

ご参加できなかった皆さまにもご参考までに、当日の内容をまとめましたので、ぜひご一読ください!

※掲載内容はすべてユーザー会当日時点の情報です。

「マナベル」とは?

「マナベル」はカオナビを使いこなしているユーザー様をお招きし、実践例を直接お話いただくセミナーです。さまざまな業種のユーザー様にご登壇いただいており、「カオナビ導入の経緯」「カオナビを使ってできたこと」「ぶつかった壁とその乗り越え方」など、赤裸々なトークが必見です。

カオナビではそのほかにも、導入目的別の使い方を解説するセミナーや、ユーザー様同士で活用方法をディスカッションし合う交流イベントも開催。今後、開催予定のセミナーは、以下をチェックしてみてください!

サポートサイト『セミナー・ユーザー会』

ご登壇者紹介

秋元 優喜 様

株式会社うるる
執行役員CHRO兼人事部長

2010年に株式会社うるるに入社。
社員数が10人だった入社当時から、上場を経て約400名となるまでの組織拡大を経験する。Saas事業部長、経営管理部長などを経て、執行役員 人事総務部長に。現在は執行役員 CHRO兼人事部長として、組織戦略設計や人事制度設計を手掛けている。
※ご登壇当時の情報です。

人事組織戦略は、経営戦略と連動していますか?

※ここからは実際に秋元様にお話しいただいたセミナー内容です!

最初に、今日のテーマを考える上で重要なキーワードをふたつお伝えします。

1つ目は、「連動性」です。そして、2つ目が「運用」です。

本日のテーマである「ビジョン実現につながる人材組織戦略・人事制度とは」に対する私の答えは、「連動性のある人材組織戦略や人事制度であり、なおかつ、その人事制度が運用可能なものであること」です。

「それって当たり前じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、今日はこの「連動性」と「運用」というふたつの要素について、深堀してお話しできればと思います。

まず、1つ目の、連動性のある人材組織戦略や人事制度とはどんなものかについてお話させていただきます。みなさんは、この図を見たことがありますか?

この図は、経営戦略と人材組織戦略がちゃんと連動してるのかを確認するための「シートX」と呼ばれるフレームワークです。この作り方は、Googleで検索していただくと詳しく解説されているものが出てくるので、ぜひ調べてみてください。このフレームを、外側から内側に向かって埋めていくと、経営戦略と人材組織戦略の連動性はもちろんなんですが、何か無駄なものはないか、注力するべきものは何なのかまで浮かび上がってくるんですね。

今日私の話を聞いてくださっている方は、当然人事の方が多いと思います。なので心当たりのある方もいらっしゃるかもしれないんですが、人事として何かをしようとする時、施策だとか制度だとか、点で物事を見てしまうことってあるんですよね。でも、すべては経営戦略を実現するためにやることのはずなので、経営戦略を念頭においてさまざまな施策をやっていくことが大事ですよ、ということをお伝えしたくて、この図の話をさせていただきました。

ここからは、当社の事例をもとに連動性について具体的にご説明します。

当社では、4月にビジョンが変更となり、「人のチカラで世界を便利に」から「労働力不足を解決し、人と企業を豊かに」となりました。それに伴って、経営戦略もアップデートしたんですよね。

当社ではこれまで、ITと人の力を組み合わせたCGSと呼ばれる事業を行ってきました。CGSとは、Croud Generated Serviceの略であり、当社のクラウドソーシングプラットフォーム「shufti(シュフティ)」
に登録されている在宅ワーカーさんが人でしかできない部分を補完することによって、これまでIT技術だけでは実現できなかった価値を提供するwebサービスのことです。そのCGSをさらに成長させつつ新しいCGSサービスを作ることが以前の目標でした。

でも、我々がもともとやりたかったことって、労働力不足を解決するということなんですよね。そこに対して、ITや、働きたくても何らかの事情があって働けない方の労働力を活用することでアプローチをしてきました。けれども、より一層労働力不足解消に向けてアプローチしていくためには、人を介さずに労働力不足を改善することにも目を向けなくてはいけない。だから「DXやAIにも力を入れていこう」、また、「同じような思想を持つ企業さまに仲間になっていただくためにM&Aも推進していこう」という風に、ビジョンに合わせて経営戦略も少し変わりました。

それに伴って、当然求める人物像も若干変わってくるので、アップデートしないといけない。そして求める人物像は人事制度で定義されるものなので、人事制度の刷新を今進めているところです。

連動性を確認するときに大切な3つのR(HR・IR・PR)

ここで3つの重要な観点を紹介します。私は3つのRと呼んでいるんですが、HR・IR・PRの3つです。

HRでいうと、例えば採用という文脈で見たときにも、経営戦略と組織人事戦略が連動しているからこそ、候補者の方も興味関心や、やりがい、成長可能性を感じられるんですよね。ここが連動していないと、「私は何をするんだろう」「何をやりがいに働けばいいんだろう」ってハテナになってしまいます。経営戦略と組織人事戦略が連動していることで、魅力が高まったり成長実感を感じやすくなる効果があります。

IRの観点では、ビジョンと経営戦略が連動していることで、この会社が何を目指していて、そのために今どういうことをしようとしているか、投資家も納得することができますよね。

そしてPRでも、ビジョンや経営戦略に基づいた一貫性があるから、社外からも共感してもらえるし、社員も納得感を持ってがんばっていけるんじゃないかなと思います。

このように、ビジョン、経営戦略、組織人事戦略が連動していることは極めて重要なんですよね。この図は経営陣と求める人材についてディスカッションする際にも、必ず使っています。ビジョンや経営戦略とズレていないかを確認するためにちょうどいいんですよね。何かが変わったら連動性を確認するという形で進めていくと、連動性は担保していけるので、みなさんもよかったらこういった図を使ってみてください。

求める人材は組織カルチャーではなく「人事制度で定義されるべき」

もう1つ図を紹介させてください。

これはコングルエンス・モデルというフレームワークです。コングルエンスは調和や一致を意味し、ここまで私が話してきた連動性とも近い言葉です。KSF・組織カルチャー・求める人材・人事制度や組織体制を表す公式の組織、この4つがしっかりとかみ合っているときに、組織は機能して成果を出せることを表しています。この図に当てはめながら現状を整理していくことで、今かみ合っていない部分を浮かび上がらせて、そこに対する改善策を考えていくってことができる図ですね。

私はこの図を見て、とても頭が整理されたんです。なぜかというと、組織カルチャーと求める人材って、それぞれ重要だけど別ものですよね。でも、別ものなのに混ざってよくわからなくなるときがあって。同じ方もいるんじゃないでしょうか。

ここでわかったことは、組織カルチャーは会社の根幹となるところなので基本的にはブラさないこと。でも、求める人材の方は経営戦略に基づいて変わるものだし変えていい。求める人材にも下地にカルチャーが含まれているし、それを含めることも大事なんですが、ここは混同せずにしっかり切り分けて考えた方がいいですね。

また、求める人材というのは、人事制度で定義されるものだと私は思っています。人事制度に基づいて求める人材を採用して、育成して、評価するものではないかなと。それぞれ点で見て施策を打っていくことがほとんどなので、これって意外とバラバラになってしまいがちです。だからこそ、求める人材を明確にした上でそれを制度で定義して、それぞれの施策を考えていくとうまくいくのかなと思います。そして、求める人材が働きやすい環境で長く働けることもとても重要です。この部分は労務と連携しながら取り組んでいくことも大切ですね。

企画2割で、運用は8割。運用がイメージできる制度を作る

続いて、2つ目のポイント「運用可能である人事制度」についてお話します。

ここまで話してきた連動性のある人事制度を作ったとしても、運用ができないと意味がないですよね。他社の人事の方とお話すると、制度が形骸化してしまっているとか運用しきれていないという話も聞きますが、非常にもったいないなと思います。

その原因としてよく聞くのが、複雑すぎて運用が大変で回らないということです。

私が何かを考えるときは、企画2割運用8割くらいの比重で考えることにしているんですね。

実は当社、正社員が170人位の頃まで、Excelですべて管理していました。360度評価も取り入れていたので、私は520ファイルを一つひとつ開いて、確認していました。さすがにこれはやってられないなということで、いろいろなツールを見て検討したなかで、カオナビさんを使うことになったんです。このように運用方法自体は人数によって変わってくるとは思うんですが、運用できるイメージを持てる制度にすることを考えながら制度を作ると、ちゃんと運用を回していける制度になるんじゃないかなと思います。

最後に、人事制度設計について、7stepにまとめたものを簡単に紹介します。

最初は、今日何度もお話させてもらった求める人材像を明確にします。これがすごく大事です。人材像自体はたぶん人事でも考えられます。でも大事なのは経営陣、採用した人が所属する事業部のメンバー、そして人事が共通して同じ考えであるかということなんですよね。なので、私が制度設計をやるときには、その求める人材像のすり合わせに一番時間をかけています。

求める人材像の認識が合ったら、制度設計を本格的に始めます。人事制度は主に、等級と評価と報酬で構成されています。

まずは等級からですね。例えば、グレード1は独力で業務ができる人、グレード2はリーダーシップを発揮できる人というふうに決めていきます。ここで等級を決めるからこそ、次のステップとして、ではこの等級の人たちをどんな評価軸で見るべきかが考えられて、評価制度ができていくわけですね。それぞれの等級の定義がない状態で、評価だけを先に作ろうと思ってもきっとできないと思います。評価制度の中身は、コンピテンシーや成果、360度評価などさまざまありますが、私としてはコンピテンシーがもっとも使いやすいかなという気がします。

そして報酬制度ですね。等級を決めて、等級ごとに評価軸を決めている状態なので、あとはそこに対して、このレベルの人ならこのくらい払わないといけないよね、という風に決めていくわけです。等級があるから評価が決められて、評価があるから報酬が決められるという流れなので、設計は等級→評価→報酬の順番で進めていくことになります。

制度が形になったら、いきなり本格運用せずにシミュレーションをします。作った制度を実際に使ってみる。ここで極端な上がり下がりが出たらなにか制度に不具合があることが多いので、見直してみるのがいいですね。ただ、どうしても制度が変わると給与に変化がある人は出てくるので、その場合の補填期間もここで決めておきます。一般的には1年、会社さんによっては2年ということもあると思います。

次は規模の大きい会社さんでは特に重要な、制度を運用ツールに載せていきます。評価シートや承認のフローを作る作業ですね。弊社ではカオナビさんを使っています。

そして最後は、運用開始と改善ですね。完璧な人事制度というのは無いに等しいので、運用しながら改善を重ねていかないといけません。

今日は長々とお話してきましたが最後に、冒頭でお伝えしたことをもう一度お伝えして終わりたいと思います。「ビジョン実現につながる人材組織戦略・人事制度」とは、連動性があり、運用可能な人材組織戦略・人事制度です。特に、連動性の方は採用にも影響してくる要素なので、常に連動性を意識しながら制度設計をしていただくといいのかなと思います。本日はご清聴ありがとうございました。

【Q&A】360度評価やMBOなど…具体的にどのように評価制度を作ってますか?参加者からの質問に回答

参加者からのご質問にも丁寧にお答えいただきました。

Q)360度評価や MBOなどさまざまな評価方法がありますが、具体的にどのように評価制度を作っていますか?

A)当社の場合は、360度評価は育成目的で使っています。以前は評価に連動させて使っていたこともあるんですが、いわゆる忖度が入ってしまって、さまざまな人の素直な声が聴けるという360度評価の意義がなくなってしまったんですよね。そのため現在は、本人の気付きや育成のためだけに行っているような状況です。

MBOについては、上司のさじ加減一つで変わってしまって公平性や透明性に欠ける恐れがあるため、部長のような上位レイヤーに対してのみ適応しています。では他の社員はどう評価するかというとコンピテンシーですね。等級ごとに「こういうことができていたら3点」というような基準を決めて点数をつけていく方式です。その基準も社内に公開することで、公平性や透明性を保っています。

Q)360度評価を育成に使われているということでしたが、それが配置、人材育成にどう影響しているのか知りたいです。

A)配置を変えるということはしていないです。大事なのは内省してもらって、それをもとに改善してもらうことだと思っているからです。360度評価の結果を見て、人事側で配置を変えてしまうと意味が半減してしまうのかなと。あくまで、実行改善のためのフィードバックを拾うためのものとして運用しているかたちですね。

ユーザー会を終えて

今回は、さまざまな企業の人事の方が集っての賑やかなユーザー会でした。CHROとしての目線で、わかりやすくビジョンや経営戦略と連動させた人事制度についてお話いただきました!

また、具体的な評価制度のお話など、実践に移しやすい粒度でお話をいただき、運営側としても勉強させていただくことの多いユーザー会となりました。みなさまも、早速自社の人事制度や組織人事戦略へ活かしていただけると幸いです。

カオナビのユーザー会では機能の使い方に限らず、さまざまなテーマを取り扱っていく予定です。「カオナビに集めたデータを採用や経営に活かす方法が知りたい!」「いま取り組もうとしている○○の人事施策について相談」など、ぜひお気軽にご意見をお寄せくださいませ!

また、カスタマーサクセスチームでは、Twitterも運営中。セミナー情報や便利な活用テクニックなどを定期的につぶやいていますので、チェックしていただけると嬉しいです!

それでは、今後もカオナビをどうぞよろしくお願いいたします!

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マナベル

2023.03.06