ユーザー会レポート

制度を作るだけでは足りない!女性活躍に必要な3つの視点

2022年12月19日

マナベル

こんにちは!カオナビ カスタマーサクセス ユーザー会担当です。

2/24(木)、ユーザー会「プロからマナベル」を開催しました。今回は「女性活躍の3つの視点 女性活躍から始めるD&I推進のススメ」をテーマに、スリール株式会社代表取締役の堀江敦子様がご登壇。昨今のダイバーシティ経営の動向や、女性活躍に必要な視点や取り組みについての講義をはじめ、参加者のワークショップを実施していただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

この記事では、今回ご参加できなかった皆さまにも堀江様のお話を共有できるよう、講演部分の内容をまとめましたのでぜひご一読ください!
※掲載内容は全て開催当日時点の情報です。

「プロからマナベル」とは?

「プロからマナベル」はある分野の専門家をお招きし、人事業務の最新トピックやカオナビの実践例を解説していただくセミナーです。

カオナビでは、そのほかにも導入目的別の使い方を解説するセミナーや、ユーザー様同士で活用方法をディスカッションできる交流イベントも開催。今後開催予定のセミナーは、以下をチェックしてみてください!
サポートサイト『セミナー・ユーザー会』

ご登壇者紹介

堀江 敦子 様

スリール株式会社 代表取締役

楽天株式会社を経て、2010 年スリールを起業。 法人向けの女性活躍・ダイバーシティ推進・研修・コンサルティング、行政・大学向けのキャリア教育を展開する。内閣府 男女共同参画会議専門委員、厚生労働省 イクメンプロジェクト委員など行政委員を多数経験。
立教大学大学院経営学研究科(博士前期課程/リーダーシップ開発コース)修了。
著書:『新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

女性活躍の実現に欠かせない「3つの視点」

※ここからは実際に堀江様にお話しいただいた講演内容です!

最近、経営者が女性管理職の比率を高めることに本気になってきたぞ、と感じることはありませんか?とはいえ、「何から始めればいいか分からない」「研修をしても意識変化が見られない」「女性の管理職登用にハードルがある」など、企業によってさまざまな課題をお持ちだと思います。

まず、前提として理解しておきたいのは、女性活躍は女性本人だけの問題ではないということです。会社の方針や上司・同僚との関係性など、本人が置かれている状況を総合的に考える必要があります。

企業様から、よく「簡単にすぐ女性活躍を実現できる方法はありますか?」と質問されますが、そうした方法はありません。なぜなら、企業様には独自に培われた組織風土があり、突然変えるのは困難だからです。つまり、女性活躍を実現するには、各企業様の事情に合った方法や、段階を追って取り組むことが求められます。

それを踏まえた上で、どの企業様にも共通して持っていただきたい視点があります。それが次の3つです。

視点1.経営陣の取り組み

女性活躍の推進は、現場だけでやろうとしてもうまくいきません。経営陣のビジョンや目標を明確化し、個々の能力を発揮・評価できる仕組みづくりが重要です。そのためには、
現場と経営を繋げる推進体制の構築はもちろんのこと、評価の仕組みづくりが欠かせません。女性活躍の推進は、単に女性が優遇されるものではなく、経営や組織風土の改善にもつながるため、個人と組織の双方にメリットがあることを念頭に置きましょう。

視点2.現場の取り組み

後ほど詳しく紹介しますが、経営陣主導でビジョンや目標を明確にしたら、組織のトップからボトムまで途切れることなくリーダーを育成する仕組みである「管理職パイプライン」を構築を意識することも大切。社員の成長を個人や部署に任せるのではなく、係長、課長、部長、役員といった活躍の段階が地続きになるように、育成の仕組みを構築するわけですね。

その仕組みを構築するために、まずは現場を指揮するマネージャー層のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の払拭することです。たとえば、お子さんのいる女性社員にはリーダーの役割を任せられないのではないか、と無意識に感じてしまうことなど。こうしたバイアスに、まずは気づいてもらうのが大切です。そして、マネージャー層の無意識の偏見を払拭することが、女性が働きやすい環境にもつながっていくのです。

視点3.外部コミュニケーション

最後3つ目の視点は、こうした社内での取り組みを社外広報として、また、社内ウェビナーなどで社内広報することで、会社が本気になって女性活躍の推進に取り組んでいることをPRすることです。『多様な社員が活躍できる働きやすい会社』として採用PRにもなります。

これら3つの視点をもとに、経営陣がビジョンを明確にして、現場が本気で取り組み、それを社内外に広めていくことで、女性活躍の実現というイノベーションに結びつくのです。

まずは自社の現状把握から始める

3つの視点を踏まえ、女性活躍推進に向けた施策を実行する前にまず大切なのは、自社の現状把握です。ステップは大きく0から4までに分類できます。各ステップの具体的な中身と、取るべき施策は次の図を参考にしてみてください。

たとえば、ステップ2は女性社員の早期退職が多く、長く働き続けられないと思われているかもしれません。ステップ4であれば、育児中の女性社員には簡単な仕事しか任せておらず、思うように活躍できないところに課題がある可能性があります。それぞれのステップに自社の課題を照らし合わせ、段階を追って改善していくことが重要です。

当日はワークショップ形式で、ステップの把握・共有を行ないました
ワークショップの様子

「トップが発信すること」で施策の実現性は高まる

施策の実行にあたり、まずは「会社や社員の状況をこうしていきたい」というビジョンの明確化が必要です。そして、あくまでもビジョンを達成するための施策であることを、トップがメッセージとして発信する必要があるでしょう。

トップが発信することで「社員全体に施策が認知される」「マネージャー陣がビジョンを理解した上で施策を実行している」という状況になってはじめて、従業員の態度や行動の変容に結びつくのです。

事例で分かる!ダイバーシティ経営の効果とは?

ダイバーシティ経営とは、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」を意味します。

ここで、ダイバーシティの観点から多様な人材を集めると、価値観の違いによるコミュニケーションエラーが多発してしまい、イノベーションを生み出しにくいと言われています。そこで、大事なのはインクルージョンの考え方も取り入れること。インクルージョンとは多種多様な人を受け入れ、尊重することを意味します。以降の事例で紹介しますが、異なる視点での提案の受け入れや正社員化による雇用の安定、また場所や時間に捉われない働き方の実現など、働く環境の改善によって心理的安全性を保つこともインクルージョンの重要な要素です。

では、実例をもとにダイバーシティとインクルージョン(D&I)の効果をご紹介したいと思います。

【実例1】女性マネージャーの提案によるターゲット層の拡大で売上増加

世界初アルコール0.00%のビールテイスト飲料を発売し、ノンアル市場の規模を2倍に押し上げたキリン。元々この製品は、飲酒をしない人や車を運転する人をターゲットにしていました。ただ、女性マネージャーの提案により、妊娠中の女性も飲める点をPR。ターゲットを広げることで売上の拡大に成功しました。ダイバーシティの視点を取り入れたことで、財務状況に直接影響をもたらした事例といえるでしょう。

【実例2】全員を正社員化したことで客単価が1.5倍まで上昇

創業100年の旅館・陣屋は、元々、パート従業員がほとんどでした。ただ、生産性やモチベーションの低下、離職率の高さに課題を抱えており、働く環境の整備に着手。全員を正社員化し、雇用の安定を図るとともに、週休2日制を採用したことでサービスの質が高まり、客単価は1.5倍まで上昇しました。

【実例3】本気の働き方改革で新卒のエントリー数が増加

2013年頃から働き方改革に本気で取り組んできたSCSK。より効率的に働き、有給休暇20日取得、月間平均残業20時間未満という目標に挑戦する「スマートワーク・チャレンジ」という活動を進めてきました。その結果、残業時間の削減や有給休暇の取得率が大きく上昇。従業員満足度(ES)がアップし、社外からの評価も向上したことで働く環境の良さが評判となり、新卒のエントリー数が増加しました。

【実例4】職場環境改善で従業員満足度向上!離職率が大幅に低下

多様な働き方を推進する企業として高い認知度を誇るサイボウズですが、かつては離職率28%と高い数字でした。そこで、組織や評価制度の見直し、社内コミュニケーション活性化施策に着手。場所と時間に捉われない働き方も実現するなど、職場環境を大きく改善したことで、離職率は4%まで低下しました。

こうした事例に共通しているのは、職場環境の改善が起点となってイノベーションが起きているということ。心理的安全が保たれた環境で働くことが、商品やサービスの改善、生産性の向上につながっているのです。

世界レベルで注目度増! 「人的資本」を重視する経営へ

続いて、最近注目度が高まっている「人的資本」についてお話をしたいと思います。人的資本とは、人間が持つ能力を資本として捉えた概念です。近年のビジネス界では、企業の価値を財務指標だけで測るのではなく、非財務指標にあたる人的資本で見極めようという流れが普及しています。

コーポレートガバナンスコードの改訂やESG投資の加速、人的資本の情報開示のための国際規格(ISO 30414)の発行などの要因も重なり、人的資本は資金調達の観点からも重要になってきました。こうした流れの中、上場企業を筆頭に職場環境の改善や人事制度の見直しなど、人的資本へ投資する流れが生まれています。

継続的な育成支援に必要な「女性管理職パイプライン」という考え方

こうした時代の潮流がある中、女性役員や管理職の比率は急速に上昇。上場企業における女性役員の数を2017年と2020年とで比べた調査によると、3年間で654名も増加しています(東京商工リサーチ調べ)。

ところが、「管理職を登用できない」「プール人材を育成できない」といった課題を抱えている企業も少なくありません。その理由として考えられるのは、「制度・体制・意識」の問題です。

管理職の育成や登用のタイミングが、女性のライフイベントの時期に重なってしまうケースです。また、女性を管理職の対象として育成していないことや、女性本人が敬遠していることも、原因の1つかもしれません。

そうした課題を感じている方に、ぜひ知っていただきたいのが、「女性管理職パイプライン」と呼ばれる考え方です。

これは、組織のトップからボトムまで途切れることのない、リーダー育成の仕組みのこと。ある意味、男女関係なく組織全体でリーダーを育成する仕組みとも言えます。

たとえば、入社時点で男女関係なく管理職への期待を表明するなど、会社からのメッセージも重要なポイント。また、リーダー職や管理職の登用にいたるまで、数年単位の計画を明示するのも手です。

「両立支援」だけでは女性管理職は育たない

パイプラインの構築にあたり、明確にしておきたいのは「活躍支援」と「両立支援」の違い。活躍支援とは、女性管理職の比率を具体的な数字で示すなどKPIを作成するような支援。かたや、両立支援は育児や介護などをしながら働き続けられる支援です。両方とも大事な支援ですが、とりわけ日本企業は両立支援に偏りがちです。

育休を長くしたり、育児中の従業員だけにフレックスタイムや在宅勤務を許可したりと、差が出てしまうと管理職にたどり着きにくいところが難点。両立支援と活躍支援のそれぞれが手厚いと、仕事のやりがいスコアが高まることも分かっています。「せっかく制度は作ったけれども、活躍できる方が少ない」という状況に陥らないために、、女性専用相談窓口の設置や啓発活動など「活躍支援」もセットで提供することが重要です。

人事施策を成果につなげるための6つのプロセス

また、人事施策を成果につなげるためには、次のようなプロセスを経ていく必要があります。

まずは、「意図された人事施策があること」。ビジョンに基づいた施策があり、トップがメッセージとして発信していることが大切です。次に、そのメッセージを受けた上司が「意図を伝えて実行している」、そして「社員に施策と意図が認知されている」というプロセスにつながります。

ここに到達すると、ようやく「社員の意識や行動が変わり」、このような社員の変化の積み重ねによって「集団レベルでの成果」、つまり会社としての変化につながるのです。

女性活躍推進をはじめとした人事施策を成果につなげるには、上記のように、

  • 現時点でどこがネックになっているのか
  • 社員がしっかりと認識して行動しているのか
  • 「両立支援」「活躍支援」の偏りはないか

といった観点で検証を重ねながら進めていくことが大切です。

【参加者の声】自社の施策を見直すきっかけになった

堀江様のお話しはここまで。
ここからは、参加された皆さまからのご感想を、一部抜粋してお届けします!

  • 他社の女性活躍推進状況や現状の問題、対策事例を聞くことができ、とても勉強になりました。
  • (自社の場合)両立支援施策は多いですが、まだ活躍支援施策が少ないと分かったことが大きな収穫でした。
  • 基本的な女性活躍推進、D&Iを勉強する機会をいただきたかったため、自身の受講したい内容にマッチしていました。
  • これまではオンラインやインターネットを使用して情報収集していたのですが、今回は講師の方から実際にお話を聞けたので良かったです。


ユーザー会を終えて

先行き不透明な時代において、企業が持続的に成長するためには、人の可能性を信じ、人をイノベーションのキードライバーにするという発想が求められています。

そのためには、堀江様の発言にもあった通り、男女問わず管理職を登用する仕組みをつくることが急務。女性活躍の実現までのステップは個社ごとに異なるものの、管理職登用までのパイプラインなど、一定のセオリーは存在します。

人的資本経営が全世界的な潮流になる今、企業価値の向上を見据えるためにも、女性活躍に関する自社の施策を細かく見直す必要があるのではないか、そう感じた会でした。

ユーザー会ではカオナビの使い方に限らず、今回の制度改定のように様々なテーマを取り扱っていく予定です。「他のユーザー様からこんな話を聞いてみたい!」などありましたら、ぜひお気軽にご意見をお寄せくださいませ!

また、カスタマーサクセスチームでは、Twitterも運営中。セミナー情報や便利な活用テクニックなどを定期的につぶやいていますので、チェックしていただけると嬉しいです!

それでは、今後もカオナビをどうぞよろしくお願いいたします!

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2022.12.19