インターネット産業がまだ黎明期だった1999年にサイバーエージェントに入社した曽山氏。入社後は主に広告代理事業部門の営業畑で活躍し、営業統括に昇進。その後、会社がブログ事業で大きく成長し始める2005年に人事本部長に抜擢される。今回は、急拡大するサイバーエージェントの組織作りを牽引している曽山氏に、カオナビ導入の背景や活用シーンについてお話を伺った。
サイバーエージェントは何を目指しているのか?
キーワードは、採用・育成・活性化。そして新たに適材適所。 30人の会社のように社員の個性を把握し、1万人の会社のように多様な選択肢を持つ。
サイバーエージェントは組織作りのキーワードとして、人材の採用・育成・活性化の3つを掲げている。成長産業の中、働く社員の年齢も若い同社では、いかに優秀な人材を採用して育成し、また組織全体の風土を劣化させず、常に新しいことに挑戦する雰囲気作りを維持するかを何よりも重視している。
その組織風土を維持し続けることで、今のサイバーエージェントの業績向上と人材成長があると力説する曽山氏。連結グループ人員数が2000名に差し掛かった2010年からは「適材適所」を組織作りの新たなキーワードに掲げ、「30人の会社のように社員の個性を把握し、1万人の会社のように多様な選択肢を持つ会社」を目指している。
組織作りにおいて、どのような問題意識を持っているか?
顔と名前が一致している組織かどうか? それが組織の活性化度合いを見るのに一番わかりやすいポイント。
組織が急拡大すれば必然的に風土の劣化が起こる。人事はそれと抗い続けることが大切。どんなに練った企画の人事制度も前提となる組織がどんどん変化するので、常に基本に立ち返り、強みとなっている基礎の運用ができているかを徹底的に問い続けていると曽山氏。例えばサイバーエージェントの強みのひとつは連帯感のあるチームプレー。それは月一面談や飲み会やランチなどの地道な人事施策で支えられているが、人事本部ではそれらの施策を回し続けられているか、その運用を徹底的に見ている。その中で重要になってくるのは、「顔と名前が一致している組織かどうか。」それが組織の活性度合いを見るのに一番わかりやすいポイント。新卒でも中途でも新しい社員が入った時、顔と名前が一致しないと声をかけられない。業務上の会話はもちろん日常の雑談もできない。それでは、そもそも組織の連帯感は生まれない。組織の活性化のスタート地点はまずそこだと考えている。
経営陣も社員一人ひとりの人となりを知る上で、やはり顔と名前を一致させることを重要視している。例えばジギョつくにおいて社員からの応募フォームには顔写真の添付があり、それを見ることで経営陣はプランの内容だけではなく、その社員の顔も覚えることができる。そうすると、たとえそのプランが入賞しなくても「○○君のアイデアここがよかったね」と個別に声をかけられる。社員の立場からすれば、うれしくないはずがない。キャリチャレや社員総会などでの表彰も同様に、役員は顔写真と名前をセットで社員を覚える工夫をしている。
曽山氏は経営も現場もそういう対話の生まれやすい環境を作ることをダイアログマネジメントと呼び、組織作りにおいて最も意識しているポイントである。
カオナビをどのように活用しているか?
役員の合宿や会議から事業部レベルでの検討まで。 カオナビを使って、人事の意思決定を全社俯瞰で決めている。
曽山氏のアイデアにより、ある時からサイバーエージェントでは、役員会議で人材の配置や抜擢を議論するときに、顔写真入りの社員リストを使うようにした。そうすると、役員から「お、彼だ。彼は山田君っていうんだ」というような好評な反応が得られたという。顔写真をつけることで直感的に社員のことがわかるようになったからである。 しかしその後、事業部別やグレード別、入社年次別と次々と役員陣から顔写真リストの要望が増え、それを作る作業に人事本部のメンバーが忙殺されることになってしまった。
カオナビの着想に至ったのはまさにそのタイミング。顔写真のついた社員の組織図をつくることで直感的に組織を把握し、かつグレード別や入社年次別など様々な切り口で社員の属性を切り替えられることができ、役員会議のたびに必要になる資料を、手間をかけずタイムリーに出力する仕組みが必要になった。そんな構想の下にカオナビが開発された。
現在では、カオナビを使って四半期に一度の役員合宿では全事業部のグレード別の顔写真リストを、毎週行う役員会議では中途入社一覧・新卒入社一覧・管理職一覧といった顔写真リストを使っている。会議の中でそれらが必要なときにすぐにサッと出せるようにしていると曽山氏。
急速に拡大するサイバーエージェントでは、子会社の経営陣や新規事業の責任者など、いわゆる優秀人材の抜擢や異動の候補者選定が人事の肝。その判断をひとりの担当役員の頭の中だけではなく、役員陣全員で顔写真のリストを見ながら組織を俯瞰して決められるようになったことが大きいという。新入社員など主要な切り口の顔写真リストは、自らの執務室の壁に貼り、常に社員の顔が見えるようにすることで、社員を覚えることを心がけていると曽山氏。また、カオナビは役員陣だけではなくて、事業部長レベルの管理職も使うようになり、人が足りているか? どこを強化すべきところか? バランスが偏っていないか? そのような会議を事業部単位で行うときにもやはりカオナビを見ながら話すことが定例となったという。
組織作りにおいて、カオナビはどのような導入効果があるか?
優秀人材の異動・配置・抜擢をスピードアップし、組織を活性化。 人事という答えのない選択肢を決めるときに最も効果を発揮する。
「誰か探してくれない? 誰かできる人いない?」と、人事の責任者をやっていると経営陣から頻繁にこの問いかけを受けるという曽山氏。事業や市場は常に動き続けているので、それらの問いにすぐに答えること、つまり適した人材をすぐに探しだせるかどうかが人事の力量のひとつであると。人材の配置や抜擢は常に何かを犠牲にするトレードオフの意思決定になる。優秀な人材をA事業部からB事業部に異動すれば、B事業部は強くなるがA事業部は弱くなる可能性がある。それでも組織全体としては、適材適所の最適化を追求しなくてはいけないので、常に組織をいろいろな切り口で俯瞰して意思決定することが重要になる。
カオナビは顔写真入りの組織図がいろいろな切り口で出力できるので、人材の抜擢や配置という答えのない選択肢を検討するときに最も効果を発揮する。男女バランスを見たい、年齢バランスをみたい、管理職の顔ぶれを見たい、カオナビを導入したことでそれらの切り口を顔写真で直感的に確認することができるようになった。結果、異動・配置・抜擢の着想が速くなり、組織を定常的に活性化することが可能となった。優秀人材はその社員の顔を見て、つまり目視で確認することが大切、カオナビから出力した様々な切り口の顔写真リストを常に携帯して社内を奔走し続ける曽山氏。カオナビを使った理想の組織作りはまだまだ続く。
現在では、主力事業であるアメーバやスマートフォン事業などを主力に成長を続け、サイバーエージェントの勢いは全く衰える様子が見えない。今後もカオナビを活用した組織作りを続ける曽山氏は、事業の急拡大と組織の連帯感、常に抗う二つの命題を実現するためのチャレンジ精神とエネルギーに満ち溢れている。
- 設立
- 1998年
- 事業内容
- インターネット総合サービス企業
- スタッフ数
- 1981名 (2011年9月末現在)
- 平均年齢
- 29.9歳 (2011年9月末現在)
- 男女比
- 6:4
- 事業内容
- インターネット総合サービス企業として、インターネットというフィールドで、「Ameba事業」、 「インターネット広告事業」、「スマートフォンゲーム事業」、「その他メディア事業」、「投資育成事業」の5つの事業を展開。