課題
- 業務拡大にあたり、技術者の育成
- 事業継続を目的とした、次世代へのスキル継承
- 個々の技術者のスキル数値化および評価制度への反映
活用法
- 工程別・人員別のスキル濃淡をマトリックスに。また、個人のスキルの得意・不得意をデータベース機能で見える化
- 毎月1on1面談を実施し、評価ワークフロー機能で記録
- データから研修計画を設計し、予実管理をもって人材育成
効果
- バックヤード業務・スキル管理を効率化
- 技能の数値化により、実務者にとってフェアな評価環境を実現
- 各技術者にスキル向上の当事者意識が芽生え、チームとしての組織力向上に寄与
富士フイルムメディカル株式会社様は、富士フイルムグループの一員として、医療用機器の日本国内販売とサービスを担当。そのなかでも、埼玉県さいたま市に位置する内視鏡リペア&イノベーションセンターでは、国内の内視鏡の営業用デモ機および故障の際の代替機の貸出・点検・修理を行っています。
同社は、技能者育成・管理の効率化を目的としてカオナビを導入。今回は、営業本部 大宮EMセンター 内視鏡リペア&イノベーションセンター センター長 外山和成様と、同所属現場リーダー 嶋村明良様にお話を伺いました。
※本記事の掲載内容は全て取材時(2024年8月14日)現在の情報に基づいています。
決め手は、使いやすさと将来的な人材管理の拡張性
──はじめにカオナビ導入の経緯についてお聞かせください。
嶋村様:
内視鏡リペア&イノベーションセンターは、2020年に固定資産(営業用デモ機・故障時の代替機)の修理と貸出管理効率化を目的として設立されたサイトです。
さらなる事業拡大のために、次世代へのスキル継承が求められていました。そこで必要となったのが、個人・組織それぞれで不足しているスキルを洗い出した上で、優先順位をつけて教育を実施していく「スキル管理」です。
──これまではどのようにスキル管理を行っていたのでしょうか?
嶋村様:
これまでは、人員ごとのスキルレベル表やトレーニングの予実表をExcelで作成し、印刷・ファイリングして管理してきました。
ですが、研修項目や対象者によって研修期間が異なるほか、組織内での情報連携や、育成の状況に合わせて研修の内容が都度変更になるため、手作業での管理にかなりの工数がかかっていました。
──カオナビを選定いただいた理由を教えてください。
嶋村様:
使いやすさと、将来的な人材管理にも適用できる拡張性を踏まえて、「カオナビ」の採用を決めました。管理者だけでなく実務者も情報を見るため、システムに慣れていない現場の社員でも直感的に使いやすいことを重視しました。また、カオナビのヘルプデスクは対応が速く、端的でわかりやすい点も魅力の1つでした。
外山様:
市場の変化や事業の拡大に伴って必要とされる人材像が変わるなかで、臨機応変に対応できるスキル管理体制を整えたい意図があります。カオナビを活用することで、そういった将来的な構想を実現できると感じましたね。
現状を俯瞰し、個人の教育プランに落とし込む
──カオナビを活用して、どのように社員の「スキル管理」をしているのでしょうか?
嶋村様:
技能スキルの現状を事業所全体で俯瞰し、スキル分布が薄い傾向にある部分と、今後の市場トレンドから必要になりうる部分をカバーできるよう、個人の教育プランを立てました。
その上で、1on1で各技術者と合意形成しながら、一人ひとりに求められるスキルを具体的に落とし込んでいます。
──具体的にカオナビのどのような機能をご活用いただいていますか?
嶋村様:
具体的に活用している機能は3つです。1つ目が、社員情報ソート機能「シートガレージ」。スキル情報についてソート検索した結果を元に、一覧表で人員別のスキルレベルの濃淡が見られるスキルマップを作成しています。スキルマップは1on1を通じた人材育成に活用するほか、事業所内のモニターに常時映してスキル情報を公開しています。
2つ目は、社員データを集約できるデータベース機能「プロファイルブック」です。個人ごとのレーダーチャートでスキルの得意・不得意を可視化したり、過去・現状・未来の軸でスキルの上達度合いを整理し、先々の育成プランの参考にしたりしています。管理側としては先々の育成プランが視覚的にわかり、社員側としては自分の現状と成長度合いが見えてモチベーションアップにつながると考えています。
最後は、独自の評価制度を運用できる評価機能「スマートレビュー」です。評価の運用ではなく、毎月1on1面談を実施し、面談記録の管理に活用しています。
──社員のスキル情報を集約したあと、全体管理はどのように実施されていますか?
外山様:
組織図機能「シナプスツリー」では、組織図を見ながら直感的に人材配置のシミュレーションができるので、将来に向けた組織設計に活用しています。社員一人ひとりの顔を見ながら配置できるため、直感的にイメージしやすいです。従来はExcelツールで行っていた作業ですが、もう元のやり方には戻れないですね。
また、ダッシュボード機能を用いて、できる限りの情報をカオナビに集約したいと思っています。現在進めているのは、年齢別構成比や男女比といった一般的な情報に加え、スキルに特化した情報、技能資格情報の管理です。
医療関係の事業ゆえに、行政の資格要件が他より厳しく、単に修理のスキルがあればどうにかなる、というわけではありません。スキルと資格の両輪で、市場と事業の変化に合わせた組織改革の必要があるんです。
管理者業務の効率化と、チームとしての組織力向上に寄与
──「カオナビ」の導入によって、どのような効果がありましたか?
嶋村様:
Excel操作などのバックヤード業務をかなり短縮することができました。管理者の工数を減らせるほか、情報の更新作業など、次のステップへのインターバルも短くできるので、人材育成のスピードアップにも寄与できていると思っています。
──カオナビ導入による効率化を実感いただいているのですね。
外山様:
また、各技術者が修理業務をどの程度できるかを具体化し、予実管理ができるようになったことで、実務者にとってもフェアな評価環境が構築できたのではないかと思います。今まで見えにくかった技能を数値化できたことは、大きなステップです。
また、全体で最新情報を共有できるようになったことで、オープンな技能管理へ意識が変化したことも良かった点です。これまでは、各社員の技能情報はクローズドで、管理者だけが閲覧できる情報だというイメージがありました。
ですが、グループ全体として、どこが弱くてどこが強いのかを可視化することで、「自分がスキルを身に付けることでチーム全体の生産性があがる」といった当事者意識が生まれ、スキル習得に向けた意欲を高められると考えています。実際に各社員からもスキルに関してボトムアップで意見があげられるなど、積極的な姿勢が垣間見える機会もありました。
評価制度へ落とし込み、社員のモチベーションに寄与する人材育成の実現へ
──今後の展望を教えてください。
嶋村様:
さらにカオナビに情報を集約し、ダッシュボードで公開できる内容をもっと充実させたいと考えています。当センターは外部の方々が見学に来られることが多いのですが、そうした方々にプレゼンをしたり、理解を深めてもらったりするためにも、相手に応じたダッシュボードを作っていきたいです。
また、内部的にも、管理者の「こういったものが見たい」といったリクエストに応じてダッシュボードを作成するなど、社員の意見を反映させたカオナビの運用を進めています。最終的には、スキル管理の検討に向けて情報を知りたいときは、カオナビを見れば全て解決できるようにしていけたらと思っています。
──カオナビを、スキル情報が全て集約されているプラットフォームにしていく、ということですね。他にはいかがでしょうか?
外山様:
今、目に見えない技能・技術を数値化できるというステージに到達しました。次は、この数値化したスキルデータを評価指標に組み込んでいき、社員の自発的なモチベーション向上を促進したいと思っています。
また、内視鏡分野において、私たちの実践するスキル管理のスキームをパッケージング化できれば、事業所を越えた規模でタレントマネジメントの標準化を進めることができるのではと考えています。
ようやく技能を見える化してタイムリーに管理する地固めができたと思っています。技術はもちろん、業務・人材管理も含めたモデルケースになることで、多くの企業が抱える課題解決の一助になれたらと考えています。
- 設立:
- 1965年1月
- 社員数:
- 2,169名(2024年7月1日時点)
- 事業内容:
- 医療用機器の日本国内の販売およびサービス