課題
- 個を軸とした「ヒト戦略VISION」とそれを促進するデジタル技術の在り方を検討
- 急激な変化からマネジメント難度が高まり、HRから現場へのサポートが必要だった
活用法
- 情報を一元化し、現場マネジメントが各種データにアクセス・活用できる環境を構築
- 手作業でデータ加工・資料作成している作業時間を圧縮し、仕事時間を創出
- HRデータを活用したピープルアナリティクスによるビジネス貢献
効果
- 従来であれば、断絶していたり一部に閉ざされていた情報の可視化を全社に展開
- 現場の現実的な活用に即した、デジタル環境の提供による高い利用率の実現
- より個にフォーカスできる人事施策の企画・運用を実現
本田技研工業様は、ヒト戦略VISIONによる「企業変革を加速させるためのヒト・カルチャーへの転換・進化」を掲げ、“Hondaの組織・ヒトをイノベーティブに”という考えから、ヒト・組織のパフォーマンス向上に向けてHRDXを進めています。
今回は同社のDX推進やその中でのカオナビの活用、今の時代における人事としての果たすべき役割などについて、コーポレート管理本部 人事統括部 人事部 人事DX推進課 主任 デジタルHRコーディネーターの鈴木翔様にお話を伺いました。
※本記事は2023年11月10日開催の当社セミナーの内容をもとに構成しています。掲載内容は全て当日時点の情報となります。
HRDXの推進により、“個”を軸として成長できる組織へ
––カオナビ導入に至る前提として、はじめに本田技研工業様のDXに対するスタンスを教えてください。
競合環境や社会全体の変化が加速する中で、当社では自社、他社、市場・顧客などを含めたステークホルダーの視点に立ち、未来志向による戦略を立案しています。
Hondaでは、組織のトップダウンではなく、「自分はこうしたい」という個人の想いを変革の軸としており、そうした文脈で生まれたのが「ヒト戦略VISION」です。
「ヒト戦略VISION」では、「Hondaの組織・ヒトをイノベーティブに」をキーワードに掲げ、入社前~配置・育成~退社など、点ではなく面で施策を進めていくよう意識しています。
そうした、多角的な施策において企画・提案・安定運用・効果検証などの各場面でHRDXも活かしながら、あの手この手を使って推進しています。
––HRDXの推進で実現したいこととは何でしょうか?
データ/HR Techの活用から“得手な仕事”を見出し、全従業員・組織の可能性が最大限発揮できる環境の実現に向けて、個人と組織双方に対して成長を促す人事を実現していきたいと考えています。
そのために、「人間力」の拡張・獲得につながる仕掛けをHRDX・データから導けないか、と考えています。
もう少し具体的な例でお話しします。
例えば、仕事上で上司がメンバーに対して「このスキルを伸ばすと今後のキャリアにつながるよ」とアドバイスをする上司と、そうでない上司がいたとします。すると同じ能力を持つメンバーでも成長の度合いに差が生まれてしまう。つまり、個人の成長を各人に任せると、必ずどこかでギャップが生まれてしまうのです。
デジタルを活用して個人の可能性や成長の機会を選択肢として提示することで、より上司がアドバイスできる、しやすくすることを人事が支援できれば、より多くの可能性が発揮できるとともにHondaで働く意義も豊かになると考えます。
現実の現場で実現できることですので、必ず実現していきたいです。
以下に、Hondaの言葉をHRDXとして解釈し、大切にしているものを共有させていただきます。
使いやすいからこそデータ活用を日常業務に落とし込める
––お話しいただいたHRDXの一環として、タレントマネジメントシステムであるカオナビを導入したきっかけを教えてください。
近年はオンラインとオフラインが入り混じったハイブリッドな働き方の普及、転職増加による中堅社員の減少、就業環境や価値観の急激な変化などにより、マネジメントの難易度が急激に高まっています。さらに、内製システムの老朽化などが重なりました。
そこでは、解像度の高い情報を提供できる情報基盤がないことや、手作業でメンバーの育成計画やマッピング・資料作成をする必要があり、負荷が高いなど、マネジメントが本業に集中できるための支援が必要と考えました。
––タレントマネジメントシステムは複数ありますが、その中でカオナビを選んだ理由を教えてください。
システム設定がしやすく、操作性やUIがシンプルで分かりやすかった点が大きな理由です。
どんなに機能が優れていても、使ってもらえなければ、満足するのは導入した人事だけになってしまいます。現場にも使ってもらえることを前提に、使いやすさ・分かりやすさにはこだわりました。もちろん、さまざまな機能を持つシステムを導入する考えもあることは否定しませんが、導入時においては「誰でも機能を使える=直感的に操作できる」ことを重要視しました。
––現場での活用を重視されたということですね。以前導入していたシステムとの違いはどのような点が挙げられますか?
カオナビ以前に導入していた人事検索のシステムでは、データ項目の追加や文言変更など、開発に時間がかかっており、ビジネススピードへの追随が難しく、人事情報の一元管理ができていませんでした。
そうした中、新しいシステムへの切り替えにおいて、カオナビであれば、多様な人事情報を一元化できる、さらに現場でその情報を活用できる機能が備わっているため、新しい開発が必要ないことから、現場・人事の双方がメリットを享受できます。
マネジメントからすれば、好きなタイミングで必要な情報が閲覧・ダウンロードして使えます。
また、人事からすれば、「人」の情報という機密性の高いものをメール等で送付する必要がなくなるため、漏洩リスクも下げられます。
人事・現場の双方の困りごとにアプローチできること、使いやすさと柔軟性によって業務負荷を軽減し「本業に集中できる環境」を提供できることから、カオナビを選択しました。
人事担当者のアイデア次第でカオナビの可能性は広がる
––カオナビの機能を使って、人材情報をどのように活用していますか?
複数の条件でマトリクス図を作成できる「シャッフルフェイス」機能を使って、評価と等級を条件に分析し、異動配置の検討に用いています。条件項目を設定するだけで条件に応じた社員のマトリクス図を簡単に作成でき、ビジュアルで見える点がうれしいですね。
加えて、マトリクス図には従業員の顔写真が表示されますので、一人ひとりの顔を見ながら異動検討できる点も魅力です。対面を大切にしている中で「顔(写真)」を見ながら、疑似的にでも従業員一人ひとりと向き合う機能は、文化にマッチしていると感じます。
他にも、膨大な人材情報をキーワード検索や条件設定で絞り込める点も便利です。
1on1(=Hondaでは2WAY)のコメントなども検索でヒットするため、面として情報を取得することはもちろん、点として「ニッチな経験・スキル」や「経歴」などを探れるため、さまざまな用途に活用しています。
従来は、上司しか知らなかった情報をキーワード的にデータとして蓄積・活用できる。暗黙知で終わらず、会社にある「知」を最大限活用するための仕掛けをデジタルで、現場に違和感なく活用してもらうことはHRDXとして、とても重要なことではないでしょうか。
––カオナビを会社で活用してもらうにあたり意識していることはありますか?
タレントマネジメントシステムは人事担当者自身がアイデアを持って運用することでさらなる真価を発揮するシステムだと感じます。
多様なデータを活用した業務改善・効率化や、集約したデータの掛け合わせにより、現場の課題をどう読み解くのか? その先にある本当のニーズは何なのか? の検討を実践できる環境整備をさらに進めていきたいと思っています
変化が激しい時代ですので、当然アジャイル思考で柔軟に運用していく必要がさらに増えてくるでしょう。そのため、より有用な施策立案や運用につながる可能性を高めていきたいです。カオナビを情報が見えるだけのツールで終わらせるのはあまりにもったいないですから。
組織の成長は従業員一人ひとりの夢からはじまる
––今後、カオナビの運用にあたって展望はありますか?
カオナビに集約した人材情報から、現場でより建設的な議論・ワイガヤにつながる環境を整備すること。「ヒト・組織のパフォーマンス向上に寄与するHRDX」を実現したいですね。
具体的な例をお話しします。
1つは優秀な従業員の傾向分析です。「優秀な従業員が人材として成長するきっかけとなった経験は何か?」をデータで可視化することで、人材育成プランや異動配置プランをブラッシュアップし、従業員の成長速度を加速させることができると考えています。
そこでは、キャリアパスやスキルデータなどがさらに必要だと考えます。
もう1つは「見る・知る・感じる」といった、仕事の中で培われていく経験や技術の継承をデジタルで支援していければと考えています。長年培ってきた「知」をより活用できる仕組みを構築し、実務だけに使われる「知」ではなく、ヒトとヒトの関係性構築にも活用される「知」につなげていきたいですし、利用用途に応じて整えていければと考えています。
––データを利用用途に応じて整えていくという考え方は個・組織を重視する本田技研工業様ならではのアイデアですね。
仕事の成果や個人の成長は個人の内発的動機と深く紐づいていると私は信じています。
個人の内発的動機は、夢が大きく作用しているのではないかと。Hondaのグローバルブランドスローガンに「The Power of Dreams」という言葉があるように、従業員一人ひとりの夢が育つ・持てることで組織も成長していく、その環境によりHondaで働く意義が豊かになる。それは働きがい・生きがいにつながることだと思います。
だからこそ、個人の夢が育つ土壌となる働き方やキャリアを常にアップデートしていくことが今後さらに求められてきます。そこに人事のやりがいがありますので、カオナビをはじめとして、HRDXというアプローチによって、従業員の夢が実現することをサポートしていきたいですね。
- 設立:
- 1948年9月
- 従業員数:
- 単独33,065名(2023年3月31日時点)
- 事業内容:
- 二輪車、四輪車、パワープロダクツをはじめとしたモビリティ事業など