キャッシュレス市場が拡大している中、クレジットカード事業を中心に様々な決済サービスやシステムを提供する三菱UFJニコス株式会社。競争激化する業界にあって人材活用を推進すべく、2019年に従来までのExcelベースからDX化を図り、人事評価を大きく前進させた同社では、「カオナビ」導入前後で評価運用に大きな変化があったとのこと。その経緯や効果、今後の展望について、人事部人事グループ 上席調査役の小笠原紀之様、調査役 山田順子様、同 近藤正樹様、籾山明子様に伺いました。
*本記事の掲載内容は全て取材時(2022年12月6日)現在の情報に基づいています
Excelから「カオナビ」へ まずは人事評価のクラウド化を
――「カオナビ」導入以前は人事評価をExcelベースで運用しておられたそうですね?
山田様:
そうです。2018年頃から「人事評価のクラウド化」を目指してDXによる人事評価運用の効率化を検討開始し、翌年、「カオナビ」を導入しました。それ以前はExcelとメールで人事評価を運用していて、各部署・人事部共に相応の作業量が発生し、運用・管理上の負荷が大きかったです。何しろ評価対象が3,000名以上と多いですし、職制や等級によって評価手法と内容が異なっているため、評価シートの種類が膨大になっていたんです。さらに、入力する人によっては、古い評価シートのひな形を使用していたり、シートに設定していた計算式を崩してしまっていたり、Excelのバージョンが違う環境で保存した結果エラーが出てしまったりということが非常に多く、入力された評価結果を受領してからの内容確認とデータ集計作業に相当時間を取られていました。
籾山様:
人事部では、過去の評価結果をExcelで保管していたため、必要なときに個人の評価ファイルを探すのに時間がかかっていました。また個人別の評価シートの提出確認は管理が煩雑で進捗が把握しにくく、一元管理の必要性を切実に感じていました。
使いやすさで選んだ「カオナビ」 さらに導入には念入りな準備を
――大きな転換ですから、導入には神経を使われたのでしょうね。
山田様:
導入にあたって一番重視したのは、使いやすさですね。人事にとっての設定のしやすさといったこともありますが、3,000名以上の人が使うわけですから、何より従業員にとっての使いやすさが重要でした。他システムと比較検討して使いやすさで「カオナビ」を選び、2019年10月に運用を開始しました。運用開始にあたっては、マニュアル作成はもちろん、各部署の代表者には1日かけて研修を行い、とくに実際の評価フローを理解してもらえるように研修内でデモ画面での実践を行うなど工夫しました。
籾山様:
実在の社員の評価で研修することはできませんので、被評価者、1次評価者、最終評価者のダミーアカウントを3点セットで作成し、ロープレの環境を用意しました。およそ70の部拠点に3種類、全部で200以上のダミーアカウントを作成することとなり、準備は大変でしたが、実際のカオナビ画面を確認することで理解が深まったと思います。その成果か、導入直後はそれなりに問い合わせがありましたが想定内で、運用開始後の最初の評価も大きなトラブルなく無事に対応することができました。運用5期目にあたる今期はだいぶ定着していると言っていいと思います。
近藤様:
私は当時拠点側の代表者の一人として研修を受けた立場でした。被評価者の操作に加え、様々な職制の方が所属するチームのリーダーを担っていたため、評価者としても職制毎の評価フローを理解し、評価が行えるか当初はかなり心配でした。しかし、ロープレで実際操作するカオナビ画面を見ながらわかりやすくレクチャーしてもらい、メンバーの職制毎に評価フローを理解することが出来ました。標準的な操作説明だけでは理解しきれなかったと思うので、ロープレができたのは、非常に良かったです。
革新的な最適化から将来像も見えてくる
――スマートレビューで評価の一括管理ができているのですね。何が変わりましたか?
小笠原様:
当社では昇格や賞与にかかわる評価フローが複数あり、以前はそれぞれExcelのシートを分けて作成していました。更に職制・等級別に細分化していたので、Excelシートが数十パターンあり、煩雑な管理に加えて各部署との個別やり取りにも大変な手間がかかっていました。それが「カオナビ」では対象の職制・等級に合わせて表示内容を変えることができるので、シート自体の管理が簡素化できました。また、一度設定してしまえば各部署へ個別連絡することもなく、一斉に評価実施のお願いをするだけで済むため、進捗管理も大幅に軽減されました
籾山様:
とくに、各部署にて確定された評価のチェックとデータ統合の手間は大幅短縮されましたね。これまで個別のExcelファイルにある評価結果を、マクロ機能を使って1ファイルに統合する過程では、エラーが出るたび手を止めて一つ一つ確認しなければならず、地道な修正に2週間ほどかかっていましたが、スマートレビューの一元管理でその工程が全く不要になりました。これは当部のなかでもデータ統合を担当する私だけが恩恵を受けた点かもしれませんが、 私の中では革命が起きたと感じました(笑)
近藤様:
スマートレビューでの評価は従業員にとっても入力しやすく、内容も充実したと思います。毎年更新される評価シートに前年の評価シートへのリンクを設定しているので、昨年の自身のシートを振り返りつつ、成長のために何をすべきかを意識しながら記入できるようになったと好評です。また、上司がメンバーの進捗管理を行う際に、評価フローが完了していない人は誰かが一目瞭然になり、非常に楽になったという声が多いですね。特に評価運用は期末・期初の繁忙期と重なるため、効果は大きいと感じています。
小笠原様:
スマートレビューでは他にも「360度評価」や「自己申告」を運用しています。360度評価は2022年度から対象者をマネジメント層から昇格候補の一般社員にまで拡大し約5倍になりましたが、スマートレビューを活用することでマネジメント層を対象としていた「カオナビ」導入以前よりも短時間・省コストでスムーズに運用できています。また、社員の業務状況やキャリア志向を申告してもらう自己申告も従来はExcelで運用しており、作業が煩雑でした。これもスマートレビューを活用することでスムーズに収集・管理ができて、さらに確認したい項目も簡単にピックアップできるようになりました。
また、評価や自己申告の結果は、プロファイルブックを活用して各部拠点長と共有しています。これも以前は各部署別に約70通の個別メールを作成・Excelシートを添付し、再鑑した上で送信していました。いまは「プロファイルブック」へExcelファイルをアップロードし、全員一律の簡単なメールを一斉送信するだけで済んでいます。今は各部署の評価者と人事部での情報共有が中心で上司部下間のコミュニケーション活性を目的としていますが、今後は本人のキャリア経歴や志向なども公開し、キャリア形成支援にも活用していきたいですね。
自律的キャリア形成のためのコアシステム
――今後さらに活用を進めたいことは何でしょうか。
近藤様:
まずはボイスノートのさらなる活用の幅を広げていきたいと考えています。評価確定後にボイスノートで「納得感のある評価を受けられましたか」「結果のフィードバックはありましたか」といったアンケートを取っており、忌憚のない意見が上がってはいますが、もう少し深堀りして聞きたいですし、ほかにも活用できるシーンがあれば積極的に使っていきたいですね。またプロファイルブックでスキルや保有資格を開示して自分の強みをアピールする場にもできるのではないか考えています。人材育成の方針として「自律的なキャリア形成」を掲げていますので、その方針に沿ったツールとしても活用できるといいと思います。
籾山様:
導入時から運用担当を務めてきましたが、「カオナビ」の印象が多くの社員にとって「評価ツール」でしかないことはもったいないと感じています。人材情報を一元的に閲覧できるプロファイルブックこそ「カオナビ」の魅力的なところですから、本人の趣味や特技をキャリア情報などと合わせて公開し、SNSとまではいかないですが、身近に使ってもらえるようにしていきたいですね。異動してくるメンバーの情報を事前に見る、といったちょっとした使い方ができると、コミュニケーションツールとしても役立つと考えています。まずは人事部内でトライアルを行い、効果を確認しながら全社展開していく計画です。
山田様:
運用開始から3年以上が経って改めて感じるのは評価フローの効率化だけでなく、目標設定から中間時点の確認、評価確定後のフィードバックまで全体の流れが見える化されたということです。評価者も被評価者も全体から詳細まで見える化されることで取り組みが明確になり、評価の納得感の向上にもつながっていると感じています。また、評価だけでなく、自己申告やキャリアビジョンに関する情報もカオナビで収集するようになって、情報を蓄積していくことでキャリア形成に深く関わる異動の高度化などにも活用して行ければ、会社にとっても社員にとっても良いことが増えると期待しています。
小笠原様:
人事情報というのは秘匿されがちなものですが、会社の目指す「自律的なキャリア形成」のためには、今後、本人はもちろん、アドバイザー・サポーターの上司、経営層にも人材情報をオープンにしていく必要があると考えています。まずは自分自身でキャリア形成に必要な情報を確認し、上司とも簡単に共有できるようにするためにも情報を積極的に蓄積し、それを開示していくことでキャリア形成を図るための「コアなフロントシステム」として「カオナビ」には今までに以上に活躍してもらいたいと期待しています。
- 設立:
- 1951年6月7日(旧 日本信販)
2007年4月1日(三菱UFJニコス)
- 資本金:
- 1,093億1,200万円
- 社員数:
- 3,384人(2023年3月31日時点)
- 事業内容:
- クレジットカード業 他