2020年に時価総額1兆円を目指してグローバル戦略を加速させている日清食品ホールディングス株式会社。「グローバル経営人材を200名育成することが目標達成のカギ」と人事部人材開発室で主任を務める大西剣之介氏は断言します。目標に向かって邁進する日清食品HDの人事戦略でカオナビが担う役割とは?
日清食品HDが現場で実践するカオナビ活用術を弊社取締役・佐藤寛之が伺いました。
日清食品HD流タレントマネジメントは 「人材を計画的にプールしておく」こと
佐藤寛之(以下、佐藤) 最初に日清食品HDの「タレントマネジメント」の考え方を教えていただけますか?
大西剣之介(以下、大西) 実はあんまり難しく考える必要はないのではないかと思っています。結局、必要なポストができた時にそのポストに相応しい人材を育成できているかどうか、この点に尽きるものだと。必要になった時に活かすことのできる人材こそがまさに「タレント」なのだと思います。例えば「明日から●●で事業展開する」となった時に「見合った人材が誰もいません」では、「タレントマネジメント」ができていないということになります。つまり「タレントマネジメント」とは、「今後必要となる人材を計画的にプールしておく」ということなのではないでしょうか。
佐藤 「計画的に」ということがポイントですね。この点についてもう少し突っ込んでお聞きしたい。例えばベンチャー企業を中心に優秀人材を育てるために「あえてハードルの高い業務・経験を積ませる」という企業もあります。御社ではそのような「抜擢人事」に近いことは行われていますか?
大西 それは間違いなくありますね。やっぱり評価の高い人材にはチャンスも多く与えたい。人事としても考えているし、経営者自身が「意欲的な人材にはバッターボックスに多く立てるチャンスを与えよう」と考えています。
佐藤 会社としてチャンスを与えるカルチャーがあるということですね。日清食品HDという会社がそういう人材を育てていくために一体何をしているのか。とても興味がそそられます。
2020年に時価総額1兆円。日清食品HDが目指す 「グローバル経営人材を倍増させる」人事戦略
佐藤 そこで是非とも伺いたいのが日清食品HDは人材戦略をどのように定義して、実際に動かしているのかということです。
大西 それを説明するためには弊社が会社として中長期的に何を目指しているのかを説明する必要があるかと思います。弊社は2020年に時価総額「1兆円」を目指しており、これを中期経営計画で掲げています。現在(2016年12月当時)の時価総額が7,100億円程度ですので、あと3年でおよそ3,000億円積み上げなくてはいけません。海外の営業利益比率でも30%以上を目指しており、本気でグローバル化にチャレンジしております(※スライド1)。その実現のために弊社として掲げた5つのことがあり、それが「カップヌードルをグローバルブランドにしよう」や「お菓子にも力を入れましょう」(※スライド2)ということです。その中でも基盤となるのが「グローバル経営人材を育てていこう」という部分ですね。グローバル化を推進するうえで中核となるだろう人材を中途で採用したり、新卒を育てることで育成していこうということです。
佐藤 大西さんも中途入社ですよね?
大西 はい。コンサルティング会社から転職して日清食品HDに入社したのが2012年ですから、もう4年になります。この4年間は人事制度の仕組み作りから、中途採用、ヘッドハンティングと人事業務には一通り関わらせていただきました。
佐藤 日清食品HDでは毎年どれくらいの人材を中途で採用していらっしゃるのですか?
大西 実はここ2~3年で毎年100名近くを中途で採用しておりまして、執行役員も約半分が中途採用した人材なんですね。
佐藤 御社のような大きな企業が毎年中途で100人以上を採用しているという事実が少し驚きでもあります。
大西 私が入社した2012年頃から「グローバル企業を目指す」という声が一段と大きくなって、それを実現するために実際の人事戦略も動いているという感じですね。
佐藤 経営戦略と人事戦略がシームレスにつながっている気がします。
大西 弊社では「グローバル経営人材」を「それぞれの国の文化・環境に柔軟に対応し、経営理念に基づいてビジネスを拡大できる人材」と定義しています。そしてそういった人材に求める資質を「決断力」「ブレークスルー力」「チーム・マネジメント力」「後継者育成力」「アイデア・プロモーション力」「構想力」という6つの観点から評価しています。要するに、自分で面白いことを考えて人を巻き込みながら決断力をもってやり切れる人材かどうか、ということですね。
200名のグローバル経営人材をカオナビは一瞬で「見える化」する
佐藤 なるほど。ではそういった「グローバル経営人材を増やす」という目標に対してどのような数字をKPIに掲げて動かれていらっしゃいますか?
大西 2020年までに経営人材プールを200名に拡充することが具体的な目標です(※スライド3)。現在はまだ100名程度に留まっているので今後4年かけて倍にしていく必要があります。200名いなくては時価総額1兆円を達成できるだけのビジネスはなしえないだろうというのが数字の根拠となります。そして「現時点で、そもそもどのような人材がいるのか」ということをカオナビによって可視化しています。
SHUFFLE FACE(シャッフル フェイス) 機能(※)で人事会議が活発&スムースに
佐藤 カオナビは御社の経営戦略と人材戦略に紐づけて使用されているということですね。大変ありがたい話です。では具体的にカオナビをどう使われているのでしょうか?
大西 主に、安藤宏基CEOを含む経営陣と定期的に経営人材プールについて協議する会議があるのですが、その際に活用しています。その際、経営陣に見せる資料は、縦軸を年齢、横軸を等級や評価ランクといった形で作成しています。
佐藤 シャッフル・フェイスをうまく使われている印象があります。
大西 そうすると40代には高い評価の人材がこれだけいるから目標数には足りている、逆に30代では足りていないことが瞬間的にパッとわかるんですね。そのため、議論も活発化します。特に会議では、「どうしてこの人材が高く評価されていないのか?」といったことが問いやすくなり、人事は「こういう理由です」とその理由を具体的に説明するといったやりとりがよくあります。
佐藤 なるほど。顔写真を見ながら議論することで経営者も「なぜそう考えたのか」ということを問いやすくなる、と。
顔写真を見ながら、トップ自らタレントマネジメントを行う
大西 はい。顔写真は重要だと思っています。今、弊社には約300名の管理職がいます。でもトップに名前だけ見せても……。
佐藤 わからない。
大西 そうなんです。名前や所属情報だけだと「誰、それ?」となります。でも顔写真があったら「あ、彼ね」という感じですごく簡単に認識できるようになります。それに経営者は、「今よりも会社を成長させよう」という視点から物事を捉えているので、新しい事業を行うときに「それを任せられる人材はいるのか?」ということはとても大きな関心事なんですね。そこでカオナビを見てもらいながら「現在のタレントプールはこういう状況です」と話すと、その時々の人材状況をすんなり理解され、スムースに判断してくれます。気になった社員の詳細をその場で確認できるのも議論をしやすくしているのかもしれません。
佐藤 カオナビは元々「顔と名前の一致によって、マネジメントの人材マネジメントへの関与を最大化する」ことを目指して開発したサービスですので、そう使っていただけるのは嬉しい限りです。
スピード感を重視して カオナビを選んだ
佐藤 最後にカオナビを選んだ理由を教えていただけませんか?
大西 タレントマネジメントシステムを入れなくてはいけない、という話はしていました。現場ではトップ層から「中国語できるのはどんな人材だ?」「この国のマーケティングダイレクターにはどういう人材がいるんだ」と突然聞かれることは日常茶飯事です。でもその話題を振られたときに「これから調べます」だとスピード感が遅くなってしまいます。だからトップ層から問われる重要な話題にその場でサッと答えられるようなシステムを探していました。
佐藤 カオナビ以外のサービスやシステムは検討されなかったのでしょうか?
大西 最初は給与計算などで使っている基幹システムとの連結を考えて、人事系の基幹システムを入れようと考えていました。でも話を聞いているととても高くて、使い勝手も悪い。一方でカオナビは指標も柔軟に作れて、使い勝手もいい。それに安い。当初の目的をかなえるならカオナビだろうと考えてカオナビに決めました。
佐藤 総合的なコストパフォーマンスがよかった、ということですね。コストに関しても、他のサービスと比べて月額での運用コストは圧倒的に安いと思います。ところで「クラウド」ということもあってセキュリティを気にされるお客様もいらっしゃいますが、この点はどうでしたか?
大西 人事部内でも「大丈夫か?」という議論は散々しました。でも最終的には当時(2014年)既に大手企業や金融機関が導入しているという実績や御社がプライバシーマーク・ISMSを取得されていることが安心材料となり、すんなり導入できましたね。
佐藤 当社もその点は普段からとても気を使っています。世の中一般的にも「クラウド」の安全性や利便性が認知されてきたという感覚があります。さて、ちょうど時間となったようですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
大西 こちらこそどうもありがとうございました。
日清食品ホールディングス株式会社人材開発室 主任 大西 剣之介
2006年4月
デロイトトーマツコンサルティング株式会社入社。株式上場支援を2年間担当したのち、人事コンサルティング業務に軸足を移し、人事制度設計、総額人件費管理・適正化、各種研修企画Pjtに従事。
2012年4月
日清食品ホールディングス株式会社入社。人事担当者として、人事制度の運用・改定や人件費抑制施策の導入、中途採用、教育体系の再構築、研修講師、タレントマネジメント、組織風土改革、キャリア面談業務に従事。
保有資格
DiSC認定講師 国家資格キャリアコンサルタント CDA(Career Development Adviser)
株式会社カオナビ取締役 佐藤 寛之
2003年4月
株式会社リンクアンドモチベーション 入社。企業向け組織変革コンサルティング部門にて営業を担当。各種人材育成プログラム、ビジョン構築/浸透プロジェクト等をセールス。
2008年5月
シンプレクス株式会社 入社。人材開発グループ責任者として、新卒・中途採用/人材育成/人事評価/人材配置などの人材開発業務に従事する。2011年10月 株式会社カオナビ 取締役就任。
2012年4月
カオナビ事業を本格開始。人材データベース「カオナビ」の営業/マーケティングを統括、企業への導入提案を進める。