太陽光発電システム、空調設備などの住宅リフォーム事業を手掛け、幅広い分野の施工技術を持つ株式会社NEXTAGE GROUPは、社員の力を引き出すため、スキル把握と育成に向けて「カオナビ」を導入、社員情報の一元管理化と活用を進めています。どのような効果が出ているか、情報セキュリティ課システム・エンジニアディレクター兼CIOの竹内玄哉(たけのうちげんや)様、営業統括本部営業管理課主任の塩谷奈津美(しおたになつみ)様にお話を伺いました。
*本記事の掲載内容は全て取材時(2022年11月9日)現在の情報に基づいています
非効率な業務や人為的なミスの発生から始まった社内変革
――「カオナビ」を導入した経緯についてお聞かせください。
竹内様:
以前、当社では業務別・部署別のシステムを利用しており 、システム間の連携もなく部署間での二重入力などの非効率な業務や人為的なミスの発生が問題となっていました。それに加え、社内システムまわりの管理を担当するのが私一人であったことであらゆる管理体制が機能せず、必要に迫られるかたちで、2018年ごろからDXに着手することにしました。
まずは、部署間の業務を一元管理、そして顧客管理や営業活動の効率化をするいわゆるSFA分野のシステムを刷新。そうして必要最低限のシステム整備がひと段落したところで、社員のスキルや育成関係の情報把握のニーズも出てきました。
当時、人事関連の情報管理はExcelや紙で行っていました。ニーズが上がった背景には、データが部署ごとに散在していてどのデータが最新か分からない、そもそも存在していない情報がある……と、もともと多くの課題を抱えていたことにあります。
「情報を一元的に管理できる仕組みが欲しい」という声は現場からたびたび上がっていましたし、人的資本経営の観点からも必要だろう、ということで、“DX第3弾”としてタレントマネジメントシステムを導入することにしたんです。
煩雑だった資格管理の手間が激減
――2022年4月の導入から半年ほど経ちました。「カオナビ」ではどんな情報を管理されているんですか。
塩谷様:
「カオナビ」で管理している情報の種類は多岐にわたります。データベース機能「プロファイルブック」は蓄積した社員の情報をまとめて表示できるので、とにかくここを起点に一元管理をしようと、ある情報はなるべく全て「カオナビ」に集めています。現在、情報カテゴリの数は10を超えています。
基本的な情報としては、まず入社時の書類ですね。履歴書とエントリーシート、新卒社員については1次・2次面接の結果なども一緒に入れてあります。その他住所、生年月日、家族構成といった基本情報、運転免許の情報、使用している車両のナンバーなども入力しています。
営業のメンバーについては、月ごとの受注金額も管理しています。SFAからデータを落とし込むという形です。
管理している情報の中でも、全社公開をしているのは役職と所属部署、それから営業部員については受注実績です。こうした情報をいちばん活用しているのは、実は社長です。社長は各事業部にたびたび足を運んでいるのですが、そのとき参照できるよう、以前は全社員分の営業成績などを印刷して持ち歩いていたんです。ただ、足元では400名あまりと、社員数が増えてきて「紙を持参」に限界が出てきたところに「カオナビ」が登場したので、「社員の情報がすぐに、どこにいても見られる」と喜んでいます。
既存の情報以外に、1on1の内容の記録もしています。以前から月1回を目安として1on1を続けていましたが、面談の記録が残されていなかったり、実施頻度も部署ごとにばらつきがありました。プロファイルブックに面談記録を残すようにしたことで、記録作業の効率化に加え、人事側での実施確認も手軽にできるようになり、実施徹底を促す効果も出ています。基本的には直属の上司が対応しますが、支店長や部長が実施することもあります。その際も直属の上司が残した履歴を確認してから面談に臨めるので、より有意義なアドバイスができるようになっています。
竹内様:
その他、最近では施工関連の取得資格やスキル管理も始めました。取得資格を一覧にして、スキル管理表として活用しています。登録する資格は多岐に亘っていて、一般的な資格のほかに、メーカーから発行される「施工資格」も入力しています。
太陽光発電システムなどの「施工資格」の要件に、設備のメーカーが実施する研修の受講を挙げているケースが多いんです。そのため、研修の受講履歴は重要な情報なのですが、管理は部署や担当ごと、タイミングは気付いたとき…と、即時性や正確性に欠け、そのデータが最新かどうかも分からない状況でした。ところが、2022年6月に施工事業部が分社化することとなり、社員の転籍に伴ってメーカー側に資格の名義変更申告をする必要が出てきました。いつか着手しなくては……と思っていた資格管理を、これを機に始めました。
散在していたり、そもそもなかったりした情報を集める作業は正直大変でしたが、本当にラクになりました。誰がどの研修を受けているのか、この資格の更新時期はいつか、といった情報が社員ごとに管理できるので、期限切れや更新漏れといったトラブルが大幅に抑えられました。保有スキルがすぐ分かるので、現場アサインの際にもよく参考にしています。
相性判断に活用すべく多様な情報を収集
――営業・施工、職種によって管理する情報は異なりますが、どうやって情報収集をされてますか?
竹内様:
職人のアサインの際は、「カオナビ」に集めている取得資格や習熟度といった情報がベースになるので、かなり地盤固めができたなと感じています。次のステップとして検討しているのは、社員の成長やチームビルディングのヒントになる情報はないか、ということです。簡単に答えの出る問いではないのですが、役立ちそうな情報を集めるためにアンケート機能「ボイスノート」が役立つのではと考えています。
例えば、「今年の新卒の中でも、早い段階で頭角をあらわしてきた社員には、接客のアルバイト経験者が多そうだ」という仮説があるとします。であれば、過去1年以上経験のあるアルバイト実績についてボイスノートで集め、経験職種を求人サイトの分類のように整理しておく…、といった使い方です。あるいは、部活の経験について、団体競技なのか個人競技なのか、ポジション、役割はどういったものかを知ることで、その社員がどんなタイプで、どんな人と合いそうかが見えてくると考えています。
ボイスノートは設計が簡単で、聞きたい項目が決まればすぐにつくって、配信できます。特に軽めの情報収集をしたいときには役立ちますね。仮説を立てて情報を集めることで、優秀層の傾向や育成方針の策定に役立つのではないかと考えています。
異動情報に「昇格しなかった理由」まで付記し伝達漏れを防ぐ
――各種申請にもお役立ていただいていると聞いています。
塩谷様:住所変更や結婚、運転免許の更新など、基本情報の更新はワークフローで申請してもらっています。
以前は資格について申請フローがなく、それこそ口頭で連絡されて、どこまで情報共有されているかを確認したり、資格手当が変わるので経理にも連絡したり、とにかく煩雑でした。
ワークフローだと合格証の確認も申請時にスキャンしたデータや写真を添付してもらえばすみます。本人もそのスキルが会社に認識してもらえているとわかるので、申請フローの効率化はもちろん、社員の安心感につながる効果も大きいです。
毎月の異動や昇降格に関しては、履歴を残すという意味で、人事からワークフローに申請を流しています。人事履歴のシートにはそこに追加されていく仕組みですが、たとえば昇格候補として検討したけれど承認されなかったという場合も「却下」という形で、その理由まで残しています。
だいたい毎月3週目か4週目の会議で昇格を決めるのですが、その後に客先でトラブルが起こって昇格取り消し、などということもあります。最終的に異動がなかった場合もその理由までコメントが残っていて見返せるので、関連する幹部はその事情の情報共有ができます。人事履歴についてだけは、本社の人事部しか使用しないワークフローを作成しています。
これを見れば昇格が白紙に戻った件にどういった事情があったのかがわかって、現場社員にその事情を伝えることもできます。
1週間かかったイベント準備の手間が一瞬で終わるようになった
――シャッフルフェイスはご活用いただいていますか?
塩谷様:社内イベントの実施の際に重宝しています。
年に1回くらい社内イベントを開催していて、最近盛り上がったのが「同級生対決」。これは所属会社にかかわらず、営業マンが同学年のなかで売上金額を競うというイベントです。営業以外のメンバーは同学年の営業のなかで1位2位3位を当てにいくというもので、その候補を選ぶのに活用しました。
縦軸に生年、横軸に部署を置いて盛り上がりそうなメンバーの集まっているところを候補にするのですが、以前は検討情報をExcelで作成し、データを又借りして資料をつくっていたため「この社員の生年が違う」など、精査まで含めると1週間くらいかかっていましたが、シャッフルフェイスだと一瞬です。
イベントの中身は毎回同じというわけではなく、新しい要素を加えて昭和生まれゾーンと平成生まれゾーンで競ったり、同年代以外の対決を検討する際も、ベース資料として眺めるものがあると役立ちます。
情報を集めてチームビルディングに活かしたいですね。
定量と定性の評価情報を集約し一覧性が高まる
――スマートレビューではどのような情報を管理されておられるのでしょうか。
竹内様:営業の評価は売上で見られますが、施工も数値化しています。工事に携わった内訳について、社内で分類があって、たとえば屋根の工事に班長で入ったら点数1とか、1か月の稼働をポイントで集計しています。その実績も「カオナビ」に入れます。会議で「もうちょっとここで働けたんじゃないか」といった分析に使っています。
また、定性面の評価の情報も見られるようにしています。たとえば挨拶をきちんとしているかが「できている」「あまりできていない」といった選択肢を用意して、自己評価と他己評価を入れています。最終的にその合計と、工事実績の集計データをあわせて評価に使っています。
評価がなかなか数字化できない間接部門についても定性面の評価の資料づくりを始めました。こちらも自己評価、上長評価、支店長の他己評価を合わせて記録し参考にしています。
チャートボードで月末の資料作りが不要に
――人事統括の立場からよく使われるかなと思うのがチャートボードですが、ご活用されていますか?
塩谷様:もともと役員からの依頼で、男女比とか職種比、入社勤続年数割合といった諸々のデータを、月末に人事がExcelで資料をつくっていました。
社長はそういう資料も紙ベースで持ち歩いていましたし、いっときはPDF化してGoogleドライブに入れていましたが、そのデータの更新も大変でした。今は「“カオナビ”を見てください」ですみますから、資料作成が不要になりました。
あわせてダッシュボードで推移をみられるようにもしています。経年での変化や傾向を把握して将来に活かせるよう、データ収集を進めているところです。
今後、「カオナビ」でやっていきたいことは?
塩谷様:社員に「カオナビ」が浸透しきってはいないので、何か申請するならまず「カオナビ」を使う意識が社員の頭の中に出てくるようにしたいですね。
タレントマネジメントの観点からは、人事評価に直結するデータの活用を進めたいです。
まだ最終的にこの人がA評価です、という結果まで確定させるところまでは仕込んでいません。中間段階での活用が主体ですが、将来的にはスマートレビューの評価フローに最終的に確定した評価結果まで入れられるようにできればと考えています。
竹内様:ワークフローの拡充をいちばんに考えています。たとえば交通事故を起こしてしまったときの報告はまだ紐づいていません。事故を起こしたときの心理状態でお客様のところに行くのはどうなのか、ということもあります。それからさきほどの同級生対決の結果も入っていないんです。賞罰の履歴なども閲覧できるようになると、さらに良い使い方ができるのではと感じています。
ポジティブなところから公開情報の範囲も広げていきたいです。前向きな情報が整っていけば、「カオナビ」で「こういう表彰されている人がいるから営業のネタ何か聞けるかな」という社員同士の交流につながるのを期待しています。浸透と活用の両輪で回っていくようになる。それが理想です。
- 設立:
- 2010 年6月
- 資本金:
- 1000 万円
- 社員数:
- 570名 (グループ計、2022年11月末日時点)
- 事業内容:
- 住宅リフォーム事業