モビリティや物流、住宅など岡山の人々の暮らしを支える企業9社で構成されるSUENAGA Groupの中核をなすのが、トヨタ車ディーラーである岡山トヨペット株式会社です。アクアやプリウス、ハリアーといった人気車種の販売から点検、修理まで、地域の人々のカーライフをサポートする同社では、2020年に着手した人事評価制度改革の一環としてカオナビを導入、活用しています。導入から運用までを担う経営企画室総務グループGMの岩永奏一様に、選定の経緯から具体的な活用方法について伺いました。
*本記事の掲載内容は全て取材時(2022年7月25日)現在の情報に基づいています
人事評価制度改革を機にデータ蓄積・分析にも注目、システム化を敢行
――カオナビ導入のきっかけは人事評価制度の改定だったそうですね。なぜ、制度改革に着手されたんですか。
従来の評価制度は少なくとも30年前からあった古いもので、形骸化してしまっていたのが大きな理由です。
当社には営業や整備、受付など職種の数が10以上もあるのですが、評価シートは4種類にとどまり、評価項目もいまひとつ業務の実態に合っていませんでした。また、紙ベースで評価業務の運用をしていたので、20以上の拠点への発送・回収・集計作業が半年ごとに発生していました。しかも、こんなに手間がかかる割に、評価結果が考課の際にあまり活用されているとは言えなかったんです。加えて、評価基準が実績(販売台数)に偏り過ぎている職種などもあり、時代にそぐわないということで、改革に着手することになりました。
評価制度改定と並行して検討したのが、人材情報の管理方法です。それまで人事情報を一箇所に蓄積するという文化がなく、人事に関連するいろいろな情報が各担当者や部署内でそれぞれに管理されている状態でした。適切な評価や配置検討の実現には、その時点の評価だけでなく過去の評価履歴や資格情報など、さまざまな情報が必要です。そこで、評価の効率化と人事情報の一元管理を両立できるツールの導入を検討することになりました。
そんな時に、「便利そうなツールがあって、自社でも導入を検討している」とグループ会社の役員が紹介してくれたのがカオナビです。調べてみると、評価業務のワークフローが組めて、データも蓄積できるツールはカオナビ以外に見当たらなかったこともあり、カオナビに直接コンタクトして当社が新しい評価制度でやりたいことを実現できるかどうかを確認してもらいました。その結果、カオナビに新しい評価制度を実装できそうだと分かり、導入を決めました。
権限設定機能で公開範囲を自在に制御。閲覧対象「本人のみ」も可能
――確かに、評価制度は企業ごとに大きく違ってくるので、システムでは再現しきれないといったお悩みもよく伺います。カオナビの活用はどのようにスタートしましたか。
まずは社員の入社日や生年月日などの基本情報に加え、保有資格や異動・評価履歴など、保有している情報をデータベース機能「プロファイルブック」に入力しました。これは正社員、派遣、パートなど、雇用形態を問わず、全ての職員が対象です。当社ではあらゆる職種にさまざまな雇用形態が混在しているので、組織の力の実態を把握するには全てのスタッフのデータを蓄積する必要があるんです。また、店舗だけで17と拠点数が多いこともあって、社員同士でも「名前は聞くけど顔は知らない」といったケースが多く、顔写真も必須としました。
カオナビを見ればあらゆる情報が最新の状態で確認できるというのは、想像以上に便利だと感じました。当社のようなカーディーラーでは各種運転免許や整備関連の資格のほか、保険関連の資格など必要とされる資格が多岐にわたります。この人は今どの店舗に所属していて、どんなスキルを持っているかがすぐに把握できるようになって、とても便利になりました。
全社員に公開している情報は顔写真と職種、所属、入社日程度なのですが、顔と名前を一致させたいニーズはあるようで、一般社員もよくアクセスしているようです。
――各項目の後ろに(本人、上長)といったカッコ書きがありますが、これはどんな意味ですか?
導入当初、「この情報は誰が見ているのですか?」という問い合わせが非常に多く、公開範囲が分からず不安を感じている人が多いことが分かりました。確かに、閲覧権限は管理者以外確認できないしな……と気付き、項目名に【住所(本人のみ)】【保有資格(本人・上長)】などと閲覧できる範囲を併記し、誰が閲覧可能かが項目ごとにひと目で分かるようにしたんです。
公開範囲(閲覧権限)は「本人のみ」にもできるので、これまで紙で配布していた給与明細もカオナビからの確認に変えました。毎月の印字や配布の手間がなくなっただけでなく過去の明細も自分で確認できるので、問い合わせがかなり減りました。実はこれまで、昇給や賞与の時期になると「先月まで、私の基本給っていくらだったの?」といった問い合わせが必ずあったんです。給与明細くらい自分で保管しておいてよ……とも思うのですが(苦笑)、人事担当で答えるしかなかったので、地味ながらとてもうれしい効果でした。
公開先を自在に制御できる便利な人事情報の“器”ができたので、1on1の履歴や、評価にも活用している自己啓発目標など、他の情報もカオナビに集約していこうと考えています。
評価者が複数となる360度評価もノーストレスで運用できる
――情報一元化のためには「誰に見せるか」の制御も重要ですね。新しい評価制度についてはどのように運用していきましたか。
新しい人事評価ワークフローの構築は、プロファイルブックへの人事情報の蓄積と並行して取り組みました。評価シートの種類を職種に合わせた11種に増やした上で評価項目を刷新し、評価ワークフロー機能「スマートレビュー」に載せました。
ベースとなるMBO評価(期初に設定した目標に対する本人・上長の評価)に加え、管理職についてはランダムに選抜された評価者による360度評価も実施しています。
カオナビは評価シート作成から配布・回収・内容確認や承認が全てシステム上で完結できるので、紙運用の頃から格段に効率化できました。全社員が対象となるMBO評価では3週間ほどかかっていた配布期間が半分程度になった上に、手計算だった総合点も自動計算になり、ミスの心配もありません。
加えて、管理職向けの360度評価も運用がかなり楽になりました。なにせ1人につき評価者は4名、200人もの社員に対する配布・回収・集計が必要で、相当な手間がかかっていたんです。
360度評価ではランダムに選出する評価者に回答先となるGoogleフォームのURLを送るのですが、社用のメールアドレスを持たない社員にはリンクのQRコードを印刷して送付していました。回答依頼も催促も評価対象である上長に知られないよう行う必要がありとても神経を使いますし、1件ずつ進捗確認し、回答結果を別途Excelで取りまとめる作業もありました。メールと紙とExcel、ツールが3つにまたがっていたのが、カオナビでこのプロセスを簡単に、なおかつ秘密裏に完結できるようになり、1週間は工数が圧縮できたと思います。
期間短縮のほか、回収の遅れもなくなりましたし、進捗状況がすぐに分かるので「ちゃんと進めてくれているかな……?」と不安に思うこともありません。進捗の遅い人に催促もできるので精神的にもラクになりました。私のような人事だけでなく、抱える部下の人数が多い管理職にとっても、部下の自己評価の進捗が分かるので同様の効果があると思います。
評価結果がカオナビ上に蓄積されるようになったので、制度改革を機に必須化した本人への評価結果フィードバック面談の際、参照している社員も多いようです。もちろん、フィードバック面談の内容も記録し、次回の目標設定や評価の際に役立てています。
PC貸与がない職種の人は、私用のスマートフォンからアプリを通じて記入しています。タブレットであればPC同様ブラウザから入力することもできなくはないんですが、スマホの画面となるとやはりアプリも用意されているほうが便利ですね。
マトリクス表示で評価分布を確認。制度の“完成度チェック”にも活用
――カオナビでの評価運用を一周し終えてみて、いかがですか。
操作には皆、慣れてきたようですが、人事としては改善すべき点や調整が必要な点がいくつか見えてきました。
例えば、上長の評価が思いの外、本人の自己評価に影響されてしまうことが分かりました。そこで、本人の自己評価は上長には非表示に変更。評価が確定した後、フィードバック1on1のときに初めて上長に見えるようにし、評価への影響を抑えつつ本人へのアドバイスに役立ててもらえるよう設定を変更しました。こうした変更や微調整も自分で簡単にできるので、気付いたらすぐにブラッシュアップできるのもいいですね。
また、設計した制度の妥当性を検討する際にもカオナビが役立ちました。評価基準を設計するときは、当然ながら「各評価に大きな偏りなく社員が分布する状態」を目指します。ただ、狙い通りの基準値になっているかは、実際評価結果が出そろってみないと分からないものです。そこで、評価の素点となる総合点が出そろった後に、社員を切り口の異なる縦軸と横軸でマトリクス表示ができる「シャッフルフェイス」を使って、評価の分布に極端な偏りがないかをチェックしました。
縦軸に評価点を置き、横軸は所属店舗、資格等級や職務などいろいろと表示項目を変えてみて、店舗ごとにバランスを調整すべきか、あるいは資格等級で見るべきか、次回以降に向けて評価基準のほうを手直しする必要がないかといった点をさまざまな切り口から検証、検討しました。初回の評価では、人事のほうでこれらの調整を行った上で、業績評価などの関連項目を併記し、役員による考課会議の資料を作成しました。
考課会議は以前も実施していましたが、参考資料が評価シートの紙の束と業績評価の一覧しかなかったことを思うと、役員にとっても格段に検討や調整がしやすくなり、評価そのものの妥当性や納得感も向上したと思います。
ワークフロー機能で情報更新のリアルタイム性が向上
――申請機能「ワークフロー」も活用しているそうですね。
各種稟議はもともと別のツールで回していましたが、結婚や扶養状況などの身上申請や住所変更、通勤車両の変更など、人事関連の申請はカオナビのワークフローで申請してもらうことにしました。全社員に発生する申請内容ではなかったので、そこまでしっかりした周知はしなかったんですが、紙や別システムより使いやすいのか、開始から2カ月でさっそく40件以上の申請が届きました。
これまでは、申請が必要な事すら知らない社員も多かったのですが、自分の情報が見えることで申請の必要性が浸透してきたのかなと感じています。また評価運用同様、「住所変更の『日付』は申請日と捉える人もいるのか。発生日を記入するよう、注釈をつけよう」など改善すべき点が見えてきたので、見つけ次第修正しています。
別の稟議ツールは設定がかなり難しく、システム担当に頼む必要があるんですが、カオナビは注釈追加や項目変更も簡単で自己完結できるので、改善のフットワークも軽くなりました。
「男女比は?」「年齢比は?」社内の問い合わせにグラフ機能「チャートボード」で即回答
――社員の皆さんにも岩永様にも使いやすさを実感いただけているようでうれしく思います。他の機能も活用いただいているそうでうね。
改めて振り返ってみると、いろいろな機能を少しずつ使っている気がします。
カオナビ導入当初は、これまで収集していなかった緊急連絡先や通勤車両の情報を集めたり、他システムからカオナビにインポートした人事情報に誤りがないかを確認してもらうのに、アンケート機能「ボイスノート」を活用しました。最近では社内イベントの開催後アンケートや、健康診断、予防接種等の意向確認にも使っています。Googleフォームでもできないことはないんですが、対象者の絞り込みが簡単にでき、回答結果が自動でグラフ化されるほか、匿名回収もでできるので、こちらも工夫次第で活用範囲は広がりそうです。
組織図機能「シナプスツリー」も、全社公開し社員に活用を促しています。職場の人の顔や名前、職責などを確認するのに便利なので、特に中途入社の社員に閲覧を勧めています。自分が所属している店のメンバーを確認したいというニーズが強いので、プロファイルブックよりもこちらのほうがよく見られているかもしれません。
グラフ機能「チャートボード」も、最近使うことが増えました。総務にいると、男女比や正社員比率、在籍人数といった数字を社内外問わずよく聞かれるのですが、情報を集めて最新化しておけばグラフは自動生成されているので、作業時間はほんの数分です。
そういえば、シャッフルフェイスは評価調整以外にも使っています。例えば、保有資格と支給手当の不整合がないかを調べたり、年齢と職種を軸にして人員計画の策定に役立てたりと、活用の幅はけっこうあるんですよね。縦軸にセットできるデータを増やしていきたいと思います。
皆が前向きに働ける環境を目指して、蓄積情報を充実させたい
――カオナビを活用して、今後実現していきたいことはありますか。
カーディーラーは職種が多く、その分、把握すべき個人の能力の種類も多岐にわたります。ワークフローも活用し、徐々に充実してきた感はありますが、そろえたい情報を全て集め切れているわけではないので、徐々に情報の幅を広げていければと考えています。
適切で納得度の高い評価や適材適所の配置など、従業員がやりがいを持って日々の業務に当たれる、自身のキャリアに向き合える環境づくりのためには、人事が一人ひとりの情報を把握できている状態が非常に大切です。情報が集まれば、組織の「今」をより詳しく把握でき、組織をよりよくするための打ち手の検討にも大いに役立つでしょう。
評価サイクルが一巡し、カオナビは従業員にとってもおなじみの存在となりました。ワークフローをはじめ、手軽に情報を集められる機能を活用し、効率的に情報一元化を進めていきたいと思います。
- 設立
- 1956年8月
- 資本金
- 2000万円
- 社員数
- 530人(2022年10月31日時点)
- 事業内容
- 自動車販売