北海道を中心に、サッポロドラッグストアーなど多くのグループ会社を擁するサツドラホールディングス株式会社。同社は、店舗やグループ各社社員のモチベーションの維持やダイバーシティ推進に向け、2018年からさまざまな人事制度改革を進める中でカオナビを導入しました。導入の経緯や社内での活用浸透に向けた取り組みについて、同社HRグループグループリーダー兼人事企画・採用チーム チームリーダーの飯田和也様と、HRグループ人事企画・採用チームの関口果穂様に詳しく伺いました。
*本記事は2022年9月2日開催のカオナビ主催セミナーの講演内容を基に構成しています。掲載内容は全てセミナー当日時点の情報となります
独自性の高い評価フローも再現可能。評価運用の効率化が最初の目的
――「カオナビ」導入のきっかけは、評価制度の変更とお聞きしました。
飯田様:
当社はここ5年ほど、評価を含む人事制度全体について、若手のモチベーション低下や女性役職者比率の低さ、人材育成の不透明性などを解消すべくさまざまな取り組みを進めてきました。狙いは、「活躍しつづける人材の育成」の実現です。チャレンジする人に成長機会が与えられ、活躍する人が正当に評価される組織、ライフステージが変化しても前向きに働けて、多様な人材が活躍できる組織となることを目指しています。2018年に評価制度、2020年に研修やライセンス制度の運用を盛り込んだ教育制度、2021年には等級基準と昇格基準の明確化……と、段階を踏んで取り組んできました。
しかし、制度づくり自体は順調だったものの、人材情報はExcelベースで管理していたので手間がかかっていました。今後、本格的にタレントマネジメントを進めていくためには、情報整理とその活用が必須。そのためには、タレントマネジメントシステムが必要だろう、ということで「カオナビ」の導入を決めました。
システムに求めたものは、変更したばかりの評価制度をそのまま実装できる再現性の高さと、有用なデータベースとして機能すること。実は、何社かのシステムで比較検討したのですが、当社は会計年度と評価期間で四半期の区切りが違ったり、個人の目標に難易度やウエイトを細かく組み込んでいるので、評価フローやシートの独自性が高かったりと、システム上での「再現性」の観点で選定が難航しました。
結果的にカオナビに決めたのは、他の会社からは「できない」と断られたことも、カオナビだけは「できます」と答えてくれたからです。システム上での再現ができるかをさまざまな観点から確認し、私たちのやりたいことが「実現可能」だと明確に答えてくれたので、導入を決めました。
関口様:
契約前だけでなく、実際の運用に至るまでのサポート体制にも助けられました。
2021年3月の導入後、フォームの作成から運用テスト、Excelで回収した目標の取り込みなどを終わらせ、7月から本格運用を開始しました。短期間で運用に漕ぎつけるのはとても大変でしたが、親身になってサポートしてくれたおかげで上期の評価に間に合いました。準備期間はタイトで、大変な面もありましたが、導入したからには少しでもはやく従業員にメリットを感じてもらいたかったという想いもあって、いろいろと協力をいただきました。
導入時の社内向け説明会などは手厚く実施できなかったのですが、分かりやすいインターフェイスのおかげで、問い合わせや意見が事前に想定していたより少なく済みました。
「年4回記入」の負担を減らす工夫の結果、さまざまな局面で効率アップ
――評価運用を評価ワークフロー機能「スマートレビュー」での運用に切り替えてみて、いかがでしたか?
関口様:
目標設定による評価対象者が約1000人おり、期初の目標設定や期中の目標修正、半期に一度の自己評価と年間4回、入力する機会があります。それだけでも、それなりの作業量になるので、運用前も後も、従業員の負担を少しでも減らすことが求められていました。
評価シートの選択肢をプルダウンの横に常時表示したり、下書きしてから「カオナビ」に入力したいという要望に対しては「帳票」機能を活用して対応したり……たとえ細かい点であっても入力しやすさを求めました。
実際、「カオナビ」での運用に切り替えてからは、さまざまな面で効果が出たと感じています。今までメールで行なっていたExcelシートの授受や記入漏れはほとんどなくなりましたし、評価者や人事担当者が入力の進捗確認もできるようになることで、一部入力が遅れている人がいたとしても全体の進行が止まることがなくなりました。また、以前はExcelに設定していた計算式が壊れるといったトラブルもあったので、その対応に対する手間を考えると効果は絶大です。
また、人事異動があった際には、評価実施時とフィードバック面談実施時で上長が異なる場合があるのですが、異動者の評価シートを誰に共有すべきかという準備工程が簡素化できたのも大きな効果でした。現在、フィードバック面談は基本的に、面談実施時の上長に実施を依頼しています。そのため、評価シートの閲覧権限を「その時の所属の上司」という風に設定しておけば、1人1人「この人の新しい上長は誰?」などと組織図で調べなくても、「カオナビ」上のその時の所属情報に紐づいて簡単に評価シートの公開範囲がセットできます。過去の評価も「カオナビ」上に蓄積されていくので、異動のたびに過去評価データを“引っ越す”必要もなくなりました。
飯田様:
設定変更のとき、システムによってはコストや時間がかかる場合もありますが、「カオナビ」は設定を自己完結できるので、受けた要望をすぐに反映させたり、改善したいと思ったときにすぐ反映できます。先日も、過去の評価イベントが「いつ」行なった「誰」向けの「何」なのかすぐ判断できるように評価イベントの命名における規則を新たに設け、作った評価イベントをリネームしました。フットワーク軽く改善をし続けられるのも、魅力だと感じています。
現在、対象者は正社員のみですが、いま制度改革に着手中のパート社員の評価も、「カオナビ」上で運用したいと考えています。パート社員の評価は現在もExcelシートで運用し、メールでやりとりをしているので、その対応分が減れば、企画寄りの業務に充てる時間も確保できそうだと期待しています。
散在していた情報を「人」を軸に一元化。人材育成への活用幅が拡大
――評価だけでなく、人材育成でも活用されていると伺いました。
関口様:
そうですね。具体的には、育成に関わる情報の一元化を進めています。
データベース機能「プロファイルブック」にまず集めたのは、面談履歴と研修履歴です。フィードバック面談など各種面談記録や研修受講履歴、昇格の基準になる社内ライセンスの取得状況など、これまでExcelや紙などでバラバラに残されていました。それらのデータを「人」を軸に一元化するだけでも活用のしやすさは大幅に向上し、有用な情報になります。
最近ではこれらに加え、今後の希望を把握するキャリアシートも追加しました。また、労務管理システムにある情報の中でも、人材育成に関連する過去の所属店舗・部署や昇格記録、等級履歴なども、「カオナビ」での管理に移行することを検討しています。
主な目的は育成への活用なので、プロファイルブックで見ることができるのは、基本的に本人とその人の部下の情報のみとしています。誰に、どんな情報を公開するかという問題は難しいものの、メンバー全員が安心して利用できるルールづくりなど、個人情報関連の整理がつけば、一部の情報は公開範囲を全社まで広げて、コミュニケーション活性にもつなげていきたいですね。どの店舗にどんな人がいるかが分かれば、これまで接点のなかった社員同士にもコミュニケーションが生まれるきっかけになると思います。
グループ会社との異動検討、昇格者候補リストアップ……多様なデータ活用シーン
――データが蓄積されてくることで、また活用範囲が広がりますね。
飯田様:
そうですね。プロファイルブックで見られる情報が充実してきたことで、特に組織図機能「シナプスツリー」での活用幅が広がってきました。まだ全従業員が使用できているわけではないですが、組織変更に伴う人員配置検討時において活用しています。主に使用するのは本部所属のマネジャー以上の方で、
組織図上に並ぶ顔写真の下に、等級や入社年など名前以外の情報も表示ができるので、ビジュアル的にもさまざまな要素を勘案して検討できるので、非常に作業が捗っています。また、さらに重宝しているのが一時保存機能です。
人員配置の検討とひと言で言っても、人事担当者や現場責任者で青写真を描いて、役員に承認を取って確定するわけですが、まずは現場と人事との間で意識合わせが必要です。グループ会社を含む遠方の拠点への照会に、この一時保存機能を活用しています。一時保存データは他メンバーへの共有もできるので、人事から現場に異動シミュレーション案を見せ、現場の側で少し手直しして人事に戻す、といった照会・修正が手間なく可能なのです。場所を問わずすぐに共有できるので、人事異動検討の意識合わせがとてもスムーズになりました。私たち人事担当者や現場責任者での人事異動の検討時だけでなく、役員に対してプレゼンする際にも使ったりしています。
そのほか、「ピックアップリスト」も本格活用に向けて検討中です。例えば昇格者候補のリストや最近始めた「選抜育成研修」を受けた人のリストなど、ある条件で絞り込んだ検索結果をそのままリストにできるので、人材育成に直結する絞り込みができそうだと期待しています。どのリストをどの職位の人に公開するか、といったルール作りができ次第、近いうちに運用を始められればと考えています。
人材育成や人事異動の検討では、組織図に囚われず自由に図形を描いてイメージをシェアできる「クリエイティブマップ」も活用できそうだと感じています。プレゼンソフトのような感覚で使えるので、ピックアップリストのメンバーの写真を呼び出して仮にチーム編成をしてみたり、いろいろ試してみたいと思います。
関口様:
グラフ機能「チャートボード」も活用しています。登録したデータが自動的にグラフ化されるので、年齢比・性別比などの従業員全体のデータがワンクリックで確認できて便利です。現在、人事異動や入退社などの個人情報を月一回更新しているのですが、正社員より入退社が多いパート社員は多い月には数十名も動きがあったりします。今後、パート社員の情報も「カオナビ」に登録するようになると、より活用機会が増えそうです。
全メンバー評価の「カオナビ」化、データ活用をさらに進めたい
――構想がもりだくさんですね!今後、「カオナビ」でどんなことを実現したいとお考えですか?
関口様:
やはり一番の目標は、評価の部分でもっとシンプルに、使いやすくすることです。正社員以外のメンバーについても「カオナビ」上での評価運用・データ一元化を進め、効率化・データ活用を幅広く進めていきたいと思います。
それから、まだあまり活用していない機能もあるので、早く使い方を覚えて活用を進めたいところです。ピックアップリストやクリエイティブマップなどの他、アンケート機能「ボイスノート」もまだ使っていないのですが、これまでGoogleフォームなどを使っていた社内のアンケートなどにも使えそうだと思っています。配布・回収だけでなく、結果の把握や格納も便利にできると聞いています。研修後のアンケートや希望勤務地のヒアリングなど、使えるシーンもたくさんありそうです。
ボイスノートに限らず、データ拡充とともに機能の習熟も進めて、「カオナビ」をフル活用していきたいですね。
飯田様:
私たちHRグループではこの数年、「活躍しつづける人材の育成」「多様性のある組織づくり」を大きな目標として組織改革を行ってきました。こうした動きは、人材だけでなく組織全体の活躍にもつながるものですし、当社のミッション「健康で明るい社会の実現に貢献する」に資することでもあると思っています。
運用開始から1年余りを経て、正社員の評価は「カオナビ」への移行が完了し、プロファイルブックの情報も充実してきています。今後はパート社員の評価など「カオナビ」の活用ステージを進め、社員の前向きなチャレンジを会社の人事が後押しできる社内環境をつくっていきたいですね。
- 設立:
- 2016年8月
- 資本金:
- 1000百万円
- 社員数:
- 2,583人(うちパート社員及びアルバイト1,516人)※2022年5月15日現在
- 事業内容:
- 主に北海道内でドラッグストアや調剤薬局を約200店舗を展開している他、北海道共通ポイントカード「EZOCA」を運営するなどのマーケティング事業や、プログラミング教育事業などを展開。「地域をつなぎ、日本を未来へ。」をコンセプトに店舗や地域の資産を活かして新たな課題解決型ビジネスの創造を目指しています。